COVID-19関連追加(202058日)

 

COVID-19感染による小児の川崎病様病変】

(1)Riphegen S, et al. Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic. Lancet. Published online May6, 2020.

https:/doi.org/10.1016/s0140-6736(20)31094-1.

 

ロンドンの南テムズ検索サービスは小児集中治療サポートと検索をサウスイーストイングランドの200万人の小児に提供する.我々は20204月中旬の10日間に,非典型的な川崎病,川崎病ショック症候群,あるいはトキシックショック症候群に似た臨床像を示したhyperinflammatory shockを伴った小児8例の集団発生を経験した(典型的な症例は週に12例).この集団発症例は国際的に警鐘を鳴らす.

全ての小児例は生来健康であり,6例はアフリカ系カリビアン系,5例は10歳未満であった(Table).1例を除きいずれも体重は75パーセンタイルを超えていた.4例は家族のCOVID-19感染がすでにわかっていた.

いずれの現症は同様であり,制御できない発熱(38-40℃)変化する発疹結膜炎末梢性浮腫著明な胃腸症状を伴った広範囲にわたる四肢の痛みであった.全例,輸液療法に反応しない四肢が暖かい血管麻痺性ショックに進行しノルアドレナリンやミルリノンといった循環動態の支持療法が必要だった.7例は心血管動態の安定化のために人工呼吸器管理となったが,ほとんどの例は肺病変を伴わなかった.持続する発熱や発疹のほかに特徴的な所見として,全身の炎症反応を示唆する少量の胸水,心嚢液,腹水を認めた.

気管支肺胞洗浄液と鼻咽頭スワブ検体のPCR検査は全例陰性であったCRP,プロカルシトニン,フェリチン,トリグリセリド,そしてDダイマーの上昇と伴う状態不良にもかかわらず,7例の小児には病原体は全く認めなかった(アデノウイルスとエンテロウイルスは1例のみ認められた).

ベースラインの心電図は非特異的であった.しかし,心エコーではエコー輝度が高い冠動脈の所見を認め,うち1例は小児ICUから退室後1週間以内に,巨大冠動脈瘤に進展した(Figure.治療抵抗性ショックに至る不整脈を認めた1例は体外循環管理を要したが,広域の脳血管虚血で死亡した.この症候群の心筋障害は経過中心筋酵素が著明に上昇するとされている.

すべての例で免疫グロブリン静注(2 g/kg)をはじめの24時間で投与した.そしてセフトリアキソンとクリンダマイシンといった抗生剤を投与した.そして6例は50 mg/kgのアスピリンも投与された.4-6日後に全例とも小児ICUから退室した.退室後,2例はPCRが陽性になった(死亡後に陽性が判明した1例を含む).すべての例は冠動脈疾患として精査中である.

我々は,はじめは無症状であった小児に影響を及ぼす,川崎病ショック症候群に類似した多臓器障害をきたすhyperinflammatory syndromeとしてのSARS-CoV-2感染による新しい現象として,この症例群を提示する.この疾患の多様性に対応するためには,集中治療,循環器,感染症,免疫,膠原病といった様々な分野の専門的知識が必要である.

こういったサブセットの小児たちにより広く注目し,早期発見と管理を最適化することが大切である.この短報が出版された時点で,最初の症例の後1週間において,Evelina London小児病院集中治療部には同様の症状を呈する20人を超える症例が入院し,うち10例はSARS-CoV-2抗体が陽性であった

 

 

 

 

COVID-19関連追加(202058日)に517日追記しました

 

【イタリアからのCOVID-19小児患者の川崎病様疾患の報告】

Verdoni L, et al. An outbreak of severe Kawasaki-like disease at the Italian epicentre of the SARS-CoV-2 epidemic: an observational cohort study. JAMA. Published Online May 13, 2020.

https://doi.org/10.1016/s0140-6736(20)31103-x.

イタリア,ロンバルディア州,ベルガモ市において,過去5年間に川崎病様疾患の診断を受けた患者をSARS-CoV-2流行以前に受診した群(group 1)と以後に受診した群(group 2)に分け検討した.

