COVID-19関連追加(2020924日)

 

SARS-CoV-2再感染についてver2

523-2(当初韓国CDCの報告では再感染の可能性は低いという見解だった)に追加.

Gupta V, et al. Asymptomatic reinfection in two healthcare workers from India with genetically distinct SARS-CoV-2. Clinical Infectious Diseases, ciaa1451, Sept 23, 2020.

https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1451.

To et alは最近,ゲノム解析によりSARS-CoV-2の再感染が確認された症例を報告した1)引き続き,遺伝学的に特徴づけられた再感染の報告がなされており2)3)SARS-CoV-2 感染における免疫反応の持続性の懸念があるこれまでの報告では,患者はいずれかの感染エピソードの一方または両方に症状を認めていたが,今回の報告では,ルーチンサーベイランスで検出された医療従事者2人のSARS-CoV-2感染,再感染がともに無症状であったことを報告する.この報告は,SARS-CoV-2再感染が検出されない可能性と医療システムにおけるSARS-CoV-2再感染のサーベイランスの必要性を強調する.我々は、202055日と517日にそれぞれ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりSARS-CoV-2陽性と判定された,北インドの第三次病院のCOVID-19ユニットに勤務する25歳の男性(I1)と28歳の女性(I2)の医療従事者2人について述べる.両者とも無症状であったが,それぞれ55日と518日に医療機関の方針に従って入院した.その後,それぞれ513日,527日にRT-PCRSARS-CoV-2陰性となった病院での業務を再開した後,2人は821日と95日に再びSARS-CoV-2の陽性反応を示し,その14日目と6日目に陰性反応を示した2人とも再び無症状であったが,2回目の再感染ではウイルス量が多かった(1回目の感染と2回目の再感染のそれぞれのCt値は,I13616.6I228.1616.92であった).これらの感染エピソード2つの時系列をFigure 1Aに示す.

鼻咽頭および咽頭スワブから得たRNAはアーカイブ化されているため,インフォームドコンセント(IHEC-CSIR-IGIB/IHEC/2020-21/01)の後,アンプリコンベース(COVIDSeq, Illumina)と同様にキャプチャーベース(TWIST Biosciences)を使用してsequencing-ready ライブラリを調製した.ライブラリは,Illumina MiSeq上で75bp×2 paired-end recipeで配列決定した.ゲノムは,データセットをマージした後,SARS-CoV-2参照ゲノム(NC_045512.2)を部分的にカバーする平均13684Xのカバレッジで収集され,I1では2つの感染エピソードについてそれぞれ89.08%および99.96%I2では85.60%および92.14%であった.以前に報告されているプロトコル4)を用いて,両方のゲノムに含まれる遺伝子座の解析を行ったところ,I1I2における2つの感染エピソードから分離されたウイルスでは,それぞれ910の特徴的な変異が明らかになったFigure 1B2つのサンプルにおける変異のうち,患者2人の7つの変異は,それぞれ予測される免疫エピトープにマッピングされていた5)

これらの解析から,無症状性の再感染は過小報告されている可能性があることが示唆された.遺伝的に異なるSARS-CoV-2は,持続的なウイルス排出や再活性化の可能性を除外する.2人とも再感染時のウイルス量が多かったため,継続的なサーベイランスの必要性が示唆された注目すべきは,I2の再感染時に発見された遺伝子変異22882T>GS: N440K)が中和抗体に対する耐性を付与している可能性があるということである6).我々の知る限り,これはインドからの遺伝的特徴を持った再感染の最も早い報告の一つである.

Figure 1:

A) 患者2人(I1およびI2)におけるSARS-CoV-2感染のタイムライン.

B) 患者I1およびI22つのエピソード(E1およびE2)における分離株のゲノム変異.同義でない変異(synonymous variants)には下線,ゲノム上の不一致は灰色で示した.

 

References

1) To KK-W, Hung IF-N, Ip JD, et al. COVID-19 re-infection by a phylogenetically distinct SARScoronavirus-2 strain confirmed by whole genome sequencing. Clin Infect Dis 2020.

2) Van Elslande J, Vermeersch P, Vandervoort K, et al. Symptomatic SARS-CoV-2 reinfection by a phylogenetically distinct strain. Clin Infect Dis 2020.

3) Tillett R, Sevinsky J, Hartley P, et al. Genomic Evidence for a Case of Reinfection with SARS-CoV2. 2020; Available at: https://papers.ssrn.com/abstract=3680955. Accessed 14 September 2020.

4) Poojary M, Shantaraman A, Jolly B, Scaria V. Computational Protocol for Assembly and Analysis of SARS-nCoV-2 Genomes. Research Reports, 2020; 4: e1-e14.

5) 5. Grifoni A, Sidney J, Zhang Y, Scheuermann RH, Peters B, Sette A. A Sequence Homology and Bioinformatic Approach Can Predict Candidate Targets for Immune Responses to SARS-CoV-2. Cell Host Microbe 2020; 27:671-680.e2.

