COVID-19関連追加(20201021-2

 

COVID-19入院患者はインフルエンザ入院患者より合併症と死亡リスクが高い】

Cates J, Lucero-Obusan C, Dahl RM, et al. Risk for In-Hospital Complications Associated with COVID-19 and Influenza — Veterans Health Administration, United States, October 1, 2018–May 31, 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub: 20 October 2020. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6942e3.

COVID-19の原因となるウイルスであるSARS-CoV-2への感染が複数の臓器系に影響を及ぼす可能性があることを示す証拠が増加しているが,これは主として呼吸器系の疾患である1)COVID-19のすべての院内合併症と,インフルエンザなどの他のウイルス性呼吸器病原体に関連する合併症と比較したデータは不足している.COVID-19およびインフルエンザの合併症を評価するために,米国最大の統合医療システムである国立退役軍人健康管理局(VHA:the national Veterans Health Administration *の電子カルテ(EHRs: electronic health records)から,COVID-19入院患者3,948人(202031日〜531日)およびインフルエンザ入院患者5,453人(2018101日〜202021日)を抽出して分析したInternational Classification of Diseases, Tenth Revision, Clinical ModificationICD-10-CM)コードを用いて,COVID-19確定患者の合併症をインフルエンザ患者の合併症と比較した.リスク比を計算し,年齢,性別,人種/民族,基礎疾患で調整した.COVID-19患者はインフルエンザ患者に比べて急性呼吸窮迫症候群(ARDSのリスクがおおよそ19(調整後リスク比[aRR]= 18.60; 95% 信頼区間[CI]=12.40-28.00)であった.そして心筋炎(2.56; 1.17-5.59),深部静脈血栓症(2.81; 2.04-3.87),肺塞栓症(2.10; 1.53-2.89),頭蓋内出血(2.85; 1.35-6.03),急性肝炎・肝不全(3.13; 1.92-5.10),菌血症(2.46; 1.91-3.18),褥瘡(pressure ulcers)(2.65; 2.14-3.27)のリスクは2倍以上であった.喘息の増悪リスク(0.27; 0.16-0.44)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪リスク(0.37; 0.32-0.42)は,COVID-19患者ではインフルエンザ患者よりも低かった.入院中に死亡したCOVID-19患者(21.0%)はインフルエンザ患者(3.8%)の5倍以上であり,入院期間はCOVID-19患者の方が3倍近く長かったCOVID-19患者においては,非ヒスパニック系黒人またはアフリカ系アメリカ人(黒人Black他人種,そしてヒスパニック系またはラテン系(ヒスパニックHispanicの患者では,年齢や基礎疾患を調整した後でも,非ヒスパニック系白人(白人White)の患者に比べて,呼吸器,神経,腎臓合併症,そして敗血症のリスクが高かった.これらの所見は,COVID-19に関連するほとんどの合併症のリスクがインフルエンザに比べて高いことを強調しており,臨床家や研究者がCOVID-19の症状を認識し,モニタリングし,管理する上で有用であろう.人種および少数民族の患者において特定の合併症リスクが高いということは,特定の人種および少数民族がCOVID-19の影響を不均衡に受けており,この格差が年齢や基礎疾患だけで説明できないことをさらに示す証拠となっている.

Main

COVID-19患者はインフルエンザ患者よりもわずかに高齢であった(median= 70, IQR= 61-77 vs 69, IQR= 61-75)(p= 0.001))が,インフルエンザ患者の方がCOVID-19患者よりもほとんどの基礎疾患の有病率が高かった(Table 1COVID-19患者に占める黒人患者の割合は48.3%,インフルエンザ患者に占める割合は24.7%であった; ヒスパニック系患者の割合は両群で同程度であったICUに入院したCOVID-19患者(36.5%はインフルエンザ患者(17.6%)の2倍以上であった; 入院中に死亡したCOVID-19患者(21.0%はインフルエンザ患者(3.8%)の5倍以上; そして,入院期間はインフルエンザ患者(median= 3.0; IQR= 1.8-6.5)よりもCOVID-19患者(8.6; IQR= 3.9-18.6)の方が3倍近く長かった(いずれもp< 0.001

