COVID-19関連追加(2020418日)

【ウイルス排出とウイルス量について】

1To KKW, et al. Temporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study. Lancet Infect Dis 2020 Mar 23.

http://doi.org/10.1016/s1473-3099(20)30196-1.

対象は23例(中央値62歳)で,酸素投与が必要だったのが10例,軽症は13例.5例はICU,うち3例は気管内挿管,2例は死亡した.発症から入院まで4日(range 0-13).早朝に後口腔咽頭から採取した唾液検体と下気道検体のウイルス量は中央値5.2 log10copies/ml (IQR 4.1-7.0)であった.

唾液検体のウイルス量は発症後はじめの1週間が最も多く,以後減少した(slope -0.15, 95% CI -0.19, -0.11; R2=0.717例(33%)は発症後20日以上たってもウイルスRNAが認められた(うち1人は発症後25日経ってもウイルスRNAが認められた).しかしウイルスRNA検出の遅延と重症度は相関しなかった(p=0.35

SARS-CoV-2のウイルス量のプロフィール(viral load profile)をみると,インフルエンザと同様にピークは症状発症前後にあるこれはSARS-CoVは症状出現後10日前後,MERS-CoV14日前後にピークがあることと対照的である.このことはSARS-CoV-2がたとえ症状が軽症でもたやすく感染伝播させることを示唆する.そして様々なコミュニティや医療関連施設等でヒトーヒト感染が起こりやすいことも意味する.

年齢はピークのウイルス量と相関したSpearman’s ρ=0.48, 95%CI 0.074, 0.75: p=0.020

軽症例に比較して重症例は初回・ピークのウイルス量は1 log10多かったが,有意差は認めなかった.基礎疾患有無についても有意差は認めなかった.

16例の発症14日以上でのEIA法における血清抗体陽性率は,抗NPnucleoproteinIgG抗体94%(15例),抗NP IgM抗体88%(14例),抗RBDspike protein receptor binding domainIgG抗体100%16例),抗RBD IgM抗体94%15例)であった.

血清抗体診断は晩期で非常にウイルス量が少ない(rt-PCRで検出されない)患者の診断にとって重要である.多くの患者は発症10日後に抗体価が上昇するため,回復期において血清抗体サンプルを集めることは有用である.血清IgGIgMに比べ,同時期あるいは早期に上昇する.血清抗体レベルは臨床的重症度と相関しなかった重症患者の1人は発症6日という早期に抗体は出現したSARS-CoV感染で亡くなった人の抗スパイク抗体の上昇は回復した人より早かったという報告1)があり,感染を契機に減少したB細胞の免疫機能(障害された中和機能)が背景にある.

IgM抗体価に比べ,抗NP IgG抗体価と抗RBD IgG抗体価はウイルス中和価(microneutralisation assay titres)とより強く相関した(R2> 0.9

EIA法による抗体価とウイルス中和価が相関していることは,今後のワクチン開発や回復者血清治療,モノクローナル抗体治療のデザインに重要である.

1) Zhang L, et al. Antibody responses against SARS coronavirus are correlated with disease outcome of infected indivisuals. J Med Virol 2006; 78: 1-8.

 

2Liu Yang, et al. Viral dynamics in mild and severe cases of COVID-19. Lancet infect Dis 2020 Mar 19.

http://doi.org/10.1016/s1473-3099(20)30232-2.

Figure A:発症後12日までのΔCt値は軽症例に比べ重症例は著明に低値であった.

Figure B:軽症例は発症10日までにウイルスクリアランスが認められ,90%の症例が繰り返しのPCRが陰性になった.一方で重症例は発症10日を超えてもPCRは陽性だった

3He Xi, et al. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. nature medicine 2020 April 15.

https://doi.org/10.1038/s41591-020-0869-5.

咽頭スワブ検体のウイルス量は発症時に最も多い.Serial interval5.8日(95% CI 4.8, 6.8日),中央値5.2日(95% CI 4.1, 6.4日)と算出される.Incubation periodが平均5.2日とすると,感染性は発症前2.3日(95% CI 0.8, 3.0日)から獲得され,発症前0.7日(95% CI 0.8, 3.0日)がピークになると考えられる(Figure 1c

前症状感染伝播の推定比率は44%(95% CI 25, 69%)であり,感染性は7日以内に急速に減少していくと推測される

症状発症後にすぐに高いウイルス量が認められ,21日で検出以下に減少していくFigure 2.これは性別,年齢,重症度で明らかに差は認めなかった

 

 

COVID-19関連追加(418日に420日追記しました)

4Wӧlfel R, et al. Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019. Nature 2020 April 1.

https://doi.org/10.1038/s41586-020-2196-x(2020).

 

対象は若年〜中年の基礎疾患のない9症例で,いずれもmild caseの検討である.

Figure 1B:鼻腔と口腔咽頭スワブのウイルス量と検出率は有意差は認めなかった.症状発症day5までの平均RNA量は6.76x105 copies/swab(最大7.11x108 copies/swab),検出率100%であり,day5以降の平均RNA量は3.44x105 copies/swab,検出率39.93%であった.発症後28日でもスワブ陽性例があった.喀痰の平均RNA量は7.00x106 copies/ml(最大2.35x109 copies/ml)であった.全てのサンプルは発症2-4日で採取した.27の尿サンプルと31の血清サンプルはいずれもRNAは陽性にはならなかった.

