COVID-19関連追加(20201114日)

※本邦では,フルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス®)は1150mgを超えない.

【有症状COVID-19外来患者におけるフルボキサミンの

二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験】

Lenze EJ, et al. Fluvoxamine vs Placebo and Clinical Deterioration in Outpatients With Symptomatic COVID-19. Nov 12, 2020. JAMA. Published online November 12, 2020. http://doi.org/10.1001/jama.2020.22760.

Importance

COVID-19は,免疫反応が過剰になることで重症化する可能性がある.フルボキサミンは,サイトカイン産生を調節するσ-1受容体を刺激することで,臨床症状の悪化を防ぐかもしれない.

Objective

COVID-19の軽症時期にフルボキサミンを投与することによって,臨床的な悪化を防ぎ,疾患重症度を低下させるかどうかを検討する.

Methods

フルボキサミンのプラセボ対照二重盲検無作為化完全遠隔(非接触)臨床試験.参加者は,SARS-CoV-2感染が確認され,COVID-19症状発症7日以内であり,酸素飽和度が92%以上である地域居住の非入院成人患者である.セントルイス都市圏(ミズーリ州とイリノイ州)から,2020410日〜85日において152が登録された.追跡調査の最終日は2020919日であった.除外基準は,入院症例,または無作為化時点で室内気における酸素飽和度が92%未満であった.その他の除外基準は,重度の基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患または在宅酸素を必要とする肺疾患,間質性肺疾患,肺高血圧),非代償性肝硬変,うっ血性心不全(NYHAIIIまたはIV),免疫不全(固形臓器移植のレシピエントまたはドナー,骨髄移植のレシピエント,AIDS,免疫抑制剤または高用量コルチコステロイド(プレドニゾン20mg/日以上)の服用)であった.

参加者はフルボキサミン50mg(またはそれに相当するプラセボ)を夕方に投与され,その後2日間は100mg12回忍容量として投与され,その後15日目までは100mg13回忍容量として投与された後,投与を中止した.この用量範囲は,フルボキサミンのS1Rに対する結合親和性に基づいて決定された17)フルボキサミンまたはプラセボの15日間の投与終了後,参加者はフルボキサミンの6日間のオープンラベルコースを受けるオプションが与えられた.このオプションのオープンラベル試験は,当初のプロトコールから変更されたものである.

主要評価項目は,@呼吸困難(息切れ)の存在または息切れや肺炎による入院,A室内気での酸素飽和度の低下(92%未満),または酸素飽和度を92%以上に維持するために補助酸素が必要,の両方で定義した臨床的悪化とした.主要評価項目は,参加者との電話での話し合いおよび医療記録の検討によって確認された.

副次評価項目については,臨床的悪化を7点スケールで評価した: 0, なし; 1, 息切れと酸素飽和度92%未満だが補助酸素は必要ない; 2, 息切れと酸素飽和度92%未満に加えて補助酸素が必要; 3, 補助酸素投与でも酸素飽和度92%未満に加えて補助酸素が必要であり呼吸困難または低酸素症に関連した入院; 4, 補助酸素投与でも酸素飽和度が92%未満であり呼吸困難または低酸素症に関連した入院,そして人工呼吸器のサポートを必要とする日数が3日未満の場合; 5, 補助酸素投与でも酸素飽和度が92%未満であり呼吸困難または低酸素症に関連した入院,そして人工呼吸器のサポートを必要とする日数が3日以上の場合; 6, 死亡.補助酸素,入院、人工呼吸器のサポートを必要とした日数も評価した.

試験プロトコールで事前に指定された副次評価項目は,各患者の最も重篤なベースライン症状を11点スケールの連続尺度(0, 症状がない; 10, 症状が非常に重篤)で評価した試験期間中の15日間の症状の重症度であった事後解析として,自己申告された不安レベルを調べ,不安が息切れに関連している可能性があるため,同じ11点スケールで測定した.臨床的悪化は,COVID-19試験の世界保健機関(WHO)の序数尺度を用いてランク付けした18)

主要評価項目と副次評価項目は,無作為化後15日間,12回のアンケート調査において参加者の自己申告による回答を用いて測定した15日目以前に調査への回答を中止した参加者,または主要評価項目を満たしていた参加者については,医療記録とその後の参加者への電話連絡を用いて,主要評価項目を満たしていたかどうかを判定した.主要評価項目を満たしていた参加者については、病院の記録を用いて、特定の医療行為(例えば、補助酸素の使用、入院期間、人工呼吸器のサポート)を確認した。有害事象および重篤な有害事象は、無作為化後15日間、参加者の自己申告により毎日記録された。

15日間の試験終了後30日目に,「30日前の最後の調査以降,病院や救急外来を受診しましたか」というフォローアップ調査を行った.これは,電話,電子メール,または医療記録によって確認した.

Figure 1: Enrollment and Patient Flow.

Results

Patient Characteristics:

参加者の人口統計学的および臨床的特徴は非常に一致していた(Table 1.参加者152人のうち38人(25%)が黒人成人で,平均年齢は46歳(SD, 13歳)であった.COVID-19の最も重篤な症状は様々であり,疲労(23%)と嗅覚障害(29%)が最も一般的であった.ベースラインの酸素飽和度は両群において差はなかった(中央値はフルボキサミンが97%IQR, 96%-98%; プラセボが97%IQR, 96%-98%]であった.