6) 6. Weisblum Y, Schmidt F, Zhang F, et al. Escape from neutralizing antibodies by SARS-CoV-2 spike protein variants. bioRxiv 2020.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020924日)に927日追記しました

SARS-CoV-2再感染のレビュー】

EUROPEAN CENTER FOR DISEASE PREVENTION AND CONTROLecdc. Threat Assessment Brief.

Reinfection with SARS-CoV-2: considerations for public health response. Sept 21, 2020.

<考慮すべき問題>

SARS-CoV-2感染者の中には,感染した後に,臨床的に回復しても長期間にわたってPCR陽性であることが確認されている患者もいる.

・ウイルスRNAの検出(PCR検査)の期間にはばらつきがあり,上気道検体からのRNA検出は症状発症から104日後まで続くことも示されている.

・注目すべきことに,患者は間欠的にPCR検査が陰性になることも報告されている; 特にサンプル中のウイルス濃度が低くなった場合や検査の検出限界付近にある場合.

PCRによるSARS-CoV-2 RNAの検出(すなわちウイルスRNAの排出)は,患者内に生存可能な感染性ウイルスが存在することを意味しないことに注意することが重要である.

・再感染が疑われる症例を”再感染確定症例”として分類する場合,時に検査結果がないことや遺伝子配列決定ができないことも課題となる.再感染の共通の基準がまだ確立されていないため確定はさらに複雑になっている.

・生存可能なウイルスの有無を確認するために追加の検査を実施しなければならず,患者の状況を考慮し,検査結果は追加の疫学的・臨床的特徴と組み合わせて解釈されなければならない.

 

<症例報告>

再感染の特徴や頻度を明らかにすることは,自然感染後の後天性免疫の理解に影響を与える可能性があるため非常に重要である.このセクションでは,香港,米国ネバダ州,ベルギー,エクアドル,インドで最近発表された,あるいは論文発表前の遺伝子配列決定に基づく再感染が確認された症例報告に焦点を当てる10)-14).また,オランダ,スペイン,および世界的に調査中でまだ論文化されていない症例があることがメディアで報告されている15)-18)

香港:

Toらの論文10)では,20208月中旬,香港の空港でルーチン検査において免疫能正常の男性33SARS-CoV-2感染を認めた最初のPCR陽性から142日後に再陽性となった症例が報告された.患者は最初のエピソードで3日間にわたり咳、咽頭痛、発熱、頭痛の症状を認め,入院時には症状はほとんど消失していたが,隔離目的で入院した.この患者は2週間後に鼻咽頭および咽頭スワブのSARS-CoV-2 PCR検査で陰性となり退院した.2回目の感染時,患者は無症状であったがCRPがわずかに上昇し,ウイルス量が比較的多く,経時的に低下し,SARS-CoV-2 IgGのセロコンバージョンが認められたことから,2回目のエピソードは新たな急性SARS-CoV-2感染症であることが示唆された.この患者の再感染は,全ゲノム解析により,初感染後の長期にわたるPCR陽性と鑑別された.この患者の再感染は,全ゲノム解析により,初感染後の長期にわたるPCR陽性と鑑別された.2つのSARS-CoV-2株は24ヌクレオチドの違いを持つ異なるclade/系統に属していた(その時点までに観察された突然変異の速度が比較的遅いことを考えると違いが大きい)これらのcladeは,患者が感染したと思われる場所で流行している主要なcladeの疫学と一致していた(すなわち,第1回目の株は香港,第2回目の株はスペイン)2番目のエピソードにおけるウイルス培養は,発表時には保留されていた.

米国ネバダ州:

Tillet11)は,咽頭痛,咳,頭痛,嘔気などのCOVID-19様症状を認めた免疫能正常の男性25が,症状発症から24日後の2020418日にSARS-CoV-2陽性と判定された症例を報告している.再感染時には重篤化した.この患者は隔離され、検査から9日後に症状は消失した.この患者は,症状が消失した後の数週間にわたり検査が2回陰性となり,体調は良好であったが,2020531に発熱,頭痛,めまい,咳,嘔気,下痢を認めた5日後に患者の症状は悪化し低酸素血症と呼吸困難により入院し,酸素投与を受けた.その際に行われた胸部X線検査では,ウイルス性肺炎または非定型肺炎が示唆され,SARS-CoV-2 RT-PCR検査が再陽性であった.この2回目のエピソードにおける症状発現から7日後,SARS-CoV-2 IgG/IgMが認められた.両エピソードの検体が入手可能であり,全ゲノム解析が行われた.両エピソードから決定されたSARS-CoV-2の遺伝子配列は,同じcladeに属していたが,7ヌクレオチドの違いがあることがわかった.著者らは,それぞれの期間における突然変異数を計算する置換率を用いて,2つのウイルスの違いについて,同じ期間におけるSARS-CoV-2ウイルス全体における自然発生的な突然変異の予想される置換率と比較した.1回目と2回目の違いを計算した結果,置換率は83.6であり,これは現在観察されている自然発生的な置換率23.1を大きく上回り,異なるウイルスによる2つの独立した感染が示唆された.ウイルス培養およびサブゲノムRNAは実施されなかった.

