COVID-19関連追加(2020412日)

 

【重症COVID-19患者に対してレムデシビルの人道的使用(コンパッショネートユース)】

Grein J, Ohmagari N, Shin D, et al. Compassionate Use or Remdesivir for Patients with Severe Covid-19. N Eng J Med 2020 April 10. doi: 10.1056/NEJMoa2007016.

 

<背景>

ウイルスRNAポリメラーゼを抑制するヌクレオチドアナログプロドラックであるレムデシビルはin vitroSARS-CoV-2に対しする活性を有している.

<方法>

入院中のCOVID-19患者に対してコンパッショネートユースにおいてレムデシビルを使用した.対象は,室内気下でSpO2<94%あるいは酸素療法を受けていたCOVID-19患者.レムデシビルは合計10日間静脈内投与した(day1200mg/日,続いて100mg/日を9日間).データは2020125~37日までレムデシビルを投与された患者から集められた.

<結果>

 

Figure 3A: Kaplan-Meier解析の結果,28日間の観察期間で,累計臨床的改善率は84%であった(95%CI 70 to 99).

Figure 3B: 改善率は非侵襲的呼吸管理を受けていた例より侵襲的呼吸管理を受けていた例の方が低かった(改善のハザード比: 0.33, 95%CI 0.16 to 0.68).

Figure 3C: 改善率は50歳以下より70歳以上の方が低かった(ハザード比: 0.29, 95%CI 0.11 to 0.74).性別,国,基礎疾患,レムデシビル治療を受ける前の有症状期間はいずれも臨床的改善率と関連はなかった.

 

61例が少なくとも1 doseのレムデシビルによる治療を受けた.後治療のデータがない7例,dosing errorがあった1例は除外し,53例のデータを解析した(22例はアメリカ,22例はヨーロッパあるいはカナダ,9例は日本).ベースラインにおいて,30例(57%)は人工呼吸器,4例(8%)はECMOで管理されていた.中央値18日間の観察期間で36例(68%)は受けていた酸素治療において改善がみられた(人工呼吸器管理を受けていた30例中17例(57%)は抜管できた).全例中25例(47%)は退院し,7例(13%)が死亡した.侵襲的呼吸管理を受けた34例では死亡率18%6例死亡),受けていない19例では死亡率5%1例死亡)だった.

32例(60%)に有害事象が認められた.よく見られた有害事象は,肝臓酵素の上昇,下痢,発疹,腎障害,そして低血圧だった.特に侵襲的呼吸管理を受けている患者によくみられた.12例(23%)において重篤な有害事象が認められた.多臓器不全,敗血症性ショック,急性腎障害,低血圧がベースラインで人工呼吸管理されていた例で報告された.4例(8%)は治療を中止された(1例は持病の腎不全が増悪,2例はトランスアミナーゼの上昇,1例は斑点状丘疹).

この検討では,抗ウイルス薬の効果としてウイルス量の考察は行っていない(ベースラインからどのくらいウイルス量が減少したか等).しかしパンデミック時である現在において,治療によって改善までの期間がより短くなった(5 vs 10日)事実があるので,より多くの患者にレムデシビルを投与することは許容されるだろう.

<結語>

重症COVID-19患者に対してコンパッショネートユースとしてレムデシビルで治療したこのコホート研究では53例中36例(68%)が臨床的改善を示した.効果の判定はプラセボ対照無作為化二重盲検群間比較試験に委ねる.

 

 

 

COVID-19関連追加(2020412日)に524日追記しました

 

【レムデシビルRCTACTT1)の暫定報告】

Beigel JH, et al. Remdesivir for the Treatment of Covid-19Preliminary Report.

N Engl J Med. May 22, 2020. doi: 10.1056/NEJMoa2007764.

METHODS

下気道病変のあるCOVID-19入院患者を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験.レムデシビル群(初日200mg/day静注,100mg/day静注を9日間),プラセボ投与群に無作為割り付けを行った.主要評価項目は退院あるいは感染管理目的のみの入院に至る回復までの時間(以下のスコア123とした.

