COVID-19関連追加(202048日)

【サージカルマスクのエビデンス】

 

Leung NH, et al. Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nature Med 2020http://doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2.より.

呼吸器に感染するウイルスに対してのフェイスマスク(サージカルマスク)の有用性の報告はインフルエンザを除いてほとんど存在しない.サージカルマスクを用いて,コロナウイルス,インフルエンザウイルス,ライノウイルスに焦点を当て呼吸飛沫とエアロゾルを介した感染伝播について検討した

呼吸飛沫:飛沫.粗い粒子で大きさ>5μm

エアロゾル:飛沫あるいは飛沫核.細かい粒子で大きさ≦5μm

ウイルス同定はPCR法を用いた.ヒトコロナウイルス感染17例,インフルエンザウイルス感染43例,ライノウイルス感染54例のうち複数感染3例を除き,合計111例の被験者(マスク着用・非着用に分ける)の最初の呼気を分析した.

インフルエンザウイルス感染の多くは体温37.8℃以上であり,コロナウイルスやライノウイルス感染の2倍以上の発熱であった.コロナウイルス感染は30分間の呼気計測時間内で平均17回の咳を認めた.評価項目は,鼻腔スワブ,咽頭スワブ,呼吸飛沫サンプル,エアロゾルサンプルのウイルス分離量(viral copies)とした.

・スワブサンプルにおけるウイルス分離量:いずれのウイルスにおいても咽頭スワブよりも鼻腔スワブの方が高かった.

ウイルス同定(RNA

1)飛沫コロナウイルス:マスクなし3/10例(30%vsマスクあり0/11例(0%)(p= 0.09インフルエンザウイルス:マスクなし6/2326%vsマスクあり1/274%)(p= 0.04;ライノウイルス:マスクなし9/3228%vsマスクあり6/2722%)(p= 0.77).

2)エアロゾルコロナウイルス:マスクなし4/10例(40%vsマスクあり0/11例(0%)(p= 0.04;インフルエンザウイルス:マスクなし8/2335%vsマスクあり6/2722%)(p= 0.36);ライノウイルス:マスクなし19/3456%vsマスクあり12/3222%)(p= 0.15).

ウイルス分離量(log10 virus copies per spmple:中央値(四分位範囲IQR).

1)飛沫コロナウイルス:マスクなし0.30.3 1.2vsマスクあり0.30.3, 0.3)(p= 0.07インフルエンザウイルス:マスクなし0.30.3, 1.1vsマスクあり0.30.3, 0.3)(p= 0.01;ライノウイルス:マスクなし0.30.3, 1.3vsマスクあり0.30.3, 0.3)(p= 0.44).

2)エアロゾルコロナウイルス:マスクなし0.30.3, 3.3vsマスクあり0.30.3, 0.3)(p= 0.02;インフルエンザウイルス:マスクなし0.30.3, 3.0vsマスクあり0.30.3, 0.3)(p= 0.26);ライノウイルス:マスクなし1.80.3, 2.8vsマスクあり0.30.3, 2.4)(p= 0.12).

コロナウイルスはマスクあり群では,飛沫とエアロゾルでウイルスは認めなかったこの傾向は特にエアロゾルで認められたウイルス分離量についても同様の結果であった

・症状発症3日前後でインフルエンザウイルスのみ鼻腔および口腔スワブにおいてウイルス分離量の低下傾向を認めたが,マスクなし群の飛沫・エアロゾルおいてはいずれもウイルス分離量の低下は認めなかった.

コロナウイルスは飛沫のみならずエアロゾルを介した感染伝播の可能性がある.またサージカルマスクを使用することによって,呼気中の飛沫およびエアロゾルにおいてコロナウイルス検出・ウイルス分離量の低下が認められた.これはCOVID-19患者がサージカルマスクを用いることによって,感染拡大を防ぐことができることを示唆する

 

 

 

COVID-19関連追加(202048日)に412日追記しました

COVID-19肺炎患者における酸素療法中のサージカルマスク効果】

 

Leonard S, et al. Preliminary Findings of Control Dispersion of Aerosols and Droplets during High Velocity Nasal Insufflation Therapy Using a Simple Surgical Mask: Implications for High Flow Nasal Cannula. CHEST 2020 Mar 31.

https://doi.org/10.1016/j.chest.2020.03.043.

 

HVNI: High Velocity Nasal Insufflation

LFO2: Low Flow Oxygen delivery (cannula)

サージカルマスクを使うことによって空気感染ではない粒子を運ぶのに必要な高流速(high velocity)の持続は減少した(Figure 1).マスクに設定されているポイントからのリークは無酸素あるいはLFO2よりHVNIでより多かった(HVNI 16.5% vs LFO2 12.6% vs 無酸素 11.6%).そのポイント以外からのマスク素材から出る流速はわずかであった.マスク着用下においてHVNIの飛沫を拡散させる高流速の存在は認められず,LFO2や通常呼吸と同等であった.

サージカルマスクを着けた状態で40Lmin-1HVNIは粒子の83.2%を捉えることができる(6Lmin-1LFO273.6%,通常呼吸(無酸素)では87.2%飛沫(>5μm)ならHVNI中のマスク着用で粒子の85.9%を捉えることができる(LFO2では75.9%,通常呼吸なら89.9%HVNIにおける粒子の高い捕捉率は,LFO2では低流速であるのに比較するとマスク素材による高流速粒子の急速な結合のためかもしれない.マスク着用下のHVNIから逃げてしまう粒子(15.9%)(LFO2では6.9%)は1m以上まで漂う.これは圧倒的にマスクのリークが原因である.またマスクなしの通常呼吸では31%の粒子が鼻や口から排出され顔から1m以上は漂う.

一方で,マスクを着けた状態だと40Lmin-152%の排出効果(flush efficacy)が認められた.これによりCO2排出は中程度減少し,マスク着用なしの35Lmin-1モデルから計算された排出効果よりも低い(62.1%).それゆえ,もし患者の呼吸仕事量が増加したのなら,排出効果の低下を考慮する必要がある

まとめ:

@酸素療法を受けている患者において,サージカルマスクを使用することによって粒子の拡散は減少する.

Aサージカルマスクは大部分の粒子を捉えることができる.

Bサージカルマスクを着けることによって排出能力は中程度低下する.もし患者に呼吸仕事量の増加が観察されたら,呼吸回数が増加する.

サージカルマスクは,それを着用することによって酸素療法中の飛沫の拡散を防ぐ効果的なツールである

 

 

 

COVID-19関連追加(202048日に418日追記しました)

【医療従事者における医療用マスクと布マスクの比較研究】

 

Maclntyre CR, et al. A cluster randomized trial of cloth masks compared with medidal masks in healthcare workers. BMJ Open 2015; 5: e006577.

http://dx.doi.org/10.1136/bmjopen-2014-006577.

 

<目的>医療従事者において医療用マスクに対して布マスクの有用性があるかどうか検討した.医療用マスクと布マスクに違いはないという仮説は存在しない.

<方法>ベトナムハノイ市にある2レベル/3レベルの14病院にハイリスク病棟に勤務する18歳以上の医療従事者1607人が対象のRCT.医療用マスク群,布マスク群あるいはコントロール群(マスク(comprised mask)着用を含む通常勤務)に分け,4週間観察した.

<結果>アウトカムは呼吸器症状,インフルエンザ様症状,呼吸ウイルス検査確定とした.

ウイルスはヒトメタニューモウイルス,ライノウイルス,インフルエンザウイルスB型であった.医療用マスク群と比較して,布マスク群では感染率は高くインフルエンザ様症状発症率は著明に高かった(相対的リスクrelative risk: RR=13.00, 95% CI 1.69-100.07.またコントロール群と比較しても,布マスク群ではインフルエンザ症状発症率は著明に高かった.そして医療用マスク群と比較して呼吸器症状発症率は布マスク群では著明に高く(RR=13.25, 95% CI 1.74-100.97, p= 0.029コントロール群と比較しても布マスク群は高い傾向にあった(RR=3.80, 95%CI 0.40-36.40, p= 0.068.なお呼吸器症状発症数は医療用マスク群:28/580人(4.83%),布マスク群:43/569人(7.56%),コントロール群:32/458人(6.99%)であった.一方ウイルス検査確定率においても,医療用マスク群に比べて布マスク群では高かった(RR=1.72, 95% CI 1.01-2.94

粒子侵入率は,布マスクはおよそ97%,医療用マスクは44%だった

<結論>医療従事者は医療用マスクを着用するべき