COVID-19関連追加(2020722日)

T細胞の免疫応答について(3編),軽症患者の抗体の急速な減少(1編).

SARS-CoV-2に対するT細胞の免疫応答について】

(1)Sette A, Crotty S. Pre-existing immunity to SARS-CoV-2: the knowns and unknowns. Nature Reviews Immunology. July 7, 2020.

https://doi.org/10.1038/s41577-020-0389-z.

SARS-CoV-2に対するT細胞の反応性は未感染者で観察されているが,その原因やその反応に対する臨床的な関連性は不明である.これは,「“普通の風邪”のコロナウイルス」に対するT細胞の記憶を反映していると推測される.これらのT細胞の特異性を確定し,COVID-19の重症度やワクチン反応との関連を評価することが重要である.

SARS-CoV-2 に対するヒトのT細胞応答に関するデータの蓄積が始まり,未感染のドナーの20-50%から得たリンパ球がSARS-CoV-2 抗原ペプチドプールに有意な反応性を示した1)-4)という驚くべき報告がなされている.

Grifoniらの研究1)では,SARS-CoV-2が出現する前の20152018年の間に米国で得られたドナー血液サンプルの50%SARS-CoV-2に対する反応性が認められた.コロナウイルスのスパイクプロテイン以外のタンパク質に対するT細胞反応性が最も高かったが,スパイクに対してもT細胞反応性が認められた.SARS-CoV-2T細胞反応性は,ほとんどがCD4+T細胞と関連しており,CD8+T細胞による関与は少なかった1).同様に,Weiskopfらによるオランダの輸血ドナーを対象とした研究2)では,未感染者10人のうち1人にSARS-CoV-2スパイクペプチドに対するCD4+T細胞反応性が認められ,2人にSARS-CoV-2非スパイクペプチドに対するCD4+T細胞反応性が認められた.CD8+T細胞反応性は,1人に認められた.3番目の研究はドイツからであり,Braunらは,SARS-CoV-2血清学的陰性健常者ドナーの34%がスパイクペプチドに対するT細胞反応性を認めたことを報告している(CD4+CD8+T細胞は区別されていない)3).最後の報告はシンガポールからであり,Le Bertら研究4)では,SARSCOVID-19の既往歴がなく,SARSCOVID-19の患者と接触したことのない被験者の50%において,ヌクレオカプシドプロテインのnsp7あるいはnsp13に対するT細胞の反応性が報告されている.Meckiffらによる英国におけるサンプルを用いた研究でも,未感染被験者に反応性が認められた5)以上の5つの研究により、地理的に多様な場所に住む人々のかなりの割合でSARS-CoV-2を認識する既存のT細胞が存在しているというエビデンスが報告されている

これらの初期の報告は,多くの未感染者に相当なT細胞反応性が存在することを示しているが,T細胞の起源やメモリーT細胞であるかどうかのデータはまだ明らかにされていない.未感染者におけるSARS-CoV-2特異的T細胞は,HCoV-OC43HCoV-HKU1HCoV-NL63HCoV-229Eなどの“普通の風邪”のコロナウイルス(common cold coronaviruses: CCCs)〜これらは広範にヒト集団に蔓延し,症状は軽く,自然に治癒する〜に曝露されたメモリーT細胞に由来するのではないかと推測されている.ヒト集団の90%以上においてCCCsのうち少なくとも3つが血清学的に陽性であるとされている6)Thielらは,CCCsと高い相同性を持つSARS-CoV-2スパイクペプチドのプールに対してT細胞の反応性が最も高かったが,その差は有意ではなかったと報告している3)

これらの観察結果はどのような意味を持つのだろうか?一部のヒト集団においてCOVID-19に対する交差反応性が存在する可能性があることから,広範な推測がなされている.SARS-CoV-2に対する既存のT細胞免疫(pre-existing T cell immunity)は,COVID-19の重症度に影響を与える可能性があるSARS-CoV-2を認識するCD4+T細胞が高いレベルで存在していると,SARS-CoV-2に曝露された際に,より速く,より強力な免疫反応が起こり,それによって疾患の重症度を抑えるすることが可能であるメモリー濾胞ヘルパーCD4+T細胞(濾胞性ヘルパーT細胞: TFH細胞)は,SARS-CoV-2に対する中和抗体反応の増加と迅速化を促進する可能性がある.また,SARS-CoVに対する肺の抗ウイルス作用に働くCD4+T細胞7),および一般的に知られているメモリーCD8+T細胞の抗ウイルス作用を考えると,メモリーCD4+およびCD8+T細胞は,曝露後早期の肺および鼻咽頭における直接的な抗ウイルス免疫を促進する可能性がある.既存の免疫能を測定し,起こりうる感染と疾患の重症度を関連させる大規模な研究によって,SARS-CoV-2に対する既存のT細胞の記憶の役割の可能性を検討することができるだろう.

