COVID-19関連追加(2020427日)

 

【重症COVID-19患者の「呼吸困難感の欠如」について】

Letters to the Editor

Bertran RB, et al. Lack of dyspnea in Covid-19 patients; another neurological conundrum ?. Eur J Neurol 2020 April 17. doi: 10.1111/ENE.14265.

COVID-19関連症状として「呼吸困難感の欠如」がある.これは,“shortness of breath””an unpleasant urge to breathe”と表現される.呼吸困難感の欠如は頻呼吸や頻脈が認められる最重症患者にすら観察される武漢市のコホート研究では,重症患者の62.4%,最終的に侵襲的人工呼吸器管理あるいは亡くなった患者の46.3%に呼吸困難感が認められなかったと報告されている1)2)

同様の所見はSARS-CoV感染症でも認められ,最重症患者のわずか34.8%にしか呼吸困難感は認められなかったと報告された.これらのデータは呼吸困難感が多く認められる他の呼吸器感染ウイルスとは明らかに異なる:MERS-CoVでは69%RSウイルスでは95%,インフルエンザウイルスでは82%に認められている3)

呼吸困難感は末梢から求心性に伝わり,脳幹を通して大脳皮質下およびテント上へ信号が伝わることによって多次元的に自覚される末梢求心性線維は肺や気道に存在する.これらは,化学的・機能的刺激に反応し,咳や頻呼吸そして呼吸困難感といった肉体的な反応を惹起する.呼吸困難感において最も関連のある求心線維は肺C線維であるこれは肺胞膜下に優位に存在する.肺C線維の化学的活性化(ヒスタミン,アデノシン,PGE2,ロベリン)によって呼吸困難感が引き起こされ,あるいは強調され,そして吸入フロセミド(inhaled furosemide)のような物質が抑制する.

ウイルス肺炎における局所変化は肺C線維を刺激するが,COVID-19の特徴であるサイトカインストームはこれらの神経にダメージを与えるため,これらの機能不全を引き起こすと考えられるが,この仮説は呼吸器ウイルス感染が少なからず知覚線維受容体のアップレギュレーションを導く事実4)と相反する.

多くのウイルスにとって,嗅球は中枢神経系(CNS: central nervous system)への入り口になる.とりわけ,COVID-19では嗅覚低下が報告されている5).また実験ではSARS-CoV嗅球を介してCNSへ侵入することが示されている.ウイルスは他の部位に急速に広がり,神経死を引き起こし,そして感染が始まってから4日目に肺C線維が投射する孤束核(NST: the nucleus of the solitary tractに影響する6)NSTが関与する前に,すでに呼吸困難感の知覚を携わるいくつかの構造があることを知ることも重要である(たとえば視床島皮質大脳辺縁系).

しかしながら,めまい(dizziness)のような他のCNS症状が報告されており,感染を背景にした全身的な反応というよりもむしろウイルスによる直接的な神経毒性効果によるこれらの症状にも注意しなければならない.

こういうわけで,これまで以上に,Gandalfの言葉は重みを増す.

A neurologist is never late, nor is he early, he arrives precisely when he means to.

 

1) Guan WJ, et al. Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. N Engl J Med. 2020.

2) Li YC, et al. The neuroinvasive potential of SARS-CoV2 may play a role in the respiratory failure of COVID-19 patients. J Med Virol. 2020.

3) Cavallazzi R, et al. Influenza and Viral Pneumonia. Clin Chest Med 2018; 39: 703-721.

4) Omar S, et al. Respiratory virus infection up-regulates TRPV1, TRPA1 and ASICS3 receptors on airway cells. PLoS One. 2017 12: e0171681.

5) Li L-q, et al. COVID-19 patient’s clinical characteristics, discharge rate, and fatality rate of meta-analysis. J Med Virol. 2020; 1-7.

6) Netland J, et al. Severe acute respiratory syndrome coronavirus infection causes neuronal death in the absence of encephalitis in mice transgenic for human ACE2. J Virol. 2008 82: 7264-7275.

 

→私見:通常の呼吸器疾患のように安静時呼吸困難を認めなくても労作時呼吸困難は病状進行の一つの指標になると考えていた.しかしCOVID-19においては,もし「呼吸困難感の欠如」が重症のみならず,軽症あるいは中等症から重症へのサインとして認められるならば,自覚症状だけでチェックするのは難しいかもしれない.呼吸困難感が欠如していても頻呼吸があるなど臨床像がわかってくればよいのだが.