COVID-19関連追加(2020330日)

COVID-19による嗅覚異常について】

 

@Lacobucci G. Sixty seconds on…anosmia. BMJ 2020; 368: m1202 doi: 10.1136/bmj.m1202 (Published 24 March 2020)より.

高熱や咳はCOVID-19の主症状として認識されているが,現在WHOは果たして嗅覚異常(anosmia)や味覚障害(ageusia)がコモンな症状なのか調査中だ.

多くの呼吸器系のウイルスは,におい受容体に問題を起こす.そして,過去のコロナウイルス感染はPostviral olfactory dysfunction (PVOD)としてエビデンスが存在する.British Rhinological Society代表のClaire Hopkins氏とENT UK代表のNirmal Kunmar氏は嗅覚障害の10-15%は過去のコロナウイルス感染と考えられると述べている1)

最近COVID-19はこのような症状を起こすと報告されている.UKの専門家は,PCR検査を徹底的に行っている韓国において,軽症PCR陽性者の30%は嗅覚障害を認めたことを指摘している

WHO323日時点で,嗅覚障害がコモンな症状なのかどうかこれまで報告された症例を探している.しかし,嗅覚障害とCOVID-19を結びつけるエビデンスはまだ存在しないと強調している

COVID-19と関連があるのか?.そして,感染のどの時期に嗅覚障害が起こるのか?.専門家は,この症状がCOVID-19の道しるべになる症状なのか,あるいは嗅覚障害を起こうるアレルギーや感冒,季節性インフルエンザによるものなのか,探求する必要がある.

COVID-19による嗅覚障害は短期間持続するようだ.しかし,どれだけのケースがより長く症状が持続するのか,我々はまだわからない.

このような症状を認めた時,人々は自己隔離するべきなのか?.WHOCOVID-19の症状のリストに嗅覚障害を含めていない.もし嗅覚障害は認めるもののそれ以外の症状がない成人が,コモンな症状を有する感染者と同様に7日間自己隔離するならば,ウイルスの運び手とされる無症状感染者の数を減らすことができるかもしれない,そのような議論もある1)

1) Hopkins C, Kumar N. Loss of sense of smell as marker of COVID-19 infection. www.entuk.org/loss-sense-smell-marker-covid-19-infection.

 

ASuzuki M, et al. Identification of viruses in patients with postviral olfactory dysfunction. Laryngoscope 2007 Feb; 117(2): 272-277.より

PVOD患者24人の鼻汁を集めて検討した.電気泳動の結果,10人にライノウイルスが認められた.また核酸シーケンスの結果,4人にライノウイルスが認められた.そして,ヒトライノウイルス(HRV-40HRV-75HRV-78HRV-80がセロタイプとして同定された.嗅覚消失していたのはそれら4人のうち1人であり,3人は嗅覚低下を認めた.4人の患者においては,においテストは初診時より481124週目でも著名な改善は認めなかったが,音響鼻腔測定法(acoustic rhinometry)の結果は改善していた.4人のうち1人は6ヶ月後も嗅覚障害は残存していた.コロナウイルスとパラインフルエンザウイルスは各々1人に,EBウイルスは3人に認められた.

 

<私見>

ウイルスによる嗅覚障害はウイルス感染後である.そして,通常のPVODは月単位で長く残存するようだ.他の種類のウイルスのウイルス排出期間がどのくらいかはわからないが,新型コロナウイルスのウイルス排出期間(8日〜37日)が終わった後に嗅覚障害がくるのか(しかし最近の報道をみると,嗅覚障害を認めたのち短期間でPCRを測定したら陽性だったということでこれは当てはまらないと思われる),あるいは新型コロナウイルスによる症状が改善したのち(またウイルス排出はあるものの),嗅覚障害が起こってくるのかよくわからない.もし新型コロナウイルス感染急性期に嗅覚障害が起こるのだとすると,“post-viral”ではないわけであり,特異的な症状なのかもしれない.いずれにしても現時点でははっきりしない.

 

 

COVID-19関連追加(2020330日)に43日追記しました

COVID-19による嗅覚異常について その2

Bagheri SH, et al. Coincidence of COVID-19 epidemic and olfactory dysfunction outbreak. medRxiv 2020.http://doi.org/10.1101/2020.03.23.20041889.

(プレリリース)より.

