COVID-19関連追加(2020814日)

 

【遠紫外線光far-UVC lightについて】

Buonanno M, et al. Far-UVC light (222nm) efficiently and safely inactivates airborne human coronaviruses. Scientific Reports. June 24, 2020.

Abstract

空気中のウイルス感染伝播を防ぐための直接的なアプローチは,ウイルスが産生されてから短時間のうちにウイルスを不活性化することである.殺菌性のある紫外線(通常254 nm)は有効であるが,直接使用すると皮膚や目に健康被害を与える可能性がある.一方,遠紫外線(207222 nmは,効率的に病原体を死滅させることができる.我々は以前,222 nmの遠紫外線が空気感染性をもつインフルエンザウイルスを効率的に死滅させることを実証した.そして,さらに空気感染性をもつヒトコロナウイルスアルファHCoV-229EおよびベータHCoV-OC43に対する遠紫外線の有効性を検討した; どちらも50年以上前に分離され,毎年呼吸器感染症の1530%を引き起こし,人間における風土病である.HCoV-OC43ウイルス同様に,SARS-C-V-2もベータ属である.遠紫外線ランプは,UV露光チャンバー(chamber: 小さな部屋)から22 cm離れて設置され26 cm×25.6 cm×254μmUV透過プラスチック窓(TOPAS 8007×10, TOPASアドバンストポリマーズ社, フローレンス, KYに向けられた.システムを介した供給量は12.5 L/であった.UV露光領域の体積は4.2 Lであり,そして各エアロゾルは約20秒間露光された.照射チャンバーは,バイオセーフティレベル2キャビネットに含まれ,すべての空気吸入・排出口はシステムの不要な汚染を防ぐために,HEPAフィルターGEヘルスケア・バイオサイエンス、ピッツバーグ、ペンシルバニア州)を設置した.結果として,1.7 mJ/cm21.2 mJ/cm2の低線量によって,エアロゾル化したHCoV-229EHCoV-OC4399.9%が不活性化された.すべてのヒトコロナウイルスはゲノムサイズが類似しているため,SARS-CoV-2を含む他のヒトコロナウイルスに対しても遠紫外線は同様の不活性化効率を示すと予想される.ベータHCoV-OC43の結果に基づいて,公共の場所における現在の規制線量(〜3 mJ/cm2/hourによる連続的な遠紫外線照射によって,8分で〜90%11分で95%16分で99%25分で99.9%のウイルスが不活性化する.このように,現在の規制線量内ではあるが,低線量遠紫外線照射は,公共の場所のおける空気中のコロナウイルスを,安全かつ大幅に減少させることができる.

 

Discussion

非常に低線量の遠紫外線がエアロゾルによって運ばれた空気中のヒトコロナウイルスを効率的に死滅させることを示した.光線波長222-nmにおける低線量の積算紫外線照射量(積算光量)1.21.7 mJ/cm2は,空気中のベータおよびアルファコロナウイルス属ヒトコロナウイルスの99.9%をそれぞれ不活性化することがわかったすべてのヒトコロナウイルスは,放射線感受性の重要な決定要因であるゲノムサイズが類似しているため,SARS-CoV-2を含む他のヒトコロナウイルスに対しても,遠紫外線光は同様の不活性化効率を示す可能性が高いと考えられる.これまでの安全性に関する研究1)-7)およびエアロゾル化したインフルエンザAH1N1)を対象とした先行研究8)と合わせて,これらの結果は,病院,公共交通機関,レストラン,空港,学校などの屋内公共施設での低線量遠紫外線の継続的な照射の有用性を示唆しており,空気を媒介するウイルスの拡散を低減するための安全かつ安価なツールとなる可能性がある.現在の規制線量の範囲内でありながら,低線量遠紫外線照射は,SARS-CoV-2を含む空気中のコロナウイルス濃度の周囲レベルを安全に大幅に低下させることができる.

