COVID-19関連追加(2020104日)

 

【コルチコステロイド: COVID-19に関する薬物治療の“生きた”ガイドライン】

Practice

Rapid Recommendations

A living WHO guideline on drugs for covid-19

BMJ 2020; 370 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m3379 (Published 04 September 2020)

Cite this as: BMJ 2020;370:m3379.

 

 

 

 

 

The guidance

2020717日,委員会はcovid-19の治療における全身性コルチコステロイドと標準治療の比較を評価した8つのRCT7184人)のエビデンスをレビューした6); 重症サブグループの死亡率が7つのRCTで報告された(GLUCOCOVID試験の死亡率データは、サブグループ別の死亡率アウトカムデータが得られなかったため,死亡率に関する知見の要約には組み込まなかった).委員会はコルチコステロイドの経皮または吸入投与,高用量または長期レジメン,予防については考慮しなかった.以下にエビデンスの概要を示す.

全身性コルチコステロイドに関するエビデンスの概要:

6つの試験では致死的(critically ill)患者のみを対象として全身性コルチコステロイドが評価されたが,RECOVERY試験ではcovid-19を有する入院患者が登録され,サブグループ別の死亡率データが報告された.一方,また入院患者を登録した小規模なGLUCOCOVID試験ではそうではなかった.委員会は全身性コルチコステロイドの相対的な効果は,無作為化時点における呼吸サポートのレベルに応じて変化することが示唆されているRECOVERY試験のサブグループ解析の結果を考慮した.信頼できるサブグループ効果に関するピアレビュー基準15)に基づいて,委員会はサブグループ効果が重症と非重症のcovid-19に対する個別の推奨を正当化するのに十分な信頼性があると判断した.

母集団:

7つの試験における致死的患者1703人のデータがあった.7つの試験のうち最大のものであるRECOVERY試験では,英国の入院患者6425人が無作為に割り付けられた(2104人がデキサメタゾンに割り付けられ4321人が標準治療に割り付けられた).無作為化時点では,16%が侵襲的機械換気または体外膜式酸素療法(ECMO)を受けており,60%が酸素療法のみ(非侵襲的換気の有無にかかわらず),24%がどちらも受けていなかった11)

他の6つの小規模な試験から得られた死亡率データには,202069日までに登録された致死的患者約700人(致死例critical illnessの定義は試験によって異なる)が含まれており,約80%が侵襲的機械換気を受けており,約50%がコルチコステロイド療法,50%が非コルチコステロイド療法として無作為に割り付けられていた.RECOVERY試験は,重症および非重症のCOVID-19患者の死亡率データを報告した唯一の試験であった(重症患者3883人,非重症患者1535人)1件の試験(GLUCOCOVID, n= 63)では死亡率データが重症と非重症のCOVID-19を分けて報告していなかったため16),委員会はこの試験の機械的換気のアウトカムに関するデータのみをレビューした.

介入:

RECOVERY試験では,デキサメタゾン6mg11回(経口または経静脈投与)最大10日間投与における効果が評価された.他のコルチコステロイドレジメンには,以下を含む; デキサメタゾン20mg115日間投与した後,10mg115日間投与(2つの試験, DEXA-COVID試験およびCoDEX試験); ヒドロコルチゾン200mg/日を4-7日間投与した後,100mg/日を2-4日間投与し,その後50mg/日を23日間投与(1つの試験, CAPE-COVID試験); ヒドロコルチゾン200mg/日を7日間投与(1つの試験, REMAP-CAP試験); メチルプレドニゾロン40mg12時間ごとに5日間投与(1つの試験,Steroids-SARI試験); メチルプレドニゾロン40mg12時間ごとに3日間投与した後、20mg12時間ごとに3日間投与(1つの試験, GLUCOCOVID試験)3).このうち7つの試験は各国(ブラジル,中国,デンマーク,フランス,スペイン)で実施されたが,REMAP-CAP試験は国際的な試験(ヨーロッパ14カ国,オーストラリア,カナダ,ニュージーランド,サウジアラビア,イギリスで募集)であった.

アウトカム:

すべての試験で無作為化後28日目の死亡率が報告された(1つの試験では21日目,もう1つの試験では30日目).

