COVID-19関連追加(202094日)

 

【高層マンションにおけるSARS-CoV-2の糞便エアロゾルによる感染伝播】

Kang M, et al. Probable Evidence of Fecal Aerosol Transmission of SARS-CoV-2 in a High-Rise Building. Annals of Internal Medicine. Sep 1, 2020.

https://doi.org/10.7326/M20-0928.

https://www.acpjournals.org/na101/home/literatum/publisher/acp/journals/content/aim/0/aim.ahead-of-print/m20-0928/20200901/images/medium/aime202012150-m200928_visual-abstract.png

Background

SARS-CoV-2感染伝播における糞便エアロゾルの役割が疑われている.ここでは,2020126日〜213日,ショーシャルディスタンスが実施されていた期間,中国・広州市の高層ビル(マンションX)の垂直方向の3つのアパート(flatsで,9人のCOVID-19患者が発生したことを報告するマンションXは,6の高層住宅団地30棟のうちの1棟で,29階建てである2階から28階までの各階には,-01-02-03と番号が付けられた3戸のアパートFigure 1),29階には2戸のアパートがあり,合計83戸のアパートユニットで形成されている乾燥した床排水口は,中国南部における同様の高層マンションでSARS-CoV-1の垂直方向の感染伝播が起こったことを考慮すると,共通の衛生上の問題である.2003年の香港アモイガーデンズのアウトブレイクでは,糞便エアロゾルが300人以上の居住者にSARS-CoV-1を感染させることが判明した.我々は,環境サンプルを採取し,マンションX内のトレーサーガスの排気流分散を測定し,SARS-CoV-2の糞便エアロゾル感染伝播経路の可能性を調査した.

 

Figure 1: The block X outbreak and suggested transmission route.

A. 同一家族の患者を同一色で示した流行曲線.同じ発症日を持つ患者の各グループの感染性期間は,発症2日前から入院日までと推定される.B. マンションX2階から28階までの間取り図で,-02アパートのトイレの位置を示す.C. 排水システムにおけるバイオエアロゾル(bioaerosols)を含むガスが,水洗トイレから,2階から29階の-02アパートの主浴室(master bathroom)に拡散されるために推定された伝達経路.乾燥した封水はUトラップ(赤色)で示し,排水システム内のガスが浴室へ脱出した流れは赤色のプルーム(plume)で示した.

Objective

高層マンション内の3家族の感染者の時間的・空間的分布を調査し,糞便エアロゾルの役割を検証するために関連する環境変数を検討する.

Methods

まず,SARS-CoV-2感染者9人の発症日と,マンションX内の居住者のアパートユニットの位置を確認した.発症日は,患者が最初の症状(発熱または咳)に気づいた日と定義した.すべての感染は,咽頭スワブによるPCR検査の結果に基づいてCOVID-19であることが確認された.人口統計データ,渡航歴,曝露歴,その他の症状を収集した.また,現地での計測・設計図を基にした詳細な敷地計画,間取り図,排水設備の詳細,感染が疑われる期間(2020124日〜26日)における1時間ごとの気象データ(現場に近い気象台から)を収集した.マンションX内の公共エレベーター2台のテレビカメラ記録を検討し,125日〜130日までのエレベーター利用パターンを取得した.

29日〜219日までの間,拡大濃厚接触者追跡と環境検出を実施した.マンションXの居住者193人と管理スタッフ24人から咽頭スワブ検体を採取した.211日〜219日までに,建物の表面fomitesおよび空気サンプル237が採取された.サンプルからウイルスRNAPureLink Viral RNA/DNAキット(Invitrogen社)を用いて抽出し,中国食品医薬品局認可のSARS-CoV-2検出に特異的な市販キット(GeneoDX Biotech社)を用いて定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを行った.Ct値(cycle threshold value)が37.0以下の場合に陽性とした

