COVID-19関連追加(20201114-2

 

【隔離中の海軍新兵のSARS-CoV-2感染伝播について】

Letizia, AG, et al. SARS-CoV-2 Transmission among Marine Recruits during Quarantine. N Engl J Med. Nov 11, 2020. doi: 10.1056/NEJMoa2029717.

Introduction

SARS-CoV-2感染伝播を減らすための戦略(特に若年成人の集団環境)においては前向き研究が有用であると考えられる.米国国防総省の施設では,推奨される公衆衛生上の介入を実施している.しかし,閉鎖された生活空間,訓練など活動中の人同士の濃厚接触,共有食堂施設,米国内の様々な人の交流のため,Covid-19などの伝染性呼吸器感染症の罹患リスクは軍人集団では高い.軍事環境におけるSARS-CoV-2感染伝播・Covid-19については,よく研究されていない.

米国海兵隊がすべての新兵に対して実施している公衆衛生プログラムには,新兵における感染を軽減する目的で,自宅での隔離の後,閉鎖されたキャンパスにおける厳重な監視下で2週間にわたる隔離が含まれている.これらの対策の有効性を評価するために,我々はSARS-CoV-2感染を連続リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイで観察し,そして感染した参加者から得られたウイルスゲノムの系統解析によってウイルス感染伝播イベントを評価した.

Methods

SARS-C0V-2感染の調査対象となった米国海兵隊の新兵は,自宅で2週間隔離した後大学の閉鎖されたキャンパスで厳重な監視下のもと,2週間にわたって隔離された(マスクの着用,ソーシャルディスタンス,毎日の検温と症状の観察)この研究のボランティアは,到着時から管理隔離の2 日目までの間,および7日目14日目に得られた鼻スワブのSARS-CoV-2定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイが施行されたボランティアで参加しなかった新兵は,隔離期間終了時である14日目にのみqPCR検査を受けた.クラスターを同定し,感染の疫学的特徴を評価するために,感染したボランティアから得られたウイルスゲノムの系統解析を行った.

Results

STUDY POPULATION:

2020512日〜715日において,9つの新兵クラスにまたがる適合者3143人のうち,合計1848人(58.8%CHARM試験に登録された; 新兵324人は17歳であったため不適合であった.合計40人の参加者(7日目に24人,14日目に16人)が戻らなかったため追跡できなかった(Figure 1).これらの参加者は,研究から脱落したか,医学的または管理上の理由で隔離キャンパスから退出したか,あるいは海兵隊から転出したかのいずれかであった.参加者は45州,そのほとんどが米国東部の州で,特に人口の多い州の出身であった.参加者のうち,合計133人(7.2%)が米国外生まれ(64ヶ国のうち1ヶ国),男性1672人(90.5%),女性176人(9.5%),ヒスパニック系463人(25.1%),黒人271人(14.7%)であった.参加者の平均年齢は19歳(範囲, 1831歳)で,1544人(83.5%)が1820歳であった登録時に血清検査を受けた参加者1813人のうち,105人(5.8%)が血清SARS-CoV-2特異的抗体陽性であった

Figure 1: Study Design for SARS-CoV-2 Testing during Quarantine.

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登録時,qPCR検査を受けた1847人のうち16人(0.9%SARS-CoV-2陽性であった; これらの参加者のうち5人は血清IgG陽性であった(Table 1qPCR陽性であった16人は,到着前に14日間自宅で自己隔離を行ったことflu様症状のある人と接触したことがないこと呼吸窮迫あるいは既知のSARS-CoV-2感染がないこと過去2週間に医療機関を訪れていないこと,が報告された

 

Table 1: SARS-CoV-2 Positivity, Presence of Symptoms, and Infected Roommates.