ベルギー:

Van Elslande12)は,202039に頭痛,発熱,筋肉痛,咳,胸痛,呼吸困難,嗅覚消失を認めた51歳女性を報告した.この患者は免疫能正常であったが,喘息のために経口コルチコステロイドを毎日服用していた.鼻咽頭スワブPCRで陽性,Ct値は25.6であった.患者は自宅で自己隔離し,5週間近く症状が持続した.初回の症状から3ヶ月後(2020610日)に,患者は頭痛,咳,倦怠感,鼻炎を認めた.鼻咽頭スワブは再びSARS-CoV-2陽性となった(Ct32.6).症状は1週間続いたが,入院することなく再び消失した2回目の発症から6週後に中和抗体が評価され,その時点では存在していた(1/320全ゲノム解析の結果,2つのエピソードの分離株に11の違いが認められ,異なる株の感染が確認された.ウイルス培養は行われておらず,中和抗体の評価も行われていない.

エクアドル:

Prado-Vivar13)は,頭痛と眠気が3日間続いた後,2020512に発症した免疫能正常の46歳男性を報告した.症状発症後11日目に口腔咽頭スワブがSARS-CoV-2陽性であり,Ct36.85ORF3a遺伝子)であった.患者の症状は改善し、202063日に繰り返し行われたPCRは陰性であった.20207月,患者は後にCOVID-19と診断された親族と濃厚接触があったことを報告したこの接触から2日後の2020720,患者は頭痛,発熱,咳,息切れなどの症状を認めた2020722日,口腔咽頭サンプルでSARS-CoV-2陽性が確認された(Ct値は報告されていない).2回目のエピソードの症状は1回目のエピソードよりも重かったが,入院は必要なかった2020516日の定量IgG/IgM検査ではIgG陰性,IgM陽性であった; 2回目のエピソードにおける818日の抗体検査ではIgGIgMはどちらも陽性であったゲノム配列および系統解析の結果,ウイルスは9つの変異の違いを持つ異なるcladeに属していた.ウイルス培養は行われず,中和抗体は2つのエピソードで評価されなかった.

インド:

Gupta14)は,インドの三次病院のCOVID-19病棟に配属された免疫能正常のない医療従事者2人の再感染を報告した.患者I125歳の男性で、202055に医療従事者の定期的なサーベイランス中にPCR陽性(Ct36)であることが判明した.彼は無症状であったが,PCR陰性になるまでは施設の方針に従って隔離された.その後は勤務を続けていたが,817に再びPCR陽性と判明した(Ct16.6).この患者は再び隔離されたが,2 回目のエピソードを通しても無症状のままだった.抗体検査,中和抗体,ウイルス培養の結果は報告されていない.両エピソードのサンプルのゲノム解析が行われ,1回目と2回目のエピソードでは9つの変異が明らかになった.患者I228歳の女性で,2020517PCR陽性であることが判明した(Ct28.16).彼女は無症状であったが,PCR陰性になるまでは施設の方針に従って隔離された.その後は勤務を続けていたが,95に再びPCR陽性と判明した(Ct16.92).この患者は再び隔離されたが,2 回目のエピソードを通しても無症状のままだった.抗体検査,中和抗体,ウイルス培養の結果は報告されていない.両エピソードのサンプルのゲノム解析が行われ,1回目と2回目のエピソードでは10の変異が明らかになった2回目のエピソードのサンプルでは,RBDreceptor-binding domain)内にゲノム変異 22882T>GS:N440Kが検出された

 

<症例報告(プレプリントも含む)のまとめ>

報告された再感染確定6例の共通点と相違点をFigure 1Table 1に示した.再感染6例はいずれも比較的若く,入手可能な情報によると免疫能正常であった.そのうち4例は感染の最初のエピソードで症状を訴えていたが,インドにおける無症状感染者2例はルーチンサーベイランスにおいて発見された.再感染エピソードにおける臨床症状は6例で異なっていた: 3例の再感染は無症状であった可能性が高く,1例は軽度の症状,1例は中等度の症状,そして1例は酸素療法を要する入院が必要であった.これらの研究における抗体反応に関する情報はまだ不完全である.香港 10) およびエクアドル13)の症例では,最初のエピソードの症状発現後(それぞれ10日目および4日目)にIgG陰性と判定されていた.ベルギーやネバダ州の症例では1回目のエピソードに関連して抗体検査は行われておらず,インドの患者では全く行われていなかった.