COVID-19患者のうち,呼吸器合併症は76.8%に認められた; 肺炎(70.1%),呼吸不全(46.5%),ARDS9.3%)であった呼吸器以外の合併症は,腎臓(39.6%),心血管(13.1%),血液(6.2%),神経(4.1%),細菌性敗血症(24.9%)および菌血症(4.7%)の頻度が高く,COVID-19患者の24.1%3つ以上の臓器系に関与する合併症を有していたCOVID-19患者では,年齢や基礎疾患を調整した後でも,呼吸器,神経,腎臓の合併症を含む9つの合併症が,人種/民族的マイノリティ(minority)の患者でより多くみられたTable 2

インフルエンザ患者と比較して,COVID-19患者では,肺炎のリスクが2呼吸不全のリスクが1.7ARDSのリスクが19気胸のリスクが3.5であった.また心原性ショック,心筋炎,深部静脈血栓症,肺塞栓症,DIC,脳梗塞といった虚血性脳疾患,頭蓋内出血,急性腎不全,人工透析導入,急性肝炎・肝不全,敗血症,菌血症,褥瘡のリスクが統計学的に有意に増加した(FigureCOVID-19患者では,5つの合併症(喘息の増悪,COPDの増悪,急性心筋梗塞(MI)または不安定狭心症,急性うっ血性心不全(CHF),高血圧緊急症)のリスクが低かったが,急性心筋梗塞または不安定狭心症,急性うっ血性心不全,高血圧緊急症は,同じ季節の月に診断された患者に限定した場合,統計学的に有意ではなかった.

Discussion

VHAにおける入院患者の大規模な全国コホートから得られた知見は,COVID-19患者は,インフルエンザ患者と比較して,多臓器合併症のリスクが増加しておりCOVID-19に関連する合併症における人種/民族間の不均衡・格差(disparity)があることを示しているインフルエンザ患者と比較して,COVID-19患者は院内死亡リスクが5倍以上高くICU入院リスクと入院期間が約2,急性呼吸器,心血管,血液,神経,腎臓,その他17の合併症のリスクが高かったCOVID-19患者における合併症の割合に人種/民族的な不均衡が認められたのは,呼吸器,神経,腎臓合併症,および敗血症であった

人種/民族的マイノリティグループ(minority)は,COVID-19有病率が高く,それに伴う入院,および重篤な院内転帰リスクが高いことがますます認識されてきている4)5).過去のVHAデータの解析では,人種/民族によるCOVID-19死亡率に差は見られなかったが4),今回の解析では,黒人,ヒスパニック,およびその他の人種の患者では,白人患者よりも敗血症,呼吸器,神経,および腎合併症のリスクが高かった.人種/民族における急性合併症の不均衡・格差は,基礎疾患や年齢の違いだけで説明できるものではなく,社会的,環境的,経済的,構造的不公平(inequity)の影響を受けている可能性がある.

呼吸器合併症のリスクは高くSARS-CoV-2およびインフルエンザの病態に関する現在の知見と一致していた1)6)注目すべきことに,COVID-19患者はインフルエンザ患者と比較して,肺炎のリスクが2呼吸不全のリスクが1.7ARDSのリスクが19気胸のリスクが3.5であり,COVID-19関連呼吸器合併症がインフルエンザと比較して重症であることが明らかになった逆に,喘息増悪およびCOPD増悪のリスクは,COVID-19患者ではインフルエンザ患者よりも約3倍低かった

また,敗血症や腎・心血管合併症のリスクなど,呼吸器系以外の特定の急性合併症リスクも高かった.COVID-19患者は,透析を必要とする急性腎不全のリスクがインフルエンザ患者よりも高かったが,これはインフルエンザ関連2)およびCOVID-19関連7)の急性腎不全に関する過去の証拠と一致していた.COVID-19患者における敗血症の頻発とリスクの増加は,これらの患者における免疫反応の異常の報告と一致している8).心血管合併症の分布は,インフルエンザ患者とCOVID-19患者では異なっていた; COVID-19患者では急性心筋梗塞,不安定狭心症,急性うっ血性心不全のリスクは低いが,急性心筋炎と心原性ショックのリスクは高かった.同じ月にCOVID-19またはインフルエンザと診断された患者間では,急性心筋梗塞,不安定狭心症、およびうっ血性心不全の発生に有意差は認められなかった.これは心血管疾患の季節変動による交絡の可能性が示唆された

