COVID-19関連追加(2020925日)ファビピラビルの最新エビデンス

 

COVID-19入院患者に対するファビピラビルの前向き無作為化試験】

日本からの報告.一つは論文,一つは同施設からの報告だが現時点では未論文化.

(1)Doi Y, et al. A prospective, randomized, open-label trial of early versus late favipiravir in hospitalized patients with COVID-19. Antimicrobial Agents and Chemotherapy. Sept 21, 2020.

 https://doi.org/10.1128/AAC.01897-20.

Abstract

ファビピラビルは,日本でインフルエンザ治療薬として承認されているウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤である.COVID-19を対象としたファビピラビルの前向き無作為化非盲検多施設共同試験を全国25病院で実施した.対象としたのは.無症状または軽症で,Eastern Cooperative Oncology GroupECOG)のperformance status0または1の青年および成人COVID-19入院患者である.ファビピラビル早期治療群または後期治療群(day 1ではなくday 6に同レジメンを開始)を対象に11の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目はday 6までのウイルスクリアランス(PCR陰性化)であった.副次評価項目はday 6までのウイルス量の変化であった.探索的評価項目は,解熱までの時間と症状の消失が含まれた.患者89人が登録され,そのうち69人がウイルス学的に評価可能であった.ウイルスクリアランス(PCR陰性化)は,早期治療群66.7%,後期治療群56.1%6日以内に認められた(調整後ハザード比[aHR], 1.42; 95%信頼区間[95% CI], 0.76-2.62day 1に発熱(37.5℃以上)していた患者30人のうち,解熱までの期間は,早期治療群で2.1日,後期治療群で3.2日であった(aHR, 1.88; 95% CI, 0.81-4.35.治療期間中,84.1%に一過性高尿酸血症を認めた.ファビピラビルはday 6までにRT-PCRで測定したウイルスクリアランスを有意に改善しなかったが,解熱までの期間において数値的な短縮と関連していた.また,観察期間28日間において,いずれの治療群においても病勢の進行や死亡は認められなかった(日本臨床試験登録番号: jRCTs041190120).

 

Methods

Study Design:

本試験は,無症状〜軽症 COVID-19 で入院した16歳以上の青年および成人を対象としたファビピラビルの経口投与の有効性と安全性を評価するための治験責任医師主導の前向き無作為化非盲検試験(randomized, open-label trialであり,コーディネーターセンターである藤田保健衛生大学の認定審査委員会で中央承認され,その後,各参加病院の施設長の承認を得て実施された.研究参加者全員から書面によるインフォームドコンセントを得た.本試験は独立行政法人医療研究開発機構(AMED)の助成を受けて実施され,ファビピラビルは富士フイルム富山化学工業より提供された.

Patients:

患者は全国25病院から登録された.試験の登録期間は202032日〜518日までとした.観察期間は2020614日に終了とした.選択基準は以下の通りであった: (1) 16歳以上(2)入院患者(3) 14日以内に採取した咽頭または鼻咽頭スワブ検体のSARS-CoV-2 RT-PCR陽性,(4) Eastern Cooperative Oncology GroupECOG)のperformance statusPS)が0または1(5) 6日以上の入院(6) 妊娠検査陰性(閉経前女性のみ),(7) 参加に対する書面による同意.除外基準は以下の通りであった: (1) PS2以上,(2) 重度の肝疾患,(3) 透析が必要,(4) 精神状態の変容,(5) 妊娠,(6)有効な避妊法の使用に同意しない女性患者,(7)有効な避妊法の使用に同意しない女性パートナーを持つ男性患者,(8) 遺伝性キサンチン尿症,(9) 低尿酸血症またはキサンチン尿結石の既往歴,(10) コントロール不能な痛風または高尿酸血症,(11) 免疫抑制状態,(12) 28日以内にSARS-CoV-2に対する全身性抗ウイルス剤の投与を受けている.

Randomization:

患者は,ファビピラビルの投与開始日を試験参加day 1(早期治療群),または試験参加day 6(後期治療群)のいずれかに無作為に1:1で割り付けられた.試験開始時にはプラセボが入手できなかったため,open-label designを採用した.治療は,後期治療群では臨床的に妥当な期間内に遅延を抑えつつ,治療効果を直接比較するのに十分な期間を確保するために,2群間で5日ずつずらして行われた.無作為化は,年齢(65歳以上または65歳未満),およびSARS-CoV-2陽性検体の採取から登録までの日数(8日未満および8日以上)に基づいて層別化した.

Procedures:

ファビピラビルは,初日に1800mg4時間以上間隔をあけて経口投与し,その後800mg12回経口投与し,10日間で最大19回まで投与したこのレジメンでは,健常者で血漿濃度約60μg/mL以上を達成している(富士フイルム富山化学資料より).試験期間中に国から認められた退院基準(症状が消失し,実施したRT-PCR検査で2回の連続陰性)を満たし,少なくとも試験参加day 6に到達した患者には,ファビピラビルの投与を中止し,退院とし,試験終了まで経過観察を行った.試験参加期間中は,抗ウイルス作用を有する他の薬剤の使用は禁止された.鼻咽頭スワブはday 1からday 6まで毎日採取し,入院中の患者はday 16まで1日おきに採取した.RT-PCRは国立感染症研究所で開発され日本でも広く採用されているプロトコールを用いた.