221日,排水システムのガス内ウイルスを含む飛沫の代理(surrogate)のトレーサーガスとしてエタンを使用して,気流および分散試験を実施したトレーサーガスは,微小飛沫または飛沫核の拡散をモデル化するのに有効な代理であることが示されている.トイレ排水と竪管の水理相互作用として生成されるウイルスを含む飛沫をモデル化するために,アパート1502号室の主浴室の竪排水管(drainage stackにエタンを約3.0L/minを放出した.トレーサーガス濃度は,24チャンネルマルチポイントサンプラーと光音響ガスモニター(Innova 1412iおよび1409; LumaSense Technologies)を用いて,他の浴室でモニターした.さらに,市販の Ansys Fluent 16.0 ソフトウェアを用いて計算流体力学シミュレーションを行い,主浴室内の気圧を推定した.2003年に発生したアモイガーデンのSARSの知見に基づいて,居住者が頻繁に水を入れることがないため,いくつかの床排水口の封水が乾燥していると予想した.また,-02アパートユニットの浴槽の利用習慣を電話調査したところ,浴槽の中にも封水が乾燥しているものがあることがわかった.次に,垂直方向に配置された-02アパートの感染分布パターンと,床および浴槽の乾燥した排水口を介して測定されたトレーサーガス濃度を比較した(Figure 1

Results

この団地は高層住宅マンション30棟にアパートユニット3336戸,居住者5800人で構成されている.時系列とその後の調査,広州市の流行曲線はSupplement Figure 12にまとめられている.感染性期間(2020124日〜26日)と疑われた期間の風向は北風が多く,平均風速は1.5m/sであった(Supplement Figure 3).感染時期のマンションXの居住者数は57世帯202人,空室は26室であった(Supplement Table 1).各階のアパートユニットは共用エレベーターのロビーと廊下で結ばれている.各-02アパートユニットには2つの浴室が設置されている.

感染した家族と感染しなかった家族の場所と環境サンプルをTableにまとめた(詳細はSupplement Figure 1およびSupplement Table 24を参照).マンションXの流行曲線をFigure 1Aに示す.感染した家族はすべて垂直方向にある-02アパート(1502, 2502, 2702号)の家族であったアパート1502号の家族Aが最初に感染し126日に高齢者2人が発熱と咳の症状を認め,次いで129日または30日に若い家族3人が発症した.家族A4人は初発症日の14日前にエピセンターである武漢に旅行しており,さらにもう1人(5人目)は江西省に旅行していた.彼らは,124日に一緒に広州に戻ってきた.家族B2502号)と家族C2702号)は,共に中年夫婦であり,彼らはいつも寝室で寝ていた.21日に家族Bが発症した.家族Aから感染した可能性が高いが,一方家族Cでは,C1が家族Aや家族Bの誰かから感染した可能性,C2C1から感染した可能性など,様々な可能性があった.

Table:

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疾病予防管理センターの流行疫学調査によると,家族Bと家族Cには旅行歴がなく,家族Aのメンバーを含む他の確定症例との濃厚接触はなかったという.2020年の旧正月休暇は124日〜130日であり,家族Bと家族Cはその期間のほとんどを自宅で過ごしていた.3家族は互いに面識がなく,感染性期間の可能性がある期間中にエレベーターを共同利用していなかった.さらに,マンションXの他の居住者3人は,少なくとも家族A1人とエレベーターを共有していたが,いずれも感染していなかった.家族Aのメンバーの後にエレベーターを利用した居住者もまた,エレベーター内のfomitesや再循環された空気を介して曝露された可能性があるが,感染した家族と感染していない家族の曝露リスクには本質的な違いは認めなかった.例えば,家族B,家族C,その他の家族54世帯の30分間の使用曝露は,それぞれ,観察人時は,1家族あたりそれぞれ3.0人・回,16.0人・回,5.4人・回であった(Supplement Table 6).また,家族Aは,エレベーター利用時にはほとんどの場合マスクを着用しており,エレベーターのボタンや給気口からはウイルスRNAは検出されなかった.

29日〜211日にマンションXの他の217人(居住者と職員)から採取した咽頭スワブ検体はすべて陰性であった.211日〜214日までに11-02アパートおよび公共エリアから採取された環境サンプル166検体,空気サンプル7検体のうち,アパート1502号から環境サンプル5検体,1602号から環境サンプル1検体(アウトブレイク前3ヶ月以上空室)が陽性であった(Table.マンションXの他の公共エリア,エレベーター、換気グリル,屋上の通気口から採取した表面サンプル60検体と空気サンプル4検体はすべて陰性であった.1502号の寝室のサンプル1検体陽性を除き,主浴室からのサンプルがすべて陽性であったことから、主浴室が発生源かつ暴露場所である可能性が高いことが示唆される