既存のT細胞免疫がCCCsの曝露に関係しているとすれば,CCCsの曝露パターンを時空間的に理解することが重要になってくる4つの主要なCCCsの有病率については,地理的な場所によって異なる周期性があることが知られている8).このことは,CCCsの地理的分布の違いがCOVID-19の重症度の負担と相関しているのではないかという仮説の推測につながる.さらにCOVID-19と年齢に関しては,既存のメモリーT細胞に関連した非常に推測性の高い仮説がある.子供は臨床的にCOVID-19に対する感受性が低い.高齢者はCOVID-19に対してはるかに感受性が高く,時に重症化する.これらの原因は不明である.CCCs感染の年齢分布は十分に確立されておらず,CCCsに対する免疫はより詳細に検討されるべきである.これらの考察から,COVID-19に対する潜在的な既存の免疫においては,複数の変数が関与している可能性があり,多くの仮説はさらに調査される価値があるものの,データがない場合は過剰な一般化や結論を急ぐべきではない.

既存のCD4+T細胞の記憶はワクチン接種の結果にも影響を与え,免疫反応の迅速化や改善,特に中和抗体の産生(これはT細胞に依存している)につながる可能性がある.同時に,既存のT細胞の記憶は,特にワクチンの相対的に小規模な第I相臨床試験においては,交絡因子として作用してしまう可能性がある.例えば,既存の免疫反応性を持つ被験者が異なるワクチン投与群に偏って配置されていた場合,誤った結論を導く可能性がある.これは既存免疫(pre-existing immunity)を試験デザインで考慮すべき変数として考慮することで回避することができる.したがって,COVID-19ワクチンのすべての第I相臨床試験において,既存免疫を測定することを推奨する.このような実験は,既存のSARS-CoV-2反応性T細胞の潜在的な生物学的意義を確認するための重要な機会となるであろう.

SARS-CoV-2に対する既存のT細胞の記憶は,有益なものであるか,あるいは無関係なものであるかのどちらかであると考えられがちである.しかし既存の免疫が「抗原原罪: original antigenic sin」(関連する病原体に対する既存の免疫記憶のために,潜在的に劣った免疫反応を誘発する傾向)や,「抗体依存性感染増強: antibody dependent enhancementADE, antibody-mediated disease enhancement」などのメカニズムを介して,実際に有害なものになる可能性もある.これらの結果を支持する直接的なエビデンスはないが,考慮する必要がある.既存の免疫に関連した有害な影響は,検証可能であり,COVID-19コホート研究やワクチン研究によって明らかになるであろう.

 

抗原原罪: 例えばインフルエンザAウイルスは周期性に大規模流行を起こすが,ヒトは生まれて最初に感染を受けたインフルエンザAウイルスの抗原型を最も強く記憶しており,その後に別の型のインフルエンザAウイルスの曝露を受けた時,その型に対する免疫だけでなく,元々記憶していたインフルエンザA型の抗体産生に対する抗原刺激も受けるという仮説であるが,近年これを裏付けるエビデンスが得られている.

 

インフルエンザの文献には,既存の交差反応性T細胞免疫が有益であることを示す多くのデータがある2009年のH1N1インフルエンザのパンデミックでは,疾患重症度に通常観察されない“V字型”の年齢分布曲線が認められ,高齢者の方が若年者よりも優れた成績を収めていることが指摘されたこれは,数十年前にヒトの集団の中で別のH1N1株が広がっていたことと関連しており,それに曝露していた年齢の人たちには,おそらく既存の免疫が生まれていたと推測される.これはH1N1に対する既存の免疫が一般のヒト集団に存在していることが示されることにより検証された9)10).一般のヒト集団にSARS-CoV-2に対する既存の免疫がある程度存在する場合,これは疫学的モデルにも影響を及ぼす可能性があり,COVID-19の感受性におけるsliding scale modelが検討されるかもしれないことを示唆している.

