COVID-19関連追加(2020818日)

2020418日(【ウイルス排出とウイルス量】)に追記.

RT-PCR検査のCt値と感染性の関連】

Singanayagam A, et al. Duration of infectiousness and correlation with RT-PCR cycle threshold values in cases of COVID-19, England, January to May 2020. Eurosurveillance. Aug 3, 2020.

https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.32.2001483.

呼吸器検体からの逆転写 PCRRT-PCR)によるウイルス検出は,SARS-CoV-2 感染の診断およびモニタリングに広く用いられており,最近では個人の感染性を推測するためにも使用されるようになってきている.しかし,RT-PCR は感染性のあるウイルスと感染性のないウイルスを区別することはできない.本研究の目的は,RT-PCR 検出が培養可能なウイルスとどのように関係しているかを理解することである; これは感染性の代替尺度として使用することができ,感染制御の決定に情報を提供し,サポートすることができる.

Kinetics of viral RNA detection from the respiratory tract:

検体は,鼻腔,咽頭,鼻腔と咽頭,鼻咽頭スワブ、鼻咽頭スワブ、または鼻咽頭吸引液であり,大部分は臨床スタッフが採取し,一部は自己採取の鼻腔スワブであった.

英国(UK)で COVID-19 パンデミックが発生した最初の3ヶ月間(20201月下旬〜4月上旬)に,RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ(RdRp)遺伝子を標的とした RT-PCR によって SARS-CoV-2 が陽性と判定され,発症日と検体採取日が明確に記録されている 有症状感染者425人から上気道(URT)検体754個を対象とした.SARS-CoV-2 ウイルス量の半定量的な指標として RT-PCR サイクル閾値(Ct)値を用いたところ,URT における SARS-CoV-2 RNA のレベルは,発症時に最大となり,発症後最初の10日間は着実に減少し,その後は横ばいであることが明らかになった(Figure 1発症後1週間目(27日目)の幾何平均(GM: geometric meanCt28.1895% 信頼区間(CI: 27.76-28.61であった.2週目(814日目)のGM Ct30.6595% CI: 29.82-31.52; 1週目と比較してp< 0.001),14日目以降のGM Ct31.6095% CI: 31.60-34.49; 1週目と比較してp= 0.01)であった814日目と14日目以降のCt値には有意差は認めなかった(p= 0.49

 

 

Figure 1: Detection of SARS-CoV-2 by RT-PCR targeting the RdRp gene, England, January–April 2020 (n=754).

発症後の日数(日)とCt値の間の非線形関係を捉えるために,予測因子days2days2ln(日)を示す分数多項式モデルが使用された.これらはln(Ct)を結果変数とするランダム切片回帰モデルに適合された.分析では,同じ個体からの複数の検体を考慮した.個人のランダム切片は統計的に有意ではなく,個人内の依存性の証拠を提供しなかったので,各個人の標本は独立しているものとして扱われた.

Figure 1

 

Isolation of infectious virus from respiratory samples:

RT-PCRSARS-CoV-2 陽性と判定された324個のURT検体(253人中)からウイルス培養を試みた.検体は,地域社会や医療従事者のサーベイランス,初期の流行対応の一環として検査された症状のある人,およびアウトブレイク調査など,さまざまな状況から得られた無症状例の選択は,濃厚接触者,または施設/家族/家庭でのアウトブレイク調査における検査によって行われたVero E6細胞を臨床検体に播種し,37℃,5%CO2で培養した細胞は14日目まで毎日,細胞変性効果(CPE: cytopathic effectの観察を行ったSARS-CoV-2の存在は,感染細胞の酵素免疫測定法によるSARS-CoV-2核タンパク質染色により確認した.培養可能なウイルスは133個(41%)から分離された(111人から).

