COVID-19関連追加(2020813日)

検査について論文2つ.

【自宅における自己採取スワブPCR検査について】

McCulloch DJ, et al. Comparison of Unsupervised Home Self-collected Midnasal Swabs With Clinician-Collected Nasopharyngeal Swabs for Detection of SARS-CoV-2 Infection. JAMA Netw Open. July 22, 2020; 3(7): e2016382.

doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.16382.

Introduction

自宅における自己採取スワブは,医療従事者への曝露リスクとPPEの枯渇を最小限に抑えながら検査アクセスを増やすことができ,コミュニティにおけるCOVID-19の早期発見を可能にするかもしれない.COVID-19の診断における,自宅における自己採取スワブ医療者が採取した鼻咽頭スワブとの比較は,十分に検討されていない.

Methods

SARS-CoV-2陽性の有症状外来患者と,ドライブスルークリニックに来院した有症状医療従事者が対象参加者であった.参加者には,指導することなく自宅で採取できる中鼻腔スワブのテストキットが提供された.自宅における自己採取中鼻腔スワブと医療者が採取した鼻咽頭スワブの性能を比較したCt値は,ウイルス量の半定量的な尺度である.どちらの方法でもSARS-CoV-2 が陽性であれば,“真陽性”と定義した医療者によるスワブが陽性で,自宅における自己採取によるスワブが陰性であれば,“偽陰性”と定義した感度は,真陽性を真陽性と偽陰性の合計で割ったものと定義した(Sensitivity was defined as true positives divided by the sum of true positives and false negatives Cohenκは、2つの定量検査における結果の一致として計算された.統計学的有意性の閾値は,2-tailed P <0.05 とした.

Results

参加者185人のうち,158人(85%)がドライブスルークリニックで登録され,27人(15%)がSARS-CoV-2陽性となった後に登録された.参加者185人のうち,41人(22.2%)が,クリニックで採取した鼻咽頭スワブ,自宅で採取した中鼻腔スワブ,またはその両方でSARS-CoV-2陽性であった.参加者158人(85%)は医療従事者であり,そのうち14人(9%)が陽性であった.参加者の一般的なCOVID-19症状は,筋肉痛(33人[80.5%]),咳(28人[68.3%]),発熱(26人[63.4%])であった.医療者によるスワブと比較して,自宅におけるスワブの感度は80.0%95% CI, 63%-91%),特異度は97.9%95% CI, 94%-99.5%)であった(TableCohenκ統計量(κ係数)は,0.8195% CI, 0.70-0.93)であり,実質的な一致を示唆した

 

 

Table:

 

自宅におけるスワブのCt医療者によるスワブのCtには正の相関が認められた(相関係数0.81; P< 0.001)(Figure.発症からスワブ採取までの時間は,真陽性と偽陰性の間で同等であった.真陽性者28人のうち,自宅におけるスワブ採取は発症からmedian 4日後(IQR, 2-7日)であったのに対し,偽陰性7人のうち、自宅におけるスワブ採取は発症からmedian 6日後(IQR, 3-18日)であった(P= 0.32).医療者によるスワブでは,偽陽性に比べて,真陽性のmedian Ct値とIQRは低かった33.7 [33.5-35.1] vs 24.1 [18.7-26.0] ; P= 0.01偽陰性のスワブ5本のうち4本はCt値が33以上であったCt値が32以下のすべてのスワブの感度分析では,自宅におけるスワブの感度は95%であった.

 

 

Figure: Cycle Thresholds (Ct) for Home Self-collected Midnasal Swabs and Clinician-Collected Nasopharyngeal (NP) Swabs

Discussion

症状のある患者,特にウイルス量が多い患者におけるSARS-CoV-2の検出については,自宅での中鼻腔スワブ採取は,医療者による鼻咽頭スワブ採取と同等の結果が得られた

自宅における自己採取スワブ検査は,医療機関以外でのアクセスが可能であること,PPEの使用を最小限に抑えることができることなど,いくつかの利点がある.この研究における自宅での自己採取の感度は,以前に報告されたものよりも低かった1)我々の観察では,偽陰性は結果として初期のウイルス量が少ないサンプルであった2)-4).在宅における検査戦略は,感染のリスクが最も高く,医療ケアを求める可能性が低い初期における患者を対象とすべきである.

