COVID-19関連追加(2020410日,ATS: American Thoracic Societyより)

COVID-19: Interim Guidance on Management Pending Empirical Evidence. From an American Thoracic Society-led International Task Force

 

202046日,ATS国際専門委員会はCOVID-19の治療・管理に関してのわずかな経験に基づく暫定的な手引きを発行した.

これによると投票の結果,有識者70%以上の同意を得た治療・管理は,

@ヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンCOVID-19重症肺炎例に対して.肺炎がないCOVID-19には賛同しない.).

A腹臥位換気ARDS例に対して).

BECMO(腹臥位換気で改善が得られない例).

※レムデシビルは68%COVID-19肺炎例に対して)の賛同.

※ファビピラビル(®アビガン),シクレソニド(®オルベスコ)についての記載はない.

※クロロキン+アジスロマイシン併用療法には言及しなかった,と記載されている.

 

以下にヒドロキシクロロキンとクロロキンについての要約.

・ヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンは良好な経過の院外患者には推奨しない(18% for intervention, 36% no suggestion, 46% against intervention).

・ヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンは肺炎所見がない患者には推奨しない(8% for intervention, 50% no suggestion, 42% against intervention).

・ヒドロキシクロロキンあるいはクロロキンは(重症)肺炎がある入院患者にケースバイケースで推奨する(74% for intervention, 16% no suggestion, 11% against intervention).

肺炎のエビデンスは,画像所見がある,もし画像検査が行われないならばSpO294%あるいは感染徴候があると定義した.

質問の根拠:ヒドロキシクロロキンとクロロキンはin vitroではSARS-CoV-2に対する活性があり,ヒドロキシクロロキンのほうがより効果が強い.しかし,臨床試験では必ずしも結果が一致しない.中国からの少人数の比較対照試験ではコントロール群に比べてクロロキンは画像所見を改善し,ウイルス陰性化を早め,症状期間を短縮した効果を示した1).しかし現時点で公的な2つの臨床試験は以下のlimitationがある;どちらの群も抗ウイルス薬治療を受けていた2),そしてベースラインのおける群間差が存在する3).フランスから報告された小さな比較対照試験4)は,ヒドロキシクロロキンはウイルス陰性化を早めた結果であったが,重症例を含んでいないこと,無作為試験ではないこと,フォローアップをしていないことなど重大なlimitationが存在する.

結論:専門委員会は2つの意見に割れた.あるメンバー達はCOVID-19に対して明らかなベネフィットがないヒドロキシクロロキンとクロロキンは投与すべきではない,むしろ臨床医は無作為比較対照試験の結果がでるまで待つべきだという意見であった.さもなければ効果がなく有害になりうる薬が多くの症例に投与されるばかりでなく,適切に使用するべき症例に対しての薬の不足を招きうるという警鐘を鳴らした.一方で,他のメンバーは低いクオリティのエビデンスを推奨するためのGRADE frameworkGrading of Recommendations, Assessment, Development, Evaluation)から推測し,重症COVID-19肺炎は致死的になりうることを鑑みると,ヒドロキシクロロキンやクロロキンは有益かもしれないし,有害事象の機会は少ないと結論した.後者のメンバーはヒドロキシクロロキンやクロロキンには,例えばQT延長(クロロキンよりヒドロキシクロロキンのほうが少ないようだ),肝障害,腎障害,免疫抑制が起こりうる有害事象があるということも強調した.QT延長を起こしうる薬(アジスロマイシンを含む)を併用している患者においてQT延長は起こりやすい.ルーチンの検査(ECGなど)でモニタリングすることも感染のリスクを高めてしまう.ヒドロキシクロロキンとクロロキンはCOVID-19の重症度が上がったときに有益性と有害性を天秤にかけたうえで考慮する治療である.

入院外の患者や肺炎のない患者にこの薬を使うことに関して推奨したのはメンバーの20%にも満たない.しかしおおよそ75%以上のメンバーは重症COVID-19肺炎に対してはヒドロキシクロロキンやクロロキンを使うことを推奨した.

投薬するかどうかを決定する前にエビデンスを待つ,あるいはエビデンスを待つ間に治療を活用することを考慮する,この2つの選択の取引は決してめずらしいことではない.しかし,現在は緊急的なパンデミックである.臨床試験の結果を待つことになるが,ルーチンの患者ケアをしながらエビデンスを構築することが広がる不安を払拭できるだろう.それゆえ,専門委員会は原因推測や混乱をコントロールできる確固たる方法に基づいた臨床試験を行うことができるやりかたでデータを集めるべきであると結論した.そのため,暫定的な評価・判断が起こるかもしれないし,対応は順次適用されていくだろう.また専門委員会は生じうるベネフィットと起こりうる有害事象を周知させた患者との共有意思決定(shared decision-making)を持つことを強く促している.そして調査的治療が認められるのは患者の状態が重症である場合である.肺炎を併発しているCOVID-19患者に対してヒドロキシクロロキンまたはクロロキン治療を推奨しなかったメンバー達は,もし状態がさらに悪かったら,例えば重篤な低酸素血症,人工呼吸管理,この治療を推奨したかもしれないと述べている.専門委員会は,この治療をしている患者をきちんとモニタリングし,有害事象が生じたら治療を中止する基準を低く決定するべきだと強調した.最後に,専門委員会は言う.“新しいエビデンスが構築されるのと同様に,この治療を見直すことが必要だ”.

他の団体の見解:

WHORCTで明らかになっていない薬の使用に警鐘.

CDCUS):SARS-CoV-2に対しての予防,治療における使用法,量,治療期間などの指針を作成するRCTは存在しない.

FDAUS):十分なエビデンスはないが,臨床研究が出来なかったり可能でなかったりした時に緊急的な治療薬としては許容できる.

The Surviving Sepsis Campaign:十分なエビデンスがないので賛成も反対の推奨もできない.

1) Gao J, et al. Breakthrough: Chloroquine phosphate has shown apparent efficacy in treatment of COVID-19 associated pneumonia in clinical studies. Biosci Trends 2020; 14(1): 72-73.

2) Chen J, et al. A pilot study of hydroxychloroquine in treatment of patients with common coronavirus disease-19 (COVID-19). J Zhejiang Univ 2020; Epub ahead of print Mar 6.

3) Chen Z, et al. Efficacy of hydroxychloroquine in patients with COVID-19: results of a randomized trial. MedRxiv 2020; Epub ahead of peer review.

4) Gautret P, et al. Hydroxychloroquine and azithromycin as a treatment of COVID-19: results of an open-label non-randomized clinical trial. International Journal of Antimicrobial Agents 2020; Epub ahead of print Mar 20.