COVID-19関連追加(2020716-2

 

【美容室におけるマスク着用による感染伝播防御】

Hendrix MJ, et al. Absence of Apparent Transmission of SARS-CoV-2 from Two Stylists after Exposure at a Hair Salon with a Universal Face Covering Policy-Springfield, Missouri, May 2020. MMWR. July 14, 2020.

2020512日(0日目)、ミズーリ州スプリングフィールドのサロンAの美容師(スタイリストA)が呼吸器症状を発症し,8日目までサロンAで仕事を続けていた後,COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2が陽性と判明した.スタイリストAから感染した美容師(スタイリストB)は,2020515日(3日目)に呼吸器症状を発症し,サロンA8日目まで仕事を続けた後,SARS-CoV-2の検査を受け,10日目に陽性が判明した.発症し,休職するまでの間,合計139人の顧客がスタイリストA,スタイリストBに濃厚接触していた.スタイリストABと顧客139人は,フェイスカバー(例えば,サージカルマスク,N95レスピレーター,または布マスク)の着用を推奨するスプリングフィールド市の条例とサロンAの対策に従っていた.スタイリストABと密接に仕事をしていたサロンAの他のスタイリストを同定したのち隔離,スタイリストAまたはBに最後に接触した日から14日間毎日モニターした.スタイリストBの陽性が確認された10日目から,消毒のため3日間サロンAは閉鎖された.公衆衛生における接触者の追跡と2週間の経過観察の後,曝露した顧客139人およびその二次接触者の間でCOVID-19の症状は確認されなかった.市の条例やサロンAの対策は,SARS-CoV-2 の感染伝播を防ぐ役割を果たした可能性がある.広範にマスク着用条例を実施することは,一般住民への感染拡大を緩和する可能性がある

スタイリストA0日目から8日目までCOVID-19の症状を認めていたにもかかわらず仕事を続けた.6日目に行われたPCR検査後に自己隔離を指示されたが,スタイリストAは検査結果が陽性となるまで仕事を続け、その時点でスタイリストAはサロンAから仕事からはずされた.スタイリストAと一緒に働いていたスタイリストBは3日目に呼吸器症状を認めた.スタイリストAの症状が出ている間,スタイリストABは接触していたが,お互い接触している間はマスクをしていなかった.スタイリストBは発症した3日目から8日目まで仕事を続け,10日目にSARS-CoV-2の陽性が判明した.スタイリストA8日間,スタイリストB5日間,症状が出ている状態で仕事をしていたサロンAでの顧客との接触時には,スタイリストAは二層の綿のフェイスマスクを着用し,スタイリストBは二層の綿のフェイスカバーまたはサージカルマスクを着用していた

グリーン郡保健所(ミズーリ州)は,スタイリストABが発症した日にさかのぼって,曝露した139人顧客全員の接触者追跡を行った.顧客139人は,サロンAにおける最終曝露後からモニターされた.顧客は14日間自己隔離するように求められ,毎日の電話やテキストメッセージで症状が確認された.すべての顧客に対してPCR検査は曝露後5日後,あるいは曝露後5日以上過ぎていた場合は可能な限り速やかに行われた.全顧客のうち,67人(48.2%)が検査を希望したが,72人(51.8%)が拒否した67人の鼻咽頭スワブ検体によるPCRではSARS-CoV-2陰性であった.補足的な情報を収集するために,最初の接触者追跡から1ヵ月後に電話によるインタビューが試みられた.曝露した顧客139人のうち,グリーン郡保健所は104人(74.8%)にインタビューを行った.

顧客139人は,平均年齢52歳(range= 21-93歳),男性79人であった.サロンの滞在時間は15分から45分であった(中央値= 15分,平均= 19.5分)インタビューした顧客104人のうち,102人(98.1%)が滞在中ずっとフェイスカバーを着用していたと報告し,2人(1.9%)がある時間のみフェイスカバーを着用していたと報告した.顧客が使用したフェイスカバーの種類は様々で,布製のフェイスカバーを着用していたのは49人(47.1%),サージカルマスクを着用していたのは48人(46.1%),N95レスピレーターを着用していたのは5人(4.8%),どのようなフェイスカバーを着用していたかを2人(1.9%)が知らないと回答した.全体では101人(97.1%)の顧客が,「スタイリストは予約時間中ずっとフェイスカバーを着用していた」と回答したが,3人は知らなかった.スタイリストが着用しているフェイスカバーの種類について尋ねたところ,64人(61.5%)が布製のフェイスカバー(39人,37.5%)またはサージカルマスク(25人,24.0%)を着用していたと回答し,40人(38.5%)はスタイリストが着用しているフェイスカバーの種類を知らない,または覚えていないと回答した.来店90日前に呼吸器症状があったかどうかを尋ねたところ,87人(83.7%)の患者が経験していないと回答した.以前に何かしら症状があったと回答した顧客のうち,COVID-19の検査や診断を受けたと回答した者はいなかった.

スタイリストAとスタイリストBのサロンA以外での濃厚接触者は6人で,スタイリスト A 4人,スタイリストB2人であった.これらの接触者は,スタイリストAの内縁の夫と娘,義理の息子とルームメイトであり,この4人は別の家庭で同居していた.しかし,この4人は感染した.スタイリストBの接触者はいずれも症状を示さなかった.

Discussion

SARS-CoV-2は,咳やくしゃみをしたときの呼吸器の飛沫を介して拡散するが,ウイルス排出はウイルス量が最も多くなる発症2-3日前に始まることが示唆されている.SARS-CoV-2の前症状感染者と無症状感染者からの感染率は不明であるが,これらの人がSARS-CoV-2の感染拡大に寄与している可能性は高い.前症状および無症状感染の可能性があるため,SARS-CoV-2感染拡大を抑えるために,公共の場におけるフェイスカバーを求める政策の普及を検討すべきである.

・スタイリストと顧客の位置は,ウイルスへの曝露の可能性を抑えていたかもしれない.サロンAにおける業務内容は,ヘアカット,刈り込み,パーマに限定していた.ほとんどのスタイリストは,顧客が背を向けている状態で髪をカットしており,これも感染を抑えていた可能性がある.

・サロンAにおけるスタイリストと顧客の間の密接な接触の中で,SARS-CoV-2 の感染を防ぐことに,フェイスカバーの使用を義務付ける方針が貢献した可能性が高い.

CDCは,従業員の症状を日常的にモニタリングすることに加えて,従業員と顧客のためのフェイスカバーの使用に関する職場の方針,体調が悪い従業員をスクリーニングするための手順,そして従業員と顧客に情報を提供し,教育することを推奨している.

 

The figure shows 139 chairs and two hairdryers with text describing that everyone at a salon wore face coverings and no one is known to be infected.

 

私見→サロンA内の換気環境や当時の混雑具合はわからないが,少なくとも発症したスタイリストと接触した顧客,両者がマスクを着用することによって感染拡大を防いだという事例である.2人のスタイリストがスーパースプレッダーではなかった可能性もある.濃厚接触した顧客のうち72人(51.8%)がPCR検査を拒否したというのが印象に残る.