Limitation: 温度環境の影響にてサンプルの劣化がある可能性がある.しかし,我々は,温度環境における最大9日間の呼吸器ウイルスの安定性を示している5).自宅での自己採取の多くは,医療者による採取の1日後に行われたため,ウイルス量が低かった可能性がある.参加者の多くが医療従事者であったため,集団への一般化が制限される可能性がある.医療者が採取したスワブは不完全な基準であり,バイアスが生じる可能性がある.

 

References

1) Seaman  CP, Tran  LTT, Cowling  BJ, Sullivan  SG.  Self-collected compared with professional-collected swabbing in the diagnosis of influenza in symptomatic individuals: a meta-analysis and assessment of validity.   J Clin Virol. 2019;118:28-35. doi:10.1016/j.jcv.2019.07.010

2) He  Z, Zhuang  H, Zhao  C, Dong  Q, Peng  G, Dwyer  DE.  Using patient-collected clinical samples and sera to detect and quantify the severe acute respiratory syndrome coronavirus (SARS-CoV).   Virol J. 2007;4:32. doi:10.1186/1743-422X-4-32

3) Zou  L, Ruan  F, Huang  M,  et al.  SARS-CoV-2 viral load in upper respiratory specimens of infected patients.   N Engl J Med. 2020;382(12):1177-1179. doi:10.1056/NEJMc2001737

4) Wikramaratna  P, Paton  RS, Ghafari  M, Lourenco  J. Estimating false-negative detection rate of SARS-CoV-2 by RT-PCR. medRxiv. Preprint posted online April 14, 2020. doi:10.1101/2020.04.05.20053355

5) Chu  HY, Englund  JA, Starita  LM,  et al; Seattle Flu Study Investigators.  Early Detection of Covid-19 through a Citywide Pandemic Surveillance Platform.   N Engl J Med. 2020. doi:10.1056/NEJMc2008646

 

 

 

 

【大学をオープンするにはどのような検査スクリーニングが有用か】

Paltiel AD, et al. Assessment of SARS-CoV-2 Screening Strategies to Permit the Safe Reopening of College Campuses in the United States. JAMA Netw Open. 2020;3(7):e2016818. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.16818.

Introduction

COVID-19パンデミックは,多くの米国の全寮制大学に実存的な脅威をもたらしている; 9月に学生に大学の門戸を開くか,または深刻な財政上の影響を受ける危険性がある.

Objective

SARS-CoV-2スクリーニングの実行基準を定義し,2020年秋学期に学生を米国の全寮制大学キャンパスに安全に戻すことを可能にすること.

Methods

この解析モデル研究では,学期開始時において,SARS-CoV-2に感染していない学生4990と,診断されていない無症状のSARS-CoV-2感染者10の仮想的コホートを対象とした(Table 1.意思決定および費用対効果分析をコンパートメントモデルに結び付け,症状ベースのスクリーニングおよび検査の頻度の変化(すなわち1237日ごと)感度(すなわち,70%-99%特異度(すなわち98%-99.7%,および費用(すなわち10ドル/検査-50ドル/検査)を評価した.実行再生産数(Rt)は1.52.53.5とし,外因性感染をもたらす輸入感染症として,3つの流行シナリオを定義した。モデルでは,有症状例のCFR0.05%とし,感染が最終的に観察しうるCOVID-19症状をコホートにもたらす確率を30%と仮定した.モデルの予測は,2020年秋学期を短縮した80日間とした.この研究は、パラメータ化データに関する米国政府の指針に従った.