Outcomes:

主要評価項目は,day 6までの SARS-CoV-2 クリアランスまでの時間と,鼻咽頭検体のRT-PCRによるSARS-CoV-2 クリアランスの有無であった.後期治療群では,day 6のファビピラビル投与開始前に検体を採取した.副次評価項目は以下の通りとした: (1) day 10までのSARS-CoV-2 クリアランス,(2) day 6までの SARS-CoV-2 ウイルス量の50%対数減少率,(3) SARS-CoV-2 ウイルス量の対数変化,(4) RT-PCR検査によるSARS-CoV-2 クリアランスまでの時間探索的評価項目は以下の通りとした: (1) 発熱の持続時間(37.5℃以上または37.0℃以上),(2) 体温の変化,(3) 症状の変化(自覚的な熱: subjective fever,咳嗽,咽頭痛,頭痛,筋肉痛または関節痛,悪寒または発汗,倦怠感,意識障害,呼吸困難,鼻漏,胸痛,下痢,悪心または嘔吐など),(4) 病勢の進行または死亡,(5) 死亡

SARS-CoV-2確定患者89人を無作為に割り付けた.44人が早期治療群に,45人が後期治療群に割り付けられた.無作為化直後に患者1人が試験から脱落したため,試験に関連したデータを有する患者88人においてITT: intention-to-treat(治療意図)集団構成した.ウイルスクリアランスの主要評価解析のために定義された感染者ITTは,早期治療群36人(初日のRT-PCRが陰性であった8人を除外)と後期治療群33人(同様に11人を除外)で構成された.最後に,ファビピラビルを投与しなかった7人を除外して,早期治療群44人,後期治療群38人を安全性解析集団(safety population)とした(Figure 1).

 

Results

Patients:

SARS-CoV-2確定患者89人を無作為に割り付けた.44人が早期治療群に,45人が後期治療群に割り付けられた.無作為化直後に患者1人が試験から脱落したため,試験に関連したデータを有する患者88人においてITT: intenstion-to-treat(治療意図)集団構成した.ウイルスクリアランスの主要評価解析のために定義された感染者のITTは,早期治療群36人(初日のRT-PCRが陰性であった8人を除外)と後期治療群33人(同様に11人を除外)で構成された.最後に,ファビピラビルを投与しなかった7人を除外して,早期治療群44人,後期治療群38人を安全性解析集団(safety population)とした(Figure 1).86人において無作為化はday 1に行われた.残りの3人(早期治療群2人,後期治療群1人)については,夕方に無作為化が行われたため,無作為化の翌日をday 1とした. 年齢中央値は50.0歳(IQR, 38.0-64.5歳)で,ITT集団(n= 88)において男性は54人(61.4%)であった.合計32人(36.4%)が登録時に 37.5℃以上の発熱を認めた(Table 1初回のRT-PCR検査陽性から無作為化までの間隔の中央値は4.0日(IQR2.55.0日)発熱から無作為化までの間隔の中央値は7.0日(IQR, 5.0-10.0日)であった(Table 1. 両群は,人口統計学的および臨床的特徴,ベースラインの臨床検査結果は全体的に類似していたが,男女比に不均衡がみられ,男性が初期治療群で52.3%,後期治療群で70.5%であった.この不均衡は、感染者ITT集団においても継続した(Supplemental Table 1).

Efficacy:

感染者ITT集団において,day 6までのウイルスクリアランスは,早期治療群と後期治療群で有意差はなかったTable 2day 6までのウイルスクリアランスは,早期治療群で66.7%95%信頼区間[CI], 51.4-81.2),後期治療群で56.1%95% CI, 40.1-73.4)で達成されたFigure 2年齢および初回のRT-PCR検査陽性からの日数を調整した後における,day 6までのウイルスクリアランスの調整後ハザード比(aHR: adjusted hazard ratio)は1.41695% CI, 0.764-2.623)であった感染者ITT集団におけるday 6までにウイルス量が50%対数減少した患者の割合は,それぞれ94.4%および78.8%であった(調整オッズ比[aOR: adjusted odds ratio]4.750; 95% CI, 0.876-25.764感染ITT集団におけるウイルス量の変化は,初期治療群の方が後期治療群よりも”陰性”であったが,その差は統計的に有意ではなかった(Figure S2.最高気温が37.5℃以下であることで定義される解熱までの平均期間は,早期治療群で2.1日(95% CI, 1.421-2.846),後期治療群で3.2日(95% CI, 2.390-3.918)であった(aHR, 1.880; 95% CI, 0.812-4.354Figure 3最高体温が37.0℃以下であることで定義される解熱までの平均期間は,早期治療群で2.5日(95% CI, 1.830-3.217),後期治療群で3.2日(95% CI, 2.591-3.790)であった(aHR, 1.428; 95% CI, 0.700-2.911ITTにおける体温変化は,後期治療群よりも早期治療群の方が“陰性”でありday 2において統計学的に有意差が認められたFigure S2ITTにおける臨床症状の変化は,4つの主要症状(自覚的な熱,咳嗽,呼吸困難,筋肉痛または関節痛),13の全症状(4つの症状に咽頭痛,頭痛,悪寒または発汗,倦怠感,意識障害,鼻漏,胸痛,下痢,悪心または嘔吐)は両群間で同程度であった(Figure S3S4).いずれの治療群においても,28日間の参加期間中に病勢の進行や死亡は認められなかった. 主要評価項目解析のために事前指定したサブグループは,年齢≧65歳,初日のウイルス量,初回のRT-PCR陽性からの期間,初日の症状の有無であった.Day 6までのウイルスクリアランスは,年齢≧65歳の患者では後期治療群よりも早期治療群の方が有意に高かった(0/5[0%] vs 8/9[88.9%]しかし,層別化無作為化したものの,2群間の初期ウイルス量の不均衡があった(107.7copies/ml vs 104.3copies/ml.また,初回のRT-PCR検査陽性後4日以上(中央値)に無作為化された患者については,早期治療群の方が後期治療群よりもウイルスクリアランスを達成する可能性が高かった(HR, 2.829, 95% CI, 1.198-6.683

Safety:

安全性解析集団では,ファビラビルを少なくとも1回投与された患者82人において,有害事象が合計144件報告された.最も多かったのは高尿酸血症で,69/82人(84.1%)に認められたday 16あるいはday 28(早期治療群),day 28(後期治療群)に測定された32人のうち,血清尿酸値が7mg/dL以下に正常化したのは24人で,最も高かったのは8.8mg/dLであった.その他に報告された有害事象は,血清トリグリセリド上昇(9/82, 11.0%)および血清アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇(7/82, 8.5%)であった.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Discussion

軽症COVID-19患者を対象とした無作為化試験では,day 1からファビピラビルを投与された患者とday 6からファビピラビルを投与された患者において,day 6までのウイルスクリアランス率に有意差は認めなかった.また,day 1に発熱を認めた患者において,事前指定した調整済みCox比例ハザードを用いた結果,解熱までの期間に有意差は認められなかったが,一般化Wilcoxon検定で算出したp値は統計学的に有意であった(Figure 3体温(day 1で調節した)は,day 6に収束するまで,day 2からday 5において,早期治療群では後期治療群に比べて一貫して低く,day 2の差は統計学的に有意であったこれは,ウイルス量の低下の差がday 1day 2の間で最も大きく,day 6までのウイルス量の50%対数減少率が初期治療群で数値的に大きかったという観察結果と一致しており,このセッティングでは控えめではあるが,抗ウイルス活性が存在することを示唆している.抗ウイルス療法は,COVID-19において後期よりも早期に投与した方がより効果的であることが示唆されている.SARS-CoV-2に対してin vitroで活性を示し,経口投与が可能なファビピラビルは,このパラダイムに適合する可能性のある薬剤である.本試験において鼻咽頭RT-PCRにおけるウイルスクリアランスが十分でない理由は明らかではない.メカニズムの観点から,ファビピラビルはウイルス複製を抑制すると期待されているが,必ずしも SARS-CoV-2ウイルスクリアランスを促進するとは限らない.事前指定したサブグループ解析では,年齢が 65 歳以上でファビピラビルを投与された患者では,day 6までのウイルスクリアランス率が有意に高いことが示された.しかし,ベースラインのウイルス量に有意な不均等が認められたため,本試験の結果は慎重に解釈すべきである.

Limitation: @サンプルサイズが小さいこと.Aオープンラベル試験であること.Bプラセボ対照試験でないこと.C対象が無症状〜軽症患者であったこと.Dウイルス学的評価はRT-PCRのみで評価されており,早期治療が複製能のあるウイルスに影響を与えたかどうかは不明である.

 

Conclusions

無症状〜軽度のCOVID-19患者を対象としたこの無作為化試験では,ファビピラビルの投与により,最初の6日間ではウイルスクリアランスは有意に改善しなかったが,早期のウイルスクリアランスが得られる傾向がみられた.また解熱までの期間が数値的に短縮され,治療開始翌日には無治療時と比較して有意な発熱の改善が認められた病勢の進行や死亡した患者は認めなかった.サンプルサイズが少ないために限界があるが,今回の結果はこの患者集団におけるファビピラビルの抗ウイルス活性を示唆するものである.この効果が病勢の進行や死亡の予防につながるかどうかを示すためには,さらなる研究が必要である.

 

 

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