 

 

Table 1: Baseline Characteristics.

 

Efficacy of Fluvoxamine vs Placebo:

臨床的悪化は,フルボキサミン群では80人中0プラセボ群では72人中6人(8.3%に認められた(生存時間解析による絶対差, 8.7%95%CI, 1.8%-16.4%, log-rankχ2= 6.8, P= 0.009; Table 2, Figure 2プラセボ群では,臨床的悪化が認められた症例における悪化時期は,無作為化後17日後,COVID-19症状発現後312日後の範囲であった6人中4人がCOVID-19症状で入院し,入院期間は4日〜21日であった患者1人が10日間の機械的人工呼吸を必要としたが(Table 2),死亡した患者はいなかった

フルボキサミン群では,80人中18人が15日目に先立って調査への回答を中止した; 一方プラセボ群は,72人中19人であった.試験15日目の後,30日目までに病院や救急外来で受けたケアについては,フルボキサミン群では80人中1人がケア(頭痛のための入院)を受けていた; 一方プラセボ群では72人中1人がケア(肋軟骨炎のための救急外来受診)を受けていた.

Table 2: Primary, Secondary, and Nonprespecified Outcomes.

 

 

Figure 2: Time to Clinical Deterioration in the Fluvoxamine and Placebo Groups.

 

Adverse Events:

フルボキサミン群では重篤な有害事象が1件,その他の有害事象が11件であったのに対し,プラセボ群では重篤な有害事象が6件,その他の有害事象が12件であった(Table 3肺炎や消化器症状(吐き気や嘔吐など)は,フルボキサミン群と比較してプラセボ群で多く発生した

 

 

Table 3: Adverse Events.

 

Discussion

この暫定的無作為化臨床試験では、フルボキサミン(S1Rアゴニスト)は成人COVID-19外来患者の臨床的増悪の減少と関連していた.フルボキサミン群では,本試験で定義された臨床的増悪の基準を満たした患者はいなかったが,プラセボ群では8.3%の患者がこの評価項目を満たしていた.しかし,試験には限界があるため,これらの所見は有効性の証明というよりは,仮説として解釈する必要がある.

この二重盲検プラセボ対照無作為化臨床試験は,COVID-19パンデミック時の完全遠隔(非接触)試験の実現可能性を実証した.成人COVID-19外来患者は自己隔離されるが,この脆弱な集団のケアに焦点を当てた研究はほとんどない.この研究デザインは,症状発症から初回の投薬までの期間が短い(中央値で4日)こと、効率的な研究治療開始(92%が連絡を受けた当日に初回投薬を受けた),人種と性別の代表的なサンプルが含まれていた.またこの研究には,スタッフの時間が約4500時間,そして参加者1人あたりに30時間必要であった.

もしフルボキサミンがCOVID-19の治療に有効であると判断されるならば,その根本的なメカニズムをさらに明らかにする必要がある.この研究は,フルボキサミンがS1R-IRE1経路に及ぼす影響などの仮設によって支持された.S1R活性化による抗炎症作用(サイトカインの減少)は,コルヒチンやコルチコステロイドなどの他の抗炎症薬がCOVID-19に有効であるという最近の知見と一致するだろう21)22).しかし,最近の研究では,重症COVID-19患者は,細菌性敗血症患者に比べると,サイトカインのレベルが低いことが明らかになっている23).可能性のあるフルボキサミンの有用性に関する代替機序としては,リソソーム特性(lysosomotropic properties)を介した直接的な抗ウイルス効果24)オートファジーにおけるIRE1効果の調節効果25)SSRIによる血小板活性化阻害26)などが挙げられる.

COVID-19外来治療におけるフルボキサミンの可能性のある利点としては,安全性27), 普及性,低コスト,経口投与などが挙げられる.フルボキサミンは他のSSRIと異なり,QT延長を促進しない28)しかし,フルボキサミンには副作用があり,特にチトクロムP450 1A2および2C19の阻害を介して,薬物-薬物相互作用を引き起こす可能性がある29)

Limitation:

@小規模研究であること.A評価項目イベント数が少ないため,結果が脆弱であること.B臨床的悪化は,治療効果というよりも,酸素飽和度比較の反映になっていること.C最も重篤なベースライン症状を経時的に測定する方法によって有効なデータが提供されていない可能性があり,症状改善に対するフルボキサミンの潜在的な効果は不明であること.D試験参加者の20%15日間の試験中に調査への回答を中止したこと.Eフォローアップ期間が短く,症状の持続性や後期の悪化に関してのフルボキサミンの効果を測定していないこと.例えば,COVID-19患者では,軽症または回復症例であっても31),持続しうる心臓障害を発症する可能性がある30)S1Rアゴニストはげっ歯類では心保護作用を示し32),他の組織にも保護作用を示すことから33),将来のCOVID-19治療試験では長期転帰と心肺機能の測定値を検討すべきである.F臨床的悪化を分類するために本研究で作成された7点スケールの順序尺度は検証されていない.

Conclusions

症候性COVID-19成人外来患者を対象としたこの暫定的研究では,フルボキサミンを投与された患者は,プラセボと比較して15日間の臨床的悪化の可能性が低かった.しかし,この研究はサンプル数が少ないことと追跡期間が短い限界があり,臨床的有効性の判定には,より明確な評価項目を設定した大規模な無作為化試験が必要である.

 

 

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