マンションXの排水のために,主浴室と客人用浴室のそれぞれに,汚水用竪排水管,生活用水用竪排水管,通気口を2組ずつ配置した2本の配管システムが採用されている.つまり,-02アパートの垂直に並んだ主浴室は,竪排水管と通気口でつながっていることを意味する.各アパートユニットの主浴室には浴槽があるが,客人用浴室にはない.主浴室には,洗面台,床の排水口,トイレ,浴槽の封水としてUトラップが設置されている.Uトラップの封水の深さは一般的に75mmであり,水を加えない場合,30日またはそれよりも早く乾燥することが予想される.電話調査(Supplement Table 5)で,2502号室2702号室の感染した家族を含む16-02アパートユニットのうち11家族では,主浴室の浴槽を習慣的に使用していないことが判明しており,これらの浴槽も封水が乾燥していたのではないかと推測される.残念なことに,2502号室と2702号室では,感染者が発見された後すぐに消毒作業を行ったために,これらのアパートの封水が本当に乾燥していたかどうかを判断することができなかった.

また,竪排水管から浴室内にバイオエアロゾルが侵入した可能性を調べるために,マンションXが検疫隔離中であった221日午後1時から30分間,1502号室のトイレから汚水竪排水管内にトレーサーガスを連続的に放出した1502号室,1602号室,2102号室,2502号室,2702号室の主浴室のドアと窓を開けたままにした.モニタリングした全てのアパートで,かなりのトレーサーガス濃度が検出された1602号室(浴槽排水口と床排水口,それぞれ559ppm94ppm),2102号室(11ppm10ppm),2502号室27ppm20ppm),2702号室(597ppm587ppm)であった.また,上階のアパートユニット802(床排水口, 119ppm)では,上階の封水が存在する場合における実験においても漏れたトレーサーガスが検出された.これらの結果は,マンションXの排水管が,アパートユニット間のバイオエアロゾルの輸送経路として機能している可能性を示している.モニタにおけるガス濃度の変動は,風や干潟の位置,排水管の形状による気圧の違いによるものと考えられる.Supplement Figure 4は,-02アパートユニットの主浴室外での風による陰圧の垂直変動を示している.各世帯がそれぞれの浴室に装飾を施しており,接続管や封水のばらつきにより,排水システム内から脱出したガス気流の圧力損失が異なっていた可能性がある.

Discussion

我々の疫学的および環境データは,アパート2502号室および2702号室の患者の感染源は,おそらく1502号室の主浴室であり,ウイルスを含む糞便エアロゾルは,index caseがトイレを使用した後に水洗している間にそれに関連する垂直方向の竪排水管で発生したと考えられることを示している.

Yuらは,2003年のアモイガーデンにおけるSARSアウトブレイク時に,index caseがトイレを流した後の水理相互作用の結果,同様のシステムの垂直方向性の竪排水管で大量のバイオエアロゾルが発生したことを提示したが,これらのバイオエアロゾルの数,大きさ,およびウイルス濃度は不明である.トイレの汚水には,index caseの糞便,尿,および排出された粘液が含まれている可能性がある; COVID-19患者の2.049.5%に下痢を認めており,患者の便サンプルからウイルスRNAが検出されている報告がある.また,肛門スワブ検体中のSARS-CoV-2の存在に関して,感染後期になると口腔スワブ検体よりも肛門スワブ検体の方が陽性であることがZhangらによって報告されている.さらに,中国の研究者らによって便検体からSARS-CoV-2が分離され,COVID-19患者の糞便中に生存可能なウイルスが存在し,その潜在的な感染性が確認された.SARS-CoV-2SARS-CoV-1の間には高い配列類似性が報告されている.また,SARS患者の便サンプルからも高ウイルス量が検出されている.

主寝室で寝ていた家族Aの若いメンバー3人は,家族Bindex case,人,家族CメンバーC1,そしておそらくC2ではないかと疑われている.index case1502号室の主浴室のトイレを使用して水洗した時,同じバスルームの床や浴槽の排水口が乾燥していたために,ウイルスを含んだバイオエアロゾルが部屋の中や排水システムに接続されている他の部屋に漏れた可能性がある(Figure 1C).この可能性は,アパート1602号室の主浴室からの表面サンプル1検体が陽性であったことによって支持され,1502号室の主浴室からの表面サンプル4検体が陽性と,おそらく同じアパートの寝室の表面サンプル1検体が陽性であったことによって部分的に支持されている.これらの陽性サンプルは,Supplement Table 4に記載されているように,頻繁に触れる表面と洗面台のUトラップの内側の表面から採取された.また,1502号室からの陽性サンプルは,index caseの手がトイレ使用中に汚染された可能性を示唆しているが,乾燥した排水口から浴室に再侵入したエアロゾルに触れた可能性は否定できない.さらに,他の共用される表面サンプルはすべて陰性であった.