Group 119例(男児7例,女児12例;3.0 [SD 2.5]201511日〜217日に診断された.Group 210例(男児7例,女児3例;7.5 [SD 3.5]),2020218日〜420日に診断された.Group 210例のうち8例はIgMあるいはIgG,またはその両方の抗体を保有していたGroup 1Group 2は臨床的に様相が異なった(いずれもp< 0.01).発症率0.3 vs 10/1ヵ月平均年齢3.0 vs 7.5心臓障害10.5%2/19例)vs 60%6/10例)川崎病ショック症候群0%0/19例)vs 50%5/10例)マクロファージ活性化症候群(MAS0%0/19例)vs 50%5/10例)ステロイド治療15.8%3/19例)vs 80%8/10例)

Figure 1:過去5年間における重症度の推移.ピンク色は重症例.2020年は明らかに重症例が増加している

 

 

 

Figure 2SARS-CoV-2流行期における小児科救急への受診患者数.アスタリスクは川崎病様疾患10例の受診を示す.

Group 1における川崎病の罹患率は0.019%95% CI, -0.002 to 0.0019)であったが,group 2においては3.5%95% CI, -3.5 to 3.5)であり,オッズ比は184p< 0.0001)であった

SARS-CoV-2流行期の後,川崎病の罹患率は30倍まで増加した.その時期に診断された小児はウイルスに対する免疫反応を有し,年齢が高く心臓障害が多くMASの臨床像を呈していた.SARS-CoV-2は川崎病様疾患のより重症型の原因になるかもしれない

Discussion

川崎富作医師が患者50例を報告して半世紀が過ぎたにもかかわらず,川崎病の原因は明らかではない.最も受け入れられている仮説は,一つあるいはそれ以上の何らかの病原体に対する異常な免疫反応が起こるというものだ.しかし,感染的な誘因についての探索は不十分である.日本では,1979年,1982年,1986年の3回の流行があり,その期間で川崎病の罹患率が最も高かったのは1月であり,“冬季”が川崎病の誘因である可能性が示された.2010年の日本における川崎病の罹患率は小児10万人当たり239.6人で,過去5年間に比べて若年傾向であり,一方USAでは10万人当たり20.8人であった.また北イタリアにおける2年間の後ろ向き研究では罹患率は10万人当たり14.7人であり,過去5年間で若年傾向であった.我々のエリアではじめてCOVID-19患者が報告されて以来,過去5年間に比べて1ヵ月の川崎病様疾患の罹患率は少なくとも30倍であり患者の大多数はウイルスに対するセロコンバージョンを起こしていた

過去20年間,川崎病の病因としてNew Haven coronavirusHCoV-NH),HCoV-NL63HCoV-229Eが報告されてきた.HCoV-NL63抗体は川崎病群とコントロール群で有意差を認めなかったが,HCoV-229E抗体陽性率は川崎病群で有意に高かったという報告がある1).感染の原因を検索する手段としては,RT-PCR検査よりも抗体検査が有用かもしれない.コロナウイルスファミリーは川崎病の誘因の1つである可能性があり,特にSARS-CoV-2は宿主に強力な免疫反応を引き起こすという特に毒性の強い株であるのかもしれない

COVID-19パンデミック期における川崎病の臨床像は従来のものと異なるため,我々は“川崎病様疾患(Kawasaki-like disease)”と定義した.臨床的視点からみると,これらは年齢が高く呼吸器障害胃腸障害髄膜徴候,そして心血管障害を呈する生化学的視点からみると,これらは心筋炎のマーカーと同様に,著明なリンパ球減少を伴った白血球減少血小板減少フェリチン増加を示す.これらの所見はCOVID-19患者にみられるものと同様である.そして重症な経過を辿り,免疫グロブリン静注に抵抗性であり,しばしばステロイドを必要とし,MASの生化学的な所見,川崎病ショック症候群の臨床徴候を示す.MASはサイトカインストームの状態であり,川崎病の患者に影響を与えるかもしれない.我々の経験では,ステロイド治療は効果的かつ安全性がありCOVID-19流行期を背景にした川崎病様疾患の治療に考慮するべきである

Group 210例のうち8例はSARS-CoV-2に対するIgG抗体を有しており,これはウイルス感染があったことを示唆する.2例は陰性であったが交絡因子が存在していた可能性がある;1例は高濃度免疫グロブリン静注後の検査であった.Group 2のうち鼻咽頭あるいは口腔咽頭スワブでPCRが陽性であったのはわずか2例のみであり,IgG抗体が陽性であった事実は,この病態は感染時期よりも遅く発症し,宿主の免疫反応が関与していることを示唆する.現時点では,川崎病様疾患はCOVID-19に罹患した小児1000人当たり1人に過ぎない珍しい病態であるものの注意する必要がある.

1) Shirato K, et al. Possible involvement of infection with human coronavirus 229E, but not NL63, in Kawasaki disease. J Med Virol 2014; 86: 2146-53.