結論として,SARS-CoV-2に対する既往の免疫反応が,一般のヒト集団にある程度存在することが確立されたCCCsに対する免疫に起因するのではないかという仮説が立てられているものの明らかではない.これらはCOVID-19の重症度,集団免疫(herd immunity),ワクチン開発に影響を及ぼす可能性があり,実際のデータを用いた検討が待たれている.

References

1) Grifoni, A. et al. Targets of T cell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals. Cell 181, 1489–1501 (2020).

2) Weiskopf, D. et al. Phenotype of SARS-CoV-2-specific T-cells in COVID-19 patients with acute respiratory distress syndrome.

Preprint at medRxiv https://doi.org/10.1101/2020.04.11.20062349 (2020).

3) Braun, J. et al. Presence of SARS-CoV-2 reactive T cells in COVID-19 patients and healthy donors. Preprint at medRxiv https://doi.org/10.1101/2020.04.17.20061440 (2020).

4) Le Bert, N. et al. Different pattern of pre-existing SARS-COV-2 specific T cell immunity in SARS-recovered and uninfected individuals. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.05.26.115832 (2020).

5) Meckiff, B. J. et al. Single-cell transcriptomic analysis of SARS-CoV-2 reactive CD4+ T cells. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.06.12.148916 (2020).

6) Gorse, G. J., Patel, G. B., Vitale, J. N. & O’Connor, T. Z. Prevalence of antibodies to four human coronaviruses is lower in nasal secretions than in serum. Clin. Vaccine Immunol. 17, 1875–1880 (2010).

7) Zhao, J. et al. Airway memory CD4(+) T cells mediate protective immunity against emerging respiratory coronaviruses. Immunity 44, 1379–1391 (2016).

8) Killerby, M. E. et al. Human coronavirus circulation in the United States 2014–2017. J. Clin. Virol. 101, 52–56 (2018).

9) Greenbaum, J. A. et al. Pre-existing immunity against swine-origin H1N1 influenza viruses in the general human population. Proc. Natl Acad. Sci. USA 106, 20365–20370 (2009).

10) Hancock, K. et al. Cross-reactive antibody responses to the 2009 pandemic H1N1 influenza virus. N. Engl. J. Med. 361, 1945–1952 (2009).

 

(2)Grifoni, A. et al. Targets of T cell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals. Cell 181, 1489–1501 (2020).

https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.05.015.

Highlights

SARS-CoV-2に対する免疫反応を調査することは,COVID-19とワクチン開発を理解するための鍵となる

エピトーププールによって,COVID-19患者の回復者血漿から,CD4+T細胞はその100%から,CD8+T細胞はその70%から同定された

T細胞の免疫反応はスパイクだけでなく,MNなどのORFopen reading frame)にも集中している

SARS-CoV-2エピトープに対するT細胞の免疫反応性は,非感染者でも検出される

※エピトープ: 抗体が認識する抗原の一部分のこと.

Abstract

SARS-CoV-2に対する獲得免疫を理解することは,ワクチン開発,COVID-19の病態の解釈,およびパンデミック対策の校正に重要である.HLAクラスIおよびII予測ペプチド「メガプール」を用いることによって,流行中のSARS-CoV-2特異的CD8+およびCD4+T細胞が,それぞれCOVID-19の回復期患者の約70%および100%で同定された.ほとんどのワクチンの主な標的であるスパイクに対するCD4+T細胞の反応は強固であり,抗SARS-CoV-2 IgGおよびIgA力価の大きさと相関していたM,スパイク,およびNタンパク質は,それぞれCD4+応答全体の1127%を占め,追加の応答としては一般的にnsp3nsp4ORF3aORF8などを標的としたものであったCD8+T 細胞では,スパイクとMが認識され,少なくとも8つのSARS-CoV-2 ORFが標的とされた重要なことは,SARS-CoV-2反応性CD4+T細胞が未感染者の約4060%で認められたことであり,流行する「普通の風邪」のコロナウイルスとSARS-CoV-2との交差反応性T細胞認識が示唆されたことである

https://marlin-prod.literatumonline.com/cms/attachment/baab941d-a1bd-428d-8861-aebc1b863ff9/fx1_lrg.jpg

 

 

(3)Altmann DM, Boyton RJ. SARS-CoV-2 T cell immunity: Specificity, function, durability, and role in protection. Scince Immunology. July 17, 2020; 5(49): eabd6160.

doi: 10.1126/sciimmunol.abd6160.

