COVID-19関連追加(2020823日)

 

COVID-19の空気を介した感染】

Editorials

Wilson N, Corbett S, Tovey E. Airborne transmission of covid-19. BMJ 2020; 370: m3206.

https://doi.org/10.1136/bmj.m3206.

ガイドラインと政府は,証拠を認め,国民を保護するための措置を講じなければならない(Guidelines and governments must acknowledge the evidence and take steps to protect the public.

20207月,科学者239人が「COVID-19の空気感染の可能性を認識するよう,医療界および関連する国内および国際機関に訴える」という公開書簡に署名した1).世界保健機関(WHO)は「空気感染を除外することはできない」と認めたが,この回答は控えめであり,空気感染と飛沫感染は別個のカテゴリーであり,「空気感染は医療機関におけるエアロゾル発生手技においてのみ発生する」2)と示唆し続けている点で,おそらくは誤っている.

WHOは,飛沫を直径≧5-10μmと定義し,エアロゾルを<5μmと定義している.しかし,両者は多くの呼吸活動において”連続した粒子(continum of particle sizes”として生成され,それらの動態は明確ではない.このことは,感染制御,アウトブレイクやsuperspreadingイベントの予防,そしてパンデミックの制御に向けて実施されている新しい行動様式に関して重要な実用的意味をもつ.

エアロゾルは、気道を覆う液体の表面張力が,力によってに打ち負かされたときに発生する3)この必要な力は,空気の流れの急速な剪断声帯の動き末梢気道の開閉によって生じ,これらはすべて呼吸活動の種類と力に影響される3)深い呼吸(heavy breathing会話はすべてエアロゾルを発生させるこのエアロゾルは様々な大きさの呼吸器粒子(時に感染性ウイルスを含む)で構成された呼気を生じる4)-8)covid-19の臨床経過の初期に咽頭に存在する多くのウイルス(high viral loads)によって,これらのエアロゾルは、感染を拡大し,かつ制御が困難である前症状感染および無症状感染の原因となっていると考えられる

空気による伝播と飛沫による伝播を分けるために使用されている任意(arbitrary)の 5-10µmという閾値は,これまで理論的にも実験的にも支持されたことはない4)人と気流モデルの両方の研究では,50µm の粒子が浮遊したまま,かなりの距離を移動することが示されている4)8).さらに空気の媒介(airborne)の程度は,局所的な湿度,温度,気流だけでなく,呼気の力や量にも影響される.

飛沫が目や口などの露出した粘膜表面にしか着地しないと考えるのは誤りである4).最大50µm までの粒子は吸気気流によって捕捉され,気道のより広範囲の表面に沿って沈着する.インフルエンザで観察されるように,沈着部位によって必要なウイルス量と呼吸器感染の重症度が決定されることがある8)

2003年のSARS流行後,小規模な後ろ向き研究において,医療従事者の感染と気管内挿管や非侵襲的人工呼吸のような手技に関連があることが明らかになり,「エアロゾル発生手技(aerosol generating procedures」という用語が一般的に使われるようになった9)これらの研究ではエアロゾルが測定されていないにもかかわらず,この弱い(グレードD)証拠は,エアロゾル発生手技と感染との間の因果関係を推論するために誤って使用されてきた9).さらに,手技を行う医師よりも,看護師の方が感染率は高く,手技そのものよりも,呼吸不全(respiratory distress)患者との距離や接触時間がリスクを決定づける要因となっていることが示唆された3).急性疾患患者は,咳,呼吸困難,気道虚脱、喀痰産生,高ウイルス量など,医療従事者にさらなるリスクをもたらす.

エアロゾルを生成する生理的メカニズムを減らし,呼気のジェット噴流を制限し,呼気ガスを抗ウイルスフィルターに通すことによって,リスクが高い手技による感染性の排出を減らすことができるものもある3)インフルエンザH1N1患者における,WHOが定義したエアロゾル発生手技中にエアロゾルをサンプリングした前向き研究では,空気中のウイルスRNAの有意な増加は見られなかった10)

現在,低リスク患者に対するエアロゾル発生手技は遅れたり,拒否されたりすることが多い.そして実施する場合には,細心の注意と高価な空気感染対策が実施されている一方で,咳をしたり,会話をしたり,息切れを認める高リスク患者に対しては,サージカルマスクをつけただけのスタッフが介助している.中国で行われた後ろ向き研究では,低リスク患者を治療するスタッフと飛沫予防対策をしているスタッフでは,高リスク患者を治療するために(N95)レスピレーターを着用しているスタッフよりもSARS-CoV-2感染率が高いことが観察されている11)12)

 

Strong signals(警鐘):

2003年のSARS発生以来,空気生物学,物理学,流体力学の研究によって,「エアロゾルの発生と呼吸器粒子の運搬と運命」についての理解が深められてきた1)4)6)7)8)13)14)韓国のコールセンターアメリカのスカジット郡合唱団中国広州のレストランにおけるCOVID-19空気を介した感染は,現在,superspreadingイベントの確からしい原因となっている1)2)14)パンデミックは重大な岐路にあり,政治家や公衆衛生のリーダーはこれらの警鐘を無視すべきではない

空気を介した感染をよりよく理解し,呼吸活動や医療処置のウイルスによるエアロゾルを測定するためには,緊急の研究が必要である.同時に,国際的な指針の中に,COVID-19の空気を介した感染を支持する証拠の重みを認め,効果的な予防措置を促進するための推奨事項を含まなければならない.エアロゾルがウイルス感染に重要な役割を果たしていることを暫定的に認めた場合,感染管理対策はどのように変更されるべきか?

