COVID-19関連追加(2020816日)

 

【人工透析を受けている介護施設居住者における感染伝播】

Bigelow BF, et al. Transmission of SARS-CoV-2 Involving Residents Receiving Dialysis in a Nursing Home-Maryland, April 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. August 14, 2020; 69(32): 1089-1094.

http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6932e4.

SARS-CoV-2は,介護施設内で急速に拡散する可能性がある.血液透析(透析)を受けている介護施設の入所者は,地域の透析患者や透析センターのスタッフと介護施設外で頻繁に接触するため,SARS-CoV-2感染症のリスクが高い可能性がある.メリーランド州の介護施設Aで発生したCOVID-19の調査では,透析を受けている入所者(47%32人中15人)の感染率が,透析を受けていない入所者(16%138人中22人)よりも高いことが確認された(p< 0.001COVID-19患者の30日以内の入院率は,透析を受けている患者(53%)が透析を受けていない患者(18%)よりも高く(p= 0.03),透析を受けていない患者(27%)に比べて死亡した患者の割合は40%と高かった(p= 0.42.透析を行う全過程における感染対策(例: 移動手段,待合室での滞在時間,透析機器の間隔,コホート化),介護施設と透析センター間の明確なコミュニケーション,およびこれらの施設間における検査実施の調整は、この医学的に脆弱な集団におけるCOVID-19の発生を防ぐために非常に重要である.

20204月,メリーランド州の介護施設(施設A)でCOVID-19のアウトブレイクが発生した.メリーランド州では,4月は平均7 日間で,SARS-CoV-2 検査の陽性率は約 25%であり,州内の約半数の介護施設でアウトブレイクが発生した.メリーランド州保健局は,症状のある介護施設入所者を対象に ,結果まで3-5日間のSARS-CoV-2 検査を実施したが,キャパシティの限界があり,ジョンズ・ホプキンスの対応チームは、過去 48 時間以内に検査結果が陽性でなかった介護施設 A の入所者全員を対象に,結果まで24 時間のSARS-CoV-2 検査を実施した430日,A施設の全入所者を対象にSARS-CoV-2検査が実施され,透析を受けている患者と受けていない患者の有病率,およびA施設の入所階別の有病率を評価した.すべての統計解析は,Stata統計ソフトウェア(バージョン16; StataCorp,  LLC)を用いてカイ二乗検定(p< 0.05)を用いて行った.

Investigation and Findings:

2020416日の施設全数調査では170人で,入所者の75%が二人部屋に居住していた.入所者のうち32人(19%)が,併設の透析センターで透析を受けていた.透析のスケジュールは,月・水・金曜日または火・木・土曜日の2つで,1つのスケジュールにつき4時間のシフト制で3回行われていた.シフトは予約時間と重なり,入所者は予約時間まで透析待合室で待機していた.透析センターの透析患者の40%は施設Aの入所者であり,それ以外の患者は周辺地域からの患者であり,施設Aの入所者と同時に予約されていた.

41日までに、メリーランド州知事の命令により,介護施設Aと透析センターは,全スタッフにユニバーサルサージカルマスクの着用を義務付け,グループ活動やグループでの食事を中止し,訪問者の立ち入りを禁止した.スタッフは,症状(息切れ、咳、発熱、筋肉痛、頭痛、下痢、味覚・嗅覚の低下など)のスクリーニング,各シフトの前に体温を測定し,勤務を許可された.介護施設入所者は8時間ごとに検査を受け,地域透析患者は透析予約の前に検査を受けた.

416,介護施設A の入所者が高熱と倦怠感を呈し,その後,鼻咽頭スワブ検体の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査で SARS-CoV-2 RNA が陽性となった.この入所(指標患者index caseは,シフト2の火・木・土曜日に透析を受けていたこの患者は418日に透析を受け,検査結果が陽性であったため,他の介護施設のCOVID-19指定エリアに転院した(Figure 1

翌週(420から),メリーランド州保健局は,症状のある介護施設の入所者47人と症状のある職員10(症状とは,以下のいずれかと定義された: 99°F [37.2°C]を超える発熱,咳,倦怠感,頭痛,上気道症状)を検査したところ,入所者11人と職員3人がSARS-CoV-2陽性であった.感染した入所者のうち2人は月・水・金曜日のスケジュールで透析を受け,シフト2とシフト3で各1人ずつ透析を受けていた.検査結果が陽性のスタッフは全員業務から除外された.

 

421日,透析センターでは、全入所者を4つのグループにコホートすることを試みた: 1COVID-19が確定した者2SARS-CoV-2の検査結果待ちで症状のある者3感染の可能性があるが無症状の者4無症状かつ非曝露者とした.このコホート化戦略に基づき,可能な限り,これらのグループは異なるシフトで透析を受けたが,スケジュールの制約により,12のグループは同じシフトで透析を受け,34のグループは同じシフトで透析を受けた.透析センターでは,患者にはユニバーサルマスクの着用を強く推奨していたが,患者はマスクの着用が困難な場合が多いとの報告されたCOVID-19患者をケアする透析センターのスタッフは,ガウン,マスク,手袋,目の保護具の着用を義務付けられていた.透析機器は6 フィート(2m)間隔になるように努力したが,空間の都合上,必ずしもそうはいかなかった.

