COVID-19関連追加(2020103日)

 

【米空母セオドア・ルーズベルトにおけるCOVID-19アウトブレイク】

(1)Alvarado GR, et al. Symptom Characterization and Outcomes of Sailors in Isolation After a COVID-19 Outbreak on a US Aircraft Carrier.

JAMA Netw Open. 2020;3(10):e2020981. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.20981.

Introduction

介護施設,ホームレスシェルター,におけるSARS-CoV-2アウトブレイクの報告において,感染リスク因子がある無症状あるいは有症状症例は限られた集団環境の占有者であったことが示唆されている.しかしながら,COVID-19患者の年齢分布は,高齢者や既往症のある人に大きく偏っている.米海軍と疾病対策予防センターによるUSSセオドア・ルーズベルト(TR)におけるアウトブレイク調査は,ウイルスが若い軍人集団にどのように影響を与えるかを明らかにした.この研究において,米国陸軍公衆衛生COVID-19タスクフォースは,陸上における(shore-basedUSS TRアウトブレイクへの対応と隔離されたUSS TR水兵736人に関する独立した調査結果を説明する.

Methods

2020331日〜415に鼻腔スワブによるPCR検査でSARS-CoV-2感染が診断され,海軍グアム基地に隔離されたUSS TRのすべての水兵が対象であったCOVID-19の診断を受けた水兵は隔離された.陰性,そして無症状だった水兵は,ホテルのシングルルームに隔離された.臨床スタッフの対面による質問票によって毎日のモニタリングが実施された.検疫中に症状を認めた水兵は再検査を受け,隔離施設に移された.PCR検査による隔離解除戦略がとられた.人口統計学的および疫学的特徴,臨床および検査データを分析した.研究期間中に何らかの症状を報告した水兵は”有症状”と特徴づけ,各症状のカテゴリーを記述した.発症日が記録されている水兵218人データを用いて流行曲線を作成した.データ解析はR統計ソフトウェアバージョン3.6.3R Project for Statistical Computing)を用いて行った.

Results

下船したUSS TR水兵4085人のうち,736人がSARS-CoV-2陽性であった(年齢中央値, 25; IQR, 22-31; 男性572[77.7%]).水兵590人(80.2%は”有症状”であり,症状持続期間は中央値7日(IQR, 5-11日)であった研究期間において,水兵146人(19.8%無症状のままであった咳嗽677人日(person-days)(13.6%),風邪様症状483人日(9.7%),嗅覚消失463人日(9.3%),頭痛438人日(8.8%),味覚消失393人日(7.9%),そして発熱65人日(1.3%であった.臨床転帰については,研究期間において,水兵729人が外来隔離されたままで,6人が入院し、40歳代の上級士官1人が死亡した(Table.流行曲線を示す(Figure).これによると,アウトブレイクのピークは新規症例が30人発生した330日であった.※(2)参照.

Figure: USS Theodore Roosevelt (TR) Coronavirus Disease 2019 Cases With Recorded Date of Symptom Onset.

NGB: Naval Base Guam

 

Table: Characteristics of USS Theodore Roosevelt Sailors With Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Infection.

 

 

Discussion

この研究で観察された症状の頻度は,非入院患者におけるCOVID-19の既知の報告と一致している.人日(person-days)の割合分析により,嗅覚および味覚障害は,COVID-19患者に一般的に見られることが確認された.研究期間において,水兵146人(19.8%は、研究期間中、無症状のままであった.そして,米海軍や米国疾病管理予防センターの症状調査結果(18.5%)と一致している.これはまた,無症状性SARS-CoV-2感染伝播の増加の懸念を浮き彫りにしている.この研究は特定期間に隔離されたグループの水兵に限定されているが,結論の多くは全体的な船員集団に一般化できるはずである

エッセンシャルワーカーの若者が集まる閉鎖空間では,検査を行わないと,COVID-19と他の急性呼吸器疾患と臨床的に区別できる可能性は低い無症状(および前症状)感染者による伝播は,検査,マスク,および可能であればソーシャルディスタンスなどの他の公衆衛生上の対策(NPI: nonpharmaceutical interventions)がない場合には,症状によるスクリーニング検査では限界がある.最後に,潜伏期であった水兵が下船するにつれて急速に感染者が増加したものの,その後は急激に減少したことを考えると,沿岸部におけるNPIによって感染拡大が制御されたことが示唆されるUSS TRにおけるCOVID-19アウトブレイクから得られた教訓は,エッセンシャルワーカーが従事する他の集会施設や若者を中心とした集団における本疾患の臨床的特徴を理解する上で有用である

 

 

(2)Invited Commentary.

