COVID-19関連追加(2020916-2

 

【季節性コロナウイルスの免疫防御は短期間しか持続しない】

Edridge AWD, et al. Seasonal coronavirus protective immunity is short-lasting. Nature Medicine. Nature Medicine. Sep 14, 2020. https://doi.org/10.1038/s41591-020-1083-1.

Main

これまでのところ,一般的にコロナウイルスによる再感染が起こるとされているが,SARS-CoV-2による再感染のエビデンスは限られている.COVID-19の将来の流行に備えるためには,季節性コロナウイルスのinformative modelを用いて,再感染に対する防御期間を解明することが重要である.季節性コロナウイルスには,HCoV-NL63HCoV-229EHCoV-OC43HCoV-HKU14種類があり,これらはすべて呼吸器感染症を引き起こす可能性があるが,それ以外は遺伝的にも生物学的にも異なるものである.これらは2つ分類学的属(taxonomic genera)に属し,異なる受容体を用いて様々な宿主細胞へのtropismも異なる1).このような大きな違いを考慮すると,季節性コロナウイルス4種類に共通する防御免疫の持続時間などの特徴は,SARS-CoV-2 を含むすべてのヒトコロナウイルスを代表するものではないかと考えられる.したがって,本研究の目的は,季節性コロナウイルスの再感染からの防御効果の持続時間を調べることである.

季節性コロナウイルス感染症は無症状である可能性があり,ウイルス排出期間が限られているため2),感染を同定するためのウイルス検出法(例えば、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR))に基づく長期疫学研究では,呼吸器サンプルの継続的な採取が必要となるが,これは実行可能ではない.その代わりに,感染後1年まで抗体レベルが上昇したままであるので,血清学的アッセイを使用することもできる2)そこで我々は,1980年代から定期的に成人男性を追跡しているコホート研究である,HIV感染あるいはAIDSのアムステルダムコホート研究(Amsterdam Cohort Studies on HIV-1 infection and AIDS)の血清サンプルを使用して,追跡調査中に季節性コロナウイルス感染がどのくらいの頻度で発生したかを調査した.免疫に影響を及ぼす可能性のある重篤な疾患のない健常者10人の個人が選択された(Methodsおよびref. 3).19972003年に追跡調査が途切れた期間を除いて,採血は,1989年以前は3ヶ月毎,その後は6ヶ月毎に行われた.この10人が継続的に追跡された期間の累計は2473ヶ月以上であった.

再感染を検出するために,季節性コロナウイルスごとにヌクレオカプシドタンパク質(NCt)のカルボキシル(C)末端領域(構造的コロナウイルスカプシドタンパク質の免疫優勢領域(immunodominant region4)に対する抗体の上昇について測定した.抗原の選択,血清学的検査,感染の閾値、および検査の特異性と感度については,MethodsExtended Data Figs. 1-4Supplementary Tables 1-3に記載した.合計101イベント(1人あたり,317)をコロナウイルス感染として分類した(Table 1およびFig.1a).再感染までの期間は,連続した追跡期間中のみ計算した(Fig.1aおよびSupplementary Fig.1の連結点).再感染までの期間は6ヶ月から105ヶ月であった(Fig.1bHCoV-HKU1の感染数が少なく,過小評価されている可能性があるものの(おそらくHKU1-NCt-ELISAの感度が低いためと考えられる(Extended Data Fig.2)),個々のウイルスの感染間隔の長さには統計的に有意差はみられなかったKruskal-Wallis検定, P= 0.256

Table 1: Study individuals and seasonal coronavirus infections during follow-up.

