COVID-19関連追加(2020721日)

 

【子供におけるCOVID-19と感染伝播動態】

(1)NEJM Journal Watch MEDICAL NEWSより(July 12, 2020).

Children not major drivers of infection

このPediatrics誌に掲載された研究(以下の(2)の報告)は,子供は主に家族を介してCOVID-19に感染しているようであり,子供は通常,他の家族に感染を広げることはないことを示唆している.3月と4月にスイスで行われたこの研究では,SARS-CoV-2に感染した16歳以下の子供40人の家庭内接触者を調査した.調査した世帯の79%では,子供が発症する前に少なくとも1人の成人家族がCOVID-19の疑いあるいは確定例であった8%の世帯では,子供がindex caseであることが疑われた.コメンテーターは,この問題を扱った他の研究を考慮し,次のように結論づけている:"パンデミックが発生してからほぼ6ヶ月が経過したが,エビデンスと経験が蓄積され,子供,特に学童期の子供は大人に比べてSARS-CoV-2感染の重要な推進因子ではないことが明らかになっている.よって,COVID-19が蔓延している時期であっても,学校が開校したままでいられるような戦略を真剣に検討すべきである.そうすることで,効果的な治療法やワクチンが開発されるまで,あるいはそれができない場合は集団免疫に到達するまで,子供たちが被り続ける社会・発達・健康における負担を最小限に抑えることができる."

 

(2)Posfay-Barbe KM, et al. COVID-19 in Children and the Dynamics of Infection in Families. Pediatrics July 2020, e20201576;

doi: https://doi.org/10.1542/peds.2020-1576.

Introduction

COVID-19パンデミック以降,重症度や頻度(< 2%)においては,子供は成人よりも少ない.他のウイルス性呼吸器感染症とは異なり,子供はSARS-CoV-2感染の主要な媒介にはならないとされ,ほとんどの子供の感染は家族クラスター内で報告されており,子供から子供,または子供から成人への感染の記録はない.この研究の目的は,COVID-19小児患者40人の臨床像とその家族クラスターの動態を説明することである.

Methods

2020310日〜410日において,ジュネーブ大学病院のサーベイランスネットワーク(スイス)により,SARS-CoV-2感染症の16歳未満のすべての患者が同定された.カルテレビューを用いて臨床データを取得し,患者と家庭内接触者のフォローアップを行った.家庭内接触者は,スイス連邦公衆衛生局の診断基準に従って発熱や急性呼吸器症状があれば疑い例と判断された.データはχ2検定を用いて比較され,p< 0.05は有意とした.統計はSPSSバージョン23.0IBM SPSS Statistics, IBM Corporation)を用いた.

 

Results

SARS-CoV-2患者4310人のうち,40人が16歳未満(0.9%)であった.電話での追跡調査ができなかった1人は,臨床経過と家庭内接触者を評価できなかったため除外した.世帯の追跡調査の中央値は18日間(IQR, 14-28)であった.

Clinical Presentation, Diagnosis, and Management

基礎疾患は,喘息(10%),糖尿病(8%),肥満(5%),未熟児(5%),そして高血圧(5%)であった.7人の患者(18%)が入院し,期間はmedian 3日(IQR, 2-4)であった; 入院の原因は,低酸素血症を伴わないウイルス性肺炎2人,不明熱2人,明らかな生命を脅かすイベント1人,敗血症様イベント1; 両親が重症COVID-19にて入院したため,ほとんど症状のない小児1人であった.ICU入院,またはSARS-CoV-2に特異的な治療を必要とした患者はなかった.他の32人は外来で管理された.すべての患者は,診断後7日目までには症状が完全に消失していた