吸入リスクは,ソーシャルディスタンス,室内での交流を制限すること,空気の再循環を避けること,自然換気や人工換気を改善すること,エアロゾルを回収・中和し,個人やコミュニティの空間にきれいな空気を供給する技術革新によって低減される可能性がある14)室内での深呼吸会話歌唱に伴う感染リスクは過小評価されており,緊急的に警告が必要である

エアロゾル発生手技は誤解を招く用語であり,その使用は,安定した患者でのリスクを過大評価することになり,咳や会話などのエアロゾル発生行為が軽視されていることが証明されている1)4)8).個々の手技に関連するリスクは,その代わりに,エアロゾルの排出量を測定し,他の呼吸器活動からの排出量と比較し,臨床的な背景の中で分類すべきである.その間,医療従事者は,特定の臨床手技だけでなく,すべてのハイリスクに遭遇した際はマスクを使用するべきである.

このパンデミックの制御は,対応を決定する基礎となる科学が誤解されている場合には困難である.空気を介した感染の重要性を受け入れることは,決定的な突破口となる可能性があり,これ以上遅らせるべきではない.

References

1) Morawska L, Milton DK. It is time to address airborne transmission of covid-19. Clin Infect Dis2020;ciaa939. doi:10.1093/cid/ciaa939 pmid:32628269

2) World Health Organisation. Scientific brief. Transmission of SARS-CoV-2: implications for infection prevention precautions. 2020. https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/transmission-of-sars-cov-2-implications-for-infection-prevention-precautions

3) Wilson NM, Norton A, Young FP, Collins DW. Airborne transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus-2 to healthcare workers: a narrative review. Anaesthesia2020;75:1086-95. doi:10.1111/anae.15093 pmid:32311771

4) Zhang N, Chen W, Chan PT, Yen HL, Tang JW, Li Y. Close contact behavior in indoor environment and transmission of respiratory infection. Indoor Air2020;30:645-61. doi:10.1111/ina.12673 pmid:32259319

5) Asadi S, Wexler AS, Cappa CD, Barreda S, Bouvier NM, Ristenpart WD. Aerosol emission and superemission during human speech increase with voice loudness. Sci Rep2019;9:2348. doi:10.1038/s41598-019-38808-z pmid:30787335

6) Morawska L, Johnson GR, Ristovski ZD, et al. Size distribution and sites of origin of droplets expelled from the human respiratory tract during expiratory activities. J Aerosol Sci2009;40:256-69doi:10.1016/j.jaerosci.2008.11.002 .

7) Wei J, Li Y. Airborne spread of infectious agents in the indoor environment. Am J Infect Control2016;44(Suppl):S102-8. doi:10.1016/j.ajic.2016.06.003 pmid:27590694

8) Fennelly KP. Particle sizes of infectious aerosols: implications for infection control. Lancet Respir Med2020;S2213-2600(20)30323-4.pmid:32717211

9) Tran K, Cimon K, Severn M, Pessoa-Silva CL, Conly J. Aerosol generating procedures and risk of transmission of acute respiratory infections to healthcare workers: a systematic review. PLoS One2012;7:e35797. doi:10.1371/journal.pone.0035797 pmid:22563403

10) Thompson KA, Pappachan JV, Bennett AM, et al., EASE Study Consortium. Influenza aerosols in UK hospitals during the H1N1 (2009) pandemic--the risk of aerosol generation during medical procedures. PLoS One2013;8:e56278. doi:10.1371/journal.pone.0056278 pmid:23418548

11) Lai X, Wang M, Qin C, et al. Coronavirus disease 2019 (COVID-2019) infection among health care workers and implications for prevention measures in a tertiary hospital in Wuhan, China. JAMA Netw Open2020;3:e209666.

doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.9666 pmid:32437575

12) Zhong Q, Liu YY, Luo Q, et al. Spinal anaesthesia for patients with coronavirus disease 2019 and possible transmission rates in anaesthetists: retrospective, single-centre, observational cohort study. Br J Anaesth2020;124:670-5.

doi:10.1016/j.bja.2020.03.007 pmid:32234250

13) Hamner L, Dubbel P, Capron I, et al. High SARS-CoV-2 attack rate following exposure at a choir practice—Skagit County, Washington, March 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep2020;69:606-10. doi:10.15585/mmwr.mm6919e6 pmid:32407303

14) American Society of Heating. Refrigerating and air-conditioning engineers (ASHRAE) position document on infectious aerosols.

https://www.ashrae.org/technical-resources/resourcesAccessed10/8/2020

 

参考

Morawska L, Milton DK. It is Time to Address Airborne Transmission of COVID-19. Clinical Infectious Diseases, ciaa939. July 6, 2020.

 https://doi.org/10.1093/cid/ciaa939.

Santarpia JL, et al. The Infectioius Nature of Patient-Generated SARS-CoV-2 Aerosol.

medRxiv. https://doi.org/10.1101/2020.07.13.20041632.→空気中のウイルス培養

Lednicky JA, et al. Viable SARS-CoV-2 in the air of a hospital room with COVID-19 patients. medRxiv.

https://doi.org/10.1101/2020.08.03.20167395.→空気中のウイルス培養

 

 

●韓国のコールセンター

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アメリカのスカジット郡合唱団

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●中国広州のレストラン