COVID-19関連追加(2020813-2

 

HEPAフィルターについて】

Yeo S, et al. Use of HEPA filters to reduce the risk of nosocomial spread of SARS-CoV-2 via operating theatre ventilation systems. British Journal of Anaesthesia. July 23, 2020.

https://doi.org/10.1016/j.bia.2020.07.013.

エアロゾルによる感染伝播の証拠が増えていることから,院内感染の新たな潜在的伝播経路が懸念されている.このような状況において,我々の小規模な産科から,他の診療科でも直面する可能性のある新たな感染管理の課題を提示する.

空間のおける陽圧換気は,世界中の手術室において一般的である.陽圧によって,我々の産科分娩室からの空気が大きな換気グリルを通って,排出通気口がある隣接するリカバリー室に押し出される.その結果、潜在的に汚染された空気の流れがリカバリーベッドの上を直接通過することになる(Figure 1).現在の英国のガイドラインでは,陽圧式空間換気は,急激な空気の変化により粒子が希釈されるため,隣接するエリアへのエアロゾルの拡散のリスクを考慮すべきではないとされている1).これは,COVID-19患者の手術管理は,ウイルス感染伝播を確実に封じ込めるために陰圧または空気感染隔離室で行うべきであると推奨する他のガイドラインと矛盾している2)3)4)

産科分娩室で発生するエアロゾル発生手技と当院の産科リカバリーベッドの距離は3m以上であり,これまでに報告された環境汚染の範囲内に収まっている5)6).さらに,感染した被験者の気流の下流におけるエアロゾル濃度から,リカバリーエリアのスタッフや患者に病気が広がる可能性が強調される5)7)COVID-19対応分娩室で発生したエアロゾルが希釈されたとしても,スタッフやCOVID-19ではないリカバリー期の女性と新生児を大量のエアロゾルの流れにさらす可能性を正当化できないと考えられる.現在のところ,SARS-CoV-2の院内感染拡大リスクを減らすために,空間換気システムを適応させる証拠はほとんどない.それゆえ,我々は,過去の呼吸器疾患のアウトブレイク8)から文献に記載されている呼吸器隔離室を作るために使用するテクニックを報告する.

国のガイドラインに反しているが1),我々は当初,COVID-19患者に対応する場合は,分娩室の換気をオフにして,空気の流れを減らし,それによって隣接するエリアへの感染伝播リスクを減らすことを試みた.しかし,これは特に個人用保護具(PPE)を着用しているスタッフにとっては,分娩室内が耐え難いほどの温度になる結果となった.創傷感染(wound infections)リスクの増加は、スタッフがさらされるウイルスのエアロゾル負荷の増加と同様に,正当化することが困難である.さらに,換気システムでエアロゾルを除去できないため,空気感染予防策を長時間使用しなければならず,患者の流れが大幅に遅くなった.呼吸器隔離エリアを作る一見シンプルな方法は,“陰圧室”を作ることである2).残念なことに,我々の産科分娩室には排出用通気口がなく,吸入用通気口の気流を逆にすることができないため,この適応が不可能であった.COVID-19患者のために物理的に空間を分離して隣接するエリアの汚染リスクを軽減することも3)4),我々の小さな産科分娩室のセットアップでは不可能であった.

我々は,2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV-1)が発生した背景として報告されたように,分娩室とリカバリー室の間の換気グリルを密閉し,分娩室の空気を外部に排出するための排気管を設置して,その場しのぎ(make-shift)の陰圧室を作ることを検討した8).しかし,この解決策は構造上,かなりの作業を必要とし,現実的ではなかった.一時的な陰圧呼吸隔離室がない場合,空気感染の発生により,院内感染が広がるのを防ぐための新しい技術が使用されるようになった.これらの中でも,高効率微粒子空気(HEPA: high-efficacy particulate air)フィルターが有効であることが示されている8)HEPAフィルターは,ランダムに配置された繊維のマットで構成されており,拡散,遮断,慣性衝突(inertial impaction)を組み合わせて通過する粒子を遮断するこれにより,0.1ミクロンの粒子に対して99.97%のろ過能力を発揮する9).エアロゾルの飛沫の大きさは 15 ミクロンである.SARS-CoV-2 HEPAフィルターに関する研究はまだ発表されていないが,同程度の粒子を捕捉し,疾患を封じ込める際の有効性は十分に報告されている9)低コストで設置が簡単なため,換気グリルの上にHEPAフィルターを取り付けて,リカバリー室へ通過する空気をろ過することが,我々のケースに最適な解決策であると結論付けた.私たちは、フィルターのための空間設計を行い,良好な”密閉”を確保した.

