COVID-19関連追加(202057日)

 

SARS-CoV-2診断検査の解釈について】

Sethuraman N, et al. Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2. JAMA. Published online May 6, 2020.

doi: 10.1001/jama.2020.8259.

このViewpointにおいて,RT-PCRreverse transcriptase-polymerase chein reaction)とIgMIgG enzyme-linked immunosrbent assay (ELISA)の解釈,およびそれらの結果が時間と共にどのように変化するかについて,説明する.

 

(1)Detection of Viral RNA by RT-PCR

様々な企業による製品があるが,ターゲットは次の1つ以上:エンベロープ(env),ヌクレオカプシド(N),スパイク(S),RNAポリメラーゼ依存性RNARdRp),そしてORF1遺伝子.個別の遺伝子に対する検査の感度はRdRp-SARSr (Charité) primer probe(これはreverse primerのミスマッチのため感度が低い)を除いた比較研究によるものと同等である.

鼻咽頭スワブのウイルスRNACt値(cycle thresholdを測定することによって,発症後1日前後から検出され,そしてそのピークははじめの1週以内であるCt値は蛍光シグナルを生み出すのに必要な複製のサイクルの数であり,Ct値が低いということはウイルスRNA量が多いということを表す.陽性は3週までに減少し,その後検出されなくなる.しかし重症患者のCt値は軽症患者よりも低く,発症して3週間を超えても(軽症は陰性になる)陽性が続くことがある.PCR陽性というのはウイルスRNAが検出されることを意味するだけであり,必ずしも“生きたウイルス”を表しているのではない

最初にPCR陽性になったのち,6週を超えてもRT-PCRでウイルスRNAが検出される例もある.24時間空けて連続して2回陰性になっても,陽性になる例もわずかながら存在する.これが果たして,検査エラーなのか,再感染なのか,再活性化なのか,まだ結論は出ていない.発症後8日を超えた場合のウイルス分離は成功しなかったという9例の報告がある1).これが,初発症状から少なくとも10日が過ぎ,解熱薬なしに体温が正常化,そして咳や息切れといった呼吸器症状が改善して少なくとも3日(72時間)が過ぎれば,医療従事者は職場に復帰できるというCDCの“symptom-based strategy”の理由である2)

鼻咽頭スワブ以外の検体のPCR陽性は異なった時間経過を辿る.喀痰のPCR陽性はより緩やかな低下を辿り,鼻咽頭スワブが陰性化してもまだ陽性であるかもしれない.便のPCR陽性の患者は55/96例(58%)であり,鼻咽頭スワブ陽性期間median 4-11日を超えて陽性が続くが,それは重症度とは関連がないという報告もある3)喀痰と便のPCR陽性は持続する

気管支肺胞洗浄液(BALF)のPCR陽性率が最も高く(93%),続いて喀痰(72%),鼻腔スワブ(63%),咽頭スワブ(32%)という205例の検討がある4).偽陰性は主として発症に関連した不適切なタイミングでの採取,特に鼻咽頭スワブにみられる採取手技の問題を反映する.PrimerデザインがSARS-CoV-2の遺伝子シーケンスに特異的であるため,RT-PCR検査の特異度はおおむね100%である.時に起こりうる偽陽性はテクニカルエラーあるいは試薬の混在が原因であるかもしれない.

 

(2)Detection of Antibodies to SARS-CoV-2

血清診断は発症して2週間以上経過した特に軽症〜中等症の患者にとって重要である.血清診断はコミュニティにおいてCOVID-19がどの程度存在しているか,そして免疫を持ちもしかすると感染に対して抵抗を持っていることを調べるための重要なツールである.最も感度が高く,早い血清マーカーはtotal antibodiyであり,そのレベルは発症後2週目から上昇し始める.IgMIgG ELISAは発症後4日あたりから陽性になるが,最も高くなるのは発症2週〜3週である

たとえば,IgMIgGのセロコンバージョンは発症して3週〜4週目に起こったと報告されている.その後IgMは減少し始め,5週目に最低レベルになり,7週目には消失する.一方IgG7週を超えて持続する5)PCRとヌクレオカプシド抗原に対するIgM ELISAのコンビネーションは感度98.6%であったが,PCRのみでは感度51.9%であったという報告がある.はじめの5.5日では定量的PCRIgMより陽性であったが,発症5.5日を過ぎるとIgMがより陽性になった6)

ELISA法によるIgMIgGCOVID-19診断において特異度は95%を超える.初回PCR2週目以降の血清検査によって診断は正確性を増す.典型的にはウイルスの豊富な蛋白であるヌクレオカプシドに対して抗体が産出されることが多い.それゆえ,ヌクレオカプシドに対する抗体が最も感度が高い.しかし,receptor-binding domain of SRBD-S)蛋白は宿主接着蛋白(host attachment protein)であり,RBD-Sに対する抗体はより特異度が高く,中和抗体として期待される.したがって,IgGIgMを検出するためにこれらの抗原を利用することは高い感度につながるだろう.しかし,抗体はSARS-CoVと他のコロナウイルスとの交差反応をもつかもしれない

抗体検査のマーケティングは非常に広がっている.多くの企業はその対象となる抗原を明らかにしていない.これらの検査は定性的であり,単にSARS-CoV-2抗体の有無を示しているにすぎない.中和抗体の存在はplaque reduction neutralization testによってのみ確定される.しかし,ELISA法による高いIgG抗体価は中和抗体との正の関連があることが示されている7)中和抗体による“防御”がどれくらい持続するのかは明らかではない

Limitation:これらのデータは免疫抑制状態にない成人を対象にしている.また小児やサーベイランスされない無症状例についても言及されない.

1) Wӧlfel R, et al. Virological assessment of hospitalized patients with COVID-19. Nature. Published online April 1, 2020.

doi: 10.1038/s41586-020-2196-xPubMedGoogle Scholar.

2) CDC. Return-to-work criteria for healthcare workers. Updated April 30, 2020. Accessed May 3, 2020.

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html.

3) Zheng S, et al. Viral load dynamics and disease severity in patients infected with SARS-CoV-2 in Zhejiang province, China, January-March 2020: retrospective cohort study. BMJ. 2020; 369: m1443. Published online April 21, 2020.

doi: 10.1038/s41586-020-2196-xPubMedGoogle ScholarCrossref.

4) Wang W, et al. Detection of SARS-CoV-2 in different types of clinical specimens. JAMA. 2020. Published online March 11, 2020.

doi: 10.1001/jama.2020.3786.

5) Xiao AT, et al. Profile of specific antibodies to SARS-CoV-2: the first report. J Infect. 2020; S0163-4453(20)30138-9. Published online March 21, 2020.

doi: 10.1016/j.jinf.2020.03.012PubMedGoogle Scholar.

6) Guo L, et al. Profiling early humoral response to diagnose novel coronavirus disease (COVID-19). Clin Infect Dis. 2020; ciaa310. Publishes online March 21, 2020.

doi: 10.1093/cid/ciaa310PubMedGoogle Scholar.

7) To KK-W, et al. Temporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody response during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study. Lancet Infect Dis. 2020; 20(5): 565-574.

doi: 10.1016/S1473-3099(20)30196-1PubMedGoogle ScholarCrossref