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POSITIVE RESULTS AND SYMPTOMS:

登録時にqPCR検査が陰性であった参加者1801人のうち,24人(1.3%)が7日目で陽性となったこれらの参加者のうち、4人が0日目で血清IgGが陽性であった.14 日目には,以前に陰性であった参加者1760 人のうち11人(0.6%)が陽性となった; これらの参加者のうち,0日目に血清IgGが陽性であった者はいなかった.したがって,キャンパス到着後2日以内のqPCRが陰性であった35が,監視下隔離中に陽性となった少なくとも1回のqPCR検査が陽性であった参加者51のうち,22人が1日以上の検査で陽性であった

これら陽性者51人のうち5人(9.8%)が有症状であり(ほとんどは無症状,最初のqPCR陽性結果が出る前の週,あるいはその日の症状が,正式な研究アンケートにおいて報告されていた(Table 1).この5人の症状は,鼻水; 鼻水,悪寒,咳嗽; 咳嗽,咽頭痛; 発熱,頭痛; 発熱,悪寒,咽頭痛,頭痛,であった.診断時のウイルス量は,qPCR Ctに基づいて推定され,有症状である5は,無症状の参加者46と比較して,平均して約4倍高かったTable S2しかし,無症状の参加者の中には,Ct値に基づいて推定されたウイルス量が高かった者もいた(Figure S1

海兵隊が義務づけた隔離終了時のqPCR検査の結果,非参加者1554人のうち26人(1.7%が,14日目に陽性と判明した感染した参加者と非参加者の合計77のうち24人(31.2%感染した同居者が存在したTable 1.すべての研究参加者と非参加者は,検温と症状の口頭報告を含む毎日のスクリーニングを受けた; サーベイランスチェックで指摘された場合はフォローアップのqPCR検査が実施された.

症状に関する質問票とは独立した症状スクリーニングの結果は,研究責任医師には知らされていなかった; しかし,この臨床的に指示された検査で確認されたSARS-CoV-2感染者はいなかった.研究期間中に,感染した新兵に関連した接触追跡の一環として実施された検査で,教官1人が陽性となった

EPIDEMIOLOGIC ANALYSIS:

本研究におけるSARS-CoV-2の疫学的特徴と感染伝播を評価するために,SARS-CoV-2 qPCR陽性であった51人のうち32人(62.7%)から得られた36サンプルから95%以上の完全ウイルスゲノムを得た; このうち3人については,2回以上の検査日に得られたサンプルからゲノムが回収された.他のサンプルからは完全ゲノムは回収できなかった.回収されたゲノム配列を米国および他国の患者から回収されたゲノム配列(11,434配列)と比較して系統解析を行ったところ,米国で循環しているほとんどのcladeが参加者から検出されたSARS-CoV-2分離株に含まれており,参加者の地理的多様性と一致していたFigure S2

米国および世界のデータセットから採取されたサンプルデータと関連した変異によって定義された独立した単系統感染クラスターが6つ同定された; この結果は,監視下隔離中の局所的な感染伝播と一致した.これらのウイルス株は18人の参加者で検出された; 1人は,異なる日に採取されたサンプルから2つの異なるクラスター株が分離されていた.0日目にqPCR陽性であった参加者2人は,それぞれ異なるクラスター株に感染していた(Table S3, S4).感染した同居者とクラスター株の関係は,監視下隔離された場所において,これらのクラスター株が感染伝播したことを示す系統的証拠を支持している.6つのSARS-CoV-2クラスター株のうちの1つに感染した参加者のうち,合計14人の参加者が,同じクラスターに属する他のメンバーと同じ小隊であったさらに,SARS-CoV-2分離株のゲノム解析のない10人の感染者は,ウイルスゲノム解析によって定義された感染クラスターの参加者と同じ小隊に割り当てられていた6組の感染同居者において,3つの異なるクラスターが存在した(Table 2

 

 

Table 2: Phylogenetic Analysis and Epidemiologically Inferred Transmission Clusters.

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系統的に同定されたクラスター2またはクラスター5に属する分離株の配列を持つ感染した参加者は,同じ廊下に部屋を割り当てられていた(Figure 2

クラスター2は小隊Fの新兵で構成されていた.同居者が小隊Eの感染者であった小隊Fの新兵1人を除き,クラスター5は小隊Eの新兵で構成されていた.

この1つのイベントを除いて,各小隊の新兵が同じ廊下の部屋に滞在し,バスルームを共有していたにもかかわらず,これらの小隊を通して感染伝播イベントの証拠は見つからなかった

 

 

Figure 2: Local Transmission of SARS-CoV-2 during Quarantine.