早ければ6ヶ月(HCoV-229E2回,HCoV-OC431回),9ヶ月(HCoV-NL631回)で再感染した例もあったが,12ヶ月での再感染が多かったFig.1b6ヶ月以内の再感染では,感染間における抗体の中間的な低下はみられなかったが(Fig. 1b,白丸),6ヶ月以上の再感染間隔では,感染間における抗体の中間的な低下がみられたFig.1aSupplementary Fig.1にピークを可視化).この研究では,採取間隔が最低でも3ヶ月であったために短期的な再感染の検出には限界があった.しかしながら,抗体量の減少(光学濃度(OD: optical density)倍率変化(fold changes< 1.0)が認められたのみになので(Fig.1c),3ヶ月の間隔に続く最初の追跡調査では,再感染の兆候は観察されなかった(Fig.1cしたがって,我々のデータでは,季節性コロナウイルスによる再感染の最も早い時期は6ヶ月であると結論づけた

 

 

Figure: Reinfections by seasonal coronaviruses.

figure1

a対象者1人(#9)の抗体動態の例.連結した点: 追跡調査間隔 <400日間. アスタリスク: 抗体の ELISA OD 倍率が1.40以上で,その値はアスタリスクに隣接した倍率変化の値.黒・下線:OD 倍率上昇が1.40以上の場合は感染と分類される.灰色: 交差反応が疑われ,感染として分類されないOD 倍率上昇1.40以上.

b対象者10人について同定された再感染の間隔.白丸: 抗体レベルの中間的な低下を伴わない再感染.黒縦線: 再感染期間の中央値

c感染後の抗体レベルの追跡調査期間に対する変化.各円は感染を表す.横線: 次の採血時の抗体レベルの上昇(>1.0)または低下(<1.0)の間のカットオフ.

d異なる月にわたる4つのコロナウイルスの感染の有病率.月ごとの有病率は,コロナウイルスごとの総感染数に対するパーセンテージとして示されている.

 

理論的には,コロナウイルス感染によって誘導された抗体は,コロナウイルスを認識する幅広い特性を持つ可能性がある.これを検証するために,より種間保存された(inter-species-conserved N末端領域を含むSARS-CoV-2の完全ヌクレオカプシド(N)タンパク質を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISAを追加で実施した対象者2人に広く認識する抗体が認められた#2および#9; Extended Data Fig.5.対象者#9については、その後もこれらの抗体は存在していた.この対象者から報告された症状からは,これらの抗体の誘導および維持を説明できるような病歴は明らかではなかった.注目すべきことに,これらの持続している広汎に認識する抗体は,その後のHCoV-NL63HCoV-229E,およびHCoV-OC43感染に対する防御を持たなかった

我々の血清学的研究は,症状に基づいた検査プロトコル5)に基づいた過去の疫学研究のサンプリングバイアスを回避している点で,唯一のものである.我々の研究では,6月,7月,8月,9月は,4つすべての季節性コロナウイルスの感染の有病率が最も低いことを示している(Fig.1dWilcoxon signed-rank test, P= 0.004これは温帯国の冬の有病率が高いことを示しており,ポストパンデミック時代においては,SARS-CoV-2は,この特徴を共有している可能性がある

我々は,再感染感受性に関与する可能性のある変異株を特定することはできなかった.HCoV-NL63HCoV-OC43HCoV-HKU1はすべて異なる相互循環遺伝子クラスター(co-circulating genetic clusters)を示している1)HCoV-229Eは継続的な遺伝的浮遊(genetic drift: 集団の大きさが小さい場合,あるいは季節,飢餓などの要因によって集団が小さくなったとき,偶然性によってある遺伝子が集団に広がる現象)を示しており,状況はさらに複雑である.ボランティアによる再感染研究は,HCoV-229Eを用いて行われた2つの研究のみである.Callowらの研究では,ボランティア9人のうち6人が12ヶ月の間隔で同じHCoV-229E分離株に再感染したことが示されている2).一方,Reedの研究では,同じ株のHCoV-229Eを使用してもボランティアの再感染は認められなかったが,異種株による再感染は成功した6)現在のSARS-CoV-2パンデミックでは,循環株がわずかに異なるだけで,分岐した(divergentSARS-CoV-2株の再感染に対する感受性が高まることはほとんどないと考えられる

集団免疫に到達するために長期的な免疫を必要とするワクチンや自然感染といった政策に依存する場合には注意が必要である.他の研究では,SARS-CoV-2中和抗体レベルが感染後最初の2ヶ月以内,特に軽症COVID-19において,低下することが示されており7)8),それと同様に,我々は季節性コロナウイルスの抗ヌクレオカプシド抗体の低下を観察した(Extended Data Fig.6.しかしながら,抗体は免疫のための1つのマーカーに過ぎず,おそらくB細胞およびT細胞性免疫の影響も受けている.我々の研究では,防御免疫(細胞性免疫,液性免疫)が不十分な場合にのみ起こりうる再感染を観察したその結果,自然感染による再感染は,SARS-CoV-2を含むすべてのヒトコロナウイルスに共通する特徴であることが示唆された再感染は感染後12ヶ月間で最も多く発生し防御免疫は短命であることが示唆された

 

 

References

1) Pyrc, K. et al. Mosaic structure of human coronavirus NL63, one thousand years of evolution. J. Mol. Biol. 364, 964–973 (2006).

