COVID-19関連追加(202055日)

 

SARS-CoV-2が感染力をもつ期間についての考察】

(1) Cheng HY, et al. Contact Tracing Assessment of COVID-19 Transmission Dynamics in Taiwan and Risk at Different Exposure Periods Before and After Symptom Onset. JAMA Intern Med. Published online May 1, 2020.

doi: 10.1001/jamainternmed.2020.2020.

Objective

COVID-19感染伝播のダイナミクスと症状発症前後の異なった曝露期間における感染リスクを評価する.

Design, Setting, and Participants

台湾のCOVID-19患者とその濃厚接触者におけるprospective case-ascertained study.観察期間は2020115日〜318日.全ての濃厚接触者はindex caseに最後に接してから14日間自宅隔離された.隔離期間中に接触者に関連症状(発熱,咳など呼吸器症状)が認められたときはCOVID-19の検査を行った.最終観察日は202042日.

Main Outcomes and Measures

Index caseに接触した異なった曝露期間と環境(家庭内,家族,ヘルスケア)における二次発病率(secondary clinical attack rate(有症状例のみ).

二次発病率:初発症例に曝露された後の潜伏期間中の接触者から生じたある感染者数を分子とし,曝露されたすべての接触者の人数を分母とする割合.伝染性の指標であり,対策方法を評価する際にも有用.関連した概念として,基礎再生産率(basic reproductive rate: 1人の患者から平均して何人の新しい患者が生み出されるかを示す値)がある.

Results

COVID-19確定患者100例(10クラスターの患者と無症状感染患者9例を含む),median 44歳(11-88歳),男性56例,女性44例を登録した.濃厚接触者2761例のうち,家庭内接触者5.5%,家庭外で家族との接触者2.8%,ヘルスケアにおける接触者25.3%であった(Table 1).トレーシングの結果,二次感染者は23例認められたが,1例は発症後の接触と考えられたため除外し,index-secondary case22例とした.無症状9例のうちsecondary caseに感染させた例はなかった.この22例のデータを用いると,潜伏期間はmedian 4.1日(95% CI 0.4-15.8発症間隔(serial interval)はmedian 4.1日(95% CI 0.1-27.8であった.

濃厚接触者2761例のうちCOVID-19二次感染者は22例(無症状感染者は4例)であり,感染リスクは0.8%95% CI 0.5-1.2%)であった.二次発病率は0.7%95% CI, 0.4-1.0%)(18/2761例)であった.Figure 1はすべての接触者の曝露期間(exposure window)を示した.二次感染者22例において全例の最初の曝露は,index caseの症状が出現した6日以前であった.一方それ以外の接触者のうち6日以前が最初の曝露だった例は68%であった(Table 1).Index caseが症状発症した5日以内に最初に曝露した濃厚接触者1818例は,6日以降の接触者に比べて二次発病率が高かった(1.0% [95% CI, 0.6-1.6%] vs 濃厚接触者852例のうち0; 95% CI, 0-0.4%Table 2Figure 2AIndex caseが症状発症前に接触した735例もまたリスクがあった(二次発病率1.0% [95% CI, 0.5-2.0%].またindex caseが前症状であった時のみの曝露を受けた接触者299例もまたリスクがあった(二次感染率0.7% [95% CI, 0.2-2.4%]

家庭内接触151例における二次発病率(4.6% [95% CI, 2.3-9.3%]),家庭外の家族との接触76例における二次発病率(5.3% [95% CI, 2.1-12.8%]であり,解析が家庭内,家庭外の家族との接触に限れば,早期曝露からの二次感染率は高い(Table 3, Figure 2B).二次感染率は4059歳(1.1% [95% CI, 0.6-2.1%]),60歳以上(0.9% [95% CI, 0.3-2.6%])でより高かった.軽症56例との濃厚接触者1097例と比較すると,重症6例との濃厚接触者786例はより二次発病率のリスクが高かったrisk ratio 3.76 [95% CI, 1.10-12.76]: for ARDS, 3.99 [95% CI, 1.00-15.84]: for sepsis無症状患者9例との濃厚接触者91例においては,二次感染は確認できなかった.台湾以外の地域に比べると,台湾における感染者との濃厚接触者の二次発病率は高かった(Table 2).