Main Outcomes and Measures: 累積検査,感染,コスト; 毎日の隔離寮の全数調査; 費用対効果の増加; 予算への影響.

 

 

Table 1: Model Input Parameters and Scenarios.

 

Results

Test Frequency and Sensitivity:

学期の開始時において,学生5000人の仮想的コホートの内訳は,SARS-CoV-2感染がない4990人(99.8%)と,SARS-CoV-2感染がある10人(0.2%)である学期80日間のベースケース(すなわち,実効再生産数2.5外因性感染10/※外因性感染: 生体外から侵入した微生物によって感染が起こるもの)において,1237ごとに感度70%,特異度98%のスクリーニングを行ったところ,それぞれにおける累積感染数は1622433791840であった.症状に基づくスクリーニングでは4970の感染を検出した.検査の感度を70%から90%に上げることで,総感染数が減少した(例えば,毎日のスクリーニングでは162から149へ,毎週のスクリーニングでは1840から1118へ).Figure 1は,3つの流行シナリオにおける,検査感度と検査頻度の関数としての累積感染数を示している

 

Figure 1: Cumulative Infections as a Function of Test Sensitivity and Frequency.

80日間の水平線上で,ベースケース(Rt 2.5, 検査特異度98%, 10回の外因性感染)(A),ワーストケース(Rt 2.5, 検査特異度98%, 25回の外因性感染)(B),およびベストケース(Rt 1.5, 検査特異度99.7%, 5回の外因性感染)(C)について、これらのパネルは、感度70%から99%までの範囲の検査における累積感染数を示している.

 

Isolation Dormitory Occupancy:

ベースケースにおいて,感度70%,特異度98%のスクリーニング検査を毎日実施した結果,平均116人の学生の全数調査が行われ,そのうち21人(18%)が真陽性であった(Figure 2A2日ごとにスクリーニングを行うと,検査数が少なくなり,偽陽性が少なくなったため,1日の平均全数(census)は76人にまで減少した; しかし,検査の頻度が少ないことは感染拡大と関連があり,真陽性となり隔離された学生の平均割合も高くなった(28[37%]Figure 2B1のスクリーニングと症状に基づくスクリーニングは、隔離寮占有数の大幅な増加と関連していた(Figure 2C2D.例えば,7日ごとのスクリーニングでは,隔離寮占有数は1日平均121人になり,108人(90%)が真陽性であった.感度解析の結果,Figure 2で明らかになった傾向は,80日間の計画された水平線を超えて拡大していることが明らかになった(データを示していない).最初の無症状感染数を0100で変化させても,この結果に大きな変化は認めなかった.

より特異度の高い検査では,偽陽性の学生数およびその学生を隔離するのに必要なキャパシティの負担は減少した.例えば,ベースケースにおける毎日のスクリーニングでは,検査の特異度を98%から99.7%に上げることによって,1日の偽陽性の平均学生数が95人から15人に減少した.

ワーストケースを想定した場合(すなわち毎週25人の外因性感染数でRt 3.5),毎日スクリーニング検査を行った場合,隔離する平均学生数は152人で,そのうち60人(39%)が真の感染者であった.2日毎のスクリーニング検査では,同様の全数(151人)が得られたが,真性感染者の割合(106[70])が高くなった.毎週のスクリーニング検査または症状ベースのスクリーニング検査では,80日間の学期が終了する前に,ほぼ全学生が感染していたことになる.

ベストケース(すなわち,毎週5回の外因性感染でRt 1.5,特異度99.7%の検査)では,隔離寮占有数は,毎週のスクリーニング検査では18人(感染16人,偽陽性2人),症状ベースのスクリーニング検査では24人(すべて真陽性)であった.