その他の合併症としては,一般的ではないが(10%未満),重篤な合併症としては,血液合併症神経合併症菌血症褥瘡などがあった.インフルエンザのような他のウイルスは,炎症性サイトカインや血栓形成を引き起こす可能性があるが6),本研究の結果は,COVID-19に関連した血栓塞栓症イベントの過去の報告と一致しており,血液合併症は,COVID-19の合併症としてより多く認められることを示唆している1)9).ニューヨーク市の研究では,COVID-19患者ではインフルエンザ患者よりも脳卒中のオッズが7.6倍高かったと報告されており10),これは虚血性脳疾患/脳梗塞のリスクが2倍に増加するという現在の知見と一致している.COVID-19患者は,入院期間の長期化,腹臥位,またはその両方に関連した褥瘡リスクが高い可能性がある.

Limitation:

@管理コードは状態を捉える感度と特異性に限界があり,慢性/急性を誤分類している可能性がある.極度の肥満はICD-10-CMコードのみに基づいて定義されており,BMIではないため,誤分類および交絡が生じる可能性がある.A典型的な呼吸器症状の少ない患者の合併症を過小評価した可能性がある.B人種差の分析は,非ヒスパニックその他の人種グループ内のサンプル数が少ないために制限されている.C本解析期間中に優位に循環していたインフルエンザの型/亜型(2018年〜2019年のA H3N2および2019年〜2020年のA H1N1およびB)による多様性と重症度によって,結果の一般化が制限されている可能性がある.Dこれらの転帰に影響を及ぼす可能性のあるCOVID-19またはインフルエンザのワクチン接種または治療法は検討しなかった.Eこの解析では地域や施設の規模や種類を調整しなかった.

Conclusions

成人COVID-19入院患者は,インフルエンザ入院患者よりも呼吸器/非呼吸器合併症,および死亡リスクが高かった敗血症,呼吸器,神経,腎臓合併症を認めた人種/民族による不均衡/格差は,年齢や基礎疾患を調整した後であっても,人種/民族的マイノリティグループがCOVID-19の影響を不均衡に受けていることのさらなる証拠となった.医師はCOVID-19入院患者における様々な合併症の症状や徴候に注意を払うべきであり,そのために介入を行うことで転帰を改善し,長期的な障害を軽減することができる.

 

 

 

 

Figure: Adjusted relative risk* for selected acute respiratory and nonrespiratory complications in hospitalized patients with COVID-19 (March 1– May 31, 2020), compared with historically hospitalized patients with influenza (October 1, 2018–February 1, 2020) — Veterans Health Administration, United States†,§,¶

The figure is a forest plot showing the adjusted relative risk for selected acute respiratory and nonrespiratory complications in hospitalized patients with COVID-19 (March 1–May 31, 2020), compared with historically hospitalized patients with influenza (October 1, 2018–February 1, 2020) among U.S. patients in the Veterans Health Administration system.

 

 

References

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4) Rentsch CT, Kidwai-Khan F, Tate JP, et al. Patterns of COVID-19 testing and mortality by race and ethnicity among United States veterans: a nationwide cohort study. PLoS Med 2020;17:e1003379.5)

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8) Li H, Liu L, Zhang D, et al. SARS-CoV-2 and viral sepsis: observations and hypotheses. Lancet 2020;395:1517–20.

9) Connors JM, Levy JH. COVID-19 and its implications for thrombosis and anticoagulation. Blood 2020;135:2033–40.

10) Merkler AE, Parikh NS, Mir S, et al. Risk of ischemic stroke in patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19) vs patients with influenza. JAMA Neurol 2020. Epub July 2, 2020.