COVID-19関連追加(2020925-2

 

【病院内エレベーターのSARS-CoV-2エアロゾル感染伝播を低減させるには】

EDITORIAL. Van Rijin C, et al. Reducing aerosol transmission of SARS-CoV-2 in hospital elevators. Indoor Air. Sept 23, 2020. https://doi.org/10.1111/ina.12744.

SARS-CoV-2 感染伝播におけるエアロゾルの役割については,世界中で議論されている.WHOは最近、SARS-CoV-2感染伝播におけるエアロゾルの役割を強調している.吸入しうる小粒子を含むエアロゾルは,SARS-CoV-2感染伝播の重要な伝播形式の可能性があることが認識されるようになってきている.オランダにおける本研究では,病院のエレベーター内におけるエアロゾル飛沫(aerosol droplet)の持続性を調査し,SARS-CoV-2感染伝播のリスクを低減するための具体的な対策を提案する

エレベーター内でのエアロゾルの持続性を調査するために,量制御しつつグリセロール/エタノール飛沫(エタノールの蒸発後に一回の咳から蒸発した呼吸飛沫と同じサイズの分布を持つ)を分散させることができる,特別に設計されたスプレーノズルを使用した.エレベーター後部の半分の高さにおけるエアロゾルを検出するためにSprayScan®laser sheetが用いられた.

実験は,1020%のドア開放時間がある通常運転中のエレベーター内で行われた.中型および大型のエレベーター室の通常運転中にエアロゾル粒子数が1/100に減少するまでには,通常1218分かかることが判明したエレベーターのドアが恒久的に開いている場合,この時間は24分に短縮されるFigure 1いずれの場合も,エアロゾル粒子数は時間経過とともに急激に減少する

Figure 1: エレベーター内のエアロゾル粒子

通常運転(オレンジ),恒久的にドア開放(緑),恒久的にドア閉じる(赤)の状況における,大型(15-20 m3: △)および中型(8-12 m3: ◇)のエレベーター室で放出された平均エアロゾル粒子数の経時的変化.

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軽症SARS-CoV-2 入院患者の喀痰飛沫には,104109 RNA copies/mlが含まれている可能性がある.大まかにいうと, 109の値は,半径5μmのエアロゾル飛沫あたり1個のウイルス粒子を意味する.そして,大声で話すと1分間に数十万個の飛沫が発生する可能性があり,1回の咳で数百万個の液滴が発生する可能性がある.体積 1015m3のエレベーター内で感染者が会話や咳をした後に空気を40 L/minで吸い込むと,患者の感染力に応じて1分間に数十〜数千個のSARS-CoV-2 RNA copiesを受け取ってしまう可能性があることになる.SARS-CoV-2の最小感染量は報告されていない.しかしながら,COVID-19の重症度は最初の播種量に比例すると考えられており,それはエアロゾルによる感染伝播は比較的軽度の症状をもたらすかもしれないことを示唆する.

SARS-CoV-2感染伝播リスクを低減するための具体的な対策としては,我々のデータが示すように(Figure 1),エレベーターのドアを長時間開けたままにしておくことが考えられる.また,適切なフェイスマスクを着用することも,このリスクを低減させる可能性がある.95%以上の有効率でエアロゾルを捕捉するための静電気層(electret layer)をもつ医療用フェイスマスク(N95, N99)は,エレベーターの狭い空間における呼吸器保護のための良い対策である

また、エレベーターの機械式換気能力を向上させることも推奨されている.病院のエレベーターの機械的換気による現在の空気交換率の基準は,1時間あたり620回の空気交換(ACH: air change per hour)の幅があるかもしれない粒子の沈着,再懸濁,停滞流を考慮せずにエアロゾル粒子が供給空気と連続して混合されると仮定した場合,1時間あたり10回の空気交換率では,約28分でエアロゾル粒子が1/100に減少することになる実験の結果,ドアを閉じた状態では2430分(ACH=10),通常運転中は1218分,ドアを開けた状態では35分で1/100に減少することがわかった(Figure 1

注目すべき発見は、実験したすべてのエレベーター内の換気は,アイドリング状態では1-2分後に自動的にシャットダウンされることであった(もちろん,制御プログラムによって簡単に延長することはできる).ほとんどの病院のエレベーターでは,換気装置は天井にあり,キャビンからエレベーターシャフトに向かって空気を排気する.可能な対策は,天井からエレベーターキャビンの床に向かうような,新鮮な空気(例えば,HEPAフィルターを通した)の一方向性の下降流を作成するといった換気の流れの方向を逆にすることである.これは空気中の病原体がいない環境を作り,維持するために,ほとんどの手術室で標準となっている対策である.