324検体のCt中央値は31.15(四分位間範囲(IQR: 27.50-33.86range: 17.47-41.78)であった.233人(92%)の一部は非重症(無症状または軽症から中等症)に分類され,20人(8%)は重症(集中治療入院を必要とするおよび/または致死的)であった.無症状Ct中央値 31.23, IQR: 28.21-32.97),軽症〜中等症Ct中央値 30.94, IQR: 27.08-34.57),重症Ct中央値 32.55, IQR: 28.39-33.66)に分類されたグループ間ではCt値に差はなかったp= 0.79重症例を”経時的”に層別比較したところ,上記と同様の結果が得られた: Ct値は2週目よりも1週目の方が低かった(ウイルス量が多かった)有症状例から採取した検体と比べても,無症状例61人から採取した検体62個における培養陽性率に差は認めなかった: 無症状例の62検体中21検体 vs 有症状例の262検体中112検体(推定オッズ比(OR0.66, 95% CI: 0.34-1.31, 混合効果ロジスティック回帰モデル, p= 0.23)であった

 

Relationship between Ct value and virus isolation:

Ct感染性ウイルス回復能力(培養)(ability to recover infectious virusとの間には強い関連が認められた感染性ウイルス回復能力の推定ORは,Ct値が1単位増加するごとに0.67減少した(95% CI: 0.58-0.77Figure 2Ct35であった60検体中5検体においてウイルスの感染伝播は成功し,5検体はいずれも症状のある症例からのものであり,重症化した症例からではなかったCt35の検体から感染性ウイルスが回復する確率は8.3%95% CI: 2.8%-18.4%)であった

Figure 2: Relationship between RT-PCR Ct value and culture positivity in mixed effects logistic regression analysis, SARS-CoV-2, England, January–May 2020 (n=324).

Figure 2

 

Relationship between “symptom to test” interval and virus isolation:

症状発現日が判明している有症状例176人から得た検体246個のうち,培養陽性は81例から得た103個(42%)であった培養可能なウイルスの検出は発症時付近がピークであったFigure 3培養により測定されたウイルス排出期間は中央値 4日(IQR: 1- 8日,range: -13- 12日)であった培養陽性率は2週目よりも1週目の方が有意に高かった(74% vs 20%; p= 0.002発症から10日後の培養率は6.0%(95CI: 0.9%-31.2%)に低下したTable 1.発生調査中に症例が追跡調査された場合,検体採取時に無症状であった13人は採取後14日以内に発症して,前症状(presymptomatic)と分類され,そのうち7人は培養陽性であった.回帰分析では,有症状時期から採取された検体と少なくとも同じくらいの確率で,前症状時期から採取された検体が培養陽性であることが示された

Figure 3: Relationship between culture positivity and time between symptom onset and sample collection, SARS-CoV-2, England, January–May 2020 (n=246)

Figure 3

 

 

Table 1:

検査された91例から採取さらた半数以上の検体(n= 130, 53%)は症状発現後7日以上経過しており,そのうち21%18例から得た検体27個)が培養陽性であった; 91例のうち重篤な疾患を有していた患者や免疫抑制を受けていた患者はいなかった.これらの後期の培養陽性検体(25/27個)のほとんどは,発症後810に採取されたものであった

 

Comparison of virus detection by age group:

このデータセットには16歳未満の子供がほとんど含まれていなかったが,異なる年齢層から採取したURT検体のCt値(p= 0.12)および培養陽性率(p= 0.63)には有意差は認めなかった無症状例の割合は,年齢を通して同様であったが,他の年齢層に比べて,81100歳は無症状例が多かったp= 0.006,クラスター調整ロジスティック回帰)(Table 2無症状例の割合には男女差はなく,推定OR0.8695% CI: 0.46-1.90; p= 0.63)であった.

Table 2:

 

Discussion

Ct値を用いた半定量的 RT-PCR検査は,感染性ウイルス検出の推定に寄与し,感染制御に役立つ可能性がある.軽症〜中等症COVID-19によるウイルスの感染力は発症後1週間以上持続し,時間の経過とともに減少することが示された.発症から10経つと,ウイルスを培養する確率は6%にまで低下した.この結果は,8日または9日後に排出された感染性ウイルスを同定した小規模な研究1)-5)や,Ct/ウイルス量と培養可能なウイルスとの間に相関関係があることを示した他の研究1)5)-7)と一致している.この研究は,データサイズが比較的大きいこと,症状発現後7日以上経過した検体の割合が多いこと(50%以上),すべての分析が単一の検査室で行われていることなどが強みとなっているVan Kampenらは,入院患者23人からの培養可能なウイルスの検出は症状発症後20日までという長期間続いたことを報告している6)しかし彼らのコホートには,約5人に1人が免疫不全患者を含む,より重症患者からの下気道検体が多く含まれており,一般化できるものではないVan Kampenらの結果は,感染性ウイルス排出がより長期化していることは,重篤な疾患または免疫不全状態と関連している可能性を示唆している.