 

Figure 2: Projecting the Required Size of the Isolation Dormitory

隔離寮は,偽陽性の学生,症状のある学生.真陽性で無症状の学生を収容するのに十分な広さが必要である.80日間において,これらのパネルは,ベースケース・シナリオ(すなわちRt 2.5)の下で,感度70%,特異度98%の検査を使用した隔離寮にいる学生数を示している.毎日のスクリーニングと2日毎のスクリーニングでは、外因性感染(週に10人)の影響が貝状(scalloped)の境界線(A,B)に認められる; この影響は,検査の頻度が少なく,症状に基づいたスクリーニング(C,D)では,真陽性数が外因性感染の影響を比較的小さく隠蔽しているため,あまり顕著ではない.

 

Cost-effectiveness and Budget Impact Assessment:

ベースケースでは,すべてのもっともらしいWTP値(WTP: willingness to pay, 支払意思額)において,より高価で精度が高い検査によるスクリーニングよりも,より安価で感度の低い検査によるスクリーニングが優位であった(すなわち,それはコストがより低く,より多くの感染を回避できた)最大WTP基準(感染数を1回避するために8500ドル)では,2日毎に感度70%の検査でスクリーニングを行うことが好ましい戦略であったWTPが感染数を1回避するのに28400ドルを超える場合は,同じ検査を用いた毎日のスクリーニングが最適であった(Table 2.ワーストケースを仮定した場合,WTPが感染数を1回避するために4400ドルを超える場合には,毎日のスクリーニング戦略が唯一の非劣位的選択であった; 最大WTP基準(感染1回避あたり11600ドル)では,最も感度の低い検査(すなわち70%)による毎日のスクリーニングが好ましい選択であった.ベストケースを想定した場合(感染を1回避した場合の最大WTP5500ドルの場合),感度70%を持つ検査を用いた週1回のスクリーニングが最適であった.唯一入手可能な検査が25ドルで感度80%の場合,スクリーニングの最適な頻度は,ベストケース,ベースケース,ワーストケースのシナリオでは,それぞれ7日,3日,2日に1回となる.感染から症状に至る確率が30%から65%に上昇した場合,ベースケースシナリオでは毎日のスクリーニングが最適であった.80日間の学期中,望ましいスクリーニング戦略を実施するための学生一人当たりの費用は,ベストケースシナリオ,ベースケースシナリオ,ワーストケースシナリオでそれぞれ120ドル,470ドル,910ドルであった(Table 3).

 

 

Table 2: Results of the Incremental Cost-effectiveness Analysis in the Base-Case, Worst-Case, and Best-Case Scenarios

 

Table 3: Per-Student Costs for Optimal Policies During an 80-Day Horizon Under Base-Case, Worst-Case, and Best-Case Scenarios

 

 

Conclusions

すべてのシナリオにおいて,検査頻度は検査感度よりも累積感染数との関連性が強かったこの解析モデルでは,我々が想定したどのシナリオにおいても,症状に基づくスクリーニングだけではアウトブレイクを食い止めるのに十分ではなかった費用対効果の分析では,実効再生産数Rtがそれぞれ2.53.5,または1.5の場合,それぞれ21,または7ごとに感度70%の検査を行うスクリーニングが好ましい方法であった

この解析モデル研究では,検査が迅速かつ安価で,たとえ感度が悪くても(>70%),2日ごとのスクリーニングRt2.5未満に保つための厳格な行動介入を組み合わせることでCOVID-19感染者数を制御可能な数に維持し,学生のキャンパスへの安全な復帰を可能にすると推定される.

 

私見:

有病率0.2%の集団において,80日間で,実効再生産数2.5,外因性感染10/週とすると,1日,2日,3日,7日ごとに感度70%,特異度98%のスクリーニングを行ったところ,それぞれにおける累積感染数は162人,243人,379人,1840人であった.費用対効果の面からも2日に1回の検査が有用である.という結果であるが,PCR検査の感度に関しては,別の報告(2020518日ファイル,Annals of Internal Medicineより)では,感度は発症1日前33%,発症当日72%である.症状に基づくスクリーニングはアウトブレイクを防げないという結論になっているが,上記の報告を考慮すると,この論文は感度を高めに見積もっている問題があるかもしれない.