患者は8つのカテゴリーに層別化した:スコア1:入院なし,活動制限なし;スコア2:入院なし,活動制限ありand/or在宅酸素;スコア3:入院,酸素投与なし,継続する治療なし(感染管理目的も含む);スコア4:入院,酸素投与なし,しかし治療あり(COVID-19関連あるいはその他);スコア5:入院,何らかの酸素投与あり;スコア6:入院,非侵襲的人工呼吸(NIV: noninvasive ventilation)あるいはネーザルハイフロー(NHF: nasal high flow);スコア7:入院,侵襲的人工呼吸あるいはECMO: extracorporeal membrane oxygenation;スコア8:死亡.

RESULTS

1063例を対象として無作為割り付けされ,最終的に1059例が解析された(Figure 1).平均58.9歳,男性が64.3%であった.ほとんどの患者は併存症を1つ(27.0%),2つ以上(52.1%)を有しており,高血圧症(49.6%),肥満症(37.0%),2型糖尿病(29.7%)であった(Table 1).発症から割り付けまではmedian 9日(IQR, 6-12日)だった.スコア7272例(25.6%),スコア6197例(18.5%),スコア5421例(39.6%,スコア4127例(11.9%)であった.46例は登録時にカテゴリーの層別化を行えなかった(4.3%).

1059例(レムデシビル群538例,プラセボ群521例)の暫定的な結果では回復までの期間は11日(95% CI, 9-12日) vs 15日(95% CI, 13-19日)でレムデシビル群が有意に短かった(回復の率比rate ratio for recovery, 1.32; 95% CI, 1.12-1.55; p< 0.001Figure 2Table 2.サブ解析では,スコア5の重症度のみにレムデシビルの有用性が認められた(回復の率比 1.47; 95% CI, 1.17-1.84.一方で,それより軽症でも重症でもプラセボ群と有意差を認めなかった.層別化を変数として調節したベースラインのスコア解析はoverall effectを推定するために行われたが,同様の結果であった(回復の率比, 1.31; 95% CI, 1.12-1.54; 1017例).発症後最初の10日間に割り付けされた患者の回復の率比は1.2895% CI, 1.05-1.57; 664例)であり,一方発症後10日以降に割り付けされた患者の回復の率比は1.3895% CI, 1.05-1.81; 380例)であった(Figure 3).

比例オッズモデル(proportional odds model)では,プラセボ群に比べてレムデシビル群は15日時点でのスコアの改善が高かった(オッズ比odds ratio for improvement, 1.50; 95% CI, 1.18-1.91; p= 0.001; 844例)Table 2Figure S5Kaplan-MeierKM)曲線による推定では,14日までの死亡率はレムデシビル群7.1% vs プラセボ群11.9%(ハザード比hazard ratio for death, 0.7; 95% CI, 0.47-1.04; 1059例)であり,有意差はないもののレムデシビル群が低かったTable 2KM曲線における28日までの死亡率の推定は現時点では報告できない.層別化を変数として調節したベースラインのスコア解析ではハザード比は0.7495% CI, 0.50-1.10)であった.

重篤な有害事象はレムデシビル群で114/541例(21.1%),プラセボ群で141/522例(27.0%)であったGrade 3あるいはGrade 4の有害事象はレムデシビル群156例(28.8%),プラセボ群172例(33.0%)であった.レムデシビル群で最も観察された有害事象は貧血であった(43件(7.9%),プラセボ群47件(9.0%)).急性腎不全,GFR低下,Cr上昇(40件(7.4%),プラセボ群38件(7.3%)),発熱(27件(5.0%),プラセボ群17件(3.3%)),高血糖(22件(4.1%),プラセボ群17件(3.3%)),アミノトランスフェラーゼ上昇(22件(4.1%),プラセボ群31件(5.9%))であった.両群に有意差は認めなかった

