COVID-19関連追加(20201011日)

 

Germanyからの報告: SARS-CoV-2の空気感染リスクを減少させるための,学校教室における移動式空気清浄機の効用】

J Curtius, M Granzin, J Schrod. Testing mobile air purifiers in a school classroom: Reducing the airborne transmission risk for SARS-CoV-2. medRxib. Posted Oct 6, 2020.

https://doi.org/10.1101/2020.10.02.20205633.

Abstract

ウイルス含有エアロゾル粒子を介したSARS-CoV-2の空気感染は,Covid-19感染の重要な経路として確立されてきた.特に多数の人が密室に集まる状況では,このような感染を防ぐための適切な対策が必須である.ここでは、高校の教室で通常の授業が行われている間に、HEPAフィルターを装備した空気清浄機(air purifier4台の稼働効率性および実用性を検証した.室内の2箇所で3nmを超える粒子のエアロゾル数濃度を測定した(エアロゾルサイズ分布は10nm10μm,そしてPM10CO2濃度).比較のために,空気清浄機を設置していない隣の教室でも同様の測定を行った.窓やドアを閉めて授業を行っていた時間帯では,空気清浄機を稼働させると(空気交換率5.5h-1),30分未満でエアロゾル濃度が90%を超えて減少したこの減少は,教室全体で均一に観察され,すべての粒子サイズに認められた.測定値は,空気清浄機の有無にかかわらず,閉鎖空間で会話をしている強い感染力をもつ感染者から排出されるウイルス含有エアロゾルの最大濃度レベルを推定する計算によって補足されている.測定と計算により,空気清浄機はSARS-CoV-2の空気感染リスクを大幅に低減するのに適した対策であることが明らかになったsuperspreadersuper infective person)と一緒に閉鎖空間に2時間滞在した場合,空気清浄機を用いて総空気交換率5.7h-1だった場合,吸入量は6分の1に減少すると推定される

Methods

Air purifiers:

家電製品として市販されている移動式空気清浄機(フィリップス社製モデル2887/10を用いて実験を行った.この空気清浄機は,HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filterを搭載しており,メーカーによると0.10.3μmサイズ範囲の粒子を99.95%以上除去する(フィルタータイプH13).空気清浄機を通過する体積流量(volume flow)を5段階で調整できる: "sleep", 1, 2, 3 und "turbo"Table 1は、我々の実験で使用した高流量段階(ステージ23あるいは"turbo")において測定された体積流量を示しているエアロゾル伝播リスクを低減するために換気率(ventilation rate)は可能な限り高く設定する必要がある.さらに,これらのステージでの稼働中のエネルギー消費量と騒音レベルを測定した.騒音レベルは,携帯電話の簡単なアプリを使用して測定した.測定は,装置の上から1mの高さで,装置から出る主な気流の外側で行った.空気清浄機の寸法は 24.0 cm x 35.9 cm x 55.8 cm である.この空気清浄機には,粗塵(coarse dust)とエアロゾル用の簡単なプレフィルター(pre-filter)(メッシュ幅〜0.5mmの金属スクリーン)とメッシュ幅〜0.7mmの活性炭フィルター(active charcoal filter)が装備されている.ドイツの室内衛生委員会の勧告に従って,オゾン発生機,イオン発生機,紫外線などの使用に依存する空気清浄機は避けた(Birmili et al., 2020).

Table 1:

 

Instrumentation(計装):

Measurement of aerosol number concentration by condensation particle counters:

エアロゾル濃度の測定には,いくつかの超微粒子凝縮粒子計数装置(TSIuCPCモデル3776)を使用したuCPCは広い範囲の粒子濃度(0.1cm-3から100000粒子cm-3以上)を正確に測定することができる2.5nmから始まる超微粒子を検出する.サンプリングは、追加のどんなサンプリングラインも使用せずに,教室の空気から直接行った.エアロゾル濃度の測定には,いくつかの超微粒子凝縮粒子計数装置(TSIuCPCモデル3776)を使用した.uCPCは広い範囲の粒子濃度(0.1cm-3から100000粒子cm-3以上)を正確に測定することができる.2.5nmから始まる超微粒子を検出する.サンプリングは、追加のどんなサンプリングラインも使用せずに,教室の空気から直接行ったuCPCは,エアロゾル粒子を光学的に検出できるサイズにするための作動流体(working fluid)としてブタノール(butanol)を使用する.uCPCの排気は,排気ラインを使用して外部に送られた.サンプル流量は1.5 L/minとした.測定の不確かさ(uncertainty)は約±5%である.