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2つの最大の感染クラスター(クラスター2, 5)に関連していた参加者がゲノム解析によって同定され,この参加者は同居者あるいは同じ小隊のメンバーであったことから,二人部屋および小隊の共有が感染伝播に非常に寄与していることがわかった.これらの小隊の他の感染者(ゲノム解析されていない)は,同じクラスター株に感染していたかもしれない.各小隊の新兵1人が隔離開始時に感染していたことが判明しており,各クラスター株の感染源となった可能性がある.

 

Discussion

我々は,Covid-19の公衆衛生緩和プログラムに参加した9つの海兵隊の新兵クラス(新兵3402人)の隔離した結果について述べた.参加者登録時には,2週間の自宅隔離の後,参加者の約1%qPCR陽性でありその後2週間の監視下隔離気管中に約2%が 引き続き感染した

感染した研究参加者の約10%が,qPCR 陽性結果が出る前の週または検査施行日に有症状と報告した監督下隔離期間中,症状スクリーニングの結果,実施されたqPCR検査では,SARS-CoV-2感染は確認されなかった.新兵におけるすべての感染例は,参加者は,0日目,7日目,および14日目,そして非参加者は14日目に実施されたqPCR検査で診断された.

感染した研究参加者のほぼ3分の2からウイルスゲノムが回収された.これらのゲノムの系統解析により,6つの独立した単系統の感染クラスターが確認され,監視下隔離期間中の局所的な感染伝播が示唆されたほとんどのクラスターには,主に同じ小隊のメンバーが含まれており,感染した新兵の多くには感染した同居者がいた.しかし,1人の新兵は別の小隊の感染者と同室であったため,その小隊の他の新兵と同じクラスターに属するウイルス株に感染していた.両クラスターの感染者の多くは,近接した部屋に居住し,バスルームを共有していたが,疫学的分析から,これらは感染の危険因子ではなかった結果として,相部屋小隊の共有が感染の危険因子であることが示唆された(Figure 2

各クラスター株の指標患者は,研究参加者,隔離終了時の検査で感染が確認された26人のうち非参加者,キャンパス到着時に感染していたが隔離終了時までにウイルスをクリアランスした非参加者,またはその他の職員であった可能性がある.研究期間中,SARS-CoV-2迅速qPCR検査で陽性となった教官は1人のみであり,教官が感染源である可能性は低いと考えられる.キャンパスサービス従業員(campus service workers)を感染導入源として除外することはできないが,彼らは新兵と教官からは分けられていた.全体的にみると,新兵がクラスター株の導入および感染源として最も可能性が高いと考えられる

0日目にqPCR陽性であった2人の新兵は,その小隊のメンバーにおいて広がった2つの最大のクラスターに関与したウイルス株の指標患者であった可能性がある.クラスターの指標患者であったかもしれない3人目の新兵は,0日目にqPCR陽性であり,同居者で同じ株に感染していた者は14日目に診断された.指標患者の可能性がある3人はいずれも無症状と報告されており,これは無症状性感染伝播と一致した.研究参加者全員から完全なウイルスゲノムを回収できず,また感染した非参加者からのサンプルが解析に利用できなかったため,各クラスターの感染連鎖を再構築できなかった.

qPCR検査が偽陰性であった可能性,また最初の自宅隔離やキャンパスへの移動中に感染したため,0日目にはqPCR検査で検出できなかった可能性から,監視下隔離期間中の感染率を正確に推定できなかったことがこの研究の限界である.

Conclusions

この研究では,主に若い男性軍人の新兵グループにおいて,2週間の厳重な隔離期間中2%qPCR検査でSARS-CoV-2陽性となった複数の独立したウイルス株の感染クラスターが確認された.相部屋および小隊員の共有は感染伝播の危険因子であったqPCR陽性であった参加者のほとんどは無症状であり,参加者および非参加者におけるすべての症例は,日常的な症状スクリーニングの結果として行われた臨床的なqPCR検査ではなく,むしろ”予定された”qPCR検査で同定された

Supplementary Appendix(PDF 0.9MB)