Figure 1:

 

 

Table 1:

 

 

※参考: reinfection trackeras of 9/26

https://bnonews.com/index.php/2020/08/covid-19-reinfection-tracker/

 

SARS-CoV-2感染と抗体産生>

SARS-CoV-2に対する抗体またはT細胞誘導免疫の保護的役割はまだわかっていない.しかしながら,抗体の同定/抗体価は通常,抗ウイルス免疫の妥当な相関関係として認識され,抗受容体ドメイン抗体レベル(anti-receptor-domain antibody)は血漿中のウイルス中和活性に対応することが知られている.SARS-CoV-2に対する結合抗体および中和抗体は,ほとんどの人で感染後10日目〜21日目に発現することが確認されている.公開されている文献のレビューによると,SARS-CoV-2の一次感染後には,ほとんどの患者にIgG抗体(> 91%)と中和抗体(> 90%)が発現していることが示されている.SARS-CoV-2に対する抗体反応の長期的な持続性については、検討が必要だが,他のコロナウイルスに対する抗体レベルは時間の経過とともに低下することが知られており(範囲: 発症から12-52週間),相同性のある再感染が示されている.SARS-CoV-2抗体レベルは感染後94日日まで維持されることが確認されており,最近の研究では,抗体価は34週でピークを迎え,診断後4ヶ月までは比較的安定していることが示されている.それにもかかわらず,中和活性は時間の経過とともに著しく低下する.抗体価の低下の大きさや期間,細胞性免疫の影響については,より大きな集団を対象とした長期にわたる研究が十分に行われていないので解釈に限界がある.抗体反応の強さは疾患の重症度と関連しているという議論がなされており,SARS-CoV-2抗体による免疫反応は無症状や軽症では長続きしない可能性が示唆されている.Wangらは,このような軽症患者の抗体反応は,重症COVID-19患者と比較して,IgM抗体と中和抗体のレベルが有意に低いことを示している31).これらの結果は,ほとんどの患者がSARSCoV-2の初感染後に免疫反応を起こすようであるが,この免疫は経時的に弱まっていく可能性があることを示している.これは一次感染がそれほど重症ではない患者ではより可能性が高いようである; 上記の症例報告の患者6人.

 

<評価における疑問>

どのようにSARS-CoV-2再感染を診断するか:

Figure 2:

ウイルス培養で生存可能なウイルスは陰性であった場合,PCRで検出されたウイルスRNA”生きていない”ウイルスRNAの断片をみている可能性が高く,活動性の感染ではない.培養によって生存可能なウイルスが同定された場合,2回目のエピソードのウイルスが本当に別のウイルス株による二次感染の結果であるかどうかを評価するために,さらなる調査が必要である.

PCRCt値によるウイルス量の定量化は,生存可能なウイルスの検出と相関があることが確認されているため,生存可能なウイルスの間接的な指標として使用することができる.公開前の研究では,RT-PCRを用いて決定されたウイルス量が6.610 RNA copies/mL95% CI, 6.2 - 6.9)未満の場合,患者サンプルから感染性SARS-CoV-2を分離する確率は5%未満であることが示されている36).しかし,妥当性はまだ確立していない.

・ゲノム配列/系統解析.ウイルスの全ゲノム配列解析は,2回目のエピソードが1回目とは異なるウイルスの変異によって引き起こされたかどうかを評価するのに役立つ.ウイルスは宿主内でも変異を起こす可能性があり(すなわち,宿主に感染している間),また二重感染(すなわち,2つの異なるウイルス株が同時に感染すること)も考えられるため,一見別々の感染エピソードにおいて確認されたウイルスの配列/系統の違いを慎重に評価する必要がある.

COVID-19再感染は通常起こりうるのか:

他の季節性コロナウイルスに再感染が起こる.そして別のベータコロナウイルスであるhCoV-OC4390日後の再感染が報告されている.hCoV-OC43hCoV-HKU1の保護免疫と再感染動態モデルでは,保護免疫の平均期間は45週間と推定された.また,他のコロナウイルスの再感染リスクは,必ずしも抗体価の衰えと結びついているわけではなく,比較的高く安定した抗体価の存在下でも起こりうることも示されている.Abu-Raddadらの研究40)では,確定症例133266人のうち,最初のSARS-CoV-2感染エピソードから45日以上経過してからスワブ陽性となった243人を特定し,54人に再感染の証拠(2回目のPCRCt< 30未満,または症状の再出現を裏付ける臨床情報)があったことが示されている.この研究では,全ゲノム解析,ウイルス培養,サブゲノムRNAの検出は行われていないため,検出された症例が長期的なRNA陽性者あるいはウイルス排出者というよりもむしろ真の再感染かどうかは不明であった.それだとしても,再感染のリスクは0.04%95% CI, 0.03-0.05%)と非常に低く,再感染の発生率は1万人週あたり(per 10000 person-weeks1.0995% CI, 0.84-1.42)と推定されている.現在までに発表されている SARS-CoV-2再感染の確認された症例は6人のみである.より多くの再感染の可能性がある症例がメディアで報告されており,調査中である.現在報告されている症例数は、特にパンデミック初期に、また現在でも無症状者において包括的な検査が行われていないため,過小評価されている可能性がある.そのため,検査能力と検査率の向上(軽症者や無症状者を含む)に伴って再感染者が増加することが予想されるが,現在のところ,再感染はまれな出来事であることが示されている.