 

Figure 1: コロナウイルスの生存率と遠紫外線照射量の関連

figure1

生存率(fractional survival),PFUUV / PFUcontrolsは,遠紫外線222 nmの関数としてプロットされている.結果は、ポアソン分布を適用することにより,推定PFUplaque forming units/ml = 0.7 TCID50を使用した.値は,複数の実験(アルファコロナウイルスHCoV-229En=3)およびベータコロナウイルスHCoV-OC43n=4))からの平均±SEM; 線はベストフィット回帰(best-fit regressions)を表す.

 

 

Figure 2:

figure2

エアロゾル化されたアルファHCoV-229Eに曝露して感染したMRC-5正常ヒト肺線維芽細胞の蛍光画像.ウイルス溶液を,光波長222 nm(a) 0(b) 0.5(c) 1(d) 2 mJ/cm2に曝露させながら,エアロゾルチャンバーを通過させた後にバイオサンプラーから回収した.緑色の蛍光は,感染した細胞を示す(緑色: 抗ヒトコロナウイルススパイク糖タンパク質抗体に対する二次抗体として使用されるAlexa Fluor-488: 青色=核染色DAPI).

Figure 3:

figure3

エアロゾル化されたベータHCoV-OC43に曝露して感染したWI-38正常ヒト肺線維芽細胞の蛍光画像.ウイルス溶液を,光波長222 nm(a) 0(b) 0.5(c) 1(d) 2 mJ/cm2に曝露させながら,エアロゾルチャンバーを通過させた後にバイオサンプラーから回収した.緑色の蛍光は,感染した細胞を示す(緑色: 抗ヒトコロナウイルススパイク糖タンパク質抗体に対する二次抗体として使用されるAlexa Fluor-488: 青色=核染色DAPI).

 

Reference

1) Buonanno, M. et al. 207-nm UV light - a promising tool for safe low-cost reduction of surgical site infections. I: in vitro studies. Plos One 8(10), e76968 (2013).

2) Buonanno, M. et al. 207-nm UV light-a promising tool for safe low-cost reduction of surgical site infections. II: In-Vivo Safety Studies. PLoS One 11(6), e0138418 (2016).

3) Buonanno, M. et al. Germicidal efficacy and mammalian skin safety of 222-nm uv light. Radiat. Res. 187(4), 483–491 (2017).

4) Ponnaiya, B. et al. Far-UVC light prevents MRSA infection of superficial wounds in vivo. Plos One 13(2), e0192053 (2018).

5) Narita, K. et al. Disinfection and healing effects of 222-nm UVC light on methicillin-resistant Staphylococcus aureus infection in mouse wounds. J. Photochem. Photobiol. B 178(Supplement C), 10–18 (2018).

6) Narita, K. et al. Chronic irradiation with 222-nm UVC light induces neither DNA damage nor epidermal lesions in mouse skin, even at high doses. PLoS One 13(7), e0201259 (2018).

7) Yamano, N. et al. Long-term effects of 222 nm ultraviolet radiation C sterilizing lamps on mice susceptible to ultraviolet radiation. Photochem Photobiol, (2020).

8) Welch, D. et al. Far-UVC light: A new tool to control the spread of airborne-mediated microbial diseases. Sci. Rep. 8(1), 2752 (2018).

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020814日)に97日追記しました

 

222-nmfar- UVC照射によるSARS-CoV-2への効果】

Kitagawa H, et al. Effectiveness of 222-nm ultraviolet light on disinfecting SARS-CoV-2 surface contamination. American Journal of Infection Control. Sep 4, 2020.

https://doi.org/10.1016/j.ajic.2020.08.022.

Background

SARS-CoV-2によって汚染された表面を効率的に消毒することは,その拡散を防ぐのに役立つ可能性がある.本研究では,SARS-CoV-2で汚染された表面の消毒に対する222-nm遠紫外線光(UVC: far-ultraviolet light)のin vitroにおける有効性を調べることを目的とした.

