COVID-19関連(2020815日)

 

COVID-19における肥満と死亡率について】

Tartof SY, et al. Obesity and Mortality Among Patients Diagnosed With COVID-19: Results From an Integrated Health Care Organization. Annals of Internal Medicine. Aug 12, 2020.

https://doi.org/10.7326/M20-3742.

Background

肥満,人種/民族,およびその他の関連のある特性は,COVID-19の危険因子として挙げられているが,まだ研究ではそれらの影響は十分に紐解かれていない.

Objective

COVID-19の死亡リスクにおけるBMI,基礎疾患,時間,近隣レベルの社会人口統計学的因子,およびその他の因子の調整された影響を調査する.

Methods

Design: レトロスペクティブコホート研究(2020213日から52日まで).

Setting: Kaiser Permanente Southern California, a large integrated health care organization.

Measurements: 多変量回帰分析によって,21日目の死亡リスクに対するBMIの影響を推定した; 年齢およびでも層別化した.

Exposure: 研究対象である一次曝露変数は,BMIであり,BMIで、18.5kg/m2未満(低体重),18.524kg/m2(正常),2529kg/m2(過体重),3034kg/m2(肥満クラスI),3539kg/m2(肥満クラスII)、40kg/m2以上(肥満クラスIIIまたは極度の肥満)の米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)のサブカテゴリーに分類した.指標日におけるBMI測定値またはそれに最も近い値(2016年まで)を選択した.

Outcomes: 主要アウトカムは指標日から 21日以内の死亡とした.最後の患者が登録された日(指標日)を研究終了日の21日前とした.死亡した患者と生存した患者のうち,入院および挿管された患者の割合を提示した.

Covariates:

人種/民族,性別,年齢,メディケイド(Medicade: 低所得者向けの医療保険制度)状況といった個人レベルの因子(individual-level factors)や,20の合併症,ヘモグロビンA1c値,薬物治療歴(アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEIs)およびアンジオテンシンIIATII1型受容体拮抗薬(ARBs)),指標日前6ヵ月間の医療機関利用(外来,入院,救急外来),喫煙,アルコール,および不法薬物使用といった臨床的リスク因子(clinical risk factors)を考慮した.また次に挙げる近隣レベルの要因(neighborhood-level factors)も考慮した: 人口密度,世帯収入の中央値、および高学歴以上の世帯員の割合(Table).我々は,検査実施の変化,ソーシャルディスタンスの影響、および試験期間中における医学的治療における潜在的な変化を調整するため,共変量として時間をモデルに含めた.

Results

研究期間中にCOVID-19と診断された患者6916人を同定した.このうち5652人(82%)がポリメラーゼ連鎖反応検査(PCR)陽性であった.COVID-19患者の大多数は女性(55.0%ヒスパニック系(54.2%であった.指標日の平均年齢49.1平均BMI30.6 kg/m2であった.基礎疾患は高血圧(24%),高脂血症(23%),糖尿病(20%),気管支喘息(18%)が最も多かった.患者の約8%がメディケイド受給者であった.

患者の78%が国勢調査区に居住しており,世帯収入の中央値は年間8万ドル未満であった;平均収入は年間約62000ドルであった.COVID-19の診断から21日以内に死亡した患者は206人(3%)で,指標日から死亡日までに入院または挿管された患者はそれぞれ67%43%であった.生存した患者のうち,15%が入院,3%が挿管されていた.

Overall Adjusted Analyses:

共変量を選択し,最終的な調整モデルには,Figure 1に示された共変量を含めた.BMIと死亡リスクの間にJ字型の関連が認められた.調整下の解析では,BMI死亡リスクと強く関連しており,最高BMI測定値ではリスクが4倍以上Figure 1)であった最高BMI値における調整した死亡発生率は,患者100人当たり7.0895% CI, 3.58-14.00)でありBMI18.524kg/m2の場合の推定発生率と比較すると,患者100人当たり5.52CI, 0.63-10.42)の過剰死亡に相当するBMIを連続変数としてモデル化した場合,リスクと非線形関係が認められた(P= 0.005).年齢の上昇と死亡リスクには単調増加の関係が認められた.男性患者は女性患者よりも死亡リスクが高かった.調整後の解析でリスクが上昇した基礎疾患は,心筋梗塞の既往臓器移植の既往高脂血症であった.時間の進行は,研究期間中の死亡リスクの低下と強く関連していた(Figure 1

層別化したBMIと年齢(P= 0.002)に統計的に有意な相互関係を認めたが,サンプル・サイズが小さかったためか層別化したBMIと性別(P= 0.077)には認めなかった.BMIを線形変数としてモデル化した場合,BMIと性別に統計的に有意な相互関係が認められた(P= 0.005).

