COVID-19関連追加(2020710日)

COVID-19回復後のPCR陽性について2編,空気感染?と報道された契機になった報告1編.

COVID-19回復後のPCR再陽性について】

2020523-2(韓国CDCからの報告)に追記.

(1)Comment. Mei Q, et al. Assessment of patients who tested positive for COVID-19 after recovery. Lancet Infect Dis. July 6, 2020.

https://doi.org/10.1016/s1473-3099(20)30433-3.

COVID-19から回復した後にPCR検査が再陽性になる患者が一定数存在し,この理由は明確になっていない.

2020111日から202041日までに,武漢にある呼吸器専門病院において,COVID-19から回復した患者651人を対象とした.標準的な退院基準が適用された:血行動態的に安定,3日以上解熱,CT検査で肺炎像が消失,鼻咽頭スワブと口腔スワブで少なくとも24時間空けてSARS-CoV-2 RT-qPCR2回陰性,併発症がない.退院した患者は,2つの医療チームで経過観察され,経過観察期間はmedian 48日(IQR, 18-50最大91日の経過観察期間であった経過観察中,651人の患者のうち23人(3%がルーチンの RT-qPCR検査でSARS-CoV-2 が再陽性と判定された.この再陽性群の年齢は,median 56.0歳(range, 27.0-89.0; IQR, 48.5-74.0)で,男性(11人[48%])よりも女性(23人[52%])の方がわずかに多かった.この再陽性群では,以前の入院において,中等症12人(52%),重症9人(39%),そして最重症2人(9%)であった.退院から再陽性となるまでの期間は,median 15.0日(range, 4-38; IQR, 11.0-16.5であった.再陽性から再入院までの期間は,median 1.5日(IQR, 1.0-2.0)であった.RT-qPCR検査の再陽性時に行った抗SARS-CoV-2イムノグロブリンのcolloidal gold-based immunochromatographic strip assayでは,7人(30%)はIgMIgGの両方が陽性であり,5人(22%)はIgG陽性であるがIgM陰性であった残りの11人(48%)はいずれも陰性であった.この再陽性群のうち,15人(65%)は再検査時に無症状であったが8人(35%)はCOVID-19の活動性に関連した少なくとも1つの症状を認めた;発熱6人(26%),咳嗽2人(9%)に咳嗽、倦怠感1人(4%),呼吸困難1人(4%),胸部圧迫感1人(4%)が認められた.無症状患者におけるPCR検査再陽性は,残留する病原性のないウイルス成分を反映しているだけかもしれないが有症状患者における再陽性は,活動性と感染性の再燃の可能性を示唆している

202044日の最終経過観察時において,再陽性患者23人は全員が生存しており,18人(78%)が回復して再び退院し,4人(17%)が追加治療のために入院継続であった.そして,1人(4%)は自宅で自己隔離していた.この再陽性群では,80歳の患者1人に自殺願望が認められた.再陽性であったこれらの患者から新たなウイルス感染伝播は認めなかったこれは14日間の臨床的なモニタリングを目的として,患者を中間的なFagcang shelter hospitalや保健センターに移行させた予防対策によるものかもしれないCOVID-19から回復した患者に対してこのような臨床的なモニタリングを行うことで,SARS-CoV-2が再活動性を持った場合の,さらなる感染拡大の可能性を効果的に減らすことができるかもしれない.この追跡調査では,退院した患者3人に再検査を施行できなかった;これは患者2人が死亡したためであり,うち1人は虚血性心疾患とARDSを併発していた.そしてもう1人は心停止の転帰を辿ったためである.再検査が陰性の患者のうち,患者1人が下肢血栓症で下肢切断を必要とした.

再陽性患者の52%がIgG抗体を有し,30%がIgM抗体を有していた結果は,免疫システムがSARS-CoV-2を部分的に認識していたことを示唆する再陽性患者の35%に1つ以上のCOVID-19関連症状が認められたことを考えると,SARS-CoV-2クリアランスにおける抗体の有用性には疑問が残り退院後も感染伝播させる可能性があることから,さらなる調査が必要であるCOVID-19感染症の第2波を防ぐために,COVID-19からの回復後は、最低14日間のFangcang shelter hospitalのような医療機関における臨床的モニタリングを推奨する

 

(2)Batisse D, et al. Clinical recurrence of COVID-19 symptoms after recovery: viral relapse, reinfection or inflammatory rebound? Journal of Infection. June 28, 2020.

https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.06.073.