イランの各州において,2020317日〜12日の期間でオンラインアンケートによる回答のあったデータを解析した.イランにおけるCOVID-19感染拡大のはじまりから4週間以内に嗅覚消失を認めた回答のあった10069件を選択した.

各州のCOVID-19感染の広がりと嗅覚消失例の増加は相関した(Figure 1.アンケートによると嗅覚消失を突然に自覚した例は76.24%,回答時点までに嗅覚が低下していた例が60.90%であった.またこれらの例の83.38%は味覚低下も伴っていた.さらに,アンケートにおいて,嗅覚消失に先行して感冒症状を認めた回答は75.56%であった.

アンケート方式での検討なので,回答者がCOVID-19感染確定例かどうか不明であること,他に嗅覚異常を起こす基礎疾患の有無などは不明であることなど限界があるが,イラン国内におけるアウトブレイクから4週以内の回答であり,COVID-19急性期の症状である可能性も否定はできないかもしれない.COVID-19による嗅覚異常,味覚異常については不明な点が多い.MaoらはCOVID-19入院患者の5%に嗅覚障害を認めたと報告している1)

1) Mao L, et al. Neurological Manifestation of Hospitalized Patients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective case series study. 2020.

 

 

COVID-19関連追加(2020330日)に424日追記しました

【軽症COVID-19患者の嗅覚と味覚の変化】

Spinato G, et al. Alterations in Smell or Taste in Mildly Symptomatic Outpatients With SARS-CoV-2 Infection. JAMA 2020 April 22. doi: 10.1001/jama.2020.6771.

 

Introductionあるコロナウイルス株は嗅神経上皮を介して中枢神経に侵入し,嗅球の内部で増殖することが示されてきた1).そのうえrespiratory treeの中で,鼻粘膜上皮細胞はSARS-CoV-2の受容体になるACE2が最も高く発現している報告がある2)

嗅覚消失については個人的な報告であるにもかかわらず,我々が知る限りたった1つの検討3)があるのみである.発症のタイミングは不明であるが,COVID-19入院患者の34%に嗅覚障害,味覚障害が認められると報告されている3)

MethodsPCRで陽性かつ軽症のため自宅療養している患者に電話による調査を行った(telephone survey).鼻腔咽頭あるいは咽頭スワブが行われた5-6日後に連絡して,Sino-nasal Outcome Test 22 (SNOT-22, 各ポイント: none 0; very mild 1; mild or slight 2; moderate 3; severe 4; as bad as it can be 5)を使って,スワブを行う2週間以内に嗅覚あるいは味覚の変化が突然生じたかどうか問診を行った.選択された374例のうち283例と連絡がとれ,そのうち202例(71.4%)にtelephone surveyを完遂できた.

 

Results年齢はmedian 56歳(range, 20-89歳),52%は女性だった.何らかの嗅覚および味覚異常を自覚したのは130例(64.4%, 95% CI, 57.3-71.0%)だった

median SNOT-22スコアは4ポイント(interquartile range, 3-5; 23.8%5ポイントだった.嗅覚および味覚異常を認めた130例のうち45例(34.6%鼻閉が認められた.他の症状は,倦怠感(68.3%乾性および湿性咳嗽(60.4%発熱(55.5%だった.嗅覚および味覚障害を自覚したタイミングについては,他の症状が起こる前に自覚した:24例(11.9%同時に自覚した:46例(22.8%)他の症状が起こった後に自覚した:54例(26.7%)であった6例(3.0%)は嗅覚および味覚障害のみだった.また嗅覚および味覚障害を自覚したのは男性よりも女性が多かった(男性97; 55.7%, 95% CI: 45.2-65.8% vs 女性105; 72.4%, 95% CI: 62.8-80.7%; p= 0.02).

 

1) Dube M, et al. Axonal transport enables neuron-to-neuron propagation of human coronavirus OC43. J Virol 2018; 92(17): e00404-18.

doi: 10.1128/JVI.00404-18PubMedGoogle Scholar.

2) Sungnak W, et al. SARS-CoV-2 entry genes are most highly expressed in nasal goblet and ciliated cells within human airways. ArXiv200306122 Q-Bio. March 13, 2020. Accessed April 6, 2020. https://arxiv.org/abs/2003.06122.

3) Giacomelli A, et al. Self-reported olfactory and taste disorders in SARS-CoV-2 patients: a cross-sectional study. Clin Infect Dis 2020; ciaa330. Published online March 26, 2020.

doi: 10.1093/cid/ciaa330PubMedGoogle Scholar.