Familial Clusters

家族クラスター評価では,1世帯あたりの世帯員数は4人(IQR, 3-4)であった.調査対象となった子供の家庭内接触者111人のうち,母親(39人)が最も多く,次いで父親(32人),小児の兄弟姉妹(23人),成人の兄弟姉妹(8人),祖父母(7人)の順であった(Figure 1).この研究における子供症例79%31/39)において,調査対象の子供に先行して,成人家庭内接触者はCOVID-19が疑われ,そして確定された.また,他の家庭内接触者よりも先に調査対象の子供が発症したのは8%(3/39)の世帯のみであったFigure 1.興味深いことに,“ある時点で”,成人家庭内接触者の85%75/88)が発症していたのに対し,小児家庭内接触者では43%10/23)であった(p < 0.001.また,母親の92%36/39)が発症したのに対し,父親で発症したのは75%(24/32)であった(p= 0.04).

 

 

Figure 1:

SARS-CoV-2無症状例,疑い例,確定例を含む家庭クラスター.緑,黄,および赤の□は,調査前; 調査患者と同時; 調査後に発症した有症状の家庭内接触者を表している.白の□は無症状の家庭内接触者を表す.±は,SARS-CoV-2 RT-PCRの結果に対応する; 検査を受けていない患者は空欄.所定の家族クラスター内にそのカテゴリーの家族がいない場合は灰色で示した.家庭内で最初に発症した調査対象小児はクラスター番号2313に含まれる症例のみであった.CTcycle threshold)値は,ウイルスを増幅するのに必要なポリメラーゼ連鎖反応のサイクル数に対応している; よってCT値はウイルス量に反比例する.

 

Discussion

我々の研究では,ほとんどの子供が軽症または非典型的な症状を呈していた:頭痛と鼻汁が半数以上の症例に認められ,嗅覚消失と腹部症状が20%未満に認められた(これは以前の報告よりも頻度が高い).研究対象となった子供が発症する前に,その世帯の79%において,COVID-19確定あるいは疑いのある成人家族が1人以上確認されており,子供は主に家族クラスター内で感染していることが確認されている.驚くべきことに,33%の世帯では,SARS-CoV-2感染が確定した家族クラスターに属しているにもかかわらず、症状のある家族内接触者が陰性であり,感染者の過少報告が示唆される.わずか8%の世帯では,その他の家族内接触者よりも早く子供に症状が認められ,SARS-CoV-2の家族クラスターにおいて子供がindex caseである場合は10%未満であるという過去のデータと一致する;しかし今回の研究では,子供から大人への感染が起きたことを確認できなかった.

Limitation: この研究のサンプルは,この期間における子供のSARS-CoV-2症例の総数を代表するものではない.実際,軽症または非典型的な症状を呈した子供は,医師の診察を受けていない可能性がある.また家庭内接触者の発症の記憶が不正確である可能性がある.

広範な家庭内接触者の追跡調査が行われ,ほとんど欠けることなく追跡調査が行われたことから,この研究の結果は重要である.疑い症例の拡大診断スクリーニングと徹底した接触者追跡は,家庭内感染の動態をより理解するために必要である.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020721日)に91日追記しました

 

【軽症〜中等症COVID-19患者の鼻咽頭におけるウイルス量の年齢による違い】

Heald-Sargent T, et al. Age-Related Differences in Nasopharyngeal Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) Levels in Patients With Mild to Moderate Coronavirus Disease 2019 (COVID-19), JAMA Pediatr. July 30, 2020.

doi:10.1001/jamapediatrics.2020.3651

Introduction

小児はSARS-CoV-2に感受性があるが,一般的には成人に比べて症状は軽度である. 小児は呼吸器および消化器を介して伝播を促進するが,SARS-CoV-2伝播の感染源となった小児に関するデータはほとんどない.

初期の報告では,小児がSARS-CoV-2の感染拡大の主な要因となっているという強い証拠は見出されていなかったが,パンデミック初期の対応として学校が閉鎖されたことで,学校が地域社会の感染源となっているかどうか大規模に調査することができなかった.公衆衛生対策として,学校や学童(デイケア)の再開が考慮される上で,小児の感染伝播の可能性を理解することは,公衆衛生対策の指針として重要である.ここでは,年長小児におけるSARS-CoV-2 ウイルス複製には,成人と同程度のウイルス核酸量が認められるが,5歳未満の小児ではより高レベルのウイルス核酸量が検出されたことを報告する.