Measurement of aerosol size distribution and total aerosol mass (PM10):

エアロゾルサイズ分布は,静電分級機TSIモデル3082と示差移動度分析装置TSIモデル3080およびuCPC TSIモデル3776からなるScanning Mobility Particle SizerSMPS)と光学式粒度分布測定装置(OPSTSIモデル3330)の組み合わせを適用し,10nm10μmの広い範囲を測定する.SMPS10300nmの範囲のエアロゾルサイズを測定する.OPS16サイズの容器(bins)を適用して300nm10μmの範囲のエアロゾルサイズを測定する.近似全質量approximate total mass PM10)は,サイズ測定および平均粒子密度1.2 g/cm3という仮定から導き出される.

 

CO2-sensor:

CO2センサー(NDIRは,CO2混合比(CO2 mixing ratio)のモニタリングに使用される(Trotec model BZ30このセンサーは,010000 ppm CO2の範囲におけるCO2混合比を測定する.不確かさは,メーカーによって±75ppmとされている.また温度と相対湿度も記録する.

Measurement Site:

教室内の空気清浄機と測定器の配置図をFigure 1に示す.教室(Leibnizschule Wiesbaden, B109号室)は2階にある.教室の全長は8.24m,幅は6.18m,天井高は3.66m,総容積は186.4m3である(※文科省の資料によるとだいたい日本の教室と同じ).ドアと窓の部分からの小さな凹部の容積は考慮していない.窓前面には,2列の窓が配置されている.0.70m×1.36mの窓を5つまで全開にして教室の換気を行った。また換気時にはドア(0.93m×1.99m)を全開にした.この教室には,生徒のための27の場所と,教師のための場所が設置されている.実験には、科学者が同席し,測定とモニタリングを行った.空気清浄機を3台あるいは4台,同時に稼働させた.いくつかの測定では,空気清浄機 #2Figure 1を参照)をオフにした.教室の後方の机にuCPCSMPSOPCCO2センサーを配置した.2台目のuCPCは,教室前方の教師の机の隣にある机の上で操作を行った.空気清浄機は床に直接置き,Figure 1に示すように教室全体に配置した比較のために,空気清浄機を稼働させていない隣の教室(B110)でも測定を行った.ここでは,空気はuCPCOPSで連続的にモニターされていた.教室の大きさはほぼ同じだった(8.25m x 6.32m x 3.69m,総容積 ~192.4m3).この教室には6つの窓があり,そのうち5つの窓は換気のために全開とした.また,このクラスには,学生27人,教師1人,科学者1人がいた.2つの教室は互いに直角(perpendicular)に配置されており、結果として,空気清浄機のない教室の窓は交通量の多い道路に面していたのに対し,もう一方の教室の窓はこの道路の静かな脇道に面していたという,教室間の違いが生じた.その結果,道路に面した教室では,もう一方の教室でたとえ空気清浄機をオフにしていても,道路に面した教室のエアロゾル数や質量濃度は多かった

 

 

Figure 1:

Results

Figure 2は,窓とドアを閉めた2つの教室の授業中のエアロゾル総数濃度the total aerosol number concentrationuCPC大粒子数濃度the number concentration of large particles0.310μm, OPS,および総エアロゾル質量the total aerosol massPM10, OPSの典型的な測定結果を示している空気清浄機がない教室の全数濃度は,時間経過とともにゆっくりと減少し,窓を開けて外部から追加の粒子が入ってくる12:06には約30%減少している.教室が閉じられている間の粒子濃度の減少は,主に教室の表面への粒子の拡散(diffusion),および凝固過程(coagulation)と沈降損失(sedimentation losses)によって引き起こされる.この減少の一部は,教室内の29人における,エアロゾル粒子の一部が吸入され,上気道および下気道に沈着するという呼吸によっても引き起こされる.また,全体の減少は,授業毎に異なることがわかった(指数関数的な減衰の時定数は47分と71分の間で変化している).損失過程は主として,粒子サイズ,室内湿度,エアロゾルの帯電状態,室内の静電気が帯電した表面の存在などに依存することによる.

エアロゾル濃度は空気清浄機を設置した教室ではかなり低下した4台の空気清浄機はステージ3で稼働され,総体積流量(volume flow)は1026.4m3/h空気交換率は5.5h-1だったエアロゾル濃度は,指数関数的に減衰し,37分以内に95%を超えて減少した2台のuCPCはほぼ同じ値を測定した(Figure 2aの赤線と黒線)これは,教室(内の空気)が十分に混合されており,教室内の粒子の減少が非常に均一であることを示している.これは非常に再現性が高く,4台の空気清浄機の作用から教室のどの部分が除外されているかに気づかなかった.教室2つのOPS測定から得られた総数濃度と総質量をFigure 2の下のパネルに示す0.310μmの範囲の粒子数濃度は,uCPCで測定した総粒子数濃度と同様の時定数で指数関数的に減少したが,空気清浄機のない教室ではOPCで測定した総粒子数はほぼ一定に保たれていた

総エアロゾル質量は,授業開始時の約35μg/m3から約37分後には約6μg/m3まで減少したが,空気清浄機のない教室では総質量はかなり一定に保たれていた12:06に窓を約1分間開けたことで,粒子質量と総粒子数濃度が増加していることに注目してほしいOPSで測定されたより大きな粒子の粒子質量と粒子数は,上記で説明したように,空気清浄機がない教室では体系的に高くなっていた

Figure 2: Top panel: Measurement of the total aerosol number concentration in the classroom with air purifiers (red and black line) and in the room without purifiers (blue line). Four air purifiers were operated at stage 3 during a lesson with windows and doors closed. A window was briefly opened in the room without purifiers at 12:06 for ~1 minute, when additional particles flowed in from outside. Particle concentrations are averaged over 1 minute intervals. Middle panel: Number concentration of larger particles (0.3 to 10 µm, OPS measurement) in the classrooms with (red) and without (blue) air purifiers. Bottom panel: The particle mass concentration PM10 in the rooms with and without air purifiers. Values are more scattered due to low counting statistics for the largest particles that contribute most to the derived mass concentration.

 

Figure 3は,閉鎖された教室の様々な授業におけるuCPC測定値の複合プロットを示している.すべての測定値は,10000粒子cm-3の開始レベルを正常値化した.青色の線は,空気清浄機を使用しない場合の典型的な緩やかな減少を示している.空気清浄機を使用した場合の全粒子数濃度の減衰は,3台そして4台の空気清浄機を使用した異なる空気交換率に対して高い再現性を示している.粒子数濃度の半減期は,空気清浄機の総流量に依存して,10.0分,7.0分,あるいは5.4分(それぞれ緑,黒,赤線)であった.

 

 

Figure 3: Reduction in aerosol particle concentration in a closed classroom without air purifiers (blue line) and with 3 or 4 air purifiers operating at stage 3 (3×257 m3 /h per purifier, green lines; 4×257 m3 /h per purifier, black lines) or stage “turbo” (4×365 m3/h, red line). Data are normalized to a starting value of 10 000 particles cm-3. Data are displayed for the time intervals until door or windows were opened again

 

Figure 4は,10300nmの粒子サイズにおけるSMPS装置の測定値を示している濃度レベル(色分けで示した)は,時間経過とともにすべての粒子サイズで顕著に減少した.同様に,OPSで測定されたすべてのサイズ容器(bins)で分けた様々なサイズの粒子濃度は時間経過とともに一様に減少している(Figure 5.すべての粒子サイズに関して均一に減少していることは,平均粒子サイズが~0.4µmの値で一定(ピンクの破線)であるという事実によって確認されている.全体では,HEPAフィルター付き空気清浄機を使用することで,窓を開けて空気を排出するまでの時間間隔でエアロゾル量が非常に減少していることがわかる.全ての粒子サイズが均一に減少していることから,もし感染者がいる場合は,その人の会話や呼吸で排出されるウイルス含有エアロゾル粒子も室内空気中で減少することがわかる.

 

 

Figure 4: Measurement of the particle size distribution in the size range 10-300 nm as a function of time in the room with air purifiers. Red and yellow colors indicate high concentrations while green and blue colors indicate low concentrations. Particles <300 nm are filtered effectively and homogeneously.

 

Figure 5: Total (black line) and size resolved decrease of particle concentrations for seven aerosol size bins of the OPS in the size range 0.3 to 5 µm. The mean particle diameter (dashed pink line) remains constant, indicating that all sizes decrease at the same rate.

 

Estimation of the effect of air purifiers for airborne virus transmission:

上述したような教室内のエアロゾル濃度の低下は,感染者がエアロゾルを排出して空気感染によって他の人に感染を引き起こす可能性のある状況と直接比較することはできない.密室で継続的に発声している感染者は、ウイルスRNAを含むエアロゾル粒子の連続的な点源のようにふるまう.空気清浄機がある/ない閉鎖された教室においてRNAを含むエアロゾル粒子濃度がどのように変化するかを評価するために、単純化された仮定を用いて計算を行う.例えば,症状を認める数時間前といったように感染力が強い段階での前症状・無症状者を想定している.頻繁に大きな声で話している人(例えば,教師,講師あるいは,読書や発表をしている学生)を想定している.Lelieveld(2020)が最近MedRxivにプレプリントとして公開した非常に類似した近似値と計算を同等にするために,我々は同じ仮定に基づいて計算を行う.これらの仮定のいくつかは,SARS-CoV-2については現在非常に不確実であり,将来的に変更される可能性があることに注意する.特に,感染性をもつRNA含有粒子量や,ウイルスRNAを含む呼気粒子の割合は不明である

Lelieveldらの議論に従い,宿主によって吸入され50%の確率で感染を引き起こすウイルスRNA量として,316粒子の感染量D50infectious dose)を仮定する.さらに,50%の確率で宿主の呼吸器系にエアロゾル粒子が沈着すると仮定する.感染者による呼吸および発声は,それぞれ0.06および0.6粒子cm-3を呼気中に排出する(Asadi, 2019; Stadmytsky, 2020; Lelieveld, 2020).これらの仮定は,大部分の時間において発声していない平均的な感染症例と比較して,むしろ高排出者(super emitter)症例に基づいている.発声/呼吸比を0.1,一人当たりの呼吸速度respiration rate10リットル/分とした.呼気粒子中に存在するウイルスRNA濃度を,”感染力が強い”人の場合は5×108/ml,”非常に感染力が強い”人の場合は5×109/mlと仮定する(Lelieveld, 2020).粒子は、口から出るときに平均湿潤粒子径wet diameter 5μmで呼出されるが,湿度が低いときに急速に蒸発するため,粒子径はすぐに12μmに減少する.エアロゾル中の生存可能なSARS-CoV-21/e-lifetime1.7時間と仮定されている(van Dormalen, 2020).これらの仮定を用いて,Lelieveldらは,排出者から1時間あたり68400粒子の排出を導出し,”感染力が強い”感染者の呼吸や発声中に排出される粒子の約3%,”非常に感染力が強い”感染者の約30%にウイルスRNAを含むとしている.このモデルを用いて,低い空気交換率0.35h-1かつフェイスマスクを使用しない教室において,このモデルを用いると,RNA含有エアロゾル定常濃度は,”感染力が強い”人がいると0.012/L,”非常に感染力が強い”人がいると0.12/Lと計算することができる”感染力が強い”人がいた場合,2時間教室にいた人が7.6RNA含有粒子を獲得することになり,1.7%の感染リスクがあることになる25人の教室では,他の24人のうち少なくとも1人が感染するリスクは33%となる排出粒子に5×109/mlという多いウイルス量をもつ”非常に感染力が強い”人がいた場合,2時間教室にいた人が75.9RNA含有粒子を獲得することになり,15%の感染リスクに増加し,教室では少なくとも1人が感染するリスクは98%に増加する.使用した仮定,パラメータおよび方程式のすべての詳細は,Lelieveldら(2020)に記載されている.

Lelieveldらのスプレッドシートからここに導出したものと同様の計算を行ったが,これは教室内で2時間換気を行わない状況を想定し,空気清浄機を稼働させた状況(空気交換率5.7 h-1と比較した.Lelieveldらと同様に,空気の動きや乱流混合・希釈過程などの詳細な流動計算は行わなかった.その代わりに、我々は部屋の中で放出されたエアロゾルの瞬間的な均質な混合を想定している.これは,教室内の異なる位置に配置された2つのuCPCの定期的なほぼ同一の濃度測定に基づいた正当な仮定と思われる(Figure 1, 2, および以下に記載した実験参照).

窓やドアを開けて換気をせずに,教室を2時間閉鎖したと仮定する.典型的な教室は,容積180m34台の空気清浄機の体積流量1026m3/h,フィルター効率100%と仮定する.“非常に感染力が強い”人のウイルスRNA含有エアロゾル粒子濃度(Lelieveldらと同様の仮定)をFigure 6に示す.空気清浄機を稼働させた場合と稼働させない場合を比較する.空気清浄機のスイッチを入れると,すぐに0.01/L程度の定常濃度に達するが、空気清浄機なしでは2時間後には0.11/Lと着実に濃度が上昇していることがわかる教室の中にいる感受性のある人の吸入量は時間経過とともに増加する.2時間後には68ウイルスRNA単位に達する空気清浄機を稼働させた場合の吸入量は,2時間後には11粒子となる.これらの結果は,Lelieveldらのモデルから得られた計算とほぼ同等である.濃度レベルと吸入量については,Lelieveldらのモデルで計算した結果の約±10%以内であることから,上記の感染リスクも我々の結果へ適用可能であると考えられる.

2時間後の室内のウイルスRNA含有エアロゾル粒子濃度は,空気洗浄機がないと,ある場合よりも約10倍高い.この差は時間経過とともに大きくなり空気洗浄機によってさらに換気率が上昇すれば,より大きくなる.同様に,吸入量の差も時間経過によって大きくなる; 1時間後には,空気洗浄機がある場合とない場合の差は3.5倍になり,2時間後には6.2倍になる.この推定値は,換気のない教室とHEPAフィルター付きの空気清浄機を設置した教室の大きな違いを説明していると考えられる.この推定に使用された数値のいくつかは不確かであるが,我々は,”空気清浄機を設置した”,”設置していない”場合における濃度レベルと吸入量の差が時間経過とともに増加するという知見は重要であると考えている感染者と他の感受性のある人が一緒に閉鎖空間にいる時間が長いほど,たとえ2m以上離れていても空気感染のリスクは高くなる

我々の推定の妥当性を実験的に確認するために,人のいないセミナールーム(容積128m3)で一連の試験測定を行った.ここでは,教室の中央にエアロゾル発生器を設置し,NaCl溶液の飛沫を発生させた.次に,教室の異なる場所に置いた3つのuCPC>3nmの粒子数濃度を,2つのOPS装置で>300nmの粒子数濃度を測定する2つの実験を行った.最初の実験では,すべての窓とドアを閉め,複数の空気清浄機を合計レベル<100粒子/cm-3まで低下させるように操作し,室内に存在する粒子を除去した.それから空気清浄機のスイッチをオフにし,リモートでエアロゾル発生装置を起動した.その結果,室内の粒子濃度が50分間に渡って確実に上昇していることが確認できた.第2の実験では,エアロゾル発生器のスイッチを入れた際に,空気清浄機3台の運転を継続した.その結果をFigure 7に示すエアロゾル発生器からの排出量を180万粒子/秒と仮定した時,空気清浄器を運転している場合と運転していない場合において,室内濃度の測定値を単純なモデルで示している.特に空気清浄機を使用しない場合,室内の循環と混合はそれほど強くなく,uCPCの測定値は濃度レベルにおける差を示し,室内の空気が全体的に十分に混合されていないことを示している.それにもかかわらず,3つのuCPCはすべて時間経過とともに強い増加を測定しており,モデルはその増加を十分に示している.エアロゾル発生器からの排出は,発声する人からの排出に比べて桁違いに大きいが,これらの実験から,教室の換気を積極的に行わない場合であっても、ほぼ混合された部屋の基本的な仮定がほぼ正しいことが示された

Figure 6: Estimated concentration of aerosol particles containing virus-RNA in a closed classroom (180 m3 ), in which we assume that a super infective person emits on average 19 particles per second, e.g. through loud speaking and breathing (red line without purifiers, blue line with purifiers) with an air exchange rate of 5.7 h-1. The dashed lines show estimates of the inhaled dose of virus-RNA units that is taken up by a person in the same room. 

 

 

Figure 7: Left panels: Measurement of particle increase in a closed room without people, with and without purifiers. An atomizer is operated as a continuous particle source of NaCl solution droplets. 3 uCPCs and 2 OPS instruments measured at different positions in the room. Assuming an emission rate of 1.8 million particles s-1 a good agreement is reached between the model calculations and the measurements. Right panel: Sketch of the position of the aerosol generator (red), the three uCPC and OPS instruments (blue) and the position of the air purifiers (green) in the seminar room.

 

 

Further considerations

Carbon dioxide:

窓やドアを閉めた状態での授業中に測定した典型的なCO2混合比をFigure 8に示すCO2混合比は毎分48ppmずつ増加する授業終了時には2700ppmを超える値に達している窓を開けて数分間換気しても,CO2濃度が1000ppm以下にならないことが繰り返し観察されたそのため,授業開始時にはすでに室内の混合比は1000ppm前後になっていた.ドイツ環境庁による現在の推奨によると,1000ppmを超える濃度の部屋は換気するべきとされ,2000ppmを超える値では換気をしなければならない(このような高い値は頭痛や疲労感を引き起こすため(UBA, 2009)).人が密集している教室では,授業中も換気をしなければならないことを示唆している.これは空気清浄機の使用の影響は受けない

Figure 8: CO2 mixing ratio as measured in class during a school day. Even after venting the room for several minutes with door and windows wide open, CO2 levels do not drop below 1000 ppm. With classes proceeding in the closed room, CO2 levels quickly rise to mixing ratios of 2500 to 2800 ppm at the end of the lesson.

 

Positioning of the air purifiers:

空気清浄機の設置場所を決める際には,いくつかの側面を考慮する必要がある.空気清浄機を1台のみ設置する場合には,設置位置は理想的には部屋の中央にあるべきである(Kähler, 2020)複数の空気清浄機を設置する場合には,部屋の中に均等に分散して設置するべきであるKüpperら(2019)は,吸気口と清浄空気排出への流れが妨げられない限り,隅への設置も可能であることを示している机の下に空気清浄機を置くなど,自由な循環を遮断することは,空気清浄機の効率を大幅に低下させてしまう.もちろん,すべての安全面を考慮する必要があるが,例えば,移動式空気清浄機を設置する際は非常口を塞いではいけない.

Noise levels:

簡易的な騒音レベルの測定(Table 1)の他に,学校の生徒と教員を対象にアンケート調査を実施した.エアロゾル測定器の騒音レベルが空気清浄機の騒音レベルの印象に影響を与えないように注意しなければならなかった.そこで,空気清浄機のスイッチを入れた状態で,エアロゾル測定を行わない授業をいくつか実施した.匿名調査の結果をFigure 9に示す.調査を実施する前の授業では,ステージ3で4台の空気清浄機を稼働させていた.生徒(1415歳)は騒音レベルを不快と感じていなかった.調査に参加した生徒26人のうち,騒音について「全く気にならないd」58%,「気にならない」27%,「どちらでもない」15%であった.調査に参加した教員6人のうち,「非常に邪魔」と感じた教員は1人,「やや邪魔」と感じた教員は2人,「どちらでもない」感じた教員は1人,「邪魔ではない」と感じた教員は1人,「全く邪魔ではない」と感じた教員は1人であった.調査対象となった教員はごく少数であったため,この数字は大きくはないかもしれないが,必要な高レベルの換気率における空気清浄機から発生する騒音については十分に考慮する必要があると思われる.

Figure 9: Results of the survey among students (left, n=26) and teachers (right, n=6) on disturbances by the noise levels produced by the purifiers when running four purifiers at stage 3 (total volume flow 1026 m3 /h, air exchange rate 5.5 h-1).

Cold drafts(冷たいすきま風):

冷たいすきま風や強調された空気循環によって不快に感じた生徒や教師はいなかった.しかし実験は外気温が2229℃と比較的高い時期に実施されたことに注意が必要である.空気清浄機はろ過された空気を直接情報へ吹き出すため,空気清浄機の近くに座っている人も,通常は強い風の影響は受けない.

Cleaning and maintenance:

空気清浄機を長期間稼働する場合(例えば,冬期の数ヶ月間,毎日数時間の稼働)には,適切で定期的な清掃とメンテナンスが必要である.ある教室での1週間の運転終了時にフィルターを目視検査したところ,プレフィルターと活性炭フィルターにはすでにかなりの量の粗塵が凝集していることが判明した(Figure 10肉眼で検査しても,HEPAフィルターには堆積物は見られなかった.市販の空気清浄機の多くは,フィルターの清掃や交換が必要な場合に警告信号を発する.とはいえ,フィルターの掃除や交換は訓練を受けた人が行うべきであり,フィルターに付着したエアロゾルにはまだ感染性のあるエアロゾルが含まれている可能性があるため,安全に注意する必要があるフィルターは教室内で交換し,別の場所で清掃することが望ましいと思われるHEPAフィルターが粗塵(10μm以上)から保護されていれば,HEPAフィルターは何ヶ月も使用することができるここでテストした市販の空気清浄機には,10 µmを超える粗塵を完全に保持するための適切なプレフィルターが含まれていなかったことに注意する必要がある理想的には,フィルタークラスF7F92つの追加のプレフィルターステージが適切な清浄システムに含まれているべきである

Figure 10: Pre-filter (left), active charcoal filter (middle) after one week of operation in the classroom. Coarse dust, hairs and fluff can be discerned. No deposits of particles could be discerned by eye on the HEPA-Filter (right). Sections that appear darker are due to the illumination.

 

Co-Benefits:

我々の結果が示すように,教室で空気清浄機を継続的に稼働することで,粒子状物質(PM2.5PM10)の量を大幅に減らすことができるWHOは,PM2.5への平均曝露レベルを10µg/m3以下にすることを推奨しているこれは曝露レベルが高くなると,虚血性心疾患,慢性閉塞性肺疾患,肺癌,脳卒中につながる脳血管疾患,その他の様々な疾患のリスクが高まるからである.高レベルのPM2.5への長期曝露は,寿命を大幅に減少させ,そのような高レベルのPMは,世界の多くの地域で主要な健康リスク要因の一つである(Lelieveld, 2019).したがって,生徒や教師が曝露される平均的なPM2.5レベルは10 µg/m3以下に抑える必要がある.空気清浄機を設置することは,PM2.5 への平均曝露量を減らすのに大いに役立つであろう.同様に,様々な空気中アレルゲンへの曝露レベルも低減されるであろう.

Conclusions

空気清浄機は,教室内のエアロゾル量を迅速,効率的,かつ均一な方法で低減することができる窓やドアを長時間閉めた状態では,ウイルスRNAを含む粒子の吸入量が大幅に減少し,エアロゾル感染リスクが低下する閉鎖された教室”非常に感染力が強い”人と一緒に2時間滞在した場合,空気交換率5.7h-1の空気清浄機を使用すると,空気伝播を介した(via airborne transmission)吸入量は6分の1に減少すると推定した空気清浄機にはHEPAフィルター(H13またはH14を装備する必要があるまた空気交換率は410h-1の高い空気交換率を適用することが望ましい高い空気交換率と空間全体の均一な混合を実現するためには,小型の空気清浄機を複数台設置することが有効である空気清浄機には,HEPAフィルターに加えて,粗塵を効率よく除去するためのプレフィルターを装備する必要があり,プレフィルターは定期的に清掃または交換する必要がある.また,学校の教室に適用する場合には,空気清浄機の稼働による騒音レベルを考慮する必要がある.大きな換気率が望ましいが,現在進行中の授業に支障をきたさないように,騒音レベルを十分に低くする必要がある.まとめると,教室での移動式空気清浄機の稼働は技術的に可能であると思われる.SARS-CoV-2のエアロゾル感染リスクを低減するためには,空気清浄機は,特に固定換気システムが設置されていない場合や窓を開けることができない場合には,重要な予防対策である.導入および維持費は,感染およびCovid-19症例の減少,接触者追跡の必要性の減少,および学校閉鎖による大規模な混乱の回避という実質的な利点と比較する必要がある.しかし,空気清浄機は,フェイスマスクの着用,衛生対策,ソーシャルディスタンスなど,感染を減らすための他の対策に取って代わるものではある.空気清浄機は,効率的な追加対策として考慮されるべきである.空気清浄機を標準的に使用することで,平均的な粒子状物質(PM)のレベルが大幅に減少し,長期的な健康効果が得られるという重要な副次的なメリットがある.人が密集している空間では,CO2混合比を下げるために頻繁に換気を行う必要がある.CO2モニターを使用して,CO2の上限値を超えないようにし,換気対策が室内のCO2レベルを下げるのに十分なものであることを確認する必要がある.我々の研究は学校の教室に焦点を当てていますが,これらの結果は,原則として,会議室,レストラン,バー,シェアオフィス,待合室などのように,一人以上の人が占有する閉鎖空間の同様の状況にも適用できる.

 

References

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※補足:

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