 

【呼吸器症状なくARDSとサイトカインストーム症候群を呈したCOVID-19小児の一例】

Pain CE, et al. Novel paediatric presentation of COVID-19 with ARDS and cytokine storm syndrome without respiratory symptoms. Lancet Rheumotol. May 15, 2020.

https://doi.org/10.1016/s2665-9913(20)30137-5.

生来健康であった14歳男児.3日間の発熱,腹痛,吐気・嘔吐を主訴に来院した.特に呼吸器症状は認めなかった.母親は3週間前から軽度の呼吸器症状を呈していたが,SARS-CoV-2検査を受けていなかった.入院時(day -2),38.1℃の発熱,心血管の状態は安定しており呼吸窮迫は認めなかった(Figure.腹部は緊張しており,右上および下1/4に筋性防御を認めた.初回の臨床検査では,リンパ球減少(0.14 x 109 cells/L, normal range 1.5-7.6),著明なCRP上昇(242 mg/L, normal range 0-8),無菌膿尿(30 cells)を認めた.急性腹膜炎を疑い,piperacillin-tazobactamによるエンピリックに抗生剤治療を開始した.そして鼻腔スワブのSARS-CoV-2 RT-PCR検査を行った.胸部単純レントゲン(Figure A)と腹部エコーは正常だった入院後24時間以内に患者は呼吸困難,咳が出現し,酸素投与(8 L/min)を開始,最終的にはCPAPを装着した.患者の状態は不良で,意識レベルが低下し,広範な蒼白な斑点状丘疹Figure B)が出現し,持続性頻脈のため輸液を開始した.胸部CTは典型的なSARS-CoV-2肺炎を呈していた(Figure C.ここでCOVID-19が疑われた.臨床症状,リンパ球減少貧血血小板減少CRPやフェリチンといった急性相蛋白の上昇IL-6 高値(1098 pg/ml, normal range <7),凝固異常Dダイマー >4810 ng/ml, normal range <500),プロトロンビン時間(PT)の延長16.2 s, normal range 9.8-11.4),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長43.4 s, normal range 24.2-30.2),肝酵素の上昇AST 166 IU/L, normal range <37, ALT 156 IU/L, normal range <40),トリグリセリド(TG)の上昇2.3 mmol/L, normal range 0.4-1.4)から続発性多臓器炎症疾患あるいはサイトカインストーム症候群と診断した.抗核抗体は陰性であった.抗リン脂質抗体(抗カルジオリピンIgG 25.5 U/ml, normal range <20, 抗β2-glycoprotein IgG 28.8 U/ml, normal range <20)は陽性であり,血清補体価は低値C3 0.09 g/L, normal range 0.90-1.88, C4 0.12 g/L, normal range 0.18-0.42であった.さらに軽度の手の小関節の多発関節炎が出現した.古典的なあるいは完全型川崎病を示唆する頚部リンパ節腫脹,結膜炎,粘膜変化は認めなかった.

この患者は結果としてSARS-CoV-2 PCR検査は陰性であったため,レムデシビルのコンパッション―トユースに該当しなかった.しかし患者はCOVID-19関連サイトカインストーム症候群を疑う臨床像を呈したため,MDDmultidisciplinary discussion)を踏まえてリコンビナントIL-1受容体アンタゴニスト(anakinraによる抗炎症治療を開始した.Anakinra4 mg/kg per day100mg twice a day)皮下注から始め,低血圧と乳酸上昇(6 mmol/L)に対する支持療法が必要であったため,36時間後には8 mg/kg per day200mg twice a day)まで増量した.左心室収縮機能はボーダーライン,心筋逸脱酵素(トロポニンT 45 ng/L),大動脈弁逆流,進行性の左冠動脈拡張が認められ(Figure D),抗血小板効果を期待してアスピリン(2 mg/kgを開始した.注目すべきことに川崎病様病変(冠動脈拡張を含む)がCOVID-19患者に報告されている冠動脈拡張は全身性炎症疾患や内皮細胞活性化でも起こることがあり,そして患者はその他の川崎病の臨床症状を示さなかったため,免疫グロブリン静注に関連したリスク(例えば,血栓塞栓イベント,無菌性髄膜炎,抗体依存性増強)を考慮して,我々は免疫グロブリン静注やコルチコステロイド治療を開始しなかった.