Malone, JD. USS Theodore Roosevelt, COVID-19, and Ships: Lessons Learned. JAMA Netw Open. 2020;3(10):e2022095. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.22095.

USSセオドア・ルーズベルト(CVN-71)は,ニミッツ級,全長1092フィート,重量10万トン以上の原子力空母であり、90機の戦術的な高性能航空機やヘリコプターが搭載されている.乗組員4800人全員が,リニアファン強制フロー機械換気(linear fan forced flow mechanical ventilationを備えた,非常に密な寝室・作業室に居住している1)20203月下旬,ベトナムへの寄港後,乗組員においてCOVID-19のアウトブレイクが認められた; 乗組員約1000人の感染が判明した2).この報告では,”このアウトブレイクは濃厚かつ密な状況で曝露された,ほとんどが若い健康な成人の間で発生し,症状は比較的軽度あるいは無症状であり,広範な感染伝播を特徴としていた」と指摘している2)

Alvaradoらによる症例シリーズ3)は,セオドア・ルーズベルトにおけるアウトブレイクに関する追加情報を提供している.この研究では,鼻腔スワブのPCR検査でSARS-CoV-2が陽性であった水兵736人が,グアムの米軍基地内の隔離施設に収容された.検査陰性の無症状者はホテルのシングルルームに隔離された.毎日症状のモニタリングが行われた; 新たな有症状者はPCR検査で確認され,隔離施設の別室に収容された.

下船した4800人のうち4085人(85%)(数百人は原子炉の操作や警備などの必要不可欠な業務を続けるために下船しなかった)において陽性者は736,うち有症状者は590(咳13.6%,風邪様症状9.9%,咳13.6%,嗅覚消失9.3%,頭痛8.8%,味覚消失7.9%,発熱1.3%)であり,症状持続期間の中央値は7日間であった.米海軍の身長,体重,体力基準を満たすことが求められるこの若年層(年齢中央値25歳,男性77.77%)の集団において,入院6,そして40 代の上級士官1人が死亡している1)

発症日が記録されている乗組員218人の流行曲線が示すように,4月の最初の2週間における陸上での隔離と検疫の介入によって,アウトブレイクを抑制する結果となったAlvaradoらは,閉鎖空間の集団環境に滞在する若く健康な労働者において,COVID-19を他の急性呼吸器疾患と区別するために検査が必要であると結論づけている3)無症状および前症状感染者における感染伝播が,このアウトブレイクの主要因であることが指摘されている.潜伏期感染者の下船に伴って症例数が急増したものの,その後症例数は急激に減少した.また著者らは,沿岸部における公衆衛生上の介入(隔離,検疫)がアウトブレイクの加速を阻止したと結論づけている.

Payneらは2)20204月に発生したアウトブレイクに関して,“以前に感染した人,現在感染している人,または感染したことのない人”を含むセオドア・ルーズベルトの乗組員382人の任意便宜的標本集団(voluntary convenience sample)について報告している.60%が反応性抗体を有しており感染者の1/5は無症状であった2)フェイスカバー(53.8% vs 67.5%)とソーシャルディスタンス(54.7% vs 70.0%)は感染率を低下させたが,空母のような海上でハイペースな業務に従事する乗組員の閉鎖限られた空間における感染拡大を止めることはできなかった.アンケートに回答した382人のうち267人(70%)が鼻咽頭スワブのPCR検査を行った2)382人の参加者のうち284人(74%)に症状を認めた; 味覚消失と嗅覚消失が,過去あるいは現在の感染と強く関連があり,発熱,悪寒,筋肉痛がそれに続いた2)Payne2)Alvarado3)の調査は,米国国防総省の異なる組織(それぞれ米陸軍と米海軍)によってデザインされ,実施されたものであるため一部の乗組員は両方の調査グループの調査員によってサンプリングされた可能性がある.