感染伝播における再感染の役割:

上記の6例では,再感染者の濃厚接触者への感染は確認されていない.さらに,再感染者に感染性があるかどうか(有症状,無症状にかかわらず)についての文献からの証拠は非常に限られている.潜在的なSARS-CoV-2感染性に関する最近のレビューには,再感染が疑われる症例を対象とした5つの研究が含まれている4).再感染者から接触者への感染は報告されていないが,接触者の追跡調査については,このうち1つの研究に示されている.しかし,このレビューの結果を解釈する際には注意が必要である.5つの研究はいずれもサンプル数が少なく,さらに実際の再感染(すなわち,2つの異なるウイルス株による感染)はゲノム解析によって確認されていないため,観察された症例は実際の再感染ではなかった可能性がある.再感染者から接触者への感染に関する限られたエビデンスを考慮し,予防原則を適用すると、無症状・有症状の再感染者は初めての感染者と同様に管理すべきである.

これらの観察は獲得免疫においてどのような意味をもつのか:

現在までに,経過観察期間の終了時(最長94日間)にほぼすべての患者でSARS-CoV-2特異的IgG抗体が検出され,感染者の90%以上が中和抗体反応を示した4).実験動物モデルでは,SARS-CoV-2の感染は,その後の感染からアカゲザルを保護することが示されている.SARS-CoV-2感染後の免疫の持続期間は不明であり,ウイルスクリアランスにおける抗体の役割に関する確固たる証拠は不足している.再感染はありうるが,その状況,関連する症状,疾患の進行,全体的な範囲については,明らかになっていない.Toらによって報告された患者は、再感染時には検出可能な抗体は持っていなかったが,再感染エピソード後に検出可能な中和抗体を獲得していた10)Tillettら,Van Elslandeらによって報告された症例における抗体は,患者の最初の感染後には検出されなかったが,2回目の感染後に抗体が検出された11)12)Prado-Vivarらによって報告された症例では,これらの抗体は症状発症からわずか4日後にしか測定されなかったが,最初の感染エピソードでは抗体は検出されなかった; 抗体は2回目の感染エピソード後に検出された13).抗体の役割や中和抗体のレベル,感染してから抗体レベルが低下して防御能力が低下するまでの期間については結論されておらず,より大きな集団で調査する必要がある.今回の再感染例で分離されたウイルスは異なる変異を有していることが確認され,患者の新しいウイルス変異型の感染が確認された.ゲノム内の変異数や位置を調べることで,再感染の可能性や免疫反応回避の可能性を理解するのに役立つかもしれない.また再感染した患者のウイルスゲノムに共通の変異がある可能性を分析して,ウイルスの再感染能力を調査する必要もある.さらにSARS-CoV-2分離株が以前に感染した人に再感染するために必要な発散(divergence)レベルを理解する必要がある.COVID-19の再感染防止における細胞性免疫の役割は,報告された症例では研究されておらず,調査が必要である.

 

 

<公衆衛生のオプション>

臨床的なマネージメント,接触者追跡,隔離,そして感染防止・管理に関する考察:

再感染の可能性があるということは,一度感染した人が免疫を持っているとは断定できないことを意味している.現時点では,再感染は非常に稀であると思われるが,免疫の持続期間,感染伝播性,そして再感染の可能性とその意義をよりよく理解するためには,より多くの証拠とより長い追跡期間が必要である.現在までわかっていることを考慮すると,臨床的なマネージメント,感染予防・管理,接触者追跡に関する考慮事項は,初めての感染者と二次感染者においても同様である.感染予防・管理に関するECDCのガイダンス42),退院と隔離終了基準43),接触者追跡44)を参照すること.

過去の感染に続いて,SARS-CoV-2に再感染した人に対するPCR/抗体検査およびリスク管理に関する考察:

IgG陽性が背景にあって,反復曝露後のPCR検査が陰性であった場合,感染発症リスクの低さを示す指標とみなされることもある.リスク管理の決定には,防御免疫や抗体レベルとウイルスクリアランスとの相関性に関する証拠が限られていることを考慮に入れる必要がある.それにもかかわらず,以前にSARS-CoV-2に感染した人が,最初のエピソード後にSARS-CoV-2に再感染した場合に検査を行うことは,個々の症例評価に役立つだけでなく,再感染リスクに関する現在の限られた証拠に有用な情報を与えるだろう.

 

<公衆衛生をサポートするための未来への考察>

・免疫の持続期間,抗体レベルと防御免疫との相関性,ウイルス排出,感染性,再感染した有症状・無症状患者の感染性を含む再感染の可能性とその意義などについて,強固なデータを提供するためのさらなる研究が必要である.

・標準化された臨床検査に基づいて再感染を分類するための症例定義が必要である.米国疾病対策予防センター(CDC)はこのような基準を提案している.

・再感染に関するデータは,サーベイランスシステムで収集する必要がある.再感染を捉えるための変数や確実性に基づく分類があれば,再感染の頻度をより理解することができ,症例の臨床的・疫学的記述が可能になる.