2) Callow, K. A., Parry, H. F., Sergeant, M. & Tyrrell, D. A. J. The time course of the immune response to experimental coronavirus infection of man. Epidemiol. Infect. 105, 435–446 (1990).

3) Van Bilsen, W. P. H. et al. Diverging trends in incidence of HIV versus other sexually transmitted infections in HIV-negative MSM in Amsterdam. AIDS 34, 301–309 (2020).

4) Blanchard, E. G., Miao, C., Haupt, T. E., Anderson, L. J. & Haynes, L. M. Development of a recombinant truncated nucleocapsid protein based immunoassay for detection of antibodies against human coronavirus OC43. J. Virol. Methods 177, 100–106 (2011).

5) Li, Y., Wang, X. & Nair, H. Global seasonality of human seasonal coronaviruses: a clue for postpandemic circulating season of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2? J. Infect. Dis. 222, 1090–1097 (2020).

6) Reed, S. E. The behaviour of recent isolates of human respiratory coronavirus in vitro and in volunteers: evidence of heterogeneity among 229Erelated strains. J. Med. Virol. 13, 179192 (1984).

7) Long, Q. X. et al. Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections. Nat. Med. 26, 1200–1204 (2020).

8) Ibarrondo, F. J. et al. Rapid decay of anti–SARS-CoV-2 antibodies in persons with mild Covid-19. N. Engl. J. Med. https://doi.org/10.1056/NEJMc2025179 (2020).

9) Ieven, M. et al. Aetiology of lower respiratory tract infection in adults in primary care: a prospective study in 11 European countries. Clin. Microbiol. Infect. 24, 1158–1163 (2018).

10) Gobat, N. et al. Preparedness for clinical research during pandemics: a perspective from the Platform for European Preparedness Against (Re-)emerging Epidemics (PREPARE). Lancet 392, S38 (2018).

11) Loens, K. et al. Performance of different mono- and multiplex nucleic acid amplification tests on a multipathogen external quality assessment panel. J. Clin. Microbiol. 50, 977–987 (2012).

12) Reed, L. J. & Muench, H. A simple method of estimating fifty per cent endpoints. Am. J. Epidemiol. 27, 493–497 (1938).

13) Dijkman, R. et al. The dominance of human coronavirus OC43 and NL63 infections in infants. J. Clin. Virol. 53, 135–139 (2012).

14) Severance, E. G. et al. Development of a nucleocapsid-based human coronavirus immunoassay and estimates of individuals exposed to coronavirus in a U.S. metropolitan population. Clin. Vaccin. Immunol. 15, 1805–1810 (2008).

15) Sastre, P. et al. Differentiation between human coronaviruses NL63 and 229E using a novel double-antibody sandwich enzyme-linked immunosorbent assay based on specific monoclonal antibodies. Clin. Vaccin. Immunol. 18, 113–118 (2011).

16) Dijkman, R. et al. Human coronavirus NL63 and 229E seroconversion in children. J. Clin. Microbiol. 46, 2368–2373 (2008).

17) Lehmann, C. et al. A line immunoassay utilizing recombinant nucleocapsid proteins for detection of antibodies to human coronaviruses. Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 61, 40–48 (2008).

18) Gorse, G. J., Donovan, M. M. & Patel, G. B. Antibodies to coronaviruses are higher in older compared with younger adults and binding antibodies are more sensitive than neutralizing antibodies in identifying coronavirusassociated illnesses. J. Med. Virol. 92, 512–517 (2020).

19) van der Hoek, L. et al. Identification of a new human coronavirus. Nat. Med. 10, 368–373 (2004).