Discussion

この研究で観察された時間経過における二次発病率の傾向は,上気道からのウイルス排出は発症直前後に多いが,徐々に減少し10日後は低いレベルになるという報告に一致する1).ウイルス排出は無症状感染者でも有症状感染者でも同様だった.発症後1週間以降は生きたウイルスは分離できなかったというドイツからの報告もある2).我々はindex caseの前有症状期間に曝露を受けた濃厚接触者の解析も行い,index caseの前症状時と発症後における接触者の曝露における二次有病率は同様であった.

発症後1週間を過ぎると感染リスクが低下するという結果はCOVID-19感染をコントロールする観点から重要である.

院内感染につながるヘルスケア接触者の二次発病率は低かった.PPEによるものかもしれないが,ある程度時間が経ってからの入院であるため入院時には感染リスクが低くなっていたからかもしれない.香港では,多くの入院は発症から少なくとも5日経過してからである3).病院やクルーズシップといった閉鎖空間ではfomiteによる感染が重要かもしれない.それは感染伝播リスクを増幅させるし,ときに認識を困難にさせる.

以上より有症状患者を発見し隔離するだけでは感染伝播は防げず,ソーシャルディスタンシングといったより普遍化した方法が必要である.

Limitation:@index caseが発症する前の接触者を完全に把握していないため,早期の感染伝播については過小評価しているかもしれないこと.WHOは接触者のトレーシングは発症4日前にさかのぼるよう推奨している4).A密な家庭内接触と早期の接触を完全に分けることができなかったこと.COVID-19感染早期に感染伝播が増加することは,早期に感染力が強いということよりも,部分的にしても家庭内あるいは家庭外家族との接触の影響があるのかもしれない.

Conclusions

症状直前後に高い感染伝播リスクがあり,ウイルスが感染性をもつ期間は短い可能性があるということは,COVID-19感染をコントロールする戦略にとって有益な情報を与える.

 

1) Zou  L, et al.  SARS-CoV-2 viral load in upper respiratory specimens of infected patients.   N Engl J Med. 2020;382(12):1177-1179.

 doi:10.1056/NEJMc2001737

2) Wölfel  R, et al.  Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019.   Nature. Published online April 1, 2020.

doi:10.1038/s41586-020-2196-x

3) Li  Q, et al.  Early transmission dynamics in Wuhan, China, of novel coronavirus-infected pneumonia.   N Engl J Med. 2020;382(13):1199-1207.

doi:10.1056/NEJMoa2001316

4) World Health Organization. The First Few X (FFX) Cases and contact investigation protocol for 2019-novel coronavirus (2019-nCoV) infection. Published January 29, 2020. Accessed April 5, 2020. 

https://www.who.int/publications-detail/the-first-few-x-(ffx)-cases-and-contact-investigation-protocol-for-2019-novel-coronavirus-(2019-ncov)-infection

 

Table 1: Characteristics of the 2761 Close Contacts by Different Exposure Settings

 

Figure 1: Exposure Window Period Among Secondary and Noncase Contacts

 

 

Figure 2: Number of Contacts, Secondary Cases, and Secondary Clinical Attack Rate by the Time of First Exposure

 

Table 2: Secondary Clinical Attack Rate for COVID-19 Among the 2761 Close Contacts by Different Exposure Settings, Times, and Characteristics

 

Table 3: Risk for Symptomatic COVID-19 Infection Among the 2761 Close Contacts, Simultaneously Stratified by Exporure Setting and Time From Symptom Onset of the Index Case to First Day of Exposure

 

(2) The COVID-19 Investigation Team. Kujawski SA, et al. Clinical and virologic characteristics of the first 12 patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19) in the United States. Nature medicine. Published online April 23, 2020.

https://doi.org/10.1038/s41591-020-0877-5.

Objective and Methods

2020120日〜25日にCOVID-19と診断されたアメリカ人12例のケースシリーズ.Results

重症度は軽症〜やや重症.推測された曝露から発症までは0-5日.咳8例,発熱7例,2例ははじめ発熱も咳も認めなかったが,徐々に認められた.3例は入院〜自宅隔離中に一度も発熱を認めなかった.