・臨床例の定義や検査手順を含む調査プロトコルは,臨床検査と検査の標準化に有用であり,クロスセッティング比較(cross-setting comparisons)やデータプール(data pooling)を容易にする.

・十分に定義された患者コホートのフォローアップと分析は,このテーマについての貴重な洞察を提供するだろう.医療従事者における定期的な検査は,定義された集団における再感染の有病率をより理解するための体系的なデータを収集する機会を与えてくれる.

・以前に感染したことのある接触者の管理に対応できるように,濃厚接触者の管理に関するガイダンスと手順が必要となるだろう.

 

References

4) Health Information and Quality Authority. Evidence summary of the immune response following infection with SARSCoV-2 or other human coronaviruses [Internet]. Dublin: Health Information and Quality Authority; 2020 [cited 15 September 2020]. Available from:https://www.hiqa.ie/sites/default/files/2020-08/Evidence-summary_SARS-CoV-2-immune-response.pdf.

10) To KK-W, Hung IF-N, Ip JD, Chu AW-H, Chan W-M, Tam AR, et al. COVID-19 re-infection by a phylogenetically distinct SARS-coronavirus-2 strain confirmed by whole genome sequencing. Clinical Infectious Diseases. 2020.

11) Tillett R, Sevinsky J, Hartley P, Kerwin H, Crawford N, Gorzalski A, et al. Genomic Evidence for a Case of Reinfection with SARS-CoV-2. SSRN. 2020.

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SARS-CoV-2再感染と液性免疫獲得の欠如】

Goldman JD, et al. Reinfection with SARS-CoV-2 and Failure of Humoral Immunity: a case report. medRxib. https://doi.org/10.1101/2020.09.22.20192443.

Abstract

COVID-19からの回復は,抗SARS-CoV-2抗体の産生と関連しているが,これらが免疫を付与するかどうかは不明である.我々は入院患者におけるウイルスRNA排出期間を調査し,その再排出を認めた症例を述べる.そして1人の症例は,COVID-192つの異なるエピソードが140日間を経て認められ,ウイルスのゲノム配列から,スパイクバリアントD614Gを保有する新しい株の再感染と判明した.抗体とB細胞の解析により,D614Gに対する異なった反応を含む獲得免疫の相関関係を示した.

Introduction

初感染後にSARS-CoV-2に再感染するリスクは明らかになっていない1).複数の報告によると,ウイルスRNA排出が長期化していることが報告されているが2),ウイルスは10日以降3)4),免疫不全患者では20日以降5)は感染伝播させない可能性がある.これらのデータは,複製能のあるウイルスが継続的に排出されているのではなく,ウイルス断片の排出が長期化していることを示唆している.韓国CDCによる大規模な症例シリーズ6)では,陰性後に繰り返しSARS-CoV-2陽性となった有症状患者からの感染は認められなかった.ほとんどの症例報告では,長期の排出と再感染を区別されていない7)-9).ウイルスゲノムの塩基配列解析を行わない限り,一部の患者における長期の排出が実際に再感染につながる可能性を排除することはできない.特に,香港とネバダ州からの報告では,それぞれ初感染から5ヶ月後と2ヶ月後の再感染が報告されている10)11)SARS-CoV-2感染後,ほとんどの人は,ウイルススパイク(viral spike),受容体結合ドメイン(RBD: receptor binding domain )またはヌクレオカプシド(N: nucleocapsid)抗原に対するIgGIgMIgAの上昇を特徴とする抗SARS-CoV-2抗体反応を示す12).症状発症後4週間までにIgMおよびIgAは大幅に減少する.そして軽症または無症状の感染者ではIgGも同様に大幅に減少する.一方重症COVID-19患者ではIgGが高レベルで持続する13).漁船で発生したアウトブレイクの報告14)では,既存の中和抗体(nAbs: neutralizing antibodies )を持つ患者は感染しなかったことが示されているように,SARS-CoV-2特異的抗体が防御的であることが示唆されている.回復者血清による治療は,液性免疫がSARS-CoV2に対して防御的に働くことを前提としている15).また,継続する集団免疫を提供することを目的としたワクチンプログラムも同様である16).しかし,再感染の報告が少ないことや,再感染報告における免疫学的研究が限られていることから,再感染と免疫の相関関係は確立されていない10)11).我々は抗体およびB細胞解析を行い,新しいSARS-CoV-2株に対する免疫力の欠如について評価した.

 

 

Results

Population sampling:

202031日〜812日までに,患者11622人がSARS-CoV-2 rt-PCR検査を受けた(Figure S1).このうち患者643人が少なくとも1回の陽性(陽性率5.5%),患者176人が少なくとも2回の陽性を示した.最初に陽性となってから最後に陽性となった期間を排出期間とした(Figure 1A).中央値medianIQR)の排出期間は中央値12.1日(IQR, 6.4, 24.7)で,正の歪んだ分布(尖度: kurtosis= 10.7)であった.患者95%の患者では排出期間は59日未満であり、75日を超えたのは患者2人のみであった.再陽性は患者43人で以下のパターンをもって観察された(Figure 1B: 1) 不十分なサンプリング技術,2) Ct値が検出限界付近にあるアッセイの限界,3) ウイルス排出の長期化,前者のいずれかを併発している可能性,または4) 再感染.rt-PCR陰性から再陽性までの期間が最も長い患者が,これらの可能性を区別するための観察研究に登録された.