Abstract

SARS-CoV-2の保護免疫を明確に理解するために,抗体の解析は,無症状,軽症,重症COVID-19T細胞の研究と並行して行われてきた.保護として働くCD4およびCD8エフェクターの機能を確定することは,抗体応答が短期間しか続かない可能性,およびT細胞の記憶がより持続性を持つ可能性があることを考慮すると重要である.集団レベルの免疫を完全に理解するためには,標準化された検査法を用いて抗体免疫とT細胞免疫の両方のスクリーニングを行うことが有益であろう.

Figure 1:

Hypothetical interactions between SARS-CoV-2 infected cells, antigen-presenting cells, CD4 and CD8 T cells.

ウイルスペプチド(暗緑色)は,SARS-CoV-2プロテオーム(すべてのタンパク質)のすべての部分によって処理され,感染細胞上のHLA I分子の溝にあるTCRレパートリーに提示され,感染細胞から破片を取り込んだ抗原提示細胞のHLA II分子によって提示される.SARS-CoV-2反応性CD4細胞は,IFN-γ,TNF-αおよびIL-2を分泌し,大部分がTh1様であるように見える.CD8細胞も同様のサイトカインプロファイルを分泌するが,感染した標的細胞を溶解する.現時点では,肺の免疫病態としてCD4またはCD8 T細胞の役割を明確に示すデータを認識していないが、仮説を表示した.

軽症COVID-19患者における抗体の急速な減少】

Ibarrondo FJ, et al. Rapid Decay of Anti–SARS-CoV-2 Antibodies in Persons with Mild Covid-19. N Engl J Med. July 21, 2020. doi: 10.1056/NEJMc2025179.

最近の論文では,感染初期に抗SARS-CoV-2 IgG抗体が急速に減少することが示唆されていた1)が,その正確な割合は記載されていなかった.我々は,Covid-19から回復した後に観察研究のために当施設に紹介された患者を評価した.血液サンプルに対して,SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン(RBD: receptor-binding domainIgGを検出するために,ELISA法(the enzyme-linked immunosorbent assay)で分析した2).このELISA法は,対照の抗RBDモノクローナルIgGCR3022Creative Biolabs)と同等の濃度で,血清抗RBD活性を正確に定量するようにさらに改良した.

対象者34人のうち30人がSARS-CoV-2 PCRが陽性であった.残りの対象者4人は,軽症かつアクセスの問題から検査を受けなかった人と同居しており,Covid-19に矛盾しない症状を認めた.対象者のほとんどが軽症であった; 2人は低流量酸素療法とleronlimabCCR5拮抗薬)が投与されたが,レムデシビルは投与されなかった.対象者は女性20人,男性14人であり,平均年齢は43歳(range, 21-68)であった.

対象者34人のうち31人が連続して2回のIgG測定を行い,残りの3人は連続して3回の測定を行った.最初の測定は発症から平均37日後(range, 18-65)に最後の測定は発症から平均86日後(range, 44-119)に行った

最初の平均IgGレベルは3.48 log10 ng/mlrange, 2.52-4.41)であった.対象者の年齢および性別,発症から最初の測定までの日数,および最初のlog10抗体レベルを含む線形回帰モデルに基づくと,推定平均変化(傾き)はー0.0083 log10 ng/ml/日(range, 0.0352-0.0062)であり,これは観察期間中において半減期約73に相当する(Figure 1A傾きの95%信頼区間はー0.0115〜―0.0050 log10 ng/ml/日(半減期, 52-120)であった(Figure 1B

SARS-CoV-2に対する抗体の防御的役割は不明であるが,通常は,これらの抗体は抗ウイルス免疫と妥当な相関関係を示しており,RBD抗体のレベルは血漿ウイルス中和活性と一致している急性ウイルス抗原曝露後の早期において,抗体は加速度的に減少することから3)SARS-CoV-1の報告4)5)されているものよりも急速に抗体が消失することが認められ,これはLongらの報告1)に一致する.これらの結果から,Covid-19患者の大多数を占める軽症例ではSARS-CoV-2に対する液性免疫は長続きしないのではないかという懸念が生じる90日程度を超えると減少速度は緩和するようなので,我々の観察期間を超えて推定することは困難である3).しかし,一般的なヒトコロナウイルスに対する免疫が短期間で消失することを考慮すると,抗体ベースの“免疫パスポート,集団免疫、そしておそらくはワクチンの持続性に関しては注意が必要であると考えられる.定量的な保護閾値(quantitative protection)と90日以降の抗体の減少率を確立するためには,さらなる研究が必要である.

