COVID-19関連追加(202092-2

 

【フェイスシールドと呼気弁付きマスクにおける飛沫散布の可視化】

Verma S, et al. Visualizing droplet dispersal for face shields and masks with exhalation valves. Physics of Fluids. Sep 1, 2020.

https://doi.org/10.1063/5.0022968.

Abstract:

COVID-19パンデミックにおいて,通常の布製マスクやサージカルマスクを透明なプラスチック製のフェイスシールドや呼気弁付きマスクで代用する人が増えてきている.その背景には,通常のマスクに比べて快適性が向上していることがある.しかし,通常のマスクに代わるこれらの代替品が広く一般に使用されることで,感染拡大を緩和させることにむしろ悪影響を及ぼす可能性がある.これらの代替オプションの有効性に関する一般の人々の意識を高めるために,我々は定性的な可視化によって,エアロゾルサイズの飛沫の拡散を防ぐためのフェイスシールドと呼気弁付きマスクの性能を調べた.

可視化の結果,フェイスシールドはジェットの初期の前方運動を遮断するが,排出された飛沫は比較的容易にバイザーの周りを移動し,広範囲に拡散されることがわかった呼気口を備えたマスクの可視化では,多数の飛沫がろ過されずに呼気弁を通過し,感染源の制御手段としての有効性が著しく低下することが示されている.我々の観察は,COVID-19のコミュニティへの広がりを最小限に抑えるためには,フェイスシールドや呼気弁を備えたマスクの代わりに,無地デザインの高品質の布製マスクまたはサージカルマスクを使用することが望ましいかもしれないことを示唆している

 

 

Figure 1:

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(a) マスク等の保護具と併せて医療従事者が使用するものと同様のデザインのフェイスシールド.呼出された飛沫を可視化するために使用される縦型のレーザーシートが見えるパネル.(b) 前面に呼気弁を備えたN95マスク.布製マスクもN95マスクも,このような呼気口を備えているものがある.

 

 

Figure 2:

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フェイスシールドを使用して呼出を妨害した場合の飛沫の広がりの近距離視野図.(a)咳・くしゃみのエミュレート前,(b)咳のエミュレート開始から0.57秒後,(c)3.83秒後,(d)16.57秒後.水平方向のレーザーシートで照射された飛沫は,(c)(d)で観察することができる.

 

 

Figure 3:

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呼出を妨害した時のフェイスシールドを使用した場合における飛沫の広がりの遠視図.(a)エミュレート咳開始後2.97秒後,(b)6.98秒後,(c)10.77秒後.

 

 

Figure 4:

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呼気口を備えたN95マスクを用いて呼出を妨害した場合における飛沫の広がりの可視化.(a)咳・くしゃみをエミュレートする前,(b)エミュレートした咳の開始から0.2秒後,(c)0.63秒後,(d)1.67秒後.

Figure 5:

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通常のN95マスクを使用して呼出を妨害した場合における飛沫の広がりの可視化.(a)咳・くしゃみをエミュレートする前,(b)エミュレートした咳の開始から0.13秒後,(c)0.33秒後,(d)0.83秒後.

 

 

Figure 6:

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サージカルマスク(ブランド"A")を使用して呼出を妨害した場合における飛沫の広がりの可視化.(a)咳・くしゃみをエミュレートする前,(b)エミュレートされた咳の開始から0.37秒後,(c)0.62秒後,(d)2.33秒後.

Figure 7:

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サージカルマスク(ブランド"B")を使用して呼出を妨害した場合における飛沫の広がりの可視化.(a)エミュレートされた咳・くしゃみの前,(b)エミュレートされた咳の開始から0.5秒後,(c)0.83秒後,(d)3.13秒後.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(202092-2)に93日追記しました

 

【歌唱と会話における呼気に含まれる粒子について】

Alsved M, et al. Exhaled respiratory particles during singing and talking. Aerosol Science and Technology. Aug 24, 2020.

https://doi.org/10.1080/02786826.2020.1812502.

Objective

会話や呼吸と比較して,歌唱によるエアロゾルや飛沫の放出を調査する.

Methods

ボランティア歌手12人を対象とした: プロのオペラ歌手7人(ベース2, バリトン1, アルト2, ソプラノ2人)とアマチュア5人(テノール3, アルト2人).歌手は座ったまま,または立ったままの姿勢であった.歌手12人の測定は,室温22℃,相対湿度40%の環境下で,気密された実験室22 m3内で実施した.実験室には,空気交換率3h-1のパーティクルフリーの空気を入れて換気した.歌手も研究者も,背景の粒子濃度を最小化するためにクリーンエアスーツを着用した.さらに,Covid-19陽性者2人においては,会話や歌唱中にその近くから採取した空気サンプルのSARS-CoV-2を分析した