 

Case Study:

InCoV139は,介護施設(SNF: skilled nursing facility)に入所しており、在宅酸素療法を受けている重度の肺気腫(%FEV1: 32%高血圧の既往歴がある60歳代(年齢6069歳)である.3月初旬に,発熱,悪寒,湿性咳嗽,呼吸困難,胸痛などの症状を認め,重症COVID19肺炎で入院した.この患者は,最近フィリピンから帰国し,呼吸器感染を認めた同施設の職員に曝露があったことを報告した.聴診では広域にwheeze,左下肺はdull,胸部X線検査では過膨張と両側下肺野浸潤が認められた.不安定な心房細動を呈し,除細動と抗凝固療法が施行された.慢性閉塞性肺疾患に対する酸素療法,ステロイド,多剤併用吸入療法による支持療法を受けた.患者は入院39日目と41日目に陰性であったため,介護施設に戻ってきた.InCoV139は家族や来訪者から隔離されたままで,入所者やスタッフのみと交接触した.別の施設に移った後,患者は新しい施設の咳をしている入所者に曝露したことが報告されたSARS-CoV-2 PCRが最初に陽性となってから140日目に,患者は2週間にわたり乾性咳嗽と脱力感を訴え,呼吸困難のためERに再入院したSARS-CoV-2 PCRは再入院1日目と6日目(症状発症の再感染日から14日目と19日目)に繰り返し陽性となった.3月の入院と比較して,7月の入院は生理的,臨床検査的,放射線学的パラメータで重症度が低くCt値が高かったTable 1, Figure S1.レムデシビルとデキサメタゾンによる治療後,状態はベースラインに戻った.

 

Viral Sequencing and Phylogenetic Analysis:

3月と7月のInCoV139の塩基配列を比較したところ,信頼性の高い宿主内一塩基変異(iSNV: intra-host single nucleotide variants)が10明らかになった(そのうち5種は3月の配列を19Bに,5種は7月の配列を20Aに分類している)3月の配列(InCoV139-March sequenceGenbank: MT252824))は,clade 19Bを定義するカノニカル配列(C8782TおよびT28144C)を共有しており,オリジナルのclade 19AであるWuhanHu-1 reference strainGenbank: NC_045512.2)とは区別されているさらにInCoV139-Marchは,アジアで流行し,1月中旬に中国の武漢からシアトル北部のピュージェットサウンド地域に帰国した旅行者を介して伝播した最初の米国症例WA1Genbank: MN985325)とC18060Tを共有している17)注目すべきことに,7月の配列(InCoV139-July)は,clade 19Bを定義するカノニカル配列を全く持たず,その代わりにclade 20Aを定義するカノニカル配列(C3037T, C14408T, A23403G),clade 20Cのカノニカル配列(G25563T)、および20Aの他の1つ突然変異を共有していた重要なことは,InCoV139-JulyにはA23403G変異が存在し(InCoV139-Marchには存在しない),これはスパイクタンパク質のD614Gアミノ酸変化をもたらし,ヨーロッパを経由して米国東海岸に広がった,より高い複製能力を持つSARS-CoV-2株を定義していることである18)系統図(Figure 2)に示されているように,これらのiSNV(表Table S1)は,遺伝的に異なる2つのウイルスを明確に定義しており,共通の祖先から初期の発散(divergent)で別々に進化したウイルスであることを示している

 

 

 

Anti-SARS-CoV-2 Antibody Response:

7InCoV139から採取した血漿に対して抗SARS-CoV-2抗体の測定を行った(Figure 3).RBD,スパイク,ヌクレオカプシドに対するIgG抗体が検出され、陽性コントロール13)と比較して吸光度(optical density)が低く再感染症状発症後14日目から42日目まで減少傾向を示したIgMはスパイクに対しては弱陽性であったが,RBDとヌクレオカプシドに対しては検出されなかったスパイクとヌクレオカプシドに特異的IgA1421日目に低レベルで検出されたが,RBDには検出されなかった抗スパイクおよび抗RBD IgAは,42日目までに驚くべき増加を示し,複製および滴定実験で確認された(Figure S3IgGサブクラス分析により,患者のRBD特異的IgG反応は、スパイクおよびヌクレオカプシドタンパク質に対しては特異的なIgG1およびIgG3の両方が減少傾向にあるにもかかわらず,IgG1は検出されず,低レベルのIgG3で構成されていたことが明らかになった(Figure S4).ACE2-RBD結合をブロックする抗体は,14日目には検出されず(潜在的な”保護”抗体の欠如を示唆する)42日目までに増加した(Figure 314日目および42日目において、nAb力価(IC50)は,D614Wuhan)疑似ウイルスに対して1:260および1:382であり,変異D614G疑似ウイルスに対して1:449および1:1168であり,武漢株と比較してD614G疑似ウイルスに対するnAbはより増加していた(Figure 3D, S5