Figure 1D感染性を確認するために,症例から採取した多数の部位において生存ウイルス分離を試みた.発症後7日間はウイルスは多数のサンプルから分離されたが(スワブ16.66%,喀痰83.33%),高いウイルス量(high viral load)が続いているにも関わらずday8以降に採取したサンプルから分離されたウイルスは認めなかった

便からのウイルス分離には成功しなかった.

Figure 1E, 1F:スワブと喀痰サンプルの退院患者における検査をベースにした感染性の基準を作るために,probit modelをベースにした補完法(interpolation)を作成した.早期の咽頭スワブからの高いウイルス量と分離の成功は,上気道でウイルス複製が行われていることを示唆する.我々は活発化したウイルス複製を証明するためにviral subgenomic messenger RNAssgRNAを同定するrt-PCRを行った.Viral sgRNAはウイルス粒子に含まれず,感染細胞のみに転写されるため,サンプル内の活性化した感染細胞の存在を示唆する.長期にわたるviral loadの経過におけるウイルス複製が活性化しているのが明らかな期間,すなわちday4/56/78/9に採取した喀痰サンプルにおいて,mean normalized sgRNA per genome ratioは〜0.4%であった(Figure 1G喀痰のsgRNAの減少はday10/11を超えると起こってくる咽頭スワブにおいてday5までに採取したサンプルは同様の範囲であったが,それ以降はスワブにsgRNAは認めなかったFigure 1H

G6446Aははじめに報告されたウイルスゲノムである.我々のはじめの症例では咽頭スワブはG644Aであったが,同じタイミングで採取した喀痰ではG6446Gを示した.咽頭スワブと喀痰におけるゲノムの違いは,肺で精力的なウイルス排出が行われるよりも,むしろ咽頭で独立してウイルス複製が行われる可能性を示唆する

Figure 2:各症例のサンプル別のウイルス量の経日変化を示す.概してウイルス量は初回が多い1例を除き,咽頭スワブのRNA量は症状出現時にはすでに減少傾向を示している.一方で喀痰のRNA量の低下はさらに遅く,8例中3例でははじめの7日間にピークが認められた.多くの症例で,便のRNA量変化は喀痰のRNA量変化を反映していた(Figure 2A, 2B, 2C).便のRNA量変化から消化管のおける独立したウイルス複製が示唆される症例も認められた(Figure 2D).ほとんどの症例で症状ははじめの1週間の最後には消失したが,咽頭のウイルスRNAは次の週まで認められた9例中6例において,3週間を超えても便と喀痰サンプルのRNAは陽性であった.

全症例はmild caseであったが,2例は肺炎像を示し喀痰ウイルス量は停滞しピークはday10/11あたりに確認された一方でその他の例においては,この時点で喀痰ウイルス量は低下していた9例中4例において味覚異常,嗅覚異常を認め,通常の風邪で認められるものよりも症状は強く,長く続いた

SARS-CoV-2のスパイクプロテインを発現した細胞を使用したIgGIgM抗体免疫蛍光法とSARS-CoV-2を用いたvirus neutralization assayによってセロコンバージョンが確認された.セロコンバージョンはday7までに50%の症例に認められ,全例day14までに認められたウイルスはday7以降では分離されなかった全ての症例で中和抗体が認められ,抗体価(titer)と臨床経過は相関しなかった2週の最後でもっともウイルス中和抗体価が低かった症例4は経過観察期間を超えて便RNAが陽性であった(Figure 2D).differential recombinant immunofluorescence assayの結果,いくつかの症例においては4つの風土病であるヒトコロナウイルスに対しての交差反応が示唆された.

Conclusion

咽頭スワブの感度が高かったのはSARSとは対照的である.ウイルス量については,SARSは発症後7-10日がピークであるが,SARS-CoV-2ではピークはday5以前であった.SARS-CoV-2のウイルス複製は上気道で活発であることが示唆されるが,これはSARS-CoVと異なる.一方,肺でウイルス複製が活発になる場合においては,喀痰におけるウイルス排出はSARS-CoVSARS-CoV-2で類似している.症状発症後はじめの5日間において,SARS-CoV-2のウイルス複製の咽頭での偏向性は,我々の検討で示した咽頭スワブのsgRNA転写細胞の存在に一致する.注目すべきことは最初に上気道で採取した検査の時点で,すでにウイルス排出のピークは過ぎていたことだ一方で,喀痰の感染性のあるウイルス排出は症状発症1週間を通して続く.このことは症状が軽症にもかかわらず咽頭からのウイルス排出が活発になるため,SARS-CoVよりもSARS-CoV-2の方が効率的に感染伝播を起こしてしまうことを示唆する.下気道におけるウイルス複製に関しては,SARS-CoV-2SARS-CoVに類似している我々の検討には重症例は含まれていないことがlimitationである

便における高いウイルスRNA量と時に認められるsgRNAを含む細胞は,消化管でウイルス複製が活発に行われることを示唆する.MERS-CoVに比べると検出率は高い.そして,SARS-CoVは便に認められることが通常である.しかしこの検討では便に生存ウイルスを分離することが出来なかった.これは我々の検討症例がmild caseだったためかもしれない.

喀痰のウイルス量が100000 RNA copies/ml未満で発症後10日経過している患者は,自宅隔離を前提とすれば早期に退院できるかもしれない

セロコンバージョンのタイミングはSARS-CoVと同様か少し早いことが示唆された.