閉鎖空間である船内環境は,今後も呼吸器感染症アウトブレイクの発生源となるであろう.過去に発生した米国海軍の船内環境における呼吸器疾患のアウトブレイク事例としては,1966 年に350人乗り駆逐艦で発生した結核4)や,2009年に 3000人乗り大型水陸両用突撃艦で発生したH1N1インフルエンザ5)などがある

1966年の結核(飛沫核による感染)アウトブレイク4)では,換気システムを介した空気の再循環の寄与が強調された.一方,水陸両用突撃艦におけるH1N1インフルエンザアウトブレイクでは,インフルエンザの発病率は32%で,無症状感染の割合が高かった(53%5).さらに2014年には,ワクチン接種済みの乗組員100人を乗せた小型掃海艇で,発病率25%のH3N2アウトブレイクが報告されている6)COVID-19の感染伝播形式は”空気を介した感染airborne transmission”であるという考え方は,特に閉鎖空間では,支持を集め続けている7)

船上でのCOVID-19のアウトブレイクは今後も続くだろう; COVID-19はクルーズ船産業のほぼ休止をもたらした8). 可能な限り,マスク,手指衛生,ソーシャルディスタンスを置くことは有益であるが,限られた閉鎖空間の環境強制的なリニアエアハンドリングシステム(forced linear air handling systemsの基本的な問題を変えることはできない.米軍作戦部隊にCOVID-19を持ち込むリスクを減らすために,個別に14日間の移動を制限した移動前隔離premovement sequester(個人がCOVID-19に曝露されてなかったとしても.検疫に似ている)が実施されている

残念なことに,USSセオドア・ルーズベルトにおけるCOVID-19アウトブレイクは,密な閉鎖空間とリニアエアシステムを持つ船舶での強固な伝染力をもつ呼吸器ウイルスに関する多くの教訓の代わりに,司令官の解任と202047日の海軍長官の辞任によって記憶されることになるだろう.

References

1) LaGrone  S. USS Theodore Roosevelt returns to San Diego following deployment interrupted by outbreak. USNI News. Published July 9, 2020. Accessed September 10, 2020.

https://news.usni.org/2020/07/09/uss-theodore-roosevelt-returns-to-san-diego-following-deployment-interrupted-by-outbreak.

2) Payne  DC, Smith-Jeffcoat  SE, Nowak  G,  et al; CDC COVID-19 Surge Laboratory Group.  SARS-CoV-2 infections and serologic responses from a sample of U.S. Navy Service members: USS Theodore Roosevelt, April 2020.   MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(23):714-721. doi:10.15585/mmwr.mm6923e4.

3) Alvarado  GR, Pierson  BC, Teemer  ES, Gama  HJ, Cole  RD, Jang  SS.  Symptom characterization and outcoms of sailors in isolation after a COVID-19 outbreak on a US aircraft carrier.   JAMA Netw Open. 2020;3(10):e2020981.

4) Houk  VN.  Spread of tuberculosis via recirculated air in a naval vessel: the Byrd study.   Ann N Y Acad Sci. 1980;353:10-24. doi:10.1111/j.1749-6632.1980.tb18901.x.

5) Khaokham  CB, Selent  M, Loustalot  FV,  et al.  Seroepidemiologic investigation of an outbreak of pandemic influenza A H1N1 2009 aboard a US Navy vesselSan Diego, 2009.   Influenza Other Respir Viruses. 2013;7(5):791-798. doi:10.1111/irv.12100.

6) Aquino  TL, Brice  GT, Hayes  S,  et al.  Influenza outbreak in a vaccinated populationUSS Ardent, February 2014.   MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014;63(42):947-949.

7) Jones  NR, Qureshi  ZU, Temple  RJ, Larwood  JPJ, Greenhalgh  T, Bourouiba  L.  Two metres or one: what is the evidence for physical distancing in covid-19?   BMJ. 2020;370:m3223. doi:10.1136/bmj.m3223.

8) Moriarty  LF, Plucinski  MM, Marston  BJ,  et al; CDC Cruise Ship Response Team; California Department of Public Health COVID-19 Team; Solano County COVID-19 Team.  Public health responses to COVID-19 outbreaks on cruise ships-worldwide, FebruaryMarch 2020.   MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(12):347-352. doi:10.15585/mmwr.mm6912e3.