Understanding the recommendations

Recommendation 1:

重症・致死的covid-19患者の治療には,全身性コルチコステロイドを投与しないよりも全身性コルチコステロイドを推奨する(recommend中等度の確実性のエビデンスに基づいた強い推奨

誰に適用するか:

この推奨は,重症・致死的covid-19患者に適用される.リソースの制限のために入院や酸素吸入ができない重症・致死例covid-19患者にも適用されるべきである

小児,結核,免疫不全の患者など,検討された試験で十分に紹介されていなかった集団に対しては,この推奨の適用可能性はあまり明確ではない.このような患者における短期的な全身性コルチコステロイドの禁忌の可能性を考慮する際には,臨床医は,患者から救命の可能性のある治療を奪うことを正当化する必要があるかどうかを判断しなければならない.臨床医は,糖尿病や免疫不全を有する患者への全身性コルチコステロイドの使用に注意すべきである

利益と有害事象のバランス:

最終的に委員会は,致死的患者では28日死亡率が8.7%減少し,致死的ではない重症のcovid-19患者では6.7%減少するという中等度の確実性のエビデンスに基づいて勧告を行った.コルチコステロイド療法を行わない場合と比較すると,全身性コルチコステロイドは,おそらく致死的covid-19患者の28日目の死亡リスクを減少させる(中等度の確実性のエビデンスmoderate certainty evidence; 相対リスクRR: relative risk; 0.8095% CI, 0.70-0.91; 絶対効果推定値absolute effect estimate 1000人当たりの死亡数は87人減(95% CI, 124人減-41人減))重度covid-19患者では,全身性コルチコステロイドもおそらく死亡リスクを減少させる(中等度の確実性のエビデンス;RR 0.800.700.92);絶対効果推定値1000人当たりの死亡数は67人減(100人減-27人減))

これらの用量で7-10日間投与されたコルチコステロイドによる高血糖(中程度の確実性のエビデンス; 絶対効果推定値1000人当たり46人増(23人増-72人増))および高ナトリウム血症(中程度の確実性のエビデンス; 1000人当たり26人増(13人増-41人増))の発生率を増加させる可能性を超える有害事象のリスクの増加とは関連せず,委員会はこれらの有害事象の重要性と頻度は十分に限定されているという高い確実性を持っている.covid-19で提案されている新規薬剤とは対照的であり,臨床医は全身性コルチコステロイドの豊富な経験を有しており,委員会はその全体的な安全性プロファイルに安心感を持っている.

Recommendation 2:

非重症covid-19患者の治療には,全身性コルチコステロイドを使用しないことを提案する(suggest低い確実性のエビデンスに基づいた弱いまたは条件付きの推奨).

誰に適用するか:

この推奨は,入院状況にかかわらず,非重症患者に適用される.委員会は,非重症covid-19患者は通常,病院での急性期治療や呼吸器サポートを必要としないが,地域によっては隔離目的でのみ入院する場合があり、その場合は全身性コルチコステロイドによる治療を受けるべきではないことを指摘した.以下のいくつかの具体的な状況が考慮された.

他の理由で既に全身性コルチコステロイド治療を受けている非重症covie-19患者(慢性閉塞性肺疾患や慢性自己免疫疾患の患者など)においては,全身性コルチコステロイドの投与を中止すべきではない

・非重症covid-19患者の臨床状態が悪化した場合(すなわち,呼吸数の増加,呼吸窮迫の徴候,低酸素血症)では,全身性コルチコステロイドの投与を行うべきであるrecommendation 1を参照).

妊娠: 妊娠24週〜34週までの早産のリスクがある妊婦に対しては,母体感染の臨床的証拠がなく、十分な分娩および新生児ケアが可能な場合に,コルチコステロイド療法が行われることがある.妊婦が軽症または中等症covid-19を呈している場合には,周産期のコルチコステロイド療法は,母体への潜在的な有害リスクを上回り,重要である可能性がある.このような状況では,女性の臨床状態,本人や家族の希望,および利用可能な医療資源によって評価が異なるため,母体と早産児に対する利益と有害性のバランスについて十分な情報に基づいた意思決定を行うべきである.

コルチコステロイド治療で悪化する可能性のある風土病・感染症を考慮すべきである.例えば、コルチコステロイド治療に伴うStrongyloides stercoralis hyperinfection(※ステロイド治療は,糞線虫症の最大の病態増悪因子)については,もしステロイドが使用されている場合には,風土病地域での診断や経験的治療を考慮する.

●利益と有害事象のバランス:

全身性コルチコステロイドは28日目死亡のリスクを増加させる可能性がある(確実性の低いエビデンス; RR 1.2295% CI,  0.93-1.61; 絶対効果推定値1000人当たり39人増(95% CI , 12人減-107人増)).この特定のサブグループに関するエビデンスの確実性は,重大な不正確性(すなわち、エビデンスが死亡率の減少を除外できない)および盲検化の欠如によるバイアスのリスクのために格下げされた.