 

Figure 1:

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2025179/20200721/images/img_xlarge/nejmc2025179_f1.jpeg

Reference

1) Long Q-X, Tang X-J, Shi Q-L, et al. Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections. Nat Med 2020 June 18 (Epub ahead of print).

2) Stadlbauer D, Amanat F, Chromikova V, et al. SARS-CoV-2 Seroconversion in humans: a detailed protocol for a serological assay, antigen production, and test setup. Curr Protoc Microbiol 2020;57(1):e100-e100.

3) Andraud M, Lejeune O, Musoro JZ, Ogunjimi B, Beutels P, Hens N. Living on three time scales: the dynamics of plasma cell and antibody populations illustrated for hepatitis a virus. PLoS Comput Biol 2012;8(3):e1002418-e1002418.

4) Cao W-C, Liu W, Zhang P-H, Zhang F, Richardus JH. Disappearance of antibodies to SARS-associated coronavirus after recovery. N Engl J Med 2007;357:1162-1163.

5) Chang S-C, Wang J-T, Huang L-M, et al. Longitudinal analysis of severe acute respiratory syndrome (SARS) coronavirus-specific antibody in SARS patients. Clin Diagn Lab Immunol 2005;12:1455-1457.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020722日)に923日追記しました

 

【テネシー州ナッシュビルの医療従事者における60日間のSARS-CoV-2に対する抗体の変化】

Patel MM, et al. Change in Antibodies to SARS-CoV-2 Over 60 Days Among Health Care Personnel in Nashville, Tennessee. JAMA. Published online September 17, 2020. doi:10.1001/jama.2020.18796.

有症状あるいは無症状の感染者において,SARS-CoV-2に対する免疫グロブリン抗体の減少が報告されている1)2)

抗体レベルが低下した場合に特にリスクが高いと考えられる医療従事者を対象に,SARS-CoV-2感染に対する抗体反応の持続時間を評価した.

Methods

成人COVID-19患者と定期的に直接接触していたヴァンダービルト大学医療センターの医療従事者を対象に,ベースライン時および約60日後の検体を用いて抗SARS-CoV-2抗体を評価した.

対象者は,202021日以降の症状に関するアンケートに記入し,202043日〜413日(ベースライン来院)と62日〜627日(60日後来院)において血液検査を受けた.血清検体は,SARS-CoV-2スパイク蛋白のprefusion-stabilized extracellular domainに対する酵素結合免疫吸着法(ELISA: enzyme-linked immunosorbent assay)を用いて抗SARS-CoV-2抗体の検査を行った.バックグラウンド補正で,血清希釈率 1:100signal-to-threshold ratio1.0以上の場合,検体は反応性があるとみなされ,比が高いほど抗体価が高いことを示している.このカットオフ値では特異度は99%,感度は96%であった4).症状(発熱,咳嗽,呼吸困難,筋肉痛,咽頭痛,嘔吐,下痢,嚥下障害,または嗅覚障害)の有無で層別化したコホート全体における血清陽性率の変化を述べる.ベースライン時の血清陽性者におけるベースライン時と60日後,および60日後の血清陽性者 vs 血清陰性者におけるベースラインと60日後のsignal-to-threshold ratioの平均値および中央値の変化を評価した.