430,介護施設の入所者164人のうち、152人(93%)が鼻咽頭スワブ検体によるRT-PCR検査を受けたが,入所者3人が検査を拒否し,9人はすでにSARS-CoV-2検査が陽性であった.検査を受けた152人のうち,透析を受けている患者29人のうち12人(41%),透析を受けていない患者123人のうち13人(11%)を含む25人(16%)にSARS-CoV-2感染が新たに確認された.新たに確認された25人のうち,検査時に無症状だったのは18人(72%で,そのうち透析を受けていた12人中7人,透析を受けていなかった13人中11人が含まれていた.透析技師2はその後症状が認められ,検査結果が陽性(51日,54日)となり,自宅で自己隔離となった.介護施設A全体では,入所者37人,スタッフ3人の計40人のCOVID-19症例が確認された

430日時点で,透析を受けている入所者32人中15人(47%)が陽性であったのに対し,透析を受けていない入所者138人中22人(16%)が陽性であった(p< 0.001,カイ二乗検定)(Table介護施設A2階の入所者におけるSARS-CoV-2感染の有病率81人中33人,41%)は,1階の入所者(89人中4人,4.5%)よりも有意に高かったp0.001)(Figure 2

SARS-CoV-2感染者において,透析を受けている人は,透析を受けていない人(22人中4人;18%)に比べて,検査結果が陽性となってから30日以内に入院する頻度が高かった(15人中8; 53%p= 0.03SARS-CoV-2感染者において,透析を受けている15人中6人(40%),透析を受けていない22人中6人(27%)が診断後30日以内に死亡していた(p= 0.42.死亡した入所者については,死因または基礎疾患に関する情報は得られなかった.

Public Health Interventions:

介護施設Aでは,416日に最初の症例が確認された後,新規入所の受付を終了し,58日まで新規入所の受付を行わなかった.症状のある入所者およびスタッフに対する検査は,416日〜29日に実施された.430日には,症状の有無にかかわらず,これまでSARS-CoV-2検査が陽性でなかったすべての入所者を対象とした施設全体のフォローアップ検査が実施されたが,検査の限界があったため,無症状のスタッフおよび地域の透析患者は検査を実施しなかった.入所者間の感染伝播を抑えるために,当施設では地域の保健所の指導に従い,検査結果ごとに入所者を分類した.施設内における活発なアウトブレイクが収束しないうちは,COVID-19の状態にかかわらず,すべての入所者は部屋で隔離された.スタッフは,検査結果が陽性のすべての入所者および観察中の入所者のケアのために,個人用保護具(PPE)の着用を義務付けられた.透析を受けているSARS-CoV-2陽性の入所者は,検査が陰性の入所者とは別にスケジュールが組まれた

Discussion

メリーランド州の介護施設で COVID-19 のアウトブレイク調査を行ったところ,透析を受けている入所者と受けていない入所者の両方で感染が確認されたが,透析を受けていない入所者および1階の入所者に比べて,透析を受けている入所者および2階の入所者では,有病率が有意に高かった

透析を受ける入所者が透析のために施設を離れることは,SARS-CoV-2の介護施設あるいは透析センターへの感染源となる可能性がある.SARS-CoV-2感染を防ぐためには,移動中や待合室でのマスクの使用,ソーシャルディスタンス,換気の改善などを実施することが重要である.

透析を受けている介護施設の入所者は,特に脆弱な集団である.他の入所者と比較して,糖尿病,高血圧,心臓病といった基礎疾患が多く,より重篤なSARS-CoV-2感染と関連している.また,この集団は地域の透析患者や透析センターのスタッフなど,介護施設以外の人にも頻繁に曝されている可能性がある.

このアウトブレイクの決定的な感染源を特定したり,その後の感染の連鎖を追跡したりすることはできなかった.例えば,透析を受けている入所者の多くは介護施設の2階に入所しており,感染伝播は介護施設内,透析センター内,または2つの場所間の移動中(エレベーター内など)に発生した可能性がある.透析センターの予約時間とシフトが重なっていたため,入所者は透析予約の前に待合室で過ごすことになり,さらなる曝露が発生する可能性がある.最初に確認された症例は透析を受けている入所者の間で発生したが,COVID-19の潜伏期間が最大14日間であることや,他の入所者やスタッフの間で検査が遅れていたこと(416日がindex case,症状有無関係なくスクリーニングを行ったのは430)を考えると,決定的な感染源は不明である無症状感染が多いことから,感染源を特定し,施設内での感染を追跡することがさらに課題となっている.

SARS-CoV-2感染を防ぐためには,透析センターと介護施設の間の効果的かつ継続的なコミュニケーションが重要である

 

Figure 1: SARS-CoV-2 testing results among residents of a nursing home receiving or not receiving dialysis — Maryland, April 2020

The figure is a flowchart showing SARS-CoV-2 testing results or total cases among residents of a nursing home in Maryland who were receiving and not receiving dialysis during April 2020.

 

 

Figure 2: Distribution of COVID-19 cases among facility A residents receiving or not receiving dialysis, by floor* — Maryland, April 2020

The figure is a schematic diagram of a nursing home floorplan indicating the distribution of COVID-19 cases among facility residents receiving or not receiving dialysis during April 2020.

 

 

Table: