COVID-19関連追加(2020919日)

 

【ロングフライトにおけるSARS-CoV-2感染伝播】

Khanh NC, et al. Transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 during long flight. Emerg Infect Dis. Sep 18, 2020.

https://doi.org/10.3201/eid2611.203299.

202081日ファイルに追記.

Introduction

航空旅行は,感染者の移動を通じてパンデミックに関与している.その結果,20203月には多くの国が航空旅行を完全に停止するか,大幅に減少させた.国際的な航空業界では,飛行機内の感染リスクは非常に低いと判断されており,SARS-CoV-2感染が収まらないにもかかわらず,多くの国で飛行制限が解除され始めている中,特に長時間のフライトが懸念されるようになっている.

2020123日,ベトナムにおけるCOVID-19の最初の症例が記録され,症例は中国・武漢からの訪問者であった9)124日,ベトナムは中国本土,香港,台湾からの航空旅行を一時停止し,流行が世界的に広がるにつれて,他国からの入国者に対して渡航禁止,強制検疫,検査措置を徐々に拡大していった10)

世界的にパンデミックの深刻さが認識され始めた20203月初旬,英国ロンドン発ベトナムハノイ着の航空便(ベトナム航空54便[VN54])にて32日に到着した乗客にCOVID-19クラスターが確認された.この時点で,武漢から避難してきたindex case6人を含むベトナム着の3便でCOVID-19の輸入症例が確認されている; 二次感染例6人はベトナム国内でのウイルス感染伝播による11).これらのフライトにおける乗客に対する詳細な調査は行われておらず,フライト中に感染が発生したことを示す証拠は認めなかった.

VN54便の初期調査では,ビジネスクラスに搭乗していた有症状であった乗客1人(index caseの可能性が高い)からの機内感染伝播の可能性があるとの仮説を立てた.その後,追跡可能なすべての乗客と乗務員の検査と隔離・検疫を含む大規模な疫学的調査を開始した.我々の目的は,当該便でSARS-CoV-2感染が発生する確率を推定し,感染伝播に関連する危険因子を特定することであった.

Methods

32日にハノイに着陸したVN54便に搭乗した乗客または乗務員のうち,31日〜16日までに発熱,咳,息切れの有無にかかわらず報告があった者をフライト関連COVID-19症例と定義した.フライト関連COVID-19確定症例とは,症状の発現の有無にかかわらず,鼻咽頭スワブ検体からSARS-CoV-2 RT-PCR結果が陽性であったVN54便の乗客または乗務員であると定義した.フライト関連症例はVN54機内で感染した可能性が高いと考えられ,以下の3つの基準を満たしていた場合に二次感染の可能性が高い症例として分類された; 1)到着後214日後に症状を認めたが,症状がなくても到着後214日後にPCRSARS-CoV-2陽性と判定された場合,2)詳細な調査を行っても潜伏期間中のフライト前後にSARS-CoV-2の曝露の可能性は認められなかった,3)フライト中にindex caseの疑いが強い症例と機内空間を共有していた場合である.

VN54便到着時には,英国を含むCOVID-19感染地域からの乗客は全員,赤外線画像による体温検査が実施され,COVID-19の症状があれば申告することが義務付けられていた; 中国,韓国,イラン,イタリアから到着した乗客のみがSARS-CoV-2検査と14日間の隔離を受けなければならなかった.当時,飛行機や空港ではフェイスマスクの着用は義務付けられていなかった

index caseの可能性がある症例の渡航歴が明らかになると,入国管理局と民間航空局からVN54便の乗客リストとフライトマニフェストを入手し,各省の疾病管理センターに送付され,現地の保健スタッフはVN54便の乗客と乗務員を全員追跡するよう指示された.追跡できた乗客と乗務員は全員,標準的な質問票による問診,SARS-CoV-2検査を受け,指定された施設または自宅に隔離された.検査結果が出るまで,症状のある者は直ちに隔離された.フライト関連症例が疑われる,または確認されたすべての人に綿密な聞き取り調査が実施された; 具体的には,フライトの前後でSARS-CoV-2に感染する可能性があったイベントを検出し,フライト中以外の感染の可能性を調査することに重点が置かれた.

さらに,フライト関連症例が疑われる,または確認されたすべての人は,ベトナムに到着してから検疫・隔離が開始されるまでの間に,濃厚接触(2メートル未満の距離で15分以上)があった人を特定するように求められた.これらの濃厚接触者にも連絡を取り,検査を行い,14日間隔離した.隔離中のすべての人は,臨床症状および発熱について12回チェックされた; 口咽頭スワブは入院当日,35日後,13日目に採取されたが,症状が発現していない場合は直ちに検体が採取され,検査結果を受け取るまで隔離・監視された.

index caseの可能性がある症例の初期調査では,フライト中の感染伝播があった仮説が立てられ,さらに調査された.特に,フライトのタイミングに関連した潜伏期間中にフライト関連症例に曝露した可能性のあるすべての人を調査した(フライト前後にフライト関連症例と接触した可能性のある場所も含めた).フライト中の感染リスクに関連する因子を特定するために,リスク比(risk ratios)と 95% CIs を算出した.

 

 

Results

Figure 1: Seating location of passengers on Vietnam Airlines flight 54 from London, UK, to Hanoi, Vietnam, on March 2, 2020, for whom severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection was later confirmed.

Seating location of passengers on Vietnam Airlines flight 54 from London, UK, to Hanoi, Vietnam, on March 2, 2020, for whom severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection was later confirmed.

VN54便は202031日午前1110分(現地時間)にロンドンを出発し,32日午前520(現地時間)にハノイに到着,ノンストップの10時間のフライトであった.乗務員16乗客201が搭乗していた.機内の座席数は274席で,ビジネスクラス(28席),プレミアムエコノミークラス(35席),エコノミークラス(211席)に分かれており,トイレはビジネスクラスとプレミアムエコノミークラスに4つ,エコノミークラスに5つ設置されていた.ビジネスクラスは,プレミアムエコノミークラス,エコノミークラスとはサービス・トイレエリアで仕切られた専用席となっている(Figure 1).乗客201人のうち,ビジネスクラスは21人(座席の占有率75%),プレミアムエコノミークラスは35人(100%),エコノミークラスは145人(67%)が利用されていた(Figure 1.食事は2回提供され,客室乗務員はビジネスクラスとプレミアムエコノミークラスの2チームに分かれてサービスを行った.

Investigation of Probable Index Case:

ベトナム出身の27歳のビジネスウーマン(のちにindex case疑い,case 12月上旬からロンドンに滞在していたことが判明した.彼女は,218姉(後にロンドンでSARS-CoV-2陽性と診断)と共にイタリアに渡航し220日にロンドンに戻って姉と2泊していた.case 1と彼女の姉は,222日に一緒にイタリアのミラノに戻り,その後,毎年恒例のファッションウィークのためにフランスのパリに行き、225日にロンドンに戻った.彼女たちは,case 1が友人との打ち合わせや歓楽街を訪れた際に喉の痛みや咳が出始めた229日まで,ロンドンに滞在していた31日,VN54便に搭乗したビジネスクラスの座席に座っていたが,フライト中ずっと喉の痛みと咳が続いていた.到着後,症状(発熱,喉の痛み,倦怠感,息切れ)はさらに進行し,ハノイ市内の自宅で自己隔離し,接触は家族のみとなった.35日にハノイ市内の病院を受診し,口腔咽頭スワブを採取して検査を受けたところ,6日にRT-PCRによりSARS-CoV-2感染が確認された37日,彼女の家族のうち3人がSARS-CoV-2の陽性反応を示し彼女が229日にロンドンを訪れた友人も310日に陽性反応を示した

Case Finding and Epidemiologic Investigations:

310日までに,ベトナムに残留していた乗務員16人(100%),乗客168人(84%)の全員が追跡され,33人(16%)は既に他国に渡航していた我々は,ベトナムに残留していた乗客・乗務員全員を隔離し,聞き取り,PCR検査を実施することができた.乗客と乗務員は,北はラオスカイ(Lao Cai)とカオバン(Cao Bang),南はキエンザン(Kien Giang)まで,ベトナムの15省にまで渡っていた.

Figure 2: Epidemiologic and clinical timeline for passengers on Vietnam Airlines flight 54, from London, UK, to Hanoi, Vietnam, March 2, 2020, for whom SARS-CoV-2 infection was later confirmed. Because the flight arrived quite early in the morning (5:20 am), we considered the remainder of the day (19 h) to be the day of arrival. Case 14 traveled with a companion who was tested but negative for SARS-CoV-2 infection. SARS-CoV-2, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2.

Epidemiologic and clinical timeline for passengers on Vietnam Airlines flight 54, from London, UK, to Hanoi, Vietnam, March 2, 2020, for whom SARS-CoV-2 infection was later confirmed. Because the flight arrived quite early in the morning (5:20 am), we considered the remainder of the day (19 h) to be the day of arrival. Case 14 traveled with a companion who was tested but negative for SARS-CoV-2 infection. SARS-CoV-2, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2.

 

PCR陽性のCOVID-19確定例15人(乗客15人,乗務員1人)が追加で確認され,合計16人のフライト関連症例が確認された年齢は3074歳(中央値63.5歳)であり,男性9人(50%以上),英国籍12人(75%)であった(Table 1フライト関連症例15人のうち,12人(80%)がcase 1と共にビジネスクラスを利用しておりエコノミークラスを利用していたのは乗客2人(case 1415)と客室乗務員1人(case 16であった(Figure 1ビジネスクラスに搭乗していた人のうち,発病率は62%13/21であったビジネスクラスではcase 1から2席未満と推定された2メートル以内の座席に座っていた乗客のうち,11人(92%)がSARS-CoV-2陽性であったのに対し(リスク比7.3, 95CI 1.2-46.2),2席以上離れた座席の乗客は1人(13%)であったTable 2.ビジネスクラスの確定症例12人のうち、8人(67%)で症状が発現し,症状の中央値は到着後8.8日(IQR, 5.8-13.5)であった(Figure 2).また,VN54搭乗中にCOVID-19の症状を示した例はなかったビジネスクラスに搭乗していた12人はすべて二次感染例である可能性が高いと考えられた

我々の調査では,追加されたフライト関連症例のうち,case 1と同じフライトを利用した場合以外に,フライトの前後を問わずSARS-CoV-2に感染した可能性を裏付ける強力な証拠は得られなかった(Appendix).機内には同伴者カップル4組が搭乗しており,各カップルはビジネスクラスで隣同士の座席であった.搭乗前やベトナム到着後に他のカップルや個人と一緒に旅行,宿泊したケースはなかった.これらのカップルのうち、3組(6人)が同じ日: ベトナム到着後6日後にSARS-CoV-2に陽性と判明した.

VN54便の乗客および乗務員の接触者1300人以上のうち,確定症例5人が確認されたが,そのうち3人は症例1と関連のある家庭関係者であった.残りの接触確定症例2人とそれぞれのフライト関連症例との最終接触時期から,フライト関連症例の感染は同時期に発生しており,感染時期はフライト時と一致していたと考えられた(Appendix).

Table 1: Descriptive epidemiology for 217 passengers and crew on Vietnam Airlines flight 54 from London, UK, to Hanoi, Vietnam, March 2, 2020*.

 

Table 2: Risk for SARS-CoV-2 infection by seating location among business class passengers on Vietnam Airlines flight 54 from London, UK, to Hanoi, Vietnam, March 2, 2020*.

 

Discussion

20203月初旬にロンドンからハノイへの直行便に搭乗した乗客と乗務員217人のうち,COVID-19確定症例16人のクラスターを確認した詳細な疫学的調査から,有症状症例(case 1)がフライト中にSARS-CoV-2感染をビジネスクラスの他の少なくとも乗客12人(二次感染の可能性が高い)に感染させたことが強く示唆された

case 1機内で唯一の症状のある乗客であり,感染者(彼女の姉)の潜伏期間中に接触していた唯一のフライト関連症例であったフライト関連症例の潜伏期間は、すべてのフライト関連症例の潜伏期間とフライトのタイミングが重なっていたFigure 2.その他のフライト関連症例のうち,case 1と同じフライトに搭乗した以外は,フライト前後の潜伏期間にSARS-CoV-2に曝露した者はいなかったし,搭乗カップル4組のうち,フライト後に曝露したことを示唆するケースはなかった(Appendix).カップル3組のケースでは,到着からSARS-CoV-2検査結果が陽性になるまでの間隔が類似していたことから,一方のパートナーから他方のパートナーへ感染伝播させたのではなく,共通の曝露イベントがあったことが示唆された.最終的には,case 1の近くに座っていたことと感染リスクには明確な関連があることがわかったTable 2

ゲノム解析が行われていないため,他の感染経路を完全に排除することはできなかった.しかし,フライトに関連した感染者はすべて英国から出発した(他国からの乗り継ぎ者はいなかった); VN54便の出発日まで英国ではCOVID-19症例は23人しか記録されていなかった.当時は全国的に大規模な検査は実施されていなかったが,英国でのコミュニティ感染伝播はまだ広く確立されていなかったため,この疾患の潜伏期間であった複数の人が機内にいた可能性は低いと考えられる.同様に,潜伏期間中にイギリスよりも前にインドを訪問したと報告されたcase 4についても,31日までにインドではCOVID-19症例が3例しか報告されていなかったため,フライト前の感染があった可能性は低いが,インドでの検査はまだ限界があった.さらに,case 4の同僚30人のうち,フライト前に同じ旅行履歴を共有していたが,エコノミークラスの座席に座っていた全30人のうち,誰も感染していなかった(Appendix).

ベトナム到着後の感染は考えにくいと考えている.202031日時点で,ベトナムでのCOVID-19の報告は16人のみであり,最後に報告された症例(ここで報告されたcase 1はベトナム症例No.17となった)から17日が経過していた.当時,ベトナムでは1593人がSARS-CoV-2感染症の陰性判定を受けており,当時の公式方針によれば,さらに10089人の接触者や海外のCOVID-19感染地域から帰国した旅行者は,到着時に検疫を受けることになっていた.20203月初旬には,ベトナムでのSARS-CoV-2のコミュニティ感染伝播の証拠はなかった.また,case3case14VN54便の17日後に発症したことにも注目したいこれらの症例が異常に長い潜伏期間を反映しているのか,それともCOVID-19以外の条件に起因する症状なのかは不明である

フライト中の感染経路として最も可能性が高いのは,特にビジネスクラスの座席に座っている人にとっては,case 1からのエアロゾルまたは飛沫による感染伝播であるcase1との接触は,空港内,特に出発前のラウンジエリアや搭乗中のビジネスクラスの乗客の間でも発生した可能性はある.ベトナム航空では,フライト前やフライト中のほとんどの手続きにおいて,ビジネスクラスの乗客とエコノミークラスの乗客を分離しているがエコノミークラスの症例2人においては,到着後の出国審査や手荷物受取所で発生した可能性がある.また,このエコノミークラス2人の間の席にいた2人について追跡調査が出来なかったことにも注意が必要であるこれらの乗客のどちらかがエコノミークラスの別のindex caseを表しているかどうかは不明である

また,トレイテーブルやトイレの表面など,機内のfomitesや表面の役割についても不明な点がある.例えば,航空会社の乗務員は機内でビジネスクラスのトイレを使用することが多いため,エコノミークラスの乗務員が曝露した可能性があった他の感染源を特定できなかったことから,このケースを説明できるかもしれない.特筆すべきはエコノミークラスの乗客とエコノミークラスの乗務員の間で症状が発現した時間的な順序から,エコノミークラスのクラスターは独立して,異なった機内感染であった可能性も考えられる(Figure 2).

Limitation: @ゲノム解析できなかったこと,A正確な感染軽度を特定することが出来たかもしれない機内での感染者の行動(移動や座席の変更,トイレの使用,食事の共有など)に関する詳細なデータがなかったこと,Bフライト前の乗客に対する感染曝露についての評価は聞き取り調査のみであったこと,C乗客が機内でフェイスマスクを着用していたかどうかデータがないこと3月初旬の飛行機ではフェイスマスクの使用は推奨されておらず,また広く使用されていなかった).D機内から環境サンプルを採取できなかったこと.

我々の知見は国際的な航空旅行にいくつかの意味を持つ.

・赤外線画像による体温検査と症状の自己申告には限界があり,フライト前後に症状を申告しなかったcase 1がそれを実証している.

長時間のフライトCOVID-19症例の輸入につながるだけでなく,superspreadingイベントの条件を提供してしまう可能性がある.航空機内の環境要因(湿度,温度,気流)の組み合わせが,機内でのSARS-CoV-2の存在を長引かせる可能性があるという仮説が立てられている27)

VN54便では,通常の空調と交換システムが故障していたことを示す証拠はなかった.本研究で検出された二次感染と考えられた症例数は,機内の特定の条件下でのエアロゾルや飛沫の動きについてはまだ十分に理解されていないものの,フェイスマスクを使用していない場合の飛行機でのSARS-CoV-2感染伝播についての仮説推定値の上限に達している27)20202月にシンガポールから感染者16人を乗せたCOVID-19クラスターの研究では,機内感染の可能性は1例のみであることが確認されている28)2月に中国でフライト中に感染した10人のクラスターのプレプリントでは,機内感染が推定されているが,十分に立証されていない(N. Yangらによる,

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.28.20040097v1.full.pdfExternal link).20201月,カナダへの15時間のフライトでCOVID-19の症状のある人が搭乗した後,接触追跡とモニタリングは制限されていたものの,二次症例は認めなかった29)1月と2月にフランス31)32)とタイ33)に到着したフライトでも,同様の結果が報告されている.これらの研究ではいずれも接触追跡はindex case2列以内の乗客に限定されていたため,これらの研究ではフライトに関連した二次感染が検出されなかったかもしれない.

国際的な航空業界による最新のガイダンスでは、機内感染のリスクは非常に低いとされており34),中央の座席を塞ぐなどのフィジカルディスタンスを広げるための追加対策を行わずに,フェイスマスクの使用のみを推奨している7)35)我々の調査結果は,これらの推奨事項に反論するVN54便での感染伝播はビジネスクラスに集中しており,エコノミークラスよりも座席間隔が広く,飛行機やその他の公共交通機関でのCOVID-19予防のために推奨されている既存の236)または2メートル37)のルールよりもはるかに遠くまで感染が広がっていた2003年のフライトにおけるSARS-CoVsuperspreadingイベントでも同様の結論が得られており,index caseから3列以上離れた席に座った乗客は感染リスクが高かったことが確認されている4)この知見は、インフルエンザウイルスの感染パターンと一致しており38),まだ十分に認識されていないが,SARS-CoV-2の空気感染が主要な感染経路であることを示す証拠が増えている39)40)

我々の調査結果は、特に実質的な感染が進行している国では、公衆衛生当局、規制当局、航空業界によるスクリーニングと感染予防対策の強化を求めている(37)マスクの着用を義務化し,機内や空港での手指衛生や咳エチケットを標準的なものにすることは,自明で比較的簡単な対策であると思われる27).現在航空業界で推奨されている中間席の遮断7)35)は,理論的には一部の機内感染を防ぐことができるかもしれないが,superspreadingイベントを防ぐには十分ではないように思われる.また,コミュニティ感染のレベルが低く,輸入症例のリスクが高く,接触者追跡能力が限られている国では,到着時の来訪客に対する体系的な検査,検疫対策,またはその両方が正当化される可能性がある5)例えばベトナムでは,この調査の結果,出発地に関係なく到着時の検査を義務化し,検査結果や臨床徴候・症状に関係なく14日間の検疫を行うよう国の方針が変更された41)この方針の変更により,フライトの乗客の接触を追跡する必要がなくなり,328日に国際線が全便停止されるまでの全44便5000人の乗客から106人を検出することができた.しかし,このような政策のロジスティックおよび経済的な意味合いを考えると,感染期間全体をカバーする迅速で信頼性の高いポイント・オブ・ケア検査(point-of-care test)を開発することが最重要課題であることに変わりはない.

Conclusions

長時間のフライトにおけるSARS-CoV-2の機内感染伝播のリスクは現実であり,飛行機での密接な接触を定義する距離をはるかに超えた広々とした座席配置のビジネスクラスのような環境でも,かなりの規模のCOVID-19クラスターを引き起こす可能性がある

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COVID-19関連追加(2020919日)に920日追記しました

 

【ゲノム解析を行った飛行機内のSARS-CoV-2感染伝播】

Choi EM, et al. In-flight transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2. Sep 18, 2020. Emerg Infect Dis.

https://doi.org/10.3201/eid2611.203254.

COVID-19が流行している国を発着するフライトがまだ続いていることを考えると,SARS-CoV-2の機内感染が発生しているかどうかを判断することは重要である.

The Study

我々は,2020123日〜613日までに記録された,中国・香港のCOVID-19確定症例1110人の公的記録を調査した;診断前に旅行していた症例については,保健保護センター(CHP)の公的記録とVote4HK COVID-19 in HKのデータベースを用いた.当時,香港政府は検疫と空港でのスクリーニングの義務化をまだ導入していなかった我々は,202039に米国・マサチューセッツ州ボストンを出発し,310に香港に到着した商業便に関連したCOVID-19患者4人(患者AD)のクラスターを同定したこの飛行機,ボーイング777-300ERのフライトは15時間であり,最大294人の乗客を乗せたクラスターは乗客2客室乗務員2で構成されていた.これらの者は到着時にはSARS-CoV-2検査の基準を満たしていなかったが,到着後511日以内に現地の医療機関で実施したRT-PCRの結果が陽性であった.その後,患者4 人はすべて回復した(Appendix Figure 1).

患者ABは夫婦であった.患者Aは基礎疾患を持つ58歳の男性で,飛行機のビジネスクラスの窓際席に座っていた(Appendix Figure 2310に発熱と咳嗽が発現し,313日に軽い腹部不快感を認め,2日後に下痢を発症した.61歳の妻である患者Bにも基礎疾患があった.患者Bはビジネスクラスの窓際の席で患者Aの正面に座っていた310,妻(患者B)は喉の痛みを訴えた.その1日後,発熱と咳嗽を認めた.症状が悪化したため、医療機関を受診し,314日に入院した.315日,呼吸器検体(患者A314日採取,患者B315日採取)からSARS-CoV-2陽性が判明した.この2人の乗客の基礎疾患が何であったか,あるいはフライト中に症状が出ていたかどうかを示す公的な記録はない.飛行前および14日間の潜伏期間内に,彼らはカナダ・オンタリオ州トロント(215日〜32日),米国・ニューヨーク州ニューヨーク(32日〜5日),そしてボストン(35日〜9日)を訪問した.CHPは、この夫婦を香港への輸入症例と分類した

患者Cは無症状の25歳の男性で,香港政府と航空会社が追跡調査した結果,患者ABの濃厚接触者であることが判明した彼はビジネスクラスの客室乗務員で,フライト中は患者Aと患者Bに接客していた.患者Aと患者Bが診断を受けた後,航空会社は患者Cにその旨を伝え,患者C316日に外来診療所を受診した.317日にSARS-CoV-2陽性が判明し,その後隔離され入院した.患者C35日〜9日までボストンに滞在していた患者Dは客室乗務員である51歳の女性で,同じ便に搭乗していた318に発熱と咳嗽を発症し,321日にSARS-CoV-2陽性と判明し,患者Dは入院した.このフライト前の渡航歴や,フライト中やフライト後の他の患者との接触については公開されている情報はない患者Cと患者Dの基礎疾患に関するデータはなかったCHPは,患者Cと患者Dを輸入症例の濃厚接触者として分類した.

Appendix Figure 1:

 

Appendix Figure 2:

 

 

患者4人の感染伝播について遺伝的証拠を検討するために,4人のウイルスシーケンスを実施した.サンプルは公衆衛生当局の下で収集され,個々の患者の身元はCHPが把握していた.個人の同意なしに残されたサンプルのレトロスペクティブ分析は,現地の規制の下で許可され,香港大学/病院当局西クラスター(UW 20-168参照)の機関審査委員会およびロンドン大学衛生・熱帯医学倫理委員会(22384参照)によって承認された.保存された上気道のサンプルは,香港大学の世界保健機関(WHO)のリファレンスラボに送られた.illumina sequencing法および既知のプライマーおよびプロトコルを用いて,ほぼ完全長のゲノム(配列長 >29760 nt)を推定した.すべての推定された配列の最小カバレッジ(coverage: 同じところを何回重ねて読んだか)は100であった.また,検体を解析する際には,乗客か客室乗務員かわからないように盲検化した.

すべての患者4人から得られたほぼ完全長のウイルスゲノムは100%同一であり,系統学的にはclade Gにグループ化されていたFigureこれら4人以外の,香港で採取したサンプル(2020121日〜512; GISAIDhttp://platform.gisaid.orgExternal Link)から推定された189のウイルス配列は,いずれもこのcladeに属していなかった

(データは示していない)(K.S. Leungら,プレプリント,

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.20045740v2External Link).

一方,20203月には,トロント,ニューヨーク市,およびマサチューセッツ州で,わずか2ntの差しかない患者ADのものと関連するウイルス配列が分離されておりTable),患者AおよびBが訪問中に同様のウイルスに曝露したことは確かなようだ2020110日〜613日までの世界中における”高カバレッジかつ30000以上のSARS-CoV-2完全ゲノム”がGISAIDデータベースに保管されている.ここで報告されたクラスターにおけるウイルス配列と100%同一性を共有するものは認めなかった

 

Figure: Phylogenetic tree of the severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) viruses isolated from passengers and airline crew members who traveled on the same flight from Boston, Massachusetts, USA, to Hong Kong, China. Human SARS-CoV-2 WIV04 is selected to be the root of this phylogenetic tree. The tree was constructed by using the neighbor-joining method. Only bootstrap values >80 are shown. Representative viruses from clades L, S, V, G, GH, GR, and O (others) are included in the analysis. Virus sequences from patients AD reported in this study are grouped to clade G (GISAID [http://platform.gisaid.org] accession nos. EPI_ISL_476801 to EPI_ISL_476804). EPI ISL accession nos. for sequences retrieved in GISAID (http://platform.gisaid.org) are provided. Scale bar indicates estimated genetic distance.

Phylogenetic tree of the severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) viruses isolated from passengers and airline crew members who traveled on the same flight from Boston, Massachusetts, USA, to Hong Kong, China. Human SARS-CoV-2 WIV04 is selected to be the root of this phylogenetic tree. The tree was constructed by using the neighbor-joining method. Only bootstrap values >80 are shown. Representative viruses from clades L, S, V, G, GH, GR, and O (others) are included in the

 

 

Conclusions

症例歴とゲノムシーケンスの結果から,最も可能性の高い感染伝播の順番は,乗客ABの一方または両方が北米でSARS-CoV-2に感染し,フライト中に客室乗務員CDにウイルスを感染させたと考えられる4人全員が長時間接触していたのは飛行機の中だけであった.一般的に空港では搭乗前に乗客と客室乗務員が同じチェックインを行うことはない.患者CDが搭乗前に感染した可能性を完全に除外することはできないが,患者4人のウイルス配列が唯一であり,ウイルスゲノム全体で100%同一性であったことから,このシナリオは非常に可能性が低いと考えられる.患者Dは患者Cから感染した可能性があるが,彼らの検査結果が1潜伏期間中に陽性であったため,患者Dは患者AまたはBから感染した可能性が高いと考えられる.

我々の結果は,SARS-CoV-2の機内感染を強く示唆している.このフライトに関連する他のCOVID-19症例は確認されていない.すべての乗客を検査したわけではないため,このフライトでの発病率を定量化することはできなかった.SARS-CoV-2の機内感染の可能性の報告には,遺伝的証拠がない.20201月〜3月に国際航空輸送協会は機内感染の疑いがあるとする報告を3件受けている1).中国からカナダに飛んだ乗客2人の接触者を追跡したが,フライトからの二次感染は認めなかった2).それにもかかわらず,SARS-CoV-2の検査結果は何百人もの客室乗務員やパイロットに陽性を示しており,少なくとも2人が死亡している3)4).我々の結果は,SARS-CoV-2が飛行機で感染する可能性があることを示している.旅行におけるウイルス感染を防ぐためには,感染対策を継続しなければならない.

References

1) International Air Transport Association. Restarting aviation following COVID-19 [cited 2020 Jun 24].

2) Schwartz  KL, Murti  M, Finkelstein  M, Leis  JA, Fitzgerald-Husek  A, Bourns  L, et al. Lack of COVID-19 transmission on an international flight. CMAJ. 2020;192:E410.

3) Wallace  G. 100 American Airlines flight attendants have coronavirus, union says [cited 2020 Jun 24].

https://edition.cnn.com/2020/04/07/business/american-airlines-flight-attendants-coronavirus/index.html.

4) Mutua  K. Covid-19: KQ hero pilot Daudi Kibati laid to rest in Kitui [cited 2020 Jun 24].

https://www.nation.co.ke/kenya/counties/kitui/covid-19-kq-hero-pilot-daudi-kibati-laid-to-rest-in-kitui-284590External Link.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020919日)に930日追記しました

 

【全ゲノム解析によって支持されたフライト関連SARS-CoV-2感染伝播】

Speake H, et al. Flight-associated transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 corroborated by whole-genome sequencing. Emerg Infect Dis. 2020 Dec [date cited].

https://doi.org/10.3201/eid2612.203910.

2020321日,西オーストラリア州保健局は,319日にニューサウスウェールズ州シドニー発西オーストラリア州パース行きの便に搭乗していた乗客6が,PCR法によりSARS-CoV-2に陽性反応を示したとの通知を受けた乗客6人は全員,シドニーに停泊していたクルーズ船から下船していたその後2週間で,同便の乗客において他のSARS-CoV-2感染例が数例確認された

クルーズ船におけるSARS-CoV-2感染伝播はよく報告されているが1),フライトに関連したSARS-CoV-2感染伝播に関する情報は限られている2)3).我々は,疫学的データと全ゲノムシークエンシング(WGS: whole-genome sequencing)データを解析することにより,5時間の国内線フライトに関連したSARS-CoV-2感染を調査した.この調査は,2016年西オーストラリア公衆衛生法に基づき,SARS-CoV-2発生への公衆衛生対応の一環として実施されたものであり,倫理的承認は必要なかった.

 

Methods

Public Health Response to Coronavirus Disease in Australia:

オーストラリアでは,COVID-19が緊急届出疾患4)となっており,オーストラリアのCommunicable Disease Network of Australia4)が作成した国のガイドラインに従って,確定症例や濃厚接触例の調査・管理が行われている.SARS-CoV-2感染者が搭乗していたフライトの詳細は,https://www.healthywa.wa.gov.au/coronavirusExternal Linkで公開されている.航空会社は乗務員の管理に責任を持ち,機内での曝露の可能性がある場合は,the National Incident Room

https://www.health.gov.au/initiatives-and-programs/national-incident-roomExternal Link)から通知を受ける.

Initial Public Health Investigation of the Flight:

2020319日午後,オーストラリア国内線がシドニーを出発し,5時間後にパースに着陸した.同機はエアバスA330-200型機で,ビジネスクラス28エコノミークラス213の乗客が搭乗していた.乗客は海外からシドニー国際空港に到着後,トランジットしてパースに向かう人,そして国内旅行者で,最近シドニー港に停泊したクルーズ船3隻(318日「オベーション・オブ・ザ・シーズ」,319日「ルビー・プリンセス」,「サン・プリンセス」)のうち1隻を下船した人も含まれていた.

飛行機に搭乗していた乗客から感染者6が確認された後,濃厚接触者全員にSARS-CoV-2に曝露している可能性があることが知らされ,14日間の隔離が指示された.この調査では,SARS-CoV-2PCR検査は有症状者に限定された.41日までに20人を超える乗客でSARS-CoV-2感染が確認され,残りの乗客全員に感染の可能性があることが可能な限り通知された.フライトに関連した感染者数と、診断が遅れた人の症状発現時期を考慮すると,フライトに関連した感染伝播が発生した可能性が示唆された.

Laboratory Methods:

SARS-CoV-2 感染が疑われる患者に対して,咽頭スワブと,フロックした鼻咽頭スワブによる両側鼻咽頭あるいは深部鼻腔サンプルが採取された.これらのスワブは,viral, universal, or Liquid Amieshttps://www.copanusa.comExternal Link)の輸送用培地に入れられ,輸送,4°〜8℃で保存された.検査はPathWest Laboratory Medicine WAにて,Roche cobas SARS-CoV-2 testRoche Diagnostics, https://www.roche.comExternal Link),またはエンベロープおよびスパイクタンパク質遺伝子を標的とした combined in-house assayのいずれかを使用して実施した(Table 15)in-house assayは,National Pathology Accreditation Advisory Councilの規定に従い,National Association of Testing Authoritiesにより診断用として承認されている6)

ゲノム検査に利用可能なサンプルは,PathWestにてtiled amplicon PCRを行い,全ゲノムを代表する14個の重複したampliconを生成した(Appendix Table)た(全ゲノムはIllumina MiSeq sequencerIlluminahttps://www.illumina.comExternal Link)で配列決定した).患者1人から複数のサンプルが得られた場合,最も多いウイルス量(すなわち,Ct値が最も低い)のサンプルを使用した.処理されたリードをSARS-CoV-2 reference genomeGenBank accession no. MN908947)にマッピングした.Primer-clipped alignment filesGeneious Prime version 2020.1.1 (https://www.geneious.comExternal Link)にインポートしてカバレッジ解析を行い,iVar version 1.2.2 (https://github.com/andersen-lab/ivarExternal Link)を用いてコンセンサス配列を生成した.

西オーストラリア州由来のSARS-CoV-2のゲノム配列は,Phylogenetic Assignment of Named Global Outbreak LINeagesPANGOLIN)ツールを用いて系統7)に割り当てた(https://github.com/cov-lineages/pangolinExternal Link).2020717日に,GISAIDデータベースからSARS-CoV-2完全ゲノムを対応するメタデータとともに取得した(https://www.gisaid.org/epiflu-applications/next-hcov-19-appExternal Link).最終的なデータセットには540個のGISAID全ゲノム配列が含まれており,MAFFT version 7.467https://mafft.cbrc.jp/alignment/softwareExternal Link)を用いて,本研究で生成された西オーストラリアからの配列と相同性検索(alignment)された.系統樹は,iTOL (Interactive Tree Of Life, https://itol.embl.deExternal Link) MEGA version 7.014 8)で可視化した.配列決定の際には,WGSを監督・実施しているウイルス学者と科学者に対して,疫学的な詳細については盲検化されていた(Appendix).

ウイルス培養は,参照検査機関に直接送られた一次サンプルについては試みたが,他の検査機関での一次検査後に受け取ったサンプルについては試みなかった.臨床サンプルは,80%コンフルエントのVero-E6細胞で3個のウェルに播種し,5% CO237℃でインキュベートし,細胞変性効果(CPE: cytopathic effect)があるかどうかを最大10日間まで毎日検査した.同一性の確認は,in-house PCRにより行った.

Determining Likely Source of Infection:

PCRSARS-CoV-2感染が確認された各乗客の感染源は,潜伏期間中の他の感染源の可能性を評価したWGSと疫学調査の結果を用いて決定した.この調査では,搭乗する前に感染した可能性が高い,西オーストラリア州でPCRによりSARS-CoV-2感染が確認された乗客を一次症例とした

発症前14日以内にSARS-CoV-2アウトブレイクが確認されているクルーズ船に乗船したことがあり,その船の発生株に一致するウイルスゲノム配列が得られた乗客フライト出発前,あるいはフライト出発後48時間以内に発症した(例えば,フライト中にすでに感染力があった)乗客,またはその両方を一次症例と定義した.一方,SARS-CoV-2感染がPCRで確認された乗客で,発症前14日以内にSARS-CoV-2アウトブレイクが確認されているクルーズ船に乗船しておらず症状がフライトから48時間を超えて,そして14日以内に発症した乗客を二次症例と定義した.さらに,319日にシドニーに到着した国際線旅客,または発症前14日以内にクルーズ船に乗船していないオーストラリア国内旅行者の二次症例をフライト関連症例とした; そしてそのサンプルにおいて,旅行者の出発地では循環しておらず,フライト中の一次症例の一致する系統がWGSで検出された場合SARS-CoV-2感染が認められていないクルーズ船に最近乗船した人や,クルーズ船には乗船していないがWGSの情報が得られなかった国内旅行者の二次症例は,フライト関連症例である可能性があると考えられた(Table 2).

 

 

Statistical Analyses:

我々は,二次感染がシドニーでのフライト待ち時間中やパースでの降機後に発生する可能性を考え,フライト関連の感染リスクは座席の割り当てに依存しないという仮説を検証した.補正Mantel-Haenszel χ2 検定を用いてリスク比を計算し,EpiInfo Statcalc version 7.2.0.1https://www.cdc.gov/epiinfo)を用いて,飛行機のキャビンおよび座席タイプ(窓側と非窓側)において観察された二次感染の割合を比較した.

 

Results

この飛行機に搭乗した乗客64のうち,COVID-19に矛盾しない症状を認めてPCR検査を受けた29人がSARS-CoV-2陽性Figure 1),35人が陰性であったPCR検査で確認された症例において,症状発現時期は2020315日〜41であった(Figure 2; 年齢中央値は59歳(範囲4-81歳),女性14人,男性15人であった.また,「ルビー・プリンセス」号に13人,「オベーション・オブ・ザ・シーズ」号に4人,「サン・プリンセス」号に2人が乗船していた.その他5人はシドニー経由の海外旅行者,5人はクルーズ船に乗ったことのないオーストラリア国内旅行者であった

 

 

Figure 1: Distribution of SARS-CoV-2 infection cases among passengers on a flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020. Far right column shows passenger identification numbers and SARS-CoV-2 lineage determined by whole-genome sequencing (A.2, B.1, not determined).

Distribution of SARS-CoV-2 infection cases among passengers on a flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020. Far right column shows passenger identification numbers and SARS-CoV-2 lineage determined by whole-genome sequencing (A.2, B.1, not determined).

Figure 2: Theoretical maximum incubation (exposure), infectious period, and symptomatic period until time of resolution of illness in passengers on flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020, with primary and secondary SARS-CoV-2 cases, by place of journey origin. Passenger identification numbers and SARS-CoV-2 lineage determined by whole-genome sequencing (A.2, B.1, not determined) indicated to right of bars. NSW, New South Wales, Australia; 1I, primary case, infectious; 1N, primary case, noninfectious; 2F, secondary case, flight associated; 2P, secondary case, possibly flight associated.

Theoretical maximum incubation (exposure), infectious period, and symptomatic period until time of resolution of illness in passengers on flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020, with primary and secondary SARS-CoV-2 cases, by place of journey origin. Passenger identification numbers and SARS-CoV-2 lineage determined by whole-genome sequencing (A.2, B.1, not determined) indicated to right of bars. NSW, New South Wales, Australia; 1I, primary case, infectious; 1N, primary case, noninfectious; 2F, secondary case, flight associated; 2P, secondary case, possibly flight associated.

 

PCRで陽性となった29サンプルのうち25サンプルについて十分な配列を生成するためにウイルスRNAが利用可能であった; 21サンプルについては100%カバレッジ,4サンプルについては部分的なカバレッジ(81%99%)が得られた21の完全ゲノムの系統樹(Figure 3; Appendix Figure, panel A)は,それらがSARS-CoV-2A.2n= 17)またはB.1n= 4)亜系統のいずれかに属していることを示していたA.2の完全配列はすべて,2個未満の一塩基多型(Appendix Figure, panel B)で区切られた明確なゲノムクラスターに属しており,これをA2-Ruby PrincessA2-RPと命名した.A2-RP株は,今回アウトブレイク以前にはGISAID international databaseでは同定されていなかった9)4つのB.1ウイルスは,3つのB.1.31株と系統的により遠い1つのB.1株から構成されていた.部分配列4つのうち3つはA2-RP株にクラスター化され,もう1つはB.1.1と指定され,系統的にはB.1.31の配列に近いものであった(Figure 3).PCR陽性17サンプルの培養を試みた結果,9サンプルでSARS-CoV-2増殖が認められた

 

 

Figure 3: Phylogenetic tree generated in MEGA version 7.0.14 (8) for all SARS-CoV-2 whole-genome sequences with >80% genome coverage. Colors indicate samples from 458 persons with cases linked to cluster on flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020. Scale bar indicates nucleotide substitutions per site.

Phylogenetic tree generated in MEGA version 7.0.14 (8) for all SARS-CoV-2 whole-genome sequences with >80% genome coverage. Colors indicate samples from 458 persons with cases linked to cluster on flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020. Scale bar indicates nucleotide substitutions per site.

 

Primary Cases:

このフライトに関連してPCRで確認されたSARS-CoV-2陽性29人のうち,18人が一次症例に分類された一次症例のうち13「ルビー・プリンセス」の乗客で,WGSで確認されたウイルスはすべてA2-RPであったこの「ルビー・プリンセス」の乗客のうち9人が”フライト中に感染性あり”と分類され,フライト翌日(320日)に採取された4人のサンプルは培養陽性であった; 残りの一次症例5人のうち4人は「オベーション・オブ・ザ・シーズ」の乗客であった(1人はフライト中に感染性ありと分類された); SARS-CoV-2ウイルスは乗客3人でB.1.31であったそして乗客1人では,B.1.31ウイルスの近くでクラスター化した部分的なB.1.1配列があった5番目のB.1系統のウイルスは,同様にフライト中に感染性があった,米国から帰国した旅行者から入手した(Figure 3; Appendix Figure 1, panel B).

Secondary Cases:

322日〜41日に発症した二次症例11人を確認したが,そのうちフライト関連症例は8であった.この8人はお互いに面識はなかった.

4は米国の異なる都市から旅行を開始し,米国カリフォルニア州ロサンゼルスからシドニー空港に319日朝に到着した飛行機に搭乗していた全員がA2-RP(完全配列3株,部分配列1; Figure 2)のウイルスを保有していたが,このフライトの時点では米国では循環していなかった2020728日時点で,GISAID databaseには,A2-RP株と一致する2つの米国サイトからの5つの配列が含まれていた; 公衆衛生当局は,これらの配列が,322日以降に採取されたオーストラリアの「ルビー・プリンセス」号から下船して米国に戻った乗客から得られたものであることを確認した

残りフライト関連症例4は,ニューサウスウェールズ州の様々な場所から旅行を開始していた2人はシドニー在住で,1人はニューサウスウェールズ地方から短時間のフライトで移動し,1人は319日にシドニー空港まで車で数時間移動していた.いずれも以前にCOVID-19感染者との接触が確認された者はおらず,またフライト前にクルーズ船の乗客との接触があったと報告された者はいなかった.全員がA2-RPのウイルスを保有していた319日に「ルビー・プリンセス」号から乗客が下船する前に,シドニー空港でA2-RP株が循環していたという証拠はなかった9)10).フライト関連症例8人のフライト日から発症までの期間は中央値4日(範囲3-6日)であった.

二次症例3フライト関連の可能性ありと分類された319日に「サン・プリンセス」号から下船した2人である; このクルーズ船ではSARS-CoV-2アウトブレイクはなく,COVID-19感染者の接触者も報告されていない.このうち1人はA2-RP株であったが,他の1人はWGSで使えるサンプルを採取できなかった.シドニーの地方空港で潜伏期間が経過した国内線旅客の1人は,WGSサンプルが得られなかったため,フライトに関連したものではなく、可能性ありとして分類された.

全体として,この期間中にニューサウスウェールズ州または西オーストラリア州で発生源不明のコミュニティからSARS-CoV-2に感染するリスクは低かった.フライト当日,ニューサウスウェールズ州(人口750万人)では,累積307人のCOVID-19感染が報告されたが,そのうち26人(3.5/1,000,000人)のみが感染源不明であった11); 西オーストラリア州(人口260万人)では,累積52人が確認されたが,そのうち2人のみが感染源不明であった(0.8/1,000,000人)12)

Spatial Distribution during Flight:

Figure 4: 2020319日,オーストラリアのシドニーからパースへのフライトに搭乗したSARS-CoV-2の一次症例(感染性および非感染性)および二次症例(フライト関連およびフライト関連の可能性あり)の空間的分布.

1I: 感染性がある 一次症例1N: 感染性がない一次症例2F: フライト関連二次症例2P: フライト関連の可能性がある二次症例

Spatial distribution of primary (infectious and noninfectious) and secondary (flight-associated and possibly flight-associated) cases of SARS-CoV-2 aboard flight from Sydney to Perth, Australia, on March 19, 2020. Passengers are identified by place of origin and SARS-CoV-2 lineage as determined by whole-genome sequencing. 1I, primary case, infectious; 1N, primary case, noninfectious; 2F, secondary case, flight associated; 2P, secondary case, possibly flight associated.

 

一次症例11人(中間キャビンの乗客6人,後部キャビンの乗客5人)フライト中感染性ありと分類され,そのうち5人は有症状だった中間キャビンでは,「ルビー・プリンセス」号に乗っていた有症状乗客3人が同じ列に座っており,全員がA2-RP(全塩基配列)ウイルスであり,ウイルス培養も陽性であったFigure 4中間キャビンには,感染性のある乗客,すなわち米国から1人,「オベーション・オブ・ザ・シーズ」号に乗っていた1人(いずれもB.1系統ウイルス,培養陰性),そして前症状かつ感染性があった「ルビー・プリンセス」号から1人が座っていた残りの一次症例5人の一次感染者(すべての「ルビー・プリンセス」号の乗客)は後部キャビンに座っていたが,2人はフライト中に症状が発現した二次症例はすべてエコノミークラスの中間キャビンに座っていた

二次症例のうち8が「ルビー・プリンセス」号の感染性のある乗客の2列以内の席に座っており,3それ以上離れた席に座っていた(フライト関連の可能性がある23列離れた席に,フライト関連の16列離れた席に座っていた二次症例7人(64%)は窓側の席に座っていた(Figure 4

 

 

Risk for Infection by Cabin and Seat Position:

中間キャビンの乗客(11/112人)におけるSARS-CoV-2二次感染リスクは,後部キャビンの乗客(0/101; リスク比未定義; 補正Mantel-Haenszel χ2= 8.6; p< 0.005)よりも有意に高かった窓側座席に座っていた中間キャビンの乗客(7/28人)の二次発病率は,窓側座席に座っていない乗客よりも有意に高かった4/83; リスク比5.2; 95% CI, 1.6-16.4; 補正Mantel-Haenszel χ2= 7.0; p <0.007

 

Discussion

この包括的な疫学的調査とWGS解析の組み合わせにより,SARS-CoV-2のフライト関連感染伝播の可能性が強く示唆された.この調査を可能にしたのは,以下の3つの要因である.1フライト時に,シドニーにおいてクルーズ船から下船した乗客に唯一のSARS-CoV-2株(A2-RPが認められたこと2海外からシドニー空港に到着した旅行者においてA2-RPのウイルス配列が確認されたこと3オーストラリア国内でのSARS-CoV-2のコミュニティ感染は当時非常に限られていたこと,である.

他の発表された報告では,フライトに関連したSARS-CoV-2感染伝播が疑われるが2)3)13)14),これらの報告には裏付けとなるゲノム上の証拠がない.我々の調査は,SARS-CoV-2感染伝播を解明するためのWGSの価値を実証している.ゲノム的証拠がなければ,この飛行機に搭乗した海外旅行者はオーストラリア国内ではなく米国で感染したと考えられただろう

他にもいくつかの知見がある.

(1)二次症例11人のうち3人は,機内の濃厚接触者を特定するための距離(前方と後方の2列)の範囲外であったこのフライトでは,フライト関連感染者は9列に及び,反対側にも座っていた.航空会社代表者によると,このフライトでは航空ハンドリングのメンテナンス上の問題は記録されておらず,乗務員には感染は報告されていない(航空会社の医療サービス担当ディレクター, pers.comm., 202098日).あるSARS-CoV-1に関する研究では,index caseの前2列または3列以内の座席に座った乗客の感染リスクが有意に高いことが示されているが15),それよりも離れた座席に座った乗客の二次症例も報告されている16).米国連邦航空局より資金提供を受けた報告では,SARS-CoV-1感染伝播については,”感染した乗客から7列目の席に座っていた乗客への感染”が”人の移動”によって説明できるとの結論である17).このフライトにおける二次症例の空間的分布は,搭乗中にSARS-CoV-2に曝露した乗客を追跡するための現在の公衆衛生上の慣行が,さらなる研究の恩恵を受ける可能性があることを示唆している18)19)

(2)二次症例のほとんどは窓側の席に座っていた人に見られ,そのうち2人はフライト中に席を離れたことを否定した.窓側の席に座っている人はフライト中に感染性病原体に曝露されるリスクが低いとの見方が広まっていることを考えると,この結果は予想外のものであった.これは,米国の単一通路の飛行機のフライトにおいて,飛沫を介した呼吸器感染をシミュレーションしたデータに裏付けられた考えである20).しかしながら,他の研究では、定常状態であっても,航空機内の複雑な気流を測定して理解することは困難であることが強調されている17).さらに、乗客や乗務員の移動も機内の気流パターンに影響を与える可能性があるため,実環境下での航空機内の気流のダイナミクスのさらなる研究が必要である.

(3)フライト中の感染者からのSARS-CoV-2の二次感染リスクは一様ではないようだ.このフライトでは,B系統のウイルスを保有し感染性をもつ感染者が2人いたが,B系統の二次症例は確認されなかったさらに、A2-RPウイルス株を保有し感染性をもつ一次症例は中間・後部キャビンに数名(中間キャビン4人,後部キャビン5人)いたが,後部キャビンでは二次症例は確認されなかったこの不一致は,フライト中にSARS-CoV-2スーパースプレッダー1人以上いた可能性を示唆している21).このフライトでは,乗客の体調不良の報告は航空会社に記録されていなかったが(航空会社の医療サービス担当ディレクター, pers.comm., 202098日),フライトに関連した二次症例8人のうち5人の乗客が咳をしていたと報告されているインタビューで得られた乗客の話では,呼吸器症状のある乗客を含め,乗客全体ではマスクの使用はまれであったとのことであるなお,二次症例の乗客2人はフライト中にマスクを着用していたと報告されているが,全フライトを通して着用していなかったCt値に基づく比較ウイルス量に関する半定量的なデータはあったが,サンプルは飛行後に採取されたため,これらのデータを用いて上気道ウイルス量が感染リスクを決定する上でどのような役割を果たすかをさらに調査することはできなかった.したがって,フライト中の乗客のウイルス量は不明である注目すべきは,フライト中に感染性を有していた乗客のうち4人の翌日(320; Figure 4)に採取されたサンプルは培養陽性であったことである

フライト関連SARS-CoV-2感染伝播が疑われる報告は比較的少ない.これはおそらく,機内での感染を立証することの難しさによる; フライトに関連した感染伝播はまれである可能性; そしてパンデミックに伴い,多くの航空会社がリスクを低減するための措置を採用したという事実を反映していると考えられる(例えば,飲食サービスの縮小,機内エンターテイメントの廃止,マスクと消毒用ワイプの提供,機内での移動の制限、機内の清掃の強化)22).フライト関連SARS-CoV-2感染伝播が疑われる報告は比較的少ない.これはおそらく,機内での感染を立証することの難しさによる; フライトに関連した感染伝播はまれである可能性; そしてパンデミックに伴い,多くの航空会社がリスクを低減するための措置を採用したという事実を反映していると考えられる(例えば,飲食サービスの縮小,機内エンターテイメントの廃止,マスクと消毒用ワイプの提供,機内での移動の制限、機内の清掃の強化)22).オーストラリア健康保護主要委員会は,国内空港および国内線旅客機におけるリスク最小化の原則とプロセスに関する明確な指針を提供するための”国内線旅客旅行プロトコル”を承認した23)24).このガイダンスには,”体調不良の場合は旅行をしないように注意喚起する”ことも含まれている23)24)クルーズ船にCOVID-19がもたらす脅威に対する認識が高まっているため,この便での曝露につながった状況が繰り返される可能性は低い

Limitation: @フライトに関連して感染した可能性のある乗客3人が渡航前または渡航後に感染した可能性を排除することはできないが,当時のオーストラリアではコミュニティ感染伝播のレベルが非常に低く,これらの乗客が飛行機の中で感染者に近接していたことが知られていることから,この可能性は低いと考えられる.逆に,SARS-CoV-2のアウトブレイクが生じたクルーズ船から下船後に搭乗し,フライト後48時間以上経過してから症状が出た7人の一次症例が飛行機内で感染した可能性は否定できないが,確率的には船内で感染した可能性の方が高い.A空港内,搭乗ゲート,飛行機内でのすべての乗客の移動についての詳細な情報がないため,フライト関連の曝露がどこで発生したかを判断することは困難である.しかし,すべての二次症例の空間的な感染伝播を考えると,感染が飛行機内で起こった可能性が高い.主に空港で感染曝露していたとすれば,二次症例11人は中間キャビン以外にも分布していたのではないかと予想される.このフライトでは,乗客全員が列ではなく,同時に搭乗するように案内されていた.B一次症例,二次症例に分類したが,症状の発症日は自己申告を前提としているので,リコールエラーが発生した可能性がある.C診断バイアス,DPCR検査は症状を報告した乗客に限られており,検査の感度は100%ではないため25),このフライトに搭乗した人のSARS-CoV-2感染をすべて捕捉したとは断言できない.フライトに関連したSARS-CoV-2無症状感染が報告されていることから14),二次症例の中には,我々が特定した以外の乗客に感染者がいた可能性もある.SARS-CoV-2の血清学的検査を用いて,一次症例および二次症例をさらに特定しようとする試みは現在進行中である.

Conclusions

オーストラリアの中時間国内線フライトに関連したSARS-CoV-2感染伝播を報告した.また,SARS-CoV-2感染を判定するためのWGSの価値を実証した

 

 

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COVID-19関連追加(2020919日)に102日追記しました

 

【空の旅におけるCOVID-19リスク】

Pombal Rui, et al. Risk of COVID-19 During Air Travel. JAMA. Published online October 1, 2020. doi:10.1001/jama.2020.19108.

空の旅でCOVID-19に感染するリスクは,オフィスビルや教室,スーパーマーケット,そして通勤電車の移動よりも低い

どのようにCOVID-19は広がるのか?:

COVID-19の原因となるウイルスは,会話,くしゃみ,歌唱によって放出される.そしてウイルスは,主として短い距離を移動することができる飛沫,そして時には浮遊したままでさらに移動することができる小さなエアロゾル粒子に含まれる.これらの粒子が口や鼻に直接,または手を介して到達すると,別の人が感染することがある.場合によっては,表面接触による感染も重要である.

旅客機の空気はどのくらい綺麗か?:

空気は頭上の吸気口からキャビンに入り床レベルの排気口に向かって下方に流れる.空気の出入りは,同じ座席の列またはその近くの列で行われる.列間の前後の気流は比較的少なく、列間で呼吸粒子(respiratory particles)が拡散する可能性は低い

現在のジェット旅客機内の空気の流れは,通常の建物内よりもはるかに速くなっているその半分は外部からの新鮮な空気で,残りの半分は手術室で使用されているものと同型のHEPAフィルターを通して再利用されている.管理すべき残りのリスクは,感染性を有しているかもしれない他の乗客との接触によるものである.座席の背もたれは部分的な物理的障壁となり,ほとんどの乗客は機内では比較的安静にしているので,顔を見て接触することはほとんどない.

かなりの数の旅行者がいるにもかかわらず,世界中のフライト関連COVID-19確定および疑い症例数は少ないようである(合計で約42例).一方で,中国の高速鉄道におけるCOVID-19感染の調査では,感染者は2300人以上であり,全乗客の0.3%COVID-19に感染していることが示されている.飛行機内におけるリスクは,フィジカルディスタンスを維持できない他の状況と同様に,フェイスカバーによってさらに低減することができる.

空港と飛行機におけるリスクを減らすステップ:

空港や機内で行われている対策としては,体温検査や症状(発熱,嗅覚低下,悪寒,咳,息切れ)の確認,清掃・消毒の強化,接触を避ける搭乗および手荷物手続き,空港内における物理的障壁の使用と消毒,空港内や搭乗中のフィジカルディスタンス,フェイスカバーあるいはマスクの使用,可能な場合は乗客同士の分離,接触を減らすための飲食サービスの調整,接触を最小限に抑えるための通路やトイレへのアクセスの管理,乗務員の感染への曝露の抑制,乗客が感染した場合の接触者追跡の簡略化などが行われている.

追加のステップとして,搭乗前のCOVID-19検査と検疫要件の調整が検討されている.

乗客ができること:

マスクを着用し,気分が悪いと感じたら旅行しないようにし,機内持ち込み手荷物を制限する.明らかに気分が悪い場合はスタッフに報告する.頭上にエアノズルがある場合は、頭が真っ直ぐになるように調節し,フル稼働させたままにする.可能であれば座ったままで,乗務員の指示に従う.頻繁に手を洗うか消毒し,顔に触れないようにする.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020919日)に1027日追記しました

 

2020年夏,アイルランドで発生したフライト関連アウトブレイク】

Murphy N, et al. A large national outbreak of COVID-19 linked to air travel, Ireland, summer 2020. Eurosurveillance. Published on Oct 22, 2020.

https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.42.2001624.

Main

航空旅行は世界的なパンデミックを加速させ,COVID-19の世界的な広がりに影響を与えている.アイルランド共和国全土の8つの異なる保健地域(地域A-H)のうち6つの地域におけるCOVID-19確定症例59が,2020年夏のアイルランドへの国際線に関連していた(Figure 1.アウトブレイク症例は,乗客または乗客の接触者のいずれかで鼻咽頭スワブにてSARS-CoV-2 PCR陽性の者と定義した.13人がアイルランドへの同一便の乗客で,それぞれが大きな国際空港を経由して乗り継ぎ,3つの異なる大陸(グループ12; グループ3; グループ4)からヨーロッパへのフライトであった

Figure 1: Epicurve of confirmed COVID-19 cases associated with a flight, Ireland, summer 2020 (n= 59).

それぞれの日付は入手可能であった最も早い日付に基づく.入手可能であったデータ: 発症日38人,検体採取日18人,診断日3人.

Figure 1

 

 

フライトグループのうち,グループ1は途中降機時にトランジットラウンジで一晩(最大12時間)を過ごした; グループ2は別のトランジットラウンジを共有; グループ3とグループ4は,空港の出発エリアで短い待ち時間(2時間未満)を別々に過ごしていた

アイルランドへのフライトは7.5時間で,乗客占有率は17%49/283座席)乗務員12であった(Figure 2

Figure 2: Passenger seating diagram on flight, Ireland, summer 2020 (n= 49 passengers).

https://www.eurosurveillance.org/docserver/fulltext/eurosurveillance/25/42/2001624-f2.gif

数字はフライトグループ1-4を示す.

フライト症例13人の年齢は1-65歳,中央値は23歳であった.フライト症例13人のうち12人,飛行機に搭乗していない症例のほぼ4分の334/46人)は有症状であった.フライト後,最も早く症状が発現したのは到着2日後であり,最も遅い症例の発生はフライト17日後であった.有症状のフライト症例12人のうち,報告された症状は,咳7人,鼻かぜ(coryza),発熱6人,喉の痛み5人,味覚あるいは嗅覚消失5人であった.フライト症例1人は無症状と報告された.フライト中,フライト症例9人はマスクを着用していたが,子供1人は着用しておらず3人は不明であった

★フライト3週前に陽性で,フライト後は陰性であった乗客

 

 

アウトブレイクの感染伝播パターンをFigure 3に示す.入院4人であり,うちICU入院が1人であった

Figure 3: Diagram of chains of transmission, flight-related COVID-19 cases, Ireland, summer 2020 (n= 59). 数字はフライトグループ1-4を示す.HHhousehold)は家庭内.

https://www.eurosurveillance.org/docserver/fulltext/eurosurveillance/25/42/2001624-f3.gif

発生源となった症例は不明である.グループ1の最初の2人はフライト48時間以内に症状を認め,フライト5日以内に地域Aにおいてこのグループから無症状症例1人を含むと,COVID-19が確認されたのは3人であった.のちに,二次症例13人と三次症例1人がこれらの症例と関連していたことがわかった.グループ2からの2人は二次家族症例1人と共に地域Aで別々に確認され,地域Bから3人(2つの別々の家族(グループ12))が確認された.これら8人は,同じ大陸から旅を開始し,フライト前に何らかの社会的接触を持っていた.グループ2の症例の隣に座っていた家族濃厚接触者は,3週間前に海外で陽性反応を示しており,フライト後には陰性となっていた.グループ3は,地域C3人,地域D1人が報告された同じ家族であった.これらの症例は,フライト前にグループ1または2との社会的・空港ラウンジにおける接点はなく,機内で2列以内には着席していなかった.彼らの旅の出発地は別の大陸からであった.さらにグループ4は,第三の大陸から旅を開始しており,他の症例と社会的・空港ラウンジにおける接点はなく,グループ1の乗客と同じ列に座っていた.そしてグループ4の家庭内接触者と訪問者3人が確定症例になった.感染した接触者1人は地域Eに移動し,他の34人と共同で宿泊施設に滞在した;

この34人のうち25人が感染し(発病率73%),さらに四次感染2人が発生した.

Control measures

乗客における濃厚接触者とは,最初に確認された感染者から各方向に2席ずつ座っていた乗客と定義された.彼らは最初に追跡され,客室乗務員は濃厚接触者に分類されるか,あるいは何か調子が悪いところがないかどうかリスク評価を受けた1)2)

感染伝播が明らかになるにつれ,最初の確定症例8人のフライトでの濃厚接触者が特定され,接触者9人が陰性であることが判明した.さらに陽性例が認められ,残りの乗客は可能な場所で検査を受けることになった.さらに有症状感染者5人が確認され,そのうちの何人かは医学的評価を受けた.追加された乗客15人はCOVID-19が検出されなかった.乗客1人が検査を拒否し,残りの乗客11人は連絡が取れなかった.これら乗客11人,または乗務員の症状やその後の病気に関するデータは利用できなかった.リスク評価の結果,乗務員には14日間の隔離が勧告された.そして全乗客に”警告と情報 warn-and-inform”の手紙が送られた.

発病率(AR: attack rate)は,乗客48人の感染可能人口を分母にして計算した.最大AR48人中12人,つまり25%となる.疫学を検討すると,もし45人中8人が機内でCOVID-19に感染し,飛行後に潜伏または感染したのが3人,三次接触(発症日F9日)が1人とすると,AR17.8%であった(グループ3もし乗客41人中4人が機内でCOVID-19に感染し(1人を除くグループ34),機内では潜伏期間が7人,フライト症例の三次接触者が1人とすると,最低AR9.8%であった

全ゲノムシークエンシング解析は,第1の大陸から渡航した1人,第2の大陸から渡航した3人,第3の大陸から渡航した1人の合計5つのサンプルについて行われた5つのサンプルはすべてSARS-CoV-2ウイルス系統B.1.36PANGOLIN nomenclature, v2.0.7に属するものと同定されたヌクレオチド配列をペアワイズ(pairwise comparison)で比較したところ、ウイルスゲノム全体で99%以上の相同性が認められ,単一の感染源であることが強く示唆された

このアウトブレイクは,最終発症日から28日以上経過した時点で宣言された.

Discussion

このアウトブレイクは,航空旅行に関連したSARS-CoV-2の感染拡大の可能性を示している.乗客13人の感染により,アイルランドの8つのHSE保健地域のうち6つの地域で感染者が合計59人発生したため,全国的な監視が必要となった航空機の搭乗率が低く,機内に乗客がいなかったにもかかわらず,発病率が9.8%-17.8%と高かったと考えられる.執筆時点(20201014日)では190例であったのと比べると,フライト日における14日間のCOVID-19症例発生率は,アイルランドでは10万人当たり5人よりも低くなっていた3)

フライト症例の曝露の可能性としては,機内,空港での一泊/フライト前,あるいはフライト前の未知の感染が挙げられる.COVID-19の潜伏期間は2日と短いかもしれないため,このアウトブレイクでは機内/空港での感染伝播の可能性がある4)5)航空機内感染伝播は,座席の配置や発症日を考慮すると,グループ1およびグループ2の症例に対する曝露が最も可能性が高いと考えられる症例1人は,既知の感染者の家庭内濃厚接触者としてウイルスを獲得した可能性があり,確認された発症日はフライト前の2回の潜伏期間未満であり,フライト症例の発症はフライト48時間後であった.他の4人(グループ3および4)では,フライトにおける感染伝播が唯一の共通曝露であり,発症日は三次感染の可能性のある症例を除くと,すべての症例で発症日がフライト後4日以内であった.グループ3のこの三次症例はフライトの9日後に症状が出たため,フライト中に感染したか,あるいはフライト後に家庭内で感染した可能性がある.

強い感染伝播は,様々な仮説が立てられているように,感染の強度が高く,ウイルスが大量に排出された可能性がある6).症状と重症度がこれに重みを与えている.有症状例と,無症状例あるいは症状がわずかな例のウイルス量が同様であり,後者からの感染伝播も確認されている7)8).そして前症状例からの感染伝播は十分に報告されている9).無症状性感染伝播の範囲と動態,および飛沫またはエアロゾルの相対的な役割は明らかにされていない10)

迅速な接触追跡は,それ以降の伝播を制限することができるが,このアウトブレイクでは,乗客11人と連絡が取れず,結果的に検査が行えなかった

インフルエンザAH1N113)MERS14)SARS-CoV15)などの他の呼吸器病原体の感染伝播に関する研究から,SARS-CoV-2の機内感染伝播の可能性が高まっている16).機内での有症状性感染伝播が報告されているし17),無症状性感染伝播の仮説も立てられている18).ある症例報告では,機内感染伝播率は3.7%であることが示唆されている19).別の研究では,COVID-19患者の隣に座っていた列車の乗客への感染率を3.5%とモデル化している20)20203月に10時間のフライトでマスクなしで旅行した発熱と咳を伴う症状のある乗客1人を広範囲に追跡したところ,機内感染と推定される16人が同定された21).しかし,Bohmerらは,症例2人の潜伏期間中に2回の国際線フライトで広範な接触者追跡を行ったにもかかわらず,フライト症例がなかったことに注目している22)

SARS-CoV-2シークエンシングは,ウイルス学,感染伝播,集団動態に関する貴重な情報を提供する.3つの異なる大陸から移動した症例のゲノムシークエンシングは,このアウトブレイクがpoint sourceによるという疫学的感染伝播仮説を強く支持する.ウイルスが進化し,より大きな多様性をもつにつれて,感染伝播イベントを解決するためのゲノミクスの解析が有用である可能性がある 23)

最近の研究では,機内におけるフェイスカバーが感染伝播を抑制することが推測されている24)25)興味深いのは,フライト症例4人は他の陽性者の隣の座席に座っておらず,トランジットラウンジでは接触がなく,機内ではフェイスマスクを着用しており,欧州疾病予防管理センター(ECDC)の現在のガイダンスでは濃厚接触者とはみなされないということである1).今回のアウトブレイクを受けて,アイルランドはECDCガイダンスを3ヶ月間強化することを強調した(機内で陽性例が発生したことをすべての乗客に知らせるアラート表示,定期的に見直しを行う国のリストとは別に,海外からの旅行者に対してアイルランドの14日間の移動制限など).

今回の出来事を受けて,我々は以下のことを推奨する.(i) COVID-19陽性症例がフライトに関連している場合,迅速なフライトにおける接触者追跡を行う,(ii) 他に何の関連性もない症例が,2座席半径の濃厚接触距離を超えている場合,早期の調査と管理措置を促すための迅速な対応が必要である,(iii) 強化されたサーベイランスには,可能性のある共通リンクを特定するためのトランジット/移動情報を含めるべきである.

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27) European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC). Considerations for travel-related measures to reduce spread of COVID-19 in the EU/EEA. Stockholm: ECDC; 26 May 2020.

 

 

 

 

 

【航空機内での感染が疑われたCOVID-19クラスター】

IASR Vol. 41 p187-188: 202010月号)

国立感染症研究所HPより引用させていただきました.

<要約>

一般的に航空機内における飛沫感染を感染経路とする感染症に対する接触者調査は, 発症者の前後左右2列を対象とするが, 今回その範囲を超える乗客への感染が疫学調査で疑われ, ウイルスゲノム解析でも矛盾しない結果が得られた事例を経験したので報告する。

Main

2020326, 管内の医療機関からCOVID-19確定例(#1)が届けられた。症例は管内在住, 発症日は323日であった。320日から空路で関西地方へ渡航し, 323日に帰宅した。発症前14日間の行動歴は, 沖縄県内および今回の関西地方への旅行で, COVID-19確定例や上気道炎症状のある者との接触歴はなかったが, 感染機会としては沖縄県内または関西地方への旅程が疑われた。

#1に対して, 「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要綱(令和2312日版)」に基づき調査した結果, 濃厚接触者を, 同居家族と復路(関西地方A空港から那覇空港へのB便, 飛行時間約2時間)の搭乗者とした。#1の同居家族の1名が26日に熱発しPCR検査を実施したところ, 28日に陽性と判明した。B便の搭乗者(客席数177, #1を含め乗客乗員計148名)に関しては当初, 前および左右2列を濃厚接触者とし, 27日に航空会社から対象者の氏名と連絡先を入手した。28日に連絡がとれた濃厚接触者3名中2名が発熱を呈していたため, 居住する自治体へ情報提供しPCR検査を依頼した。なお, これらの濃厚接触者によると, #1は機内で激しい咳をしていたがマスクは未着用であった。当該2名が, ともに陽性と判明したため, 41日に調査対象を前3, 1, 左右2列へと拡大し13名に連絡をしたところ, 連絡のついた10名中3名が発熱等の症状を訴えていた。その後, うち2名がそれぞれの居住自治体で陽性と診断された。さらに2日には, C県より同県の確定例について, B便を利用し, 32328日の旅程で沖縄を訪問していた旨の情報提供があった。そこで, 国立感染症研究所(感染研)に助言を求め, 接触者調査の対象を左右および後列3列まで拡大した。連絡がついた9名中2名が発熱等の症状を訴えたため, それぞれ居住自治体へ対応を依頼し, いずれも陽性と診断された。さらに, 調査対象外であったが, 対象者の代理として連絡がついたB便搭乗者が発熱しており, 後日PCR検査で陽性と判明した。このため, 再度感染研に助言を求め, 乗員乗客全員へ調査対象を広げた。最終的に調査対象141名のうち122名に連絡がとれ, 沖縄県を含む7府県に居住する計14名の確定例が確認された(図1および図2)。

 

これら7府県における3123日のCOVID-19発生状況について, 3府県で累計10-30, 1県で3, 沖縄県を含む3つの県ではそれぞれの県内での感染が疑われた報告例がなかった1)ことと, 発症の経過から, #1から他の搭乗者への感染が疑われた。疫学調査を補完するため, 感染研・病原体ゲノム解析研究センターにて#1を含む7府県の確定例のウイルスゲノム情報を解析した結果, 13例においてウイルスゲノム配列を確定でき, #1のウイルスゲノム配列と同一もしくは1塩基変異のみ示すことが判明, 同一の配列系統であることがわかり, 機内での感染として矛盾しない結果であった。

航空機乗客における接触者調査では, 国際的にもいわゆる「2-row rule」が適用されることが多く, 実際にその範囲での感染が確認された事例もある2)。しかし, 本調査では, 前後左右2列を超える座席からも確定例を認めた。今回の調査では, 利用した航空機器材の空調や換気の状況, #1の機内での行動範囲, 搭乗前後の乗客同士の接触歴, が把握できていないが, 確定例の座席の分布から, 飛沫感染およびマイクロ飛沫感染の可能性が疑われた。探知例の症状やマスクの着用状況などを勘案したうえで, 場合によっては搭乗者全員を調査対象とする必要があると思われた。

航空機の搭乗者に対する積極的疫学調査は, 自治体や国をまたぐことになる。調査対象者へ迅速かつ確実に連絡が取ることができるよう, 搭乗者へ従前通りメールアドレスや電話番号の登録を求めることに加えて, 接触者アプリ(COCOA)の利用を勧めることも有用と思われる。また, 公共交通機関の利用時にはマスクを着用すること, 発熱・咳嗽などの症状がある者は公共交通機関の利用を控えることの啓発も引き続き必要である。

References

1) JX通信社/FASTALERTによる公表データ.

2) Hoehl S, et al., JAMA Netw Open 3 8, 2020

doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.18044.