 

 

Figure 1: Forest plot of final adjusted risk factors for death in overall population (n= 6916).

 

Age-and Sex-Stratified Analyses:

年齢別に調整した解析では,全体のモデルと比較すると,60歳以下BMIに関連した死亡リスクが顕著に増加していることがわかった(Figure 2A61歳以上では,BMIと死亡の関連はかなり低く,最も高い測定値のみ(BMI45kg/m2)が死亡と関連していた高齢では,年齢の上昇が重要性を増し,10年ごとに死亡リスクが127%増加したFigure 2A

性別に層別化した解析では,BMI男性における実質的な死亡リスクと関連しており,リスク推定値は全体モデルのそれを上回っていた.女性ではBMIに関連した死亡リスクの増加は認められなかった(Figure 2B.どちらの層別化解析においても,時間の進行は死亡リスクを有意に減少させた.

Figure 2: Forest plots of adjusted risk factors for death (n= 6916), stratified by age (top) and sex (bottom).

Discussion

COVID-19患者のBMIと死亡リスクには著明な関連があることがわかった; 肥満に関連した基礎疾患や他の潜在的交絡因子とは関連がなかった

若年成人および男性患者におけるBMICOVID-19死亡率とより強く関連していたが,女性患者および高齢者では関連していないことが示された.

基礎疾患として,免疫不全心筋梗塞の既往は死亡リスクと関連があった; しかし,しばしば肥満と関連がある他の基礎疾患は死亡率との関連性が低かった

・白人と比較してもアフリカ系アメリカ人やヒスパニック系の人種/民族に独立した影響は認められなかった

・死亡率2.98%という結果は,ロサンゼルス郡の死亡率(同期間のCOVID-19患者の2.94%)と一致していた.

・我々の調整モデルには変数として“時間の進行”が含まれており,これは今までの文献では取り上げられていない重要な特徴であった.“時間の進行”は,すべての解析において死亡リスクの経時的な減少に対して統計学的に有意であった(Figure 1).これは、COVID-19の検査アクセスの拡大と病院の患者管理の進化によるものと思われる.

・特に若年患者における重度の肥満が,心筋梗塞の既往,糖尿病,高血圧,高脂血症などの他の肥満関連疾患がもたらす死亡リスクを上回るという結果は,過剰な脂肪蓄積は重症COVID-19の病態生理に関連があることを示唆している.肥満は,皮下脂肪組織の増加だけでなく,内臓脂肪組織,血管周囲脂肪組織,心外膜脂肪組織といった異所性脂肪蓄積にも関連している.いくつかの研究では,この脂肪分布が,インスリン抵抗性,2型糖尿病,高血圧,アテローム性動脈硬化,心血管疾患,免疫不全状態として顕在化する慢性炎症,血栓,血管収縮などを促進することが示されている.慢性疾患とは別に,内臓脂肪は重症ARDS患者の死亡率を増加させる

・正確なメカニズムは不明であるが、異所性脂肪蓄積とCOVID-19は抗炎症性,抗血栓性,血管収縮性のペプチドホルモンであるATIIのアップレギュレーションにおいて共通の関連性がある.肥満におけるアディポネクチンなどの抗炎症性アディポカインレベルの低下は,ATIIの増加と関連している.またCOVID-19は,その阻害酵素であるACE2のダウンレギュレーションによりATIIを増加させることが示されているCOVID-19は,重度の肥満患者でATIIの増加が病態生理的な傷害を促進する可能性がある.

ACEIARBなどの抗ATII治療は,肥満患者における高血圧症の主要な治療法であり,インスリン抵抗性に対してある程度の有効性がある.現在進行中のCOVID-19臨床試験では,組換えACE2ARBなどの抗ATII療法が検討されている.

アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系の人種/民族,その他の近隣レベル因子と死亡リスクとの間に有意な関連は認めなかった.このパンデミックにおけるアフリカ系アメリカ人の死亡リスクが非常に不均衡であることが広く懸念されている.アフリカ系アメリカ人は米国の人口の18%(加重分布)を占めているが,疾病対策予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)が発表したデータによると,COVID-19死亡者の22%をアフリカ系アメリカ人が占めている.気管支喘息や糖尿病などの基礎疾患の有病率の高さ,エッセンシャルワーカー,世帯密度,および医療機関へのアクセスの低下が一因となっていると考えられる.我々のデータでは,気管支喘息,人口密度,所得,アフリカ系アメリカ系人種やヒスパニック系民族に関連した死亡リスクの増加は認めなかった.

CONCLUSIONS

肥満COVID-19死亡リスクと強く関連していることが明らかになった.BMIが高い男性および若年患者(60歳以下)は特にリスクが高かった