 

Antibody and B-Cell Receptor Repertoires:

すべてのアイソタイプのIGH遺伝子(免疫グロブリン重鎖遺伝子: immunoglobulin heavy chain)の次世代シークエンシング(NGS: next-generation sequencing)によって,再感染後14日目および18日目の末梢血におけるB細胞を評価した(Figure 4A).健康なヒト末梢血は,体細胞超変異を伴わないIgMおよびIgDを発現するナイーブB細胞と、変異したクラススイッチ抗体を有するメモリーB細胞が優位であった(体細胞超突然変異somatic hypermutation: 抗体を産生するB細胞で,抗体の多様性を作り出すための免疫グロブリン遺伝子の可変領域に高頻度の変異がAID(抗体遺伝子改変酵素: activation-induced cytidine deaminase)によって導入される現象).対照的に、SARS-CoV-2の初感染後,9日目(セロコンバージョン前)と13日目(セロコンバージョン後)における関連のない患者の縦断的サンプルで示されているように,SARS-CoV-2の初感染に対する急性反応は,最近クラススイッチされた広範なポリクローナル拡大,IgGサブクラスおよび(それ以下の程度であるが)IgAサブクラスを発現する低レベルの体細胞超変異B細胞を特徴としていた.対照的に,InCoV139患者では,再感染後14日目および18日目までに低レベルの体細胞超変異クローンは出現しなかったFigure 4A単一B細胞免疫グロブリンシークエンシング(single-B cell immunoglobulin sequencing )による並列解析では,IgAを発現するB細胞,特にIgA2を発現する細胞の頻度が高いことが明らかになった(Figure 4B

A: 末梢血単核球RNAからの末梢血B細胞IGH遺伝子レパートリー.健康コントロール(上段),SARS-CoV-2初感染患者: 症状発症後9日目および13日目(緑色のバー),症状発症後14日目,再感染患者: 18日目および42日目(ピンク色のバー)の3人を示した.serostatusと発症後の日数は,右Y軸.列は各IGH配列のクラスを示し,IGHV遺伝子はx軸に示した.左y軸はアミノ酸(AA)のCDR-H3の長さ(CDR-H3 length)を示す.点はB細胞クローン系統を示す.点の色は各クローンのIGHV体細胞超変異頻度の中央値を示し,点の大きさはクローン内のリード数を示す.

B: バーは再感染患者血液中のB細胞によって発現した抗体アイソタイプを示す単一B細胞トランスクリプトームデータ(single-B cell transcriptome dataをまとめて,各アイソタイプの頻度としてプロットしたものである.

トランスクリプト―ム: 特定の状況下において細胞中に存在する全てのmRNAの総体を指す呼称.

Discussion

我々の患者における再感染の分子的証拠は確かである.シアトルでの初期のアウトブレイクにおける初期感染時には,地域社会で流通しているウイルスの配列は多様性が低く,約7週間前に米国に入ってきた新しい宿主に感染した直後のウイルス(founder virus)に由来していた17).ヨーロッパからのD614Gスパイク変異型が,現在では優位な循環株として引き継がれている.InCoV139における2回目の感染の時間経過は,シアトルでの新しいD614G株への移行と重なっていることが,再感染が示唆される20)

この症例では,再感染後の最初の数週間は抗SARS-CoV-2 IgG抗体を有していたが、注目すべきことに、RBD IgGのレベルは相対的に低くRBD-ACE2複合体をブロックする抗体の証拠はなかったACE2ブロッキングは42日目までにわずかな増加がみられたが,これはIgA抗体によるものと思われるB細胞のレパートリーでは再感染後18日目までに新しいクローンが出現しなかったこれは事前の感染に対しての免疫認識あるいは再感染に対する反応の発現の欠如を示唆している.再感染直後のnAb価は不明であるが,再感染後14日目までには,nAb価はブーストワクチン接種後に観察された値と同程度であった21)42日目までにnAb反応は武漢疑似ウイルスに対して1.5倍,D614G疑似ウイルスに対して2.6倍の増加を示したこれらの所見をまとめると,3月の初感染後に形成されたD614ウイルスに対する抗体は未発達または減弱しており7月に獲得したD614Gスパイク変異型への再感染に対する保護にはならないことが示唆された.これらの結果は,武漢株に基づくワクチンプログラムの成功に重要な意味を持つ可能性がある.

我々の患者にとって幸いなのは,ネバダ州の症例とは対照的に、再感染は初感染よりも軽度であった11).これは,再感染時の液性免疫反応についての詳細な評価を提供した最初の症例報告である.さらに,液性免疫レベルは,再感染に対して防御的ではないことが示唆された.SARS-CoV-2に対する免疫防御をさらに評価するためには,再感染患者の大規模な症例シリーズやワクチン接種後の追跡調査が必要である.

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