COVID-19関連追加(20201121日)DANMASK-19試験について

 

【デンマークにおける公衆衛生対策としてのマスク着用推奨の有用性についての

無作為化比較試験】

Bundgaard H, et al. Effectiveness of Adding a Mask Recommendation to Other Public Health Measures to Prevent SARS-CoV-2 Infection in Danish Mask Wearers. A Randomized Controlled Trial. Annals of Internal Medicine. Nov 18, 2020.

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https://www.acpjournals.org/na101/home/literatum/publisher/acp/journals/content/aim/0/aim.ahead-of-print/m20-6817/20201117/images/medium/aime202103160-m206817_visual-abstract.png

Background

Methods

Trial Design and Oversight:

DANMASK-19Danish Study to Assess Face Masks for the Protection Against COVID-19 Infection)は,治験責任医師主導の全国規模の非盲検無作為化比較試験ClinicalTrials.gov: NCT04337541)である.試験プロトコールはデンマークデータ保護庁(P-2020-311)に登録され,公表された21).研究者はデンマーク首都圏の独立した地域科学倫理委員会にプロトコールを提示したが,デンマークの法律に基づき倫理承認(H-20023709)を必要としなかった.試験はヘルシンキ宣言の原則に従って行われた.

Participants and Study Period:

調査期間中(43日〜202062日),デンマーク当局はコミュニティでのマスク使用を推奨しておらず,病院外でのマスク着用率は5%未満であった22).推奨された公衆衛生対策としては,SARS-CoV-2感染者の隔離ソーシャルディスタンス(営業を継続した店舗や公共交通機関を含む),会う人数の制限頻繁な手指衛生と消毒病院や介護施設への受診者の制限などが挙げられた23)24)カフェやレストランは、2020518日までの調査期間中は閉店した

対象者は,1日に少なくとも3時間は他者とともに自宅外にいて,日常業務中にマスクを着用していない,そして現在あるいは過去にCOVID-19症状および診断がない18歳以上の地域住民であった.募集は,メディア広告,民間企業や公的機関への連絡によって行われた.ベースラインにおいて,参加者は人口統計学的調査に記入し,研究者が登録データにアクセスすることに同意した.募集は202043日〜424日まで行われた.参加者の半数は412日に,半数は424日に無作為にグループに割り付けられた.

Intervention:

Research Electronic Data CaