COVID-19関連追加(2020108日)

202058日,71日の“小児の多系統炎症症候群”に追記.

SARS-CoV-2感染に関連した成人の多系統炎症症候群のケースシリーズ】

Morris SB, Schwartz NG, Patel P, et al. Case Series of Multisystem Inflammatory Syndrome in Adults Associated with SARS-CoV-2 Infection — United Kingdom and United States, March–August 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub: 2 October 2020. http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6940e1

COVID-19パンデミックの中,小児における多系統炎症症候群(MIS-C: multisystem inflammatory syndrome in children)の新しい報告が欧米で増加している1)-3).小児における臨床的特徴は様々だが,主にショック,心機能障害,腹痛,CRP,フェリチン,Dダイマー,インターロイキン-6などの炎症性マーカーの上昇などが報告されている1)20206月以降,成人の同様の症候群に関する症例報告が散見される; 本レビューでは,CDCに報告された患者9公表された症例報告から患者7について詳細に記述し,そして査読付きジャーナルに掲載された3つのケースシリーズに記載された患者11人の所見を要約した4)-6).これら27人の患者は,重度の呼吸器疾患を伴わずに,心血管系,消化器系,皮膚系,神経系の症状を有し,SARS-CoV-2 PCR陽性あるいは最近の感染を示す抗体検査で陽性であった.これらの患者の報告において,ここでは成人の多系統炎症性症候群(MIS-A: multisystem inflammatory syndrome in adultsと呼ばれる疾患を認識することを強調するそしてその臨床症状の異質性や成人の類似症例を特定するための抗体検査の役割を強調する.臨床医や医療機関は,症状や徴候が合致する成人のMIS-Aを検討すべきである.このような患者では,SARS-CoV-2 PCR検査や抗原検査が陽性ではない可能性がありSARS-CoV-2の既往感染を確認するために抗体検査が必要となるかもしれないMIS-ASARS-CoV-2感染には時間的な関連性があるため,COVID-19を予防する介入はMIS-Aを予防する可能性がある.この新たに報告された病態の病態と長期的な影響を理解するためには,さらなる研究が必要である.

MIS-A の可能性のある患者は,いくつかの情報源(臨床医や保健所からの報告,公表された症例報告,公表されたケースシリーズ)から特定された.米国の臨床医や保健部門は,2020514日にMIS-C症例の報告を求めるヘルスアドバイザリーが公表された後,MIS-C用に開発された症例報告書*を使用して,MIS-Aが疑われる成人患者について自主的にCDCに報告した.症例報告書には,人口統計学的背景,基礎疾患,臨床所見,合併症,SARS-CoV-2検査を含む臨床検査結果,画像所見,治療法,転帰などの情報が記載されている.臨床医2人の審査員が,本報告書で使用したMIS-Aの症例定義を満たした患者を選択した.以下の5つの基準を含む: 1) 21歳以上で入院が必要な重篤な状態,2) SARS-CoV-2検査(核酸,抗原,そして抗体)が過去あるいは現在陽性,3) 肺以外の臓器1つ以上の重度機能障害(低血圧あるいはショック,心臓機能障害,動脈または静脈血栓症または血栓塞栓症,急性肝障害),4) 重度の炎症を示す臨床検査所見(CRP,フェリチン,Dダイマー,インターロイキン-6の上昇),5) 重度の呼吸器症状がない(炎症および臓器機能障害が単に組織の低酸素に起因する可能性がある患者を除外するため).これらの基準を満たす軽度の呼吸器症状を有する患者は選択された.細菌性敗血症などの他診断が確認された患者は除外した.

報告された可能性のある症例を特定するために,2020820日に文献検索を実施し,355件を特定しました† .抄録は,レビュアー1人によってスクリーニングされ,症例がMIS-A症例の定義を満たしているかどうか判断された.抄録がない場合は,論文全体がチェックされた.データは各報告から入手した: 必要に応じて原著論文に含まれていないデータを得るために著者に連絡をとった.

 

Case Reports

Demographic characteristics and underlying conditions:

CDCに報告された9人(Table 1)および公表された症例報告7例(Table 2)は,米国の7つの管轄区域および英国からの報告で上記の定義を満たしていた.患者16人の年齢は2150で,男性7人と女性9人であった.ヒスパニック系5人,アフリカ系アメリカ人9人,アジア系1人,そしてもう1人はイギリス生まれのアフリカ系民族の男性であった.患者9人に基礎疾患はなく,肥満6人,2型糖尿病(ヘモグロビンA1C9.0%)1人,高血圧症2人,閉塞型睡眠時無呼吸症候群1人であった.患者8人はMIS-Aの症状を発症する前に呼吸器症状を認めており,残りの患者8人は認めなかった

Initial signs and symptoms:

患者16人のうち12は,診察時に発熱24時間以上の発熱(≥100.4°F [38.0°C]以上),または24時間以上持続する自覚的発熱)を認めた患者6人は,胸痛や動悸といった心臓による症状の可能性があったため最初に評価された; 16人全員に,不整脈などの心電図異常トロポニン値の上昇,または心エコーにて左心室・右心室機能障害の所見など心臓への影響が認められた患者13が入院時に消化器症状を呈した; 5が入院時に皮膚症状を呈した(そのうち3人は粘膜炎呼吸器症状は最小限であったにもかかわらず,胸部画像検査にて,患者10人に肺のすりガラス陰影が認められ,6人には胸水が認められた

Inflammatory markers:

すべての患者で,CRP(ピーク値の範囲= 84-580 mg/L, 正常上限[ULN]= 10 mg/L)およびフェリチン196-100,000 ng/mL, ULN= 女性 150 ng/mL, 男性 300 ng/mL),およびDダイマー275-8691 ng/mL, ULN= 500 ng/mL)など凝固障害のマーカーを含む、炎症に関係する臨床検査値が著しく上昇していた患者10人では,リンパ球数絶対値が正常範囲(下限値120-2120 cells/μL, 正常下限値[LLN]= 1000 cells/μL)を下回っていた

SARS-CoV-2 test results:

MIS-Aの初回評価時にSARS-CoV-2 PCR検査が陽性であった患者は10人で,そのうち7PCR検査時点で感染の血清学的証拠(抗体検査陽性)が認められた患者6人がSARS-CoV-2 PCR検査で陰性であった; そのうち4は初回評価時にSARS-CoV-2抗体検査で陽性であった.患者2人は,入院14日前と37日前にSARS-CoV-2 PCR検査が陽性(入院時はPCR検査陰性)であり,抗体検査は受けていなかった.さらに患者3人は,入院25-41日前にSARS-CoV-2 PCR検査が陽性で,入院時のPCR 検査は持続して陽性であった.

Treatment:

患者7人は免疫グロブリンの静脈内投与,10人はコルチコステロイド,2人はインターロイキン6阻害剤のトシリズマブで治療された.患者10人は集中治療を必要とした; 患者7人は強心薬または昇圧薬を必要とし,患者1人は機械的循環サポート(ECMOに続いて,一時的な両心室補助装置を使用)を必要とした.患者3人が気管内挿管と機械的人工呼吸を必要とし,患者2人が死亡した

 

Published Case Series

MIS-A4)-6)と一致する症状を呈した成人患者のケースシリーズが3件発表されている.

@活動性あるいは以前の感染を示唆する高レベルのSARS-CoV-2 IgG抗体を伴う心原性および血管麻痺性ショックを認めた元来健康であった20-42歳の若年成人男性7の報告である4).患者のうち2人はアフリカ系アメリカ人,2人はヒスパニック系,2人は中東系,1人は白人であった.患者7人のうち4人は入院時のSARS-CoV-2 PCR検査は陰性であり,すべての患者において炎症マーカーが著しく上昇しており,強心薬または昇圧薬を必要とし,3人はIABPが必要であった.すべての患者にコルチコステロイドが投与され,抗凝固療法が行われた.患者7人はすべて回復し,入院7-18日で心血管機能が改善して自宅に退院した.

ASARS-CoV-2検査が陽性であり,大血管性脳卒中を起こした21歳と50歳の患者2のケースシリーズである5).これらの患者では炎症性マーカーが上昇し,呼吸器症状は最小限,そしてMIS-Aと一致していた.著者らは,SARS-CoV-2感染に関連した内皮機能障害と凝固障害を病因とする可能性を示唆している.前年の同時期の若年成人における大血管性脳卒中の発生率は統計学的に有意に低かった5)

BSARS-CoV-2陽性を伴うMIS-Aに類似した疾患(心機能障害,腹部徴候および症状,発疹)を有する患者2人の血管内皮炎および補体沈着の病理所見が報告されている6).これらの患者の人種・民族に関する情報は報告されていない.これら2人のうち1人は基礎疾患がなく回復したが,もう1人は重症COVID-19リスクが高い複数の基礎疾患を有しており,治療して数時間後に死亡した.このケースシリーズにおける病理所見は,患者14の剖検所見と類似していた(Table 2

 

 

Discussion

現在または過去にSARS-CoV-2に感染したことのあるすべての年齢の成人患者においてMIS-Cに類似した高炎症性症候群(hyperinflammatory syndrome)を発症する可能性があることを示した.成人の重症COVID-19患者では,炎症亢進および肺外臓器機能障害が報告されているが、これらの症状は一般的には呼吸不全を伴う7).対照的に,ここに記載された患者では,MIS-Aと重症COVID-19を区別するためのワーキングケースの定義に従うと,呼吸器症状,低酸素血症,または画像所見は最小限であった; 患者16人中わずか8人がMIS-A発症前に呼吸器症状を呈していた

小児そして成人における MIS の病態生理は現在のところ不明である.この報告に記載した成人 27人のうち8人(30%),および 2020729日までにCDCに報告された1)MIS-Cを発症した小児 440人のうち45%の患者は,PCR 陰性およびSARS-CoV-2抗体検査陽性であり,MIS-AおよびMIS-C は感染後の経過を表している可能性が示唆されているしかし,一部の患者では,上気道外の部位で持続感染する可能性がある; SARS-CoV-2は,心臓,肝臓,脳,腎臓,および消化管を含む複数の器官で同定されている7)COVID-19における肺外機能障害の機序として提案されているものには、内皮障害および血栓性炎症,免疫応答調節不全,およびレニン-アンジオテンシン-アルドステロン機構調節不全が挙げられる7)

感染からMIS-A発症までの期間は不明であり、MIS-Aが急性感染症の症状なのか,それとも完全に急性後の現象なのかについての不確実性に加えて,感染からMIS-A発症までの期間は不明であるCOVID-19患者では、呼吸困難は典型的には症状発現から中央値で5-8日後,重症化は10-12日後に起こる§ .MIS-A発症前に典型的なCOVID-19症状が認められた患者では,MIS-Aは約2-5週間後に生じた

しかし,MIS-A患者8人では先行する呼吸器症状がなく,いつ初感染が起こったのか推定することが困難である

MIS-C患者のPCR検査が陰性である割合が高いことを考えると,臨床ガイドラインでは診断を補助するために抗体検査とウイルス検査の両方を行うことが推奨される8)-10)MIS-Aを含むSARS-CoV-2感染の非定型または晩期症状を認める患者では,抗体検査が陽性であれば,この疾患を臨床的に疑い,治療の指針を立てるために重要と考えられる.さらに,炎症,凝固系,および臓器障害をチェックする臨床パネル(例えば,CRP,フェリチン,D-ダイマー,心筋逸脱酵素,肝臓酵素,およびクレアチニン)は,このCOVID-19関連疾患の早期発見および管理に役立つかもしれない.

本報告に記載したMIS-A患者のうち1人を除くすべての患者が人種または民族的少数グループ(racial or ethnic minority groupsに属していた.長年にわたる健康と社会的な不平等が,有色人種のコミュニティにおけるCOVID-19感染リスクと重篤な転帰の増加をもたらしてきた¶ .MIS-C もまた,これらのコミュニティで不均衡に報告されている1).この報告だけで一般化することはできないが,さらなる研究が必要である.

大部分のMIS-A 患者は生存しており(27人中24人)MIS-C患者と同様に急性期医療,しばしば集中医療を受けていた.これらの症例報告に記載されているように,これらの患者に有益な治療法が考えられるため,臨床医は臨床所見および検査所見がMIS-A症例の定義と一致している成人患者を治療する際には,より広範な鑑別診断の中でMIS-Aを考慮すべきである.

Limitation: @この報告をもって,真の臨床病態や人種・民族分布は規定できない.A症例定義は重症COVID-19MIS-Aを区別するために,重症呼吸不全を除外したが,オーバーラップする症例があるかもしれない.Bこの症例定地は非特異的である可能性があり,他の疾患の経過であるケースをMIS-Aと分類してしまっているかもしれない.

 

Table 1-1:

 

 

Table 1-2:

 

 

Table 2:

 

References

1) Godfred-Cato S, Bryant B, Leung J, et al.; California MIS-C Response Team. COVID-19–associated multisystem inflammatory syndrome in children—United States, March–July 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:1074–80.

2) Belot A, Antona D, Renolleau S, et al. SARS-CoV-2-related paediatric inflammatory multisystem syndrome, an epidemiological study, France, 1 March to 17 May 2020. Euro Surveill 2020;25:2001010.

3) Whittaker E, Bamford A, Kenny J, et al.; PIMS-TS Study Group and EUCLIDS and PERFORM Consortia. Clinical characteristics of 58 children with a pediatric inflammatory multisystem syndrome temporally associated with SARS-CoV-2. JAMA 2020;324:259–69.

4) Chau VQ, Giustino G, Mahmood K, et al. Cardiogenic shock and hyperinflammatory syndrome in young males with COVID-19. Circ Heart Fail 2020.

5) Oxley TJ, Mocco J, Majidi S, et al. Large-vessel stroke as a presenting feature of Covid-19 in the young. N Engl J Med 2020;382:e60.

6) Magro C, Mulvey JJ, Berlin D, et al. Complement associated microvascular injury and thrombosis in the pathogenesis of severe COVID-19 infection: a report of five cases. Transl Res 2020;220:1–13.

7) Gupta A, Madhavan MV, Sehgal K, et al. Extrapulmonary manifestations of COVID-19. Nat Med 2020;26:1017–32.

8) Henderson LA, Canna SW, Friedman KG, et al. American College of Rheumatology clinical guidance for pediatric patients with multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) associated with SARS-CoV-2 and hyperinflammation in COVID-19. version 1. Arthritis Rheumatol 2020.

9) Hanson KE, Caliendo AM, Arias CA, et al. Infectious Diseases Society of America guidelines on the diagnosis of COVID-19: serologic testing. Arlington, VA: Infectious Diseases Society of America; 2020.

https://www.idsociety.org/practice-guideline/covid-19-guideline-serology/.

10) CDC. Information for healthcare providers about multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C). Atlanta, GA: US Department of Health and Human Services, CDC; 2020.