Methods

2020323日〜427日に,イリノイ州シカゴの小児科三次医療センターで,入院患者,外来患者,救急部,ドライブスルー検査のさまざまな場所で採取した鼻咽頭スワブのRT-PCR検査(Abbot RealTime SARS-CoV-2 Assay performed on the m2000 RealTime System [Abbott Laboratories])を施行した.PCR増幅サイクル閾値(CT: cycle threshold)低値はウイルス核酸量が多いことを示す.

このコホートには,SARS-CoV-2が陽性と判定された生後1ヵ月未満から65歳までの患者が含まれていた.COVID-19症状に矛盾しない患者や濃厚接触者を検査対象とした.複数の検体を有する場合は,最初に検査された検体を採用した.重症患者はCT値が低いため,補助酸素療法を必要とした小児7人を除外した.また,無症状患者7人,症状の持続期間が不明な患者29人,および症状が検査の1週間前から始まった患者19人を除外した.スワブ(綿棒)は,標準的な両側鼻咽頭サンプリング手法を用いて採取した.

Results

最終的なコホートは,発症から1週間以内の軽症〜中等症の患者145であった.5歳未満の年少小児46517歳の年長小児511865歳の成人483群を比較したCT値の中央値(IQR)は,年長小児(11.1, [6.3-15.7])と成人(11.0, [6.9-17.5])は同様であった.しかし,年少小児ではCT値の中央値(IQR)が有意に低かった6.5, [4.8-12.0])ことから,年少小児の上気道におけるウイルス核酸量が年長小児や成人に比べて同等以上であることが示唆された(Figure年少小児と成人で観察されたCT値の中央値の違いは,年少小児の上気道における SARS-CoV-2 ウイルス量がおおよそ10倍から100に増加していることを示している.感度分析を行ったところ,症状の持続期間が不明な患者を含めた場合にも,群間で同様の統計的有意差が観察された.さらに,コホート全体(Spearman ρ= 0.22)および各群(年少小児, Spearman ρ= 0.20; 年長小児, Spearman ρ= 0.19; 成人, Spearman ρ= 0.10)において,症状の持続時間とCT値には非常に弱い相関関係しか認められなかった.

Figure:

5歳未満の小児は,5歳〜17歳の小児(P= 0.02)および18歳以上の成人(P= 0.001)と比較して,CT値が有意に低かったCT値は,517歳の小児と18歳以上の成人では同様であった(P= 0.34.中線は中央値を示し,箱は四分位の範囲を示し、”ひげ(whisker)”は上下の隣接値(四分位の範囲の1.5倍以内)を示し,孤立したデータ点は外れ値を示す.

Discussion

軽症〜中等症COVID-19を有する5歳未満の小児は,年長小児および成人と比較して,鼻咽頭にSARS-CoV-2ウイルスRNA量が多いことが示唆された.この研究は感染力のあるウイルスではなく,ウイルス核酸の検出に限定されているが,SARS-CoV-2に関する小児の研究では,核酸量レベルの高さと感染性ウイルスの培養能力には相関関係があることが報告されている1).このように,幼い小児は,一般集団におけるSARS-CoV-2感染の重要な推進因子となる可能性がある.これは,RSウイルスで実証されているように,ウイルス量の多い小児が感染伝播させる可能性が高いことを示している2)

1) LHuillier AG, et al. Culture-competent SARS-CoV-2 in nasopharynx of symptomatic neonates, children, and adolescents. Emerg Infect Dis. 2020;26(10):26.

2) Influenza Other Respir Viruses. 2018;12(3):326-330. doi:10.1111/irv.12518