COVID-19関連追加(2020416日)

 

【髄膜炎・脳炎とCOVID-19

Moriguchi T, et al. A first Case of Meningitis/Encephalitis associated with SARS-Coronavirus-2. Int J Infect Dis 2020 Mar 25. (University of Yamanashi)

http://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.03.062.

救急車で搬送されたSARS-CoV-2による髄膜炎・脳炎の初めての報告.PCR検査によるSARS-CoV-2 RNAは鼻咽頭スワブからは認められなかったが,脳脊髄液(CSF: cerebrospinal fluid)で陽性だった.

症例は24歳男性.渡航歴はなかった.彼は全身倦怠感頭痛発熱を自覚した(day 1).近隣の医療機関を受診し(day 2),ラニナミビル(イナビル®),解熱剤が処方された.3日経過しても全身倦怠感や頭痛,のどの痛みが増悪したため,彼は他の医療機関を受診した(day 5).胸部単純レントゲンや血液検査は異常を認めなかった.彼が意識障害を伴い吐瀉物と共に床に倒れているのを家族が発見し,救急車にて当院へ搬送された(day 9.搬送中,1分間ちかく続く間欠性全身けいれんが認められた.当院到着時,血行動態は安定していたが,意識レベルはGlasgow coma scale: GCS 6点(E4V1M1)であり,項部硬直を認めた.血液検査では好中球優位の白血球増加,リンパ球減少,CRP上昇を認め,胸部CTでは右上葉と両側下葉に小さなすりガラス陰影を呈していた.腰椎穿刺にて採取したCSFは無色透明,初圧320 mmHg以上,細胞数12/μl(単核球10,多核球2,赤血球なし)と増加していた.血清検体中の抗HSV-1抗体や抗varicella-zoster IgM抗体は認めなかった.SARS-CoV-2アウトブレイクの現状を考慮しrt-PCR検査を施行した.鼻咽頭スワブでは陰性であったが,CSFSARS-CoV-2 RNAが認められた

けいれん重責発作のため人工呼吸管理とし,髄膜炎と肺炎の診断でICUへ入院した.抗生剤(セフトリアキソン,バンコマイシン,アシクロビル)とステロイド,けいれんに対してレベチラセタム(イーケプラ®)静注を開始した.入院2日目から胃チューブ経由にてファビピラビル(アビガン®)投与も開始した(合計10日間).ICU入室20時間後に脳MRIを施行した(Figure).

DWIでは右側脳室後角壁に沿って高信号を認めた.FLAIRでは右内側側頭葉と軽度萎縮を伴う海馬に高信号変化を認めた.硬膜に造影増強は認めなかった.これらの所見は右側脳室炎および主として右内側側頭葉・海馬の脳炎に合致する.鑑別疾患は“けいれん重責型脳症を伴う海馬硬化症”である.その他,T2WIでは汎副鼻腔炎(pan-paranasal sinusitis)の所見を呈していた.入院15日目時点で,我々は両側肺炎とSARS-CoV-2脳炎による意識障害に対する治療をICUで続けている.

Discussion

SARS-CoV遺伝子が全てのSARS患者の脳の剖検検体で認められた報告がある(Gu et al., 2005).重要なことは,これらの症例では海馬に所見が強く認められたことである.SARS-CoVSARS-CoV-2の類似点があるという報告(Yu et al., 2020)を考慮すると,これらのウイルスがヒトの脳の同じ部位に侵入したとしても矛盾はない.

鑑別疾患として海馬硬化症を挙げたが,この患者は過去にけいれんの既往はなく考えにくい.加えて,この症例は著明な副鼻腔炎の所見を認めた.鼻炎とretrograde trans-synaptic transferとの関連は明らかではないが,我々はSARS-CoV-2の診断と治療をする際には鼻と副鼻腔の状態に注意を払うべきだと考えている

意識障害の患者をみたら,SARS-CoV-2感染も念頭に置く必要がある

私見:脳疾患を疑う症例でもCOVID-19を疑わないといけない.

本筋とずれるが,個人的には,“胸部単純レントゲンは正常なので,COVID-19は大丈夫”という発想はありえない.