Anakinraの一時的な効果なのか,患者の呼吸状態は安定し,臨床検査データは正常化した(Figure E).しかし冠動脈拡張は退院時まで持続した.したがってanakinraは漸減し,6日後に中止した.経過中,血清SARS-CoV-2 IgG抗体は陽性であることが認められた(borderline day 6positive day 113回の鼻咽頭スワブ(day 3, 5, 7),便(day 11)のRT-PCRはいずれも陰性であった

 

これはIL-1を抑制する治療が奏功した呼吸器症状を呈さないCOVID-19関連のサイトカインストーム症候群の小児例のはじめての報告である.PCRはいずれも陰性であり,胸部CTCOVID-19肺炎を疑う所見が認められ,セロコンバージョンも起こっていた.PCR検査の感度はおよそ60%であるが,3度のPCRは陰性であり,この症例はpost-COVID-19 inflammatory processと考えられる.他の考えられる説明はウイルス複製が別の部位で起こっていたというものである.入院早期にARDSに進行したが,最初は呼吸器症状を認めなかった.したがってこの症例は,急速に進行するARDSを伴うCOVID-19小児患者のよくわかっていないフェノタイプや呼吸器症状を伴わない発熱・腹痛後にサイトカインストームを呈した報告に類似している1)2)

最近の知見によるとSARS-CoV-2は呼吸器や腸管上皮細胞で自身を複製し,T型インターフェロン反応を抑制する.さらにSARS-CoV-2は非進行性に自然免疫細胞(単球やマクロファージ)に感染できるそしてその細胞は免疫複合体によって導かれ,ウイルス複製を加速し,抗体依存性増強過程において炎症性サイトカイン(IL-1IL-6TNF: tumor necrosis factor)放出を増幅するウイルス複製の結果として組織障害が生じ,自然免疫細胞,獲得免疫細胞の過剰な循環が起こるそしてそれはARDSを含むサイトカインストームや臓器障害の原因となる過剰な免疫反応の調節不全を引き起こす標的臓器に直接的な細胞変性効果をもたらすことに加え,COVID-19にみられる肺傷害は,おそらくは,たとえそれが重要な要素でないとしても,免疫反応調節不全によって増強されるARDSは一次性サイトカインストーム症候群や二次性サイトカインストーム症候群(全身性若年性特発性関節炎を含む)の患者に起こることがあり,その臨床所見はこの報告に類似している.この臨床像は急速に進行する臨床的・画像的所見を説明できる.この患者はIL-1を介した内皮細胞活性化に加え,凝固異常,抗リン脂質抗体陽性,血清補体価の減少,免疫複合体の産生・沈着が認められ,これが補体の活性化凝固系カスケードの活性化を促している.血栓塞栓症を伴ったCOVID-19感染後抗リン脂質抗体症候群が報告されている3).さらに補体の活性化は,例えば,全身性若年性特発性関節炎関連マクロファージ活性化症候群のような全身炎症性疾患で起こる4)

Anakinraの適応外使用は抗体依存性増強や感染組織に対する非感染性免疫細胞浸潤によって惹起される炎症性サイトカイン発現病態に限定される.AnakinraIL-1受容体シグナルを遮断し,NF-κB依存性経路の活性化を介してIL-1IL-6,そしてTNFの発現を促進する5).最近のほとんどの臨床試験はIL-6遮断薬を用いているが,我々はIL-6の上流における作用に基づいてanakinraを選択した.そして,好中球増加がみられず,肝酵素の上昇,トリグリセリドの上昇が認められた(サイトカインストームを示す)こともその理由である.さらにanakinraは敗血症患者の死亡率を減少させる6),一方IL-6遮断薬の慢性的な使用は二次感染リスクを増加させる.Anakinraによる治療は臨床的改善と一致し,6日後に中止した.

 

 

Figure thumbnail gr1

1) Hedrich CM. COVID-19: considerations for the paediatric rheumatologist.

Clin Immunol. 2020; 214108420

2) Riphagen S, et al. Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic.

Lancet. 2020; (published online May 7.)

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31094-1

3) Zhang Y, et al. Coagulopathy and antiphospholipid antibodies in patients with Covid-19. N Engl J Med. 2020; 382: e38

4) Gorelik M, et al. Hypocomplementemia associated with macrophage activation syndrome in systemic juvenile idiopathic arthritis and adult onset Still's disease: 3 cases.

J Rheumatol. 2011; 38: 396-397

5) Bruck N, et al. Current understanding of the pathophysiology of systemic juvenile idiopathic arthritis (sJIA) and target-directed therapeutic approaches.

Clin Immunol. 2015; 159: 72-83

6) Shakoory B, et al. Interleukin-1 receptor blockade is associated with reduced mortality in sepsis patients with features of macrophage activation syndrome: reanalysis of a prior phase III trial. Crit Care Med. 2016; 44: 275-281