Methods

Cells and virus:

VeroE6/TMPRSS2細胞(ヒトTMPRSS2を発現するアフリカミドリザル腎由来細胞, Japanese Collection of Research Bioresources (JCRB) Cell Bankより購入, JCRB1819)を,10%子牛血清(FCS; Biosera, Kansas City,  MO, U.S.A.),ペニシリンG100単位/ml, 明治製菓ファーマ, 東京),ストレプトマイシン(100μg/mL, 明治製菓ファーマ)を添加したDulbecco's modified Eagle's minimum essential mediumDMEM, Invitrogen社)中で増殖させた.細胞は5% CO2下,37℃で培養した.

SARS-CoV-2 2019-nCoV/Japan/AI/I-004/2020株は国立感染症研究所から提供された.ウイルス懸濁液を準備するために,VeroE6/TMPRSS2細胞をウイルスに感染させ,DMEMに播種した.細胞変性効果が十分に認められた時に,培養液上清を採取し,0.45μmのフィルターでろ過したウイルス力価は,標準TCID50アッセイ(the standard 50% tissue culture infectious dose)により決定し,従来報告されているように,TCID50/mLとして表現した.約5×106 TCID50を含むウイルス懸濁液(100μL)を滅菌ポリスチレンプレート(直径8.8cm)に付加し,直径約7cmの円状に拡げた.播種液は,室温でバイオセーフティーキャビネット内の無菌層流下で乾燥させた.SARS-CoV-2ウイルスを用いたすべての実験は,広島大学のバイオセーフティレベル3BSL3)格納施設で行った.すべての実験結果は,3回の複製における平均値として報告された.

222-nm UVC disinfection:

本研究で使用したCare222TM(ウシオ電機株式会社, 東京, 日本)というUVC発光装置は,222-nm塩化クリプトン(Kr-Cl)エキシマランプモジュールである.ランプには,優位な222-nmの発光波長以外のすべての波長を除去する光学フィルターが含まれている.222-nm UVC照射については,Care222TMをプレートの表面から24cm上方に設置し,プレート表面での照射強度は,0.1mW/cm2であった(最近校正されたユニメーターSNK005 meter(ウシオ電機株式会社, 東京, 日本)を用いて測定した).各処理時間の照射後,対照および処理したプレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS1mL1分間洗浄し,ウイルス含有PBSを試験管に回収して分析した.

TCID50:

標準TCID50アッセイを使用して,従来報告されているように各プレートから収集したウイルスサンプルのウイルス力価を同定した.log10 TCID50/mL減少量は,222-nm UVC照射後のプレートから回収されたlog10 TCID50/mL値と対照プレート(非照射)から回収された値を比較することによって計算された

Quantitative reverse transcription PCR (RT-qPCR):

NucleoSpin RNA ウイルスキット(MACHEREY-NAGEL GmbH & Co. KG., Düren, ドイツ)を用いて、各プレートから採取したウイルスサンプルから SARS-CoV-2 RNA をメーカープロトコルに従って抽出した.SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)遺伝子の特異的増幅のための従来のRT-qPCRは,One Step PrimeScript III RT-qPCRミックス(タカラバイオ株式会社, 草津市, 日本)を用いて,メーカープロトコルに従って行った.以下のプライマーおよびプローブのセットを使用した: フォワードプライマー(2.4μM, 5-AAA TTT TGG GGA CCA GGA AC-3; リバースプライマー(3.2μM, 5-TGG CAG CTG TGT AGG TCA AC-3; および0.4μMプローブ, 5-FAM-ATG TCG CGC ATT GGC ATG GA-BHQ-3′.熱サイクル(thermal cycling)は次のように行った: 逆転写(52℃で5分間),初期熱変性(initial denaturation)(95℃で10秒間),熱変性(95℃で5秒間)を45サイクル,最後のアニーリング(結合)/伸長(60℃で30秒間).

Results

TCID50アッセイおよびRT-qPCRの結果をTable 1に示す.222-nmUVC0.1mW/cm2, 30秒間)を3mJ/cm2照射すると,生きているSARS-CoV-299.7%減少)がTCID50アッセイに基づいて検出不可能なレベルまで減少した対照的に,SARS-CoV-2 RNAのコピー数は,UVCを最大300秒照射後でも,非照射対照と比較して変化しなかった(サイクル定量(Cq: cycle quantification, 17.02-18.32

 

Table1: Efficacy of 222-nm UVC light (0.1mW/cm2) on reducing viable SARS-CoV-2.

 

Discussion

本研究の結果,222-nm UVC3mJ/cm20.1mW/cm2, 30秒間)で照射すると,生きているSARS-CoV-299.7%減少することが判明した.以前の報告では,ウイルスがエアロゾル化しているにもかかわらず,低線量222-nm UVCでいくつかのウイルスを不活化したことが示されている; 222-nm UVC2mJ/cm2照射するとエアロゾル化したH1N1インフルエンザウイルスが95%以上を不活化した報告がある1).また,222-nm UVC1.7mJ/cm2照射すると,エアロゾル化したヒトコロナウイルスαHCoV-229EおよびβHCoV-OC4399.9%がそれぞれ1.2mJ/cm2で不活化された2).以前の報告では,SARS-CoV-2のウイルス力価はプラスチックプレート上で経時的に低下することが示されていた3)

乾燥条件による対照プレートのウイルス力価の低下は,3mJ/cm2という非常に低い紫外線量でのウイルス死滅のプラトーをもたらした可能性がある.SARS-CoV-2に対するUVCの有効性はいくつか報告されているが,UVの波長や実験条件が異なるため,本研究の結果を先行研究と比較することは困難である.生きているSARS-CoV-2とは対照的に,RT-qPCR で同定されたSARS-CoV-2 RNAのコピー数は,30mJ/cm20.1mW/cm2, 300秒間)の 222-nm UVC照射を行っても減少しなかったRT-qPCRの結果においては,Cq値が17.0218.32の範囲でほぼ同じRNAコピー数を示したことから,我々のRT-qPCRアッセイが有効に機能したと考えられる.最近の研究では,RT-qPCRによる院内環境におけるSARS-CoV-2による汚染が報告されている.しかし,我々の研究では,この手法は生きているSARS-CoV-2による汚染を正確に反映していないことが示唆しているむしろ,UVC照射後の生きているSARS-CoV-2による汚染を検出するためにTCID50アッセイを使用すべきである

最も一般的に使用されているUV装置は,254-nmUVCランプであるが4),この波長は皮膚や目に有害であることが知られている

このため,これは主に無人の空間でしか使用できない.対照的に,最近の研究では,222-nm UVC254-nm UVCよりも有害性が低いことが示されている.

そのため,222nm UVC照射システムは,患者が入院している,医療従事者や来訪者が頻繁に訪れる病室を含む占有空間で使用することが可能である.しかし,222-nm UVC照射の安全性と有効性については,さらなる研究が必要である.

我々の研究の限界の一つは,SARS-CoV-2汚染に対する222-nm UVC照射は,in vitroにおける有効性を調べたのみである.また,現実世界の表面に対する評価は行っていない.

Conclusions

222-nm UVC照射が生きているSARS-CoV-2に対して有効であることが示された

Reference

1) Welch D, et al. Far-UVC light: A new tool to control the spread of airborne-mediated microbial diseases. Sci Rep. 2018; 8: 2752

2) Buonanno M, et al. Far-UVC light (222 nm) efficiently and safely inactivates airborne human coronaviruses. Sci Rep. 2020; 10: 10285

3) van Doremalen N, et al. Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1. N Engl J Med. 2020; 382: 1564-1567

4) Marra AR, et al. No-touch disinfection methods to decrease multidrug-resistant organism infections: A systematic review and meta-analysis.

Infect Control Hosp Epidemiol. 2018; 39: 20-31