Background

他のコロナウイルスと同様に,最初はSARS-CoV-2は少なくとも一過性の免疫を有する単相性の疾患(monophasic disease)を誘発すると予想されていた1)2).しかしながら,COVID-19の“再発”または“再活性化”が疑われる症例が稀ではあるが報告されている3)4)5)6).同様に,COCORECCollaborative study COvid RECurrurrences)試験は,最初の発症から少なくとも21日後に2回目のCOVID-19が確認された患者の臨床的およびウイルス学的データを要約することを目的としている.

Methods

症例データは,the COCLICOCOllaborative CLInician COVID-19French study group meetingを通して,後ろ向き多施設観察研究として集められた.COVID-19エピソードは,@発熱または悪寒,発熱性インフルエンザ様症状,呼吸困難,嗅覚消失,味覚異常といったCOVID-19の少なくとも1つの最近起こった主要な臨床症状,およびASARS-CoV-2 RT-PCR検査が陽性であることによって定義された.

Results

202046日〜514日において,11人の患者が同定された(性別M/F 1.2, 年齢median 55, range 19-91).症状の持続期間の中央値は、最終的に回復した患者7人では,1回目のエピソードで18[13-41]2回目のエピソードで10[729]であった.

対象に含まれていた重大な基礎疾患を持たない医療従事者4人(患者1〜患者4, 年齢median 32.5[19-43])は,最初に軽度のCOVID-19の症状を発症したが、完全に回復した:3人はCOVID-19専門病棟での仕事に復帰した.また1人は自宅でSARS-CoV-2に再曝露する可能性があった(患者2).3人とも臨床的な再発を認め,病気休暇を必要としたが,入院はしなかった.症状のない期間(symptom-free interval)は,median 9[7-14]であった

一方,高齢患者7人(患者5〜患者11, 年齢median 73[5491])は,どちらのエピソードでも救急病院に入院し,2つのエピソード間の臨床的改善期間は11[427]であった.最初のエピソードでは,患者1人はロピナビルを投与され,3人は副腎皮質ステロイドが投与されていた.患者6人はどちらのエピソードでも酸素療法を必要とした.患者2人はARDSの再発で死亡し,1人は慢性右心不全の悪化で死亡した.すべての患者で、両エピソードとも呼吸器検体中の SARS-CoV-2 RT-PCR 検査が陽性であった(表 2)。

全患者11において,2回目のエピソードにおいて胸部CTで肺炎像を呈していたCTが比較可能であった7人のうち4人が増悪し,肺塞栓症が1人に認められた.21日後にSARS-CoV-2の血清抗体検査を行ったところ,陽性が6例(※訳者: one slightly positiveとある1人は陽性とした),陰性が3人であった2回目のエピソードにおいて,患者2人は鼻咽頭スワブから採取したVero E6細胞を用いてウイルス培養を行ったところ,1人(84歳,最初のエピソードから50日後)はSARS-CoV-2の典型的な細胞変性効果(cytopathic effect: ウイルスに感染した培養細胞にみられる形態変化)を示しRT-PCRによった確認された;シーケンスの結果,この株はヨーロッパB2系統に属することが示された(Rambaut et al., bioRxiv preprint, doi: https://doi.org/10.1101/2020.04.17.046086).

Discussion

SARS-CoV-2に対する免疫は,細胞性免疫と液性免疫の両方を含むが,確実にウイルスクリアランスを促す再感染に対する防御的役割は明らかではない7)この研究において,患者11人にSARS-CoV-2が検出される2回のCOVID-19の症状が認められ,他に鑑別診断はないことを考えると,仮説としてウイルスの再感染あるいは再活性化と考えられるどちらのエピソードにおいても軽度の症状を認めるのみであった生来健康な医療従事者の場合は,この侵襲性感染がない若い集団では免疫応答がわずかであった可能性を考慮すると,長期暴露による再感染と推測される8).一方,高齢患者の場合は,再感染の可能性が低く,低酸素血症を伴う肺炎を 2 回繰り返し発症し,3人が死亡した.SARS-CoV-2感染の勢いを十分に制御できなかったため,再びウイルス複製が起こった可能性がある(再活性化

COVID-19の再発は,肺塞栓症や複合感染などの二次的な合併症5)や,臨床的に治癒した患者の発症から6週間までに呼吸器サンプルから検出されるウイルスRNAの持続とは区別されるべきである9)

薬物や基礎疾患などの免疫抑制因子は,ウイルスクリアランスを阻害し,SARS-CoV-2 の再活性化を促進する可能性がある10).この研究における重症患者7人のうち3人,およびこの研究に含まれるYeらが報告した4人のうち3人では3),最初のエピソードでコルチコステロイドが投与されていた.さらに、重症な状態になって21日以上経過してもSARS-CoV-2抗体が検出されなかった患者3人のうち2人は最近化学療法および/またはリツキシマブによる治療を受けていた.