この研究は,有症状患者の検体と比較しても,無症状患者と前症状患者の検体のCt値ならびに感染性ウイルスの存在が類似していることを確認したものであり,全く無症状のままの症例からウイルスが分離された最初の報告の1つであるこの結果は,無症状および有症状の人が潜在的に感染性のあるウイルスの供給源であることを示唆している.無症状または有症状の人から培養されるウイルスに関する広範なデータは不足している.一方でケアホームにおけるアウトブレイク調査では,無症状1人と前症状17人から培養可能なウイルスが検出されたと報告されている4).我々の研究では,81100歳の年齢層では無症状例の割合が高かったが,その理由と意義は不明である.これは,ケアホームでのアウトブレイクからの検体採取の偏りを反映している可能性や,この年齢層における感染に対する反応性の違いを反映している可能性もある(例えば,この年齢層では発熱に対する反応が低い,自覚症状の報告が少ないなど).

Limitation: 症状の持続時間と消失は十分に記録されていない.無症状例では,感染を獲得した時期が不明である.この研究のデータは実世界のデータから構成されており,対象者を系統的にサンプリングしていないため,サンプリングバイアスがかかっている可能性がある.臨床検体からのウイルス培養の感度は,実験室の専門知識,使用された細胞株およびプロトコルに依存し,検体の品質,保存および輸送条件に影響される可能性があるため,他の文献に記載されているデータと直接比較することは困難である.

 

 

Conclusions

軽症〜中等症COVID-19患者に対する感染対策は,症状発現直後に特に重点的に行い,10日間の継続を推奨する無症状あるいは前症状患者が,感染ウイルスの発生源となる可能性が高い.しかしながら,ヒトに感染させるウイルス量は不明であり,ヒトからヒトへの感染性ウイルスの低力価の意義は不明である.

 

Reference

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2) Kujawski SA, Wong KK, Collins JP, Epstein L, Killerby ME, Midgley CM, et al. First 12 patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19) in the United States. medRxiv. 2020.03.09.20032896

3) BullardJ , DustK , FunkD , StrongJE , AlexanderD , GarnettL Predicting infectious SARS-CoV-2 from diagnostic samples.   Clin Infect Dis. 2020;ciaa638. DOI: 10.1093/cid/ciaa638  PMID: 32442256

4) AronsMM , HatfieldKM , ReddySC , KimballA , JamesA , JacobsJR Public Health–Seattle and King County and CDC COVID-19 Investigation Team . Presymptomatic SARS-CoV-2 infections and transmission in a skilled nursing facility.   N Engl J Med. 2020;382(22):2081-90. DOI: 10.1056/NEJMoa2008457  PMID: 32329971

5) PereraRAPM , TsoE , TsangOTY , TsangDNC , FungK , LeungYWY SARS-CoV-2 virus culture and subgenomic RNA for respiratory specimens from patients with mild coronavirus disease.   Emerg Infect Dis. 2020;26(11). DOI: 10.3201/eid2611.203219  PMID: 32749957

6) van Kampen JJA, van de Vijver DAMC, Fraaij PLA, Haagmans BL, Lamers MM, Okba N, et al. Shedding of infectious virus in hospitalized patients with coronavirus disease-2019 (COVID-19): duration and key determinants. medRxiv. 2020.06.08.20125310. Available from: http://medrxiv.org/content/early/2020/06/09/2020.06.08.20125310

7) La ScolaB , Le BideauM , AndreaniJ , HoangVT , GrimaldierC , ColsonP Viral RNA load as determined by cell culture as a management tool for discharge of SARS-CoV-2 patients from infectious disease wards.   Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2020;39(6):1059-61. DOI: 10.1007/s10096-020-03913-9  PMID: 32342252