COVID-19関連追加(2020719日)

 

COVID-19患者に対するデキサメタゾン(RECOVERY試験)】

The RECOVERY Collaborative Group. Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19Preliminary Report. N Engl J Med. July 17, 2020.

doi: 10.1056/NEJMoa2021436.

BACKGROUND

Covid-19はびまん性肺傷害と関連している.グルココルチコイドは,炎症が惹起する肺損傷を調節することによって,呼吸不全や死亡への進行を抑制する可能性がある.

METHODS

この非盲検比較試験では,Covid-19で入院した患者を対象に,デキサメタゾン(6mg11回投与)を最長10日間(またはそれより早い場合は退院まで)まで経口あるいは経静脈投与した群と,通常の治療のみを受けた群を無作為に割り付けた.

主要アウトカムは,無作為化後28日以内の全死因死亡とした;さらなる解析は6ヵ月後に指定した.副次アウトカムは,退院までの期間,および無作為化時点で侵襲的人工呼吸管理されていなかった患者では,その後の侵襲的人工呼吸管理(ECMO管理),または死亡であった.その他の事前に指定された臨床アウトカムには,原因別死亡率(cause-specific mortality),血液透析(hemodialysis)または血液濾過(hemofiltration),主要心臓不整脈,人工呼吸管理およびその施行時間が含まれた.

主要アウトカムである28日間の死亡率については,Cox回帰によるハザード比を用いて死亡率比を推定した.28日間の累積死亡率を示すためにKaplan-Meier生存曲線を作成した.Cox回帰を用いて28日以内の退院という副次アウトカムを解析し,入院中に死亡した患者については29日目のデータで打ち切りとした.侵襲的人工呼吸管理または28日以内の死亡(無作為化時点で侵襲的人工呼吸管理を受けていない患者において)という事前に指定された複合的な副次アウトカムについては,侵襲的人工呼吸管理を受けた正確な日時が分からなかったため,リスク比を推定するために対数二項回帰(log-binomial regression)モデルが使用した.

無作為化において,偶然,デキサメタゾン群の患者の平均年齢は通常治療群よりも1.1歳高かった(Table 1).

 

 

RESULTS

2020319日〜68日までに無作為化された患者11303人のうち,計9355人(83%)の患者のうち6425人が,デキサメタゾン投与群2104人と通常治療群4321人に無作為に割り付けられた(Figure 1).残りの患者は,本試験で評価されている他の治療群のいずれかに無作為に割り付けられた.

 

Figure 1:

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対象患者の平均年齢(±SD)は66.1±15.7歳で,患者の36%が女性であった(Table 1).基礎疾患は,糖尿病24%,心臓病27%,慢性肺疾患21%であり,56%の患者に少なくとも1つの主要な基礎疾患が認められた.この解析では,患者の89%がSARS-CoV-2感染が確定しており,0.4%は現在結果待ちであった.無作為化時点において,侵襲的人工呼吸管理またはECMO管理16%酸素療法60%(非侵襲的人工呼吸の有無にかかわらず)24%がどちらも受けていなかった

 

 

Table 1:

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主要アウトカムのフォローアップ情報は,無作為化された6418人(99.9%)を対象に完了した.デキサメタゾン群では,患者の95%が少なくとも1回の投与を受けた.治療期間はmedian 7日間(IQR, 3 -10)であった.通常治療群では,患者の8%が臨床ケアの一環としてデキサメタゾンを投与されていた.フォローアップ期間中のアジスロマイシンの投与は,デキサメタゾン群と通常治療群で同程度(24% vs 25%)であり,フォローアップ期間中にヒドロキシクロロキン,ロピナビル・リトナビル,またはIL-6拮抗薬を投与された患者は03%であった.2020526日に英国でレムデシビルが使用可能となった後,デキサメタゾン群3例,通常ケア群2例に投与した.

28日目の死亡率はデキサメタゾン群の方が通常治療群よりも有意に低く,死亡はそれぞれ2104人中482人(22.9%)と4321人中1110人(25.7%)であった(死亡率比, 0.83; 95% CI, 0.75-0.93; P0.001Figure 2A無作為化時点で患者が受けていた呼吸サポートのレベルに応じて事前に指定した解析では,侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者において、最大の絶対的および比例的な有益性(the greatest absolute and proportional benefit)を示す傾向があった(傾向性のカイ二乗検定で11.5)(Figure 3デキサメタゾン群では,侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者(29.3% vs 41.4; 率比, 0.64; 95% CI, 0.51-0.81および侵襲的人工呼吸管理を行わずに酸素投与を受けていた患者(23.3% vs 26.2; 率比, 0.82; 95% CI,  0.72-0.94では,通常治療群に比べて死亡率が低かったFigure 2Bおよび2C.しかし無作為化時点で,呼吸サポートを受けていない患者では,デキサメタゾンの明確な効果は認められなかった(17.8% vs 14.0%; 率比, 1.19; 95% CI, 0.91-1.55Figure 2D.この結果は、SARS-CoV-2検査が陽性であった患者5698人(89%)に限定した探索的事後解析でも同様であった.同様に,年齢を調整しない感度解析でも同様の結果が得られた.

無作為化時点で,侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者は,呼吸サポートを受けていなかった患者に比べて平均10歳若く,無作為化前の症状の持続期間が平均7日長かった(Table 1).デキサメタゾンの使用に関連した28日間の死亡率における年齢調整下の絶対減少(absolute reduction)は,侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者では12.3% points95% CI, 6.3-17.6),酸素投与のみを受けていた患者では4.2% points95% CI, 1.4-6.7)であった.

症状の持続期間が長かった患者(無作為化時点で,侵襲的人工呼吸管理を受けていた可能性が高かった患者)では,デキサメタゾン投与によって死亡率においてより大きな有効性が認められたデキサメタゾン投与は,症状が7日以上続いた患者では28日時点における死亡率の低下と関連していたが,発症がより最近の患者では関連していなかった(傾向性のカイ二乗検定で12.3

 

 

Figure 2: Mortality at 28 Days in All Patients and According to Respiratory Support at Randomization.

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Figure 3: Effect of Dexamethasone on 28-Day Mortality, According to Respiratory Support at Randomization.

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デキサメタゾン群では,通常治療群に比べて入院期間が短く(median 12 vs 13日)28日以内に生存して退院する確率が高かった(率比, 1.10; 95% CI, 1.03-1.17Table 228日以内の退院に関する最大の効果は,無作為化時点で侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者に認められた(傾向性のカイ二乗検定で11.5

無作為化時点で,侵襲的人工呼吸管理を受けていなかった患者におけるあらかじめ指定された複合副次アウトカムである侵襲的人工呼吸管理または死亡に至った患者の数は,デキサメタゾン群の方が通常治療群よりも少なかった(リスク比, 0.92; 95% CI, 0.84-1.01)(Table 2.無作為化時点において酸素投与を受けていた患者で,この効果はより大きかった(傾向のカイ二乗検定で6.2

 

Table 2:

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侵襲的人工呼吸管理への進行リスクは,デキサメタゾン群では通常治療群よりも低かった(リスク比, 0.77; 95% CI, 0.62-0.95)(Table 2.原因別死亡率,血液透析または血液濾過の必要性,および人工呼吸の持続時間についての解析が進行中である.

 

Discussion

・この暫定的な報告では,Covid-19入院患者において,無作為化時点で侵襲的人工呼吸器管理を受けていた患者(年齢調整下12.3% points,約1/3の比例減少)と,侵襲的人工呼吸管理を受けていないが酸素吸入を受けていた患者(年齢調整下4.1% points,約1/5の比例減少)では,デキサメタゾンを10日間まで使用することで,通常治療よりも28日間の死亡率が低下したことを示している.しかし,無作為化時点で呼吸サポートを受けていない患者では,デキサメタゾンが有益であるという根拠はなく,このサブグループでは害がある可能性があるとの結果と一致した.また,炎症性の肺傷害がよりコモンあると考えられる発症後7日以上経過した患者においてデキサメタゾンの有益性が明らかになった

RECOVERY試験は,28日間の死亡率における可能性のあるCovid-19治療の効果を迅速かつ確実に評価することを目的としたものである.英国のCovid-19入院患者の約15%がこの試験に登録され,通常治療群の死亡率は英国のCovid-19入院患者の全体的な症例死亡率と一致していた.この研究では,病態生理,臨床検査マーカー,およびウイルス学的測定マーカーに関する情報を収集していない.

・グルココルチコイドは,SARSMERS,重症インフルエンザ,市中肺炎などCovid-19に関連する症候群に広く使用されてきた.しかし,これらの状況におけるグルココルチコイドの使用を支持するか否かのエビデンスは,RCTのデータがないため,弱いものとなっているまたグルココルチコイドの投与量,症状,疾患の重症度などの不均一性が課題であった.全身性グルココルチコイドによる治療を受けたSARSMERS,インフルエンザ患者では,ウイルスRNAのクリアランスの低下が観察されているが,この臨床的意義は不明である.SARS-CoV-2では,発病後2週間目にウイルスの複製がピークを迎えるSARSとは異なり,ウイルス排出は発病初期に多く,その後は減少するようだ.人工呼吸器管理を受けているCovid-19患者および発症後1週目以降の患者において死亡率に対するデキサメタゾンの有益性は,そのステージでは疾患の免疫病態的要素が関連しており,それは活発なウイルス複製が二次的な役割を果たしている可能性を示唆しているこの仮説は、Covid-19患者におけるデキサメタゾンの効果を,異なる自然史を持つ他のウイルス性呼吸器疾患の患者に当てはめることに注意を促すものである

RECOVERY試験では,デキサメタゾンを116mgの用量で最大10日間投与することによって,呼吸サポートを受けているCovid-19患者の28日間の死亡率が減少するというエビデンスが得られた酸素を必要としない患者では有益性(および有害性の可能性)は認めなかった.試験終了前には,多くのCovid-19治療ガイドラインでグルココルチコイドの使用は禁忌または推奨されないと記載されていた.デキサメタゾンはWHOの必須医薬品リストに登録されており,世界中で安価で入手可能である.The U.K. chief medical officersthe National Institutes of Health in the United Statesによって発行されたガイドラインはすでに更新されており,Covid-19入院患者にグルココルチコイドの使用を推奨している