設置後,空間換気機能テストを繰り返した.フィルターによって生じる空気の流れに対する抵抗が増加していることを考慮して,エアリークの可能性を評価した; その結果、重大なものであることが判明した.そして,分娩室のドアにスモークシールを取り付けた.さらなるテストの結果,分娩室の空気の入れ替えは推奨されている最小値25/時間を超えたままで,ほとんどリークもなく,隣接するエリアを汚染することもなかった.

このような改良された空気感染隔離室では,このメカニズムの要素は時間経過とともに劣化し,効率が低下し,スタッフや患者を危険にさらすことになることを認識することが重要であるそのため,定期的なテストとメンテナンスが必要であり,その頻度はメーカーによってガイドラインがある.ドアを閉じたままにしたり,適切なPPEを使用したりするなど,呼吸隔離(respiratory isolation)に必要な通常の予防措置も遵守する必要がある.

 

 

Figure 1: COVID-19対応分娩室.分娩室からリカバリー室までの陽圧換気とバルク気流(bulk airflow)の方向を示す.

 

Reference

1) Public Health England. Reducing the risk of transmission of COVID19 in the hospital setting Public Health England. 2020 (Available from:)

https://www.gov.uk/government/publications/wuhan-novel-coronavirus-infection-prevention-and-control/reducing-the-risk-of-transmission-of-covid-19-in-the-hospital-setting. Date accessed: April 24, 2020

2) Tang G, et al. Perioperative management of suspected/confirmed cases of COVID-19.

(Anaesthesia Tutorial of the Week)2020 (Tutorial 421 Available from:)

https://www.wfsahq.org/components/com_virtual_library/media/1c4ec5c64b9aaacf7c47f76a61fb6edc-atow-422-01.pdf Date accessed: April 23, 2020

3) Wong J, et al. Preparing for a COVID-19 pandemic: a review of operating room outbreak response measures in a large tertiary hospital in Singapore. Can J Anaesth. 2020; 67: 732-745

4) World Health Organisation

Clinical management of severe acute respiratory infection (SARI) when COVID-19 disease is suspected. (Available from:)

https://www.who.int/publications-detail/clinical-management-of-severe-acute-respiratory-infection-when-novel-coronavirus-(ncov)-infection-is-suspected. Date accessed: April 25, 2020

5) Guo ZD, et al. Aerosol and surface distribution of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 in hospital wards, Wuhan, China. Emerg Infect Dis. 2020; 26: 7

6) Ong SWX, et al. Air, surface environmental, and personal protective equipment contamination by severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) from a symptomatic patient. JAMA. 2020; 323: 1610-1612

7) Kurnitski J, et al. How to operate and use building services in order to prevent the spread of the coronavirus disease (COVID-19) virus (SARS-CoV-2) in workplaces. REHVA COVID-19 guidance document.

REHVA: Federation of European Heating, Ventilation and Air Conditioning Associations, 2020 (Available from:)

https://www.rehva.eu/fileadmin/user_upload/REHVA_COVID-19_guidance_document_ver2_20200403_1.pdf. Date accessed: April 20, 2020

8) Rebmann T. Management of patients infected with airborne-spread diseases: an algorithm for infection control professionals. Am J Infect Contr. 2005; 33: 571-579

9) Schentag JJ, et al. SARS: clearing the air.

National Academies Press, Washington (DC)2004