Results

医療従事者約600人が対象であった; 最初のボランティア249人(女性64.5%; 白人91.6%; 年齢中央値33; 範囲, 21-70歳)からベースライン時の血清検体が採取され,230人(92%)が2回目の採血のために再来院した.対象者は看護師42.2%,医師およびadvanced practice clinicians34.5%,放射線技師6.8%,その他の医療従事者16.5%であった.ベースライン時に抗SARS-CoV-2抗体が検出されたのは19人(7.6%であったこのうち,8人(42%)は60日後に血清陽性閾値を超えて抗体が持続したが,11人(58%)は血清陰性となったこのように,全体の血清陽性率はベースライン時の7.6%19/249人)から60日後には3.2%8/249人)に変化した血清陽性のままであった8人うち6人(75%ベースライン来院前に症状を認め2人(25%)は無症状であった抗体が血清陽性閾値以下に低下した11人中5人(45%)がベースライン来院前に症状を認めたが,6人(55%)は無症状であった

ベースライン時に血清陽性であった19人はいずれも60日後に抗体が減少していたFigure60日後も血清陽性を維持していた対象者のベースライン時のsignal-to-threshold ratios(平均, 4.8; 範囲, 1.9-6.2は,60日後にsignal-to-threshold ratiosが閾値以下に低下した対象者のベースライン時のsignal-to-threshold ratios(平均, 1.4; 範囲, 1.1-1.3)と比較して,より高い値を示していたTable抗体は,血清陽性を維持していた対象者では,ベースライン時のsignal-to-threshold ratioが平均4.8から60日後には2.3に,抗体レベルが閾値以下に低下した対象者では,ベースライン時の1.4から60日後には0.6低下していた

Figure: AntiSARS-CoV-2 Signal-to-Threshold Ratios at Baseline and 60 Days in Health Care Personnel Seropositive at Baseline.

 

 

Table: Seropositivity at 60 Days, Symptom Prevalence, and Mean Signal-to-Threshold Values of AntiSARS-CoV-2 Immunoglobin Antibodies Among 19 Health Care Personnel Seropositive at Baseline.

 

Discussion

中和抗体と相関しているスパイク蛋白に対する抗 SARS-CoV-2 抗体5)が,医療従事者では60日間で減少し、血清陽性者の58%が血清陰性となったベースライン比に関係なく,signal-to-threshold ratio低下には一貫性があり,無症状者の血清陰性率が高いことは,アッセイの性能によるものではなく,2ヶ月における真の低下と解釈することを支持している.これらの結果から,集団の免疫力を評価するための横断的な血清有病率調査では,感染後に抗体が一過性にしか検出されないため,先行感染率を過小評価してしまう可能性があることが示唆される

SARS-CoV-2感染から回復した後,十分に高い抗体レベルを持つ血清を提供できる期間は限られているかもしれない.この研究の限界は,単施設での設定,サンプル数の少なさ,簡便なサンプリング,抗体動態を評価するための感染時期に関する情報の欠如などである.

 

References

1) Ibarrondo  FJ, Fulcher  JA, Goodman-Meza  D,  et al.  Rapid decay of Anti-SARS-CoV-2 antibodies in persons with mild Covid-19.   N Engl J Med. Published online July 21, 2020. doi:10.1056/NEJMc2025179.

2) Long  QX, Tang  XJ, Shi  QL,  et al.  Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections.   Nat Med. 2020;26(8):1200-1204. doi:10.1038/s41591-020-0965-6.

3) Stubblefield  WB, Talbot  HK, Feldstein  L,  et al; Influenza Vaccine Effectiveness in the Critically Ill (IVY) Investigators.  Seroprevalence of SARS-CoV-2 among frontline healthcare personnel during the first month of caring for COVID-19 patientsNashville, Tennessee.   Clin Infect Dis. 2020;ciaa936. doi:10.1093/cid/ciaa936.

4) Havers  FP, Reed  C, Lim  T,  et al.  Seroprevalence of antibodies to SARS-CoV-2 in 10 sites in the United States, March 23-May 12, 2020.   JAMA Intern Med. Published online July 21, 2020. doi:10.1001/jamainternmed.2020.4130.

5) Premkumar  L, Segovia-Chumbez  B, Jadi  R,  et al.  The receptor binding domain of the viral spike protein is an immunodominant and highly specific target of antibodies in SARS-CoV-2 patients.   Sci Immunol. 2020;5(48):eabc8413.

doi:10.1126/sciimmunol.abc8413.

6) Grifoni  A, Weiskopf  D, Ramirez  SI,  et al.  Targets of T cell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals.   Cell. 2020;181(7):1489-1501.e15. doi:10.1016/j.cell.2020.05.015.