入院したのは7例.発熱期間はmedian 9日(2-11),入院中の体温(99.1-102.9 ℉)のピークは発症後day 92-11)だった.全ての入院患者のSpO2 <94%であり,最小SpO2 86-93%で,median day 124-23)であった.4例が酸素投与を受け,patient 9HFNC: high-flow nasal cannulaを受けICUへ入室した.人工呼吸管理を受けた患者はいなかった.

2例はコルチコステロイドを短期間(3日以内)投与された.3例(うち1例はコルチコステロイドを投与)はレムデシビルを4-10日投与された.レムデシビル投与中に一過性の胃腸障害が全例に認められた(嘔気,嘔吐,gastroparesis,直腸出血).Patient 9は軟便,直腸出血が認められたが,この患者は発症前に海外に旅行しており,のちの便培養でGiardia(ランブル繊毛虫)とClostridiodes difficileが陽性となった.レムデシビルは各々の呼吸器症状が改善したのちに中止となった.

全ての入院患者の胸部CTに片側あるいは両側陰影が認められたが,入院患者4例は初回の胸部画像所見は正常であった(day 4-9).

12例全ての患者の最初の呼吸器検体は発症後day 1-9に採取し,1人を除き2種類以上の呼吸器検体が陽性であった(陽性例:鼻咽頭スワブ NP: 12/12,口腔咽頭スワブ OP: 11/12,喀痰6/6).9例の最初の呼吸器検体からウイルス培養が試みられ(うち2例は入院外患者),9例とも成功した.生きたウイルスはpatient 10においてはday9で培養されたが,それ以降の検体では培養されなかったFigure 2).最初の組織培養から遊離したウイルスのrRT-PCRにおけるCt値(cycle threshold)は12.3-35.7であった.そして患者1人についてはある組織培養から分離したウイルスは7.75 x 106 titer median tissue culture infectious dose/mlであった.これらのデータはウイルス量(viral load)より組織におけるウイルス増殖を反映している.

その他の検体ではPCR陽性だったのは,血清1/11,便7/11,尿0/10であった.RNA検出最長日は,NP検体ではday 32OP検体ではday 36,喀痰検体ではday 29,便検体ではday 25であったFigure 2).Patient 7についてはOP検体陽性最終日の17日後に喀痰PCRが陽性であり,症状改善後2週間以上経っていた.

ほとんどの患者において,上気道検体のCt2週目以降よりも1週目で低値であったが,一部の患者においては低いCt値は2週目,3週目まで続いた.上気道検体におけるウイルスCt値とRNA検出期間は入院時の状況や酸素投与有無(重症度)によって違いは認めなかった

全ての患者の症状は徐々に改善した.有症状期間はmedian 14日(6-37)であり,SARS-CoV-2 RNAは症状改善後でも7/12例に認められた(NP: 6例,OP: 3例,喀痰: 1例,便: 3例).

Discussion

上気道からの最も高いウイルスRNAレベルの検出は発症後最初の1週間であった.そして早期の呼吸器検体から生きたウイルスが培養された.症状改善後にもウイルスRNAは検出されたが,それ以降の感染性および感染伝播については不明である.

SARS-CoV-2 RNA検出は必ずしも感染性のあるウイルスの存在を反映しない,そしてrRT-PCR Ct値は検体の種類や取扱方法によって変化したかもしれない.

 

 

 

Figure 1: Timeline of illness onset, SARS-CoV-2 RNA detection, hospitalization, oxygen requirement and reported symptom resolution among the first 12 patients with COVID-19 in the United States, January to February 2020.

 

 

Figure 2: SARS-CoV-2 rRT-PCR results by specimen type and day among the first 12 patients with COVID-19 in the United States, January to February 2020.

酸素投与を受けたのはpatient 68911Patient 9が最も重症であった.

 

(3) Kim SE, et al. Viral kinetics of SARS-CoV-2 in asymptomatic carriers and presymptomatic patients. Int J Infect Dis. April 28, 2020.

https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.04.083.

COVID-19患者71例のうち,前症状患者3例,無症状患者10例の観察.2/3例の潜伏期間で前症状期間におけるviral titerは非常に高値であった(Ct <20).無症状患者における最初のRT-PCR陰性までの期間はmedian 4.5日(2.5-9)であった.そして全ての無症状患者のRT-PCR Ct値は診断から14日以内にCt >35に至ったCOVID-19感染者は発症前にすでに感染性をもつ,そして無症状例においては診断から14日間の隔離で十分かもしれない