DISCUSSION

安全監視委員会はレムデシビル群の回復短縮効果が明らかであったデータから早期の非盲検化を推奨した

ベースラインのスコア5(酸素投与あり)の群でもっとも効果が認められた.この群はもっともサンプルサイズが大きい.最重症のスコア7で有意差は認めなかったが,観察期間が短いことが影響したかもしれない.このようなordinal scaleを使った1あるいは2点における回復時間の解析は28日の観察期間を経てから結論づけることができるだろう.我々はCOVID-19患者の肺病変が進行し人工呼吸器管理になる前に抗ウイルス薬を投与することを推奨する

・このトライアルは中国で行われた237例(レムデシビル群158例,プラセボ群79例)におけるRCTNCT04257656)と比較されるだろう1).臨床的回復時間(2点におけるスコア付けによる)はレムデシビル群21.0日(95% CI, 13.0-28.0),プラセボ群23.0日(95% CI, 15.0-28.0),ハザード比は1.2395% CI, 0.87-1.75)であった.6カテゴリーのスコアを基にした14日時点における回復に関するオッズ比は1.2595% CI, 0.76-2.04)であった.このトライアルは十分な登録数を達成できず(中国のアウトブレイクの終焉による),我々のトライアルよりも統計学的なパワー不足であった(サンプル数の少なさ,2:1の割り付け).そしてレムデシビルの有意な効果を示せなかった.

この暫定的な結果は,酸素投与が必要なCOVID-19入院患者に対してレムデシビルを使用することを支持する.しかし,レムデシビルを使用したにもかわらず死亡率は高く,抗ウイルス薬のみを使用したのでは治療が不十分であることは明らかである.抗ウイルス薬とその他の薬剤のコンビネーションが患者の予後を改善させるかどうか評価が必要である.

1) Wang Y, et al. Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial. Lancet 2020; 395: 1569-78.

 

Figure 1

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2007764/20200522-01/images/img_medium/nejmoa2007764_f1.jpeg

 

 

Table 1

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2007764/20200522-01/images/img_medium/nejmoa2007764_t1.jpeg

人工呼吸器/ECMO群はプラセボ群が5.1%多い.また,NIV/NHF以上(スコア6以上)は41.2% vs 47.2%でプラセボ群に重症例が6%多い.

 

 

Figure 2

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2007764/20200522-01/images/img_medium/nejmoa2007764_f2.jpeg

 

重症度ごとの回復まで時間のKM曲線.スコア5の重症度でのみレムデシビルの有用性が認められ,それより軽症でも重症でもプラセボと有意差を認めなかったC:スコア5(酸素投与),D:スコア6NIV/NHF),E:スコア7(人工呼吸器/ECMO).

 

 

Table 2

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2007764/20200522-01/images/img_medium/nejmoa2007764_t2.jpeg

Figure 3

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2007764/20200522-01/images/img_medium/nejmoa2007764_f3.jpeg

 

 

 

COVID-19関連追加(2020412日)に529日追記しました

 

【重症COVID-19患者に対するレムデシビルの5日間・10日間投与の比較試験

(ギリアド社のプレスリリースの論文版)】

BACKGROUND>

レムデシビルはin vitroにおいて強力な抗ウイルス活性を有するRNAポリメラーゼ阻害薬であり,COVID-19動物モデルにおいて効果が認められている.

METHODS

SARS-CoV-2 PCR陽性で画像で肺炎像あり,室内気下SpO2 94%以下のCOVID-19患者397例を対象としたrandomizedopen-labelphase 3 trialである.レムデシビル5日間投与(5日群),10日間投与(10日群)に無作為割り付けを行った(Figure 1Table 1).レムデシビルは初日200mg/日静注,以後は100mg/日静注で投与した.

プライマリエンドポイントは14日目の臨床的改善(7スケールの評価で2以上の改善)

セカンダリエンドポイントは有害事象の比率.

事前指定(prespecified)探索的エンドポイントは臨床的改善までの時間,回復までの時間(2-5スケールから6あるいは7まで),モディファイした回復までの時間(2-4スケールから5-7まで,あるいは5スケールから6あるいは7まで),様々な要因による死亡.