また,-02アパートユニットの他の主浴室でも同様の吸い込み現象が発生していた可能性がある.他の居住者,例えば2502号室または2702号室の居住者が,index caseがトイレを水洗したのと同じ時間にたまたま自室のトイレにいた場合,その居住者は吸い込まれたバイオエアロゾルの一部を吸い込んだ可能性がある.index caseがトイレを使用した正確な時間は不明であるが,-02アパートユニットに居住する家族のうち2家族が主浴室を同時に使用した可能性は直感的に低いと思われる.しかし,十分に小さいサイズのバイオエアロゾルは,排水管や通気口において,空気中に数時間にわたって浮遊している可能性が高く,後述するように,関連する条件が満たされていれば,連続的に浴室に吸い込まれる可能性がある.竪排水管や通気口内でのバイオエアロゾルの一過性の移動は,浮力(煙突)効果,下水(排水)の落下,またはその両方の結果である可能性がある.浮力効果は,排水管内の空気と浴室内の空気の温度や湿度が異なる場合に発生する可能性がある.主浴室の竪排水管と通気口は,マンションXのサービスコンジット(service conduit)の屋内に設置されているが,「煙突 chimneys」(つまり通気口と竪管)の高さが90m近くあるため,わずかな空気の温度と湿度の違いでもかなりの煙突効果(stack effect: 煙突の中に外気より高温の空気がある時に,高温の空気は低温の空気より密度が低いため煙突内の空気に浮力が生じる結果,煙突下部の空気取り入れ口から外部の冷たい空気を煙突に引き入れながら,暖かい空気が上昇する現象)が発生する(Figure 2).しかし,1502号室の下階のアパートユニットでも漏れ出たガスが検出されているので,おそらく中層階以下の高さにあると思われるものの,ニュートラルレベルの正確な位置は不明である.ニュートラルレベルとは,室内と煙突内の圧力が等しくなるところである.

Figure 2: Illustration of the buoyancy (chimney) effect, with inflows into the vent at lower stories and outflows into the bathrooms at upper stories when the source bathroom is above (left) and below (right) the neutral level.

 

浮力効果に加えて,各アパートユニットの吸引流量は,その浴室内の陰圧に依存する.浴室内の陰圧は,浴室に窓がありバルコニーに面している場合には,換気扇や北風の影響を受けている可能性がある.電話調査(Supplement Table 5)によると,2502号室と2702号室の居住者のみが主浴室の窓を開けたことがなく,換気扇を使用することで陰圧が発生し,他のアパートの主浴室と比較して糞便エアロゾルの侵入リスクが高くなる可能性がある.計算流体力学シミュレーションでは,アパートユニット内の陰圧は16.8Paと高い可能性があることが示された(Supplement Figure 4).浮力(煙突)効果がないときの風圧や換気扇ファンの圧力が同じであれば,乾燥したUトラップを備えた上層のほとんどの-02アパートユニットでも,おそらく同様の感染リスクがあると思われる.この吸い込み効果と煙突(煙突)効果を組み合わせると,最上階が最も「汚染」されていることになり,その階で測定された濃度が高いことが説明できる.空室の1602号室のサンプルが陽性であったのは,風が負圧を発生させたことを示唆している.浴室に吸い込まれたバイオエアロゾルは,一部の表面に堆積し,その後,居住者が触れて他の表面に広がった可能性がある.今回の感染性バイオエアロゾルの発生源は,index caseの尿,糞便,排出された粘液が混じった排水のバイオエアロゾル化であると考えられる.排水管内での糞便エアロゾルの発生は,219日に主浴室の洗面器Uトラップ内から陽性サンプルが検出されたことからも裏付けられている.これらのバイオエアロゾルは,乾燥した床や浴槽の排水口から一部の主浴室に入ったと考えられる.このバイオエアロゾルはトイレの水洗時に発生し,希釈を最小限に抑えながら排水口や通気口を介して拡散したと考えられる.このふるまいは,開放空間での排出された呼気(ジェットやパフ)とは異なる; これらは感染者からの距離が長くなるにつれてウイルスを含む飛沫濃度が急速に減少するのは,ジェットやパフが室内空気と混合するためである.すなわち,この事例のようにウイルスが長距離を移動した後も,排水管内のウイルス濃度が非常に高いままであることがあることが異なる点である.これらのバイオエアゾールは、浴室の居住者が直接吸い込んだり,部屋の表面に沈着したりする可能性があり,後に居住者が触れる可能性がある2つの主浴室(1502号室と1602号室)の表面サンプルが陽性であったことから,エアロゾルによる表面汚染とその後の粘膜感染の可能性があるこれらの糞便エアロゾルの吸入または糞便エアロゾルによる表面汚染によるfomitesを介した感染が呼吸器感染の経路となっている2003年に香港で発生したアモイガーデンズSARSの調査では,SARS-CoVはウイルスを含んだ糞便エアロゾルの形で通気口または排気管を介して感染する可能性が高いことが示唆されている.2003年のアモイガーデンズでのSARS発生時にも,糞便感染経路が示唆されている.これらの知見は,我々の研究の結論を間接的に支持するものである.香港では,他にも垂直方向に並んだアパートを巻き込んだCOVID-19アウトブレイクが2件発生している.最初の事例では、Fu Heng EstateHeng Tai House1)で,34階のアパート13に住む59歳の男性が,32階のアパート13に住むCOVID-19患者2人によって感染したと報告されている.2番目の事例では,Lek Yuen EstateLuk Chuen House2)で,感染者が認められた7階の710号室,810号室,1012号室,1112号室の4つのアパートが,8階の812号室に住むindex caseのアパートと垂直方向の排水管でつながっており,6人の二次感染者が発生した.しかし,今回調査した事例を含め,これらのアウトブレイクでは,浴室の表面サンプルが陽性であったことを除いて,排水管システム内に糞便由来のウイルスを含むバイオエアロゾルが存在したことを示す直接的な証拠は得られていない.