Practical issues for corticosteroids:

[Route]

全身性コルチコステロイドは,経口および静脈内で投与してもよい.注意することは,デキサメタゾンのバイオアベイラビリティーは非常に高い(つまり,経口および静脈内投与後の血漿中濃度は同程度になる)が,致死的患者は腸管機能障害のために栄養素または薬物を吸収できないことがあるかもしれない.したがって,臨床医は,腸管機能障害が疑われる場合には,経口ではなく全身性コルチコステロイドを静脈内投与することを検討してもよい

[Duration]

より多くの患者がデキサメタゾン6mg/日,最大10日間投与された.一方,7つの試験で評価されたレジメンの合計期間は5日〜14日で変動し,治療は一般的に退院時に中止された(つまり,治療期間はプロトコールに規定されている期間よりも短い可能性がある).

[Dose]

11のデキサメタゾン製剤はアドヒアランスを高める可能性がある.デキサメタゾン6mgの投与量は,ヒドロコルチゾン150mg8時間ごとに50mg),プレドニゾン40mg,またはメチルプレドニゾロン32mg6時間ごとに8mgまたは12時間ごとに16mg)と同等の量(グルココルチコイド効果の観点から)である.

[Monitoring]

糖尿病の有無にかかわらず,重症・致死的covid-19患者の血糖値をモニターすることが賢明であろう.

[Timing]

発症から治療を開始するタイミングについては,委員会で議論された.RECOVERY試験の研究者らは,症状発現後7日以上経過してから治療を開始することは,症状発現後7日以内に開始した治療よりも有益である可能性があることを示唆するサブグループ分析を報告した.プロスペクティブメタアナリシスにおけるサブグループ事後解析では,この仮説は支持されなかった.委員会の中には、ウイルスの複製が免疫系によって抑制されるまで全身性コルチコステロイドの投与を延期することは妥当であるかもしれないと考える者もいた一方で,実際には症状発現を確認できないことが多く,重症の徴候が遅れて現れることが多い(つまり、重症度と症状発現時期には相関性があることを意味する)ことを指摘する者も多くいた委員会は,エビデンスを考慮すると,重症・致死的covid-19患者を治療する際には(たとえ症状発現から7日以内であっても)コルチコステロイドを投与するほうがまし(to err on the side of ingであり,そして非重症患者を治療する際には(たとえ症状発現から7日後であっても)コルチコステロイドを投与しないほうがましであるという方針を結論付けた

Uncertainty

covie-19生存者の死亡率および機能的アウトカムに対する全身性コルチコステロイドの長期的な効果は不明である.

・非重症covid-19患者(すなわち,低酸素血症を伴わない肺炎)における全身性コルチコステロイドの臨床効果は依然として不明である.

covid-19に対する追加治療法,特に新規の免疫調節薬が出現するにつれ,これらの治療法が全身性コルチコステロイドとどのように相互作用するかを確認することがますます重要になってくるだろう.重症・致死的covid-19患者に対するすべての治療薬(レムデシビルを含む)は,全身性コルチコステロイドとの比較,または全身性コルチコステロイドとの併用 vs 全身性コルチコステロイド単独の評価を行うべきである.

・全身性コルチコステロイドの免疫への影響と,28日以降の死亡リスクに影響を及ぼす可能性のある後続感染リスク.

・ステロイドの調製,投与,薬剤開始の最適なタイミング.

・委員会が検討した試験では対象者が非常に少なかった集団(小児,免疫不全患者,結核患者など)に対する試験結果の一般化の可能性.

・リソースが限られた環境(低・中所得国)での一般化の可能性.

・ウイルス複製への影響.

References

3) Siemieniuk RAC, Bartoszko JJ, Ge L, et al. Drug treatments for covid-19: living systematic review and network meta-analysis. BMJ2020;370:m2980.

doi:10.1136/bmj.m2980. pmid:32732190.

6) The WHO Rapid Evidence Appraisal for COVID-19 Therapies (REACT) Working Group. Association between administration of systemic corticosteroids and mortality among critically ill patients with COVID-19: a meta-analysis. JAMA2020;

doi:10.1001/jama.2020.17023.

11) Horby P, Lim WS, Emberson JR, et al., RECOVERY Collaborative Group. Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 - Preliminary Report. N Engl J Med2020; doi:10.1056/NEJMoa2021436. pmid:32678530.

15) Schandelmaier S, Briel M, Varadhan R, et al. Development of a new Instrument to assess the Credibility of Effect Modification ANalyses (ICEMAN) in randomized controlled trials and meta-analyses.

16) Corral L, Bahamonde A, delas Revillas FA, et al. GLUCOCOVID: A controlled trial of methylprednisolone in adults hospitalized with COVID-19 pneumonia. MedRxiv 2020.