臨床症状の再発は,不適切な免疫応答によって惹起された炎症に起因する可能性があるものの,すべての患者(中にはCt値が低い患者もいた=ウイルス量が多い)でウイルスRNAが検出されたことや,そのうちの1人の患者では2回目のエピソード中にウイルス株が培養されたことは,再感染や再活性化を支持するものである

Limitation: 少人数での研究であること.各エピソード間における“治癒”とは,“臨床的”に定義されたもののみであったこと(患者6を除く).ウイルス培養を行ったのは2人のみであったこと.

Conclusions

SARS-CoV-2の再活性化あるいは再感染の可能性があること,またそれは免疫抑制薬や基礎疾患による長期的な影響を受ける可能性があることに注意する必要がある.

 

1) Kiyuka PK, et al. Human Coronavirus NL63 Molecular Epidemiology and Evolutionary Patterns in Rural Coastal Kenya. J Infect Dis. 2018; 217 (05): 1728-1739

2) Tang F, et al. Lack of peripheral memory B cell responses in recovered patients with severe acute respiratory syndrome: a six-year follow-up study.

J Immunol Baltim Md. 1950; 186 (2011 Jun 15): 7264-7268

3) Ye G, et al.  Clinical characteristics of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 reactivation. J Infect. 2020; 80: e14-e17

4) Ravioli S, et al. Reactivation of COVID-19 pneumonia: A report of two cases.

J Infect. 2020 May 7;

5) Loconsole D, et al. Recurrence of COVID-19 after recovery: a case report from Italy.

Infection. 2020 May 16;

6) Zhou L, et al. [Cause analysis and treatment strategies of “recurrence” with novel coronavirus pneumonia (COVID-19) patients after discharge from hospital].

Zhonghua Jie He He Hu Xi Za Zhi Zhonghua Jiehe He Huxi Zazhi Chin J Tuberc Respir Dis. 2020 Apr 12; 43: 281-284

7) Grifoni A, et al. Targets of T Cell Responses to SARS-CoV-2 Coronavirus in Humans with COVID-19 Disease and Unexposed Individuals. Cell. 2020 May 20;

8) Zhao J, et al. Antibody responses to SARS-CoV-2 in patients of novel coronavirus disease 2019.

Clin Infect Dis Off Publ Infect Dis Soc Am [Internet]. 2020 Mar 28; ([cited 2020 Jun 26]; Available from)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7184337/

9) Xiao AT, et al. Profile of RT-PCR for SARS-CoV-2: a preliminary study from 56 COVID-19 patients. Clin Infect Dis Off Publ Infect Dis Soc Am. 2020 Apr 19;

10) Ling Y, et al. Persistence and clearance of viral RNA in 2019 novel coronavirus disease rehabilitation patients. Chin Med J (Engl). 2020 May 5; 133: 1039-1043

 

私見: 韓国CDCからの報告(523-2)では,対象269人中83人が再陽性(30.9%),発症から隔離終了後に再陽性になった期間は平均44.9日(8-82日),さらに隔離終了後から再陽性になるまでの期間は平均14.3日(8-82日),再陽性者の89.5%Ct>3096%に中和抗体が認められていた.そして,再陽性者108人のウイルス細胞培養検査はいずれも陰性であった.以上より再陽性例の感染性を示すエピデンスはないと結論されていた.

この韓国CDCの報告では再陽性率は30.9%,一方Lancetの報告では3%であった.サンプルバイアスの問題かもしれない.この2つの報告における発症から再陽性までの期間はほぼ同様であった.そして,Lancetの報告では再感染性のリスクは挙げられているが,その根拠は記されていない.またこの報告は再陽性者の48%IgGおよびIgMがいずれも陰性であった一方,韓国CDCの報告では中和抗体保持者は96%である.IgGおよびIgM抗体,中和抗体の違いはあるものの,韓国CDCの報告では感染者の重症度の記載はなく,抗体保持率は重症度が影響しているかもしれない.いずれにしてもこの2つの報告では,再陽性者に感染性があるエビデンスは述べられていない.一方で,フランスから報告では,再陽性者の1人はウイルス培養が陽性であった.しかしこの患者は重症高齢者(84歳)であったことから,重症高齢者では再陽性者は感染性を保持している可能性があるかもしれない.また1回目のエピソードで18[13-41]2回目のエピソードまでの臨床的改善期間は11[427]であることを考えると,先の2つの報告よりもやや間隔が短いことも影響しているのかもしれない.