したがって,マンションXにおけるCOVID-19アウトブレイクは,状況証拠に基づいて,糞便エアロゾルの伝播によって引き起こされた可能性がある.このような感染伝播を阻止するために,排水システムから室内空間への潜在的なガス漏れを回避することによって,バイオエアロゾルを発生源で制御することができる例えば,糞便エアロゾル伝播を遮断するために,Uトラップのような排水トラップを乾燥させてはならない.排水の適切な衛生管理は,糞便-口腔ルートによる下痢性疾患の感染を防ぐことが知られている.我々の研究はまた,トイレでの排便は糞便エアロゾルを発生させる可能性があるため,トイレの換気と衛生の重要性を間接的に示唆しているSARS-CoV-2 の感染拡大における糞便エアロゾルの役割を調べるためには,さらなる研究が必要である.

Reference

1) Leung K, Leung C, Ho-him C. Coronavirus: at least 10 households evacuated from Hong Kong public housing block in Tai Po over multiple infections. Accessed at www.scmp.com/news/hong-kong/health-environment/article/3075228/coronavirus-another-public-housing-estate-hong on 15 April 2020.

2) Tsang D, Ho-him C. Coronavirus: Hongkonger living in public housing at centre of infection cluster confirmed as infected. Accessed at

https://www.scmp.com/news/hong-kong/health-environment/article/3088925/coronavirus-man-living-hong-kong-public-housing on 11 July 2020.

 

私見:

通気口の経路は記載されていない.1502号室のトイレ竪排水管に注入したトレーサーガスの,各部屋の浴槽排水口および床排水口で測定した濃度は,それぞれ1602号室(空室): 559ppm, 94ppm2502号室(家族B):27ppm, 20ppm2702号室(家族C:

597ppm587ppmであり,「上方へ向かう空気の流れ」はある.Tableをみると1502号室の洗面台のUトラップ内部表面のRNA陽性ではあるが,limitationとして各部屋のUトラップの封水は本当に乾燥していたかどうかは証明されていない.また空気サンプルは陰性であり,糞便エアロゾルは直接証明されていない.果たして本当に「糞便」がエアロゾル化したのか?,普通に「呼気」に含まれるエアロゾルが伝播したのではないのか?.

上記の疑問が生じる.そもそも空気を介して直接呼吸器に侵入するウイルスである.長官にACE2が発現していても,初期にどうやってそこへたどり着くのか.たしかにウイルス血症ならありえるだろう.重症例では便から“生きたウイルス”が証明された報告もある.糞便エアロゾル感染伝播は,可能性はあるだろうが,証明されていない.