Results and Discussion

Figure 1および2に示されているように,呼吸,会話,歌唱の粒子放出において有意差を認めた(放出されたエアロゾル粒子質量のフリードマン検定, p< 0.0001ソフトな歌唱は,通常の会話よりも有意に多くのエアロゾル粒子を生成した(p= 0.002大きな声の歌唱は,ソフトな歌唱に比べて,より多くの粒子を生成した(p= 0.002Figure 1は,粒子質量放出率を示している.中央値(範囲)のエアロゾル粒子数放出率は以下の通りであった: 通常の会話では270120-1380)粒子/, 大声の会話では570180-1760)粒子/, 通常の歌唱では690320-2870)粒子/, 大声の会話では980390-2870)粒子/, 強調された会話では1480500-2820)粒子/分であった.フェイスマスク着用下における大声の歌唱では,410200-1150)粒子/分であった.このことから,単純なフェイスマスクでは,歌唱時に発生するエアロゾル粒子の量を通常の会話と同等のレベルまで減少させることができた(有意差はないが,p= 0.08

高い音程で歌うとエアロゾル排出量が増加する傾向があったが,これは特に高い音程によって生じた音圧の増加の影響である可能性もある.この研究において,プロの歌手がhigh Eで大声で歌った場合,A naturalと比較して23倍のエアロゾル粒子量が発生した.プロの歌手は,認識された通常の音圧でアマチュア歌手よりも2倍多くのエアロゾル粒子を生成した(Mann-Whitney, p= 0.03

高速度カメラによる飛沫解析から,いくつかの子音,例えば'p''b''r''t'は,小さな飛沫から大きな飛沫を多数発生させることがわかった(Figure 3母音の歌唱では,粒子が飛散するために高い気流は発生しないが,子音のアーティキュレーションはかなりの速さで前方へ飛沫を放出する.それにもかかわらず,最大サイズの飛沫のほとんどは、沈降するために,限られた距離(<0.5 m)しか移動しない.

歌唱と会話では飛沫放出量に大きな差を認めたが,記録されたビデオにおける集団が限られていたため,統計的な有意性は確認できなかった(Figure 1, 3).1フレームあたりの平均(±SEM)飛沫数は,通常の会話では12±3,大声の会話では29±14,ソフトな歌唱では16±7、大声の歌唱では38±16,フェイスマスク着用下における大声の歌唱では5±1であった.このように,飛沫解析の結果,フェイスマスクは非常に効率的に排出量を減らすことができると考えられる.系統的に測定したわけではないが,口の中に唾液が溜まっているという感覚と,アーティキュレーションによる飛沫発生量の増加が一致しており,同一歌手のデータ内でもばらつきが大きいことがわかった(Figure 3).サージカルマスクを着用して大声で歌った場合,カメラではほとんど飛沫は検出されなかった.また,呼気時に唇を振動させて(声帯を活性化させずに)ウォームアップ運の動を行うと,膨大な量の飛沫が発生した(データは示されていない)

Covid-19患者が歌ったり話したりしている間に採取された空気サンプルからSARS-CoV-2は検出されなかった.これは,空気中のウイルス濃度が低いことに起因する可能性があるが,飛沫が生成される呼吸器部位におけるそれぞれのウイルス量,およびサンプル調製法における希釈過程に起因する可能性もある.

 

 

Figure 1: 異なる練習中のエアロゾル粒子質量放出率(青色, 左Y軸),および同じ練習中の呼気中の1フレームあたりの平均飛沫数(画像解析から.Figure 3を参照)(赤色, 右Y軸).粒子質量は0.510μmの範囲で測定した.各青枠は,エアロゾル粒子については12人の歌唱者のデータを,飛沫については5人の歌唱者のデータを表している.大声で歌った場合の2つの高い値は示されていない.

https://www.tandfonline.com/na101/home/literatum/publisher/tandf/journals/content/uast20/0/uast20.just-accepted/02786826.2020.1812502/20200824/images/medium/uast_a_1812502_f0001.jpg

 

 

Figure 2: 歌唱者12人における,1秒間に0.5410μmの粒子径範囲で放出された粒子の数.

https://www.tandfonline.com/na101/home/literatum/publisher/tandf/journals/content/uast20/0/uast20.just-accepted/02786826.2020.1812502/20200824/images/medium/uast_a_1812502_f0002.jpg

 

Figure 3: プロのオペラ歌手が子音を誇張して大声で歌っている時に発生する1フレームあたりの飛沫の数.20秒の間に同じフレーズが2回繰り返される.

https://www.tandfonline.com/na101/home/literatum/publisher/tandf/journals/content/uast20/0/uast20.just-accepted/02786826.2020.1812502/20200824/images/medium/uast_a_1812502_f0003.jpg

 

 

Conclusions

会話に比べると,歌唱は,より多くのエアロゾル粒子と飛沫を発生させた呼気エアロゾル粒子と飛沫は歌唱の音量に応じて増加した.また,高音程では排出量が増加する可能性があることを示された通常のサージカルマスクを着用することで,呼気エアロゾル粒子および飛沫測定量は通常の会話と同程度まで減少した.しかし,サージカルマスクはフィット感が緩いため,測定していない側面から粒子が出ている可能性がある.以上の結果から,集団での歌唱は,フィジカルディスタンス,衛生,換気,遮蔽などの適切な管理・予防策を講じなければ,感染を広げてしまう危険性のある活動である可能性が高いと考えられる.