 

 

 

 

SARS-CoV-2は空気感染する?】

Morawska L, Milton DK. It is Time to Address Airborne Transmission of COVID-19. Clinical Infectious Diseases, ciaa939. July 6, 2020.

 https://doi.org/10.1093/cid/ciaa939.

我々は,COVID-19の空気中への拡散の可能性を認識するよう,医療界および関連する国内および国際機関に訴える.近距離から中距離(数メートルあるいは部屋の規模まで)では,微小呼吸器飛沫のウイルスを吸入して曝露する可能性が大きい.そして,この空気感染伝播を抑える予防的な対策を講じることを提唱する.

様々な研究において,ウイルスが呼気,会話,咳の際に,空気中に留まるほど小さな微小飛沫として放出され,1-2mの距離を超えて感染曝露リスクがあるという証明がなされている.例えば,典型的な室内空気速度では,5μmの飛沫は,1.5mの高さから床に落下しながら,典型的な部屋のスケールよりもはるかに長い数十mの距離を移動する.SARS-CoV-1流行期の後に行われた後ろ向き研究では,空気感染が感染の広がる空間のパターンを説明する最も可能性の高いメカニズムであること報告されている.後ろ向き研究では,SARS-CoV-2でも同様のことが示されている.特に中国のレストランにおける検討では,感染者の直接的または間接的な接触は証明されていない.RSウイルス,MERS-CoV,インフルエンザといったウイルスの感染拡大に関する研究において,感染者の呼気中に生きたウイルスが存在し,室内で検出されることが示されている.このため,このような環境を共有する人々がこれらのウイルスを吸い込む可能性があり,結果として感染や病気に至る危険がある.SARS-CoV-2も同様であり,空気中の微小飛沫を介した感染経路が重要である.他のウイルスも,物質表面上の飛沫と比べても,エアロゾル中に同程度で生き残ることができることが示されている.

現在,多くの国際機関からの指針は,手洗い,ソーシャルディスタンスの維持,そして飛沫予防に重点を置いている.世界保健機構(WHO)を含むほとんどの公衆衛生期間は,医療機関におけるエアロゾル発生手技を除いて,空気感染伝播を認めていない.手洗いやソーシャルディスタンスは適切であるが,感染者によって空気中に放出されるウイルスを運ぶ呼吸器微小飛沫から防御するには不十分だと考えられるこれは,屋内または密閉された環境,特に人が密集していて,曝露時間が長くなるような換気不良な環境 では特に問題となる(Figure 1.例えば,このような状況下で行われた感染を拡大させたイベント(superspreading event)や直接的な飛沫感染予防を徹底していたにも関わらず感染が拡大した事案を考えると,空気感染伝播は最もらしいと言える.

確かに,SARS-CoV-2の微小飛沫による感染伝播のエビデンスは不十分であるが,同様に大きな飛沫やfomiteを介した感染伝播のエビデンスも不十分である.空気感染伝播は,現在の指針の基になっている大きな飛沫やfomiteを介した感染伝播と一緒に起こる.

 

 

空気感染伝播リスクを軽減するために行うべき対策は以下である.

十分かつ効果的な換気を行うクリーンな外気を供給し,室内循環換気は最小限に

局所の廃棄,高効率空気ろ過(high efficiency air filtration),殺菌性紫外線ライト(germicidal ultraviolet light)などの空気感染対策によって,一般的な換気を補う

過密を避ける特に公共交通機関や公共施設

 

このような対策は実用的であり,容易に実施することができ,コストがかからないことが多い.例えば,ドアと窓の両方を開けるなどの簡単なステップで,室内の風量を劇的に増加させることができる.システムについては,ASHRAEthe American Society of Heating, Ventilating, and Air-Conditioning Engineers),REHVAthe Federation of European Heating, Ventilation and Air Conditioning Associations)において,空気感染に基づくガイドラインが既に示されている.我々が提案する対策は,たとえ部分的にしか実施できないにしても,潜在的なデメリットよりもより効果を生み出すだろう.

SARS-CoV-2の空気感染については,まだ国際的には受け入れられていないが,我々の総合的な評価では,空気感染予防対策を適用するのに十分なエビデンスがある.

我々はSARS-CoV-2の空気感染のリスクの認識が不十分であることを危惧している.SARS-CoV-2の空気感染が現実的なリスクであり,深刻なパンデミックを抑制し命を救うため,他の予防対策に加える必要がある.

Figure 1:

私見: これはマスコミが「新型コロナウイルスは空気感染する!」と物議をかもしたきっかけになった論文であるが,内容は我が国の専門家会議で提唱された“三密を防ぐ”を後押しする内容であり,新たな知見を有しているわけではないと考えられる.