スケール1:死亡,スケール2:入院,人工呼吸器あるいはECMO,スケール3:入院,非侵襲的人工呼吸あるいはネーザルハイフロー,スケール4:入院,酸素投与,スケール5:入院,酸素投与なし,継続治療あり,スケール6:入院,酸素投与なし,継続治療なし,スケール7:入院なし.

 

Figure 1

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2015301/20200527/images/img_xlarge/nejmoa2015301_f1.jpeg

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2015301/20200527/images/img_xlarge/nejmoa2015301_t1.jpeg

 

RESULTS

対象397例のうち5日群は200例,10日群は197例であった.治療期間は5日群がmedian 5日(IQR, 5-5),10日群はmedian 9日(IQR, 5-10)であった.ベースラインにおいて10日群が5日群に比べて有意に臨床症状が悪かった(p= 0.02.高用量酸素投与以上(スケール23)が5日群26%10日群35%であり(p= 0.02),AST値も5日群41 U/liter10日群46 U/literであった.14日時点で少なくとも2スケールの臨床的改善は5日群では65%10日群では54%であり,ベースラインの臨床症状で調節しても両群の臨床的改善度に有意差は認めなかった(p= 0.14)(Table 2.他のエンドポイントも両群とも同様の結果であった(Table 2).14日目までに回復した患者比率は,ベースラインの臨床症状を調整しても5日群では64%10日群では54%であった(baseline-adjusted difference -6.3% [95% CI, -15.4 to 2.8]).回復までの時間は5日群がmedian 10日(IQR, 6-18),10日群がmedian 11日(IQR, 7-評価不可)であった.モディファイした回復時間も両群とも同様であった.いずれもベースラインの臨床症状で調節しても両群とも同様であった.

 

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2015301/20200527/images/img_xlarge/nejmoa2015301_t2.jpeg

Figure 2

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2015301/20200527/images/img_xlarge/nejmoa2015301_f2.jpeg

 

レムデシビルを5日を超えて投与して有効であったsubpopulationがあるかどうか事後解析(post hoc analysis)を行った(Figure 2).

5日目で侵襲的人工呼吸器管理あるいはECMOだった群は14日目での死亡率は5日群で40%10/25例),10日群で17%7/41例)であった非侵襲的人工呼吸,ハイフロー,酸素投与,酸素投与なし,これらの群ではレムデシビルを5日を超えて投与することによって予後を改善する効果はないようであった.(※訳者見解→侵襲的人工呼吸あるいはECMO群ではレムデシビルを10日まで延長して投与する意義があるかもしれない.

 

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2015301/20200527/images/img_xlarge/nejmoa2015301_t3.jpeg

 

有害事象においては両群とも同様の結果であった5日群は70%10日群は74%Table3).また重篤な有害事象が,5日群では21%10日群では35%に認められた.もっとも確認された有害事象は嘔気であった(5日群10% vs 10日群9%),急性呼吸不全(6% vs 11%),ALT上昇(6% vs 8%),便秘(7% vs 7%)が続いた.有害事象のため治療を中断したのは,5日群で4%10日群では10%であった10日群でもっとも認められた重篤な有害事象は急性呼吸不全(9% vs 5%),呼吸不全(5% vs 2%)であったGrade 3以上の臨床検査所見異常は5日群で27%10日群で34%に認められた(Table 3).ほとんどは一過性であり14日目における有意差は両群で認めなかったGrade 4のクレアチニンクリアランス低下5日群で3%10日群で12%に認められた.

DISCUSSION

5日群の方が10日群よりも予後が良い傾向であったことにはいくつかの理由がある.10日群はより多くの重症例を含んでいたこと,5日群よりも10日群は男性が多かった(60% vs 68%)ことから,ベースラインにおける臨床症状の不均一性が存在した.

・もしレムデシビルが真に活性のある薬であるならば,短い治療期間が保持されうることを示唆している.

Limitation:対照にプラセボ群がないこと.open-label試験であること.退院した患者もおり10日群で治療を完遂したのはわずか44%であり,そして退院できなかった患者はより重篤な状態であったと考えられ,両群の有害事象の差に影響を与えたかもしれないこと.ウイルス排出を検討していないこと.