 

 

 

 

【様々な補助酸素療法によるエアロゾルの産生】

Gaeckle NT, et al. Aerosol Generation from the Respiratory Tract with Various Modes of Oxygen Delivery. Am J Respir Crit Care Med. Aug 21, 2020.

https://doi.org/10.1164/rccm.202006-2309OC.

Rationale

HFNChigh flow nasal cannula)やNIPPVnon-invasive positive pressure ventilation)などによるエアロゾルの発生は,医療従事者の懸念事項である.様々な酸素療法による気道からのエアロゾル発生量は明らかではない

Objectives

様々な酸素療法を行っている人の気道から発生する粒子や飛沫の大きさ,数・濃度を測定する.

Methods

参加者として,活動性肺疾患のない健常者10人が登録された.調査された酸素療法は,非加湿鼻カニューレ(NCフェイスマスク加熱加湿HFNCNIPPVである.参加者が通常の呼吸,会話,深呼吸,咳などの動作を行いながら,各酸素療法におけるエアロゾルの発生量を測定した.調査は陰圧室で実施した0.3720μmの直径を持つ粒子を,空気力学的粒子分光計(aerodynamic particle spectrometer)を用いて測定した.

Results

粒子濃度の中央値は0.0410.168粒子/cm3であった粒子径の中央値は1.011.53μmであったによって粒子数は有意に増加したエアロゾル濃度は,加熱加湿HFNCを使用しても,NIPPVを使用しても,有意に増加しなかったこれは,通常の呼吸,会話,深呼吸,咳をしている間も同様であった

Conclusions

加熱加湿HFNCNIPPVによる酸素療法は,陰圧室で測定した活動性肺疾患のない健常者の気道からのエアロゾル産生を増加させない

 

私見:この実験は“陰圧室”で行われたもので条件は異なるが,HFNCNIPPVを含む様々な酸素療法下に排出される粒子径は1.011.53μm,そして合唱や会話で排出される場合も粒子径1μm以下の粒子も少なくない(むしろ多い)

 

 

 

Figure 1:

Figure 2:

Figure 3:

 

Figure 4:

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(202092-2)に96日追記しました

THE LOCAL ch Switzerlands news in Englishからの記事(2020, 9/2

【’Visors are not masks: Swiss authorities warn against wearing plastic visors on public transport

スイスの交通機関の広報担当者は,プラスチック製のフェイスガードの使用に反対の声を上げている.

"フェイスガードはマスクではない.”とPostBusの広報担当者ヴァレリー・ゲール氏は20ミニッツの取材に語った.

スイス政府は以前,フェイスガードについて,マスクよりも効果が低いだけでなく,着用者に誤った安心感を与える可能性があると警告している.

連邦公衆衛生局のダニエル・ダウワルダ―氏は,政府の公式見解として,フェイスガードは,”マスクに代わるものではない.”と述べた.

"フェイスガードは飛沫による感染から目を保護するが,鼻や口からの感染の可能性は排除できない.”とダウワルダー氏は述べた.

"フェイスガードはマスクと一緒に使うべきであり補完的に機能するものだ."

7月にグラウビュンデン州のホテルでSARS-CoV-2アウトブレイクが発生した時に,フェイスガードの効用についてプラスチック製のバイザーの有効性に焦点が当てられた〜その有効性がないことも.

同州の保健当局者によると,感染した人は全員プラスチック製のフェイスガードを着用しており,感染を回避した人はフェイスマスクを着用していたという.

”感染したのは,プラスチック製のフェイスガードを着用している人だけであった.”,スイス政府,フェイスガードの着用に警告 .

グラウビュンデン州の州保健局長ルドルフ・ロイソード氏は,”プラスチック製のフェイスガードが感染の共通点であった.”,と述べた.

"プラスチック製のフェイスガードを着用していた従業員だけが感染していたことが明らかになった.マスクをしていた従業員は1人も感染しなかった.”

公共交通機関でプラスチック製のバイザーを着用していたからといって退去させられるのか?

ゲール氏は,バスでプラスチック製のマスク(原文 a plastic mask)を着用している人は法律を遵守していないと述べたが,運転手は遵守していない人を個人的に追い出すことはないと20ミニッツに語った.

"運転手は警察の仕事をしているわけではありません.私たちと,感染対策チームはフェイスガードを着用している人達にフェイスガードはマスクではないことを指摘するだろう."

チューリッヒ湖航行会社の広報担当者であるヴィープケ・サンダー氏は、マスクは "十分な安全を提供していない. "と述べた.

同社の船やボートに乗る乗客は,船内でマスクを購入するよう指示される.

スイス連邦交通局(SBB)は20ミニッツに対し,船内でマスクを着用している人の数に満足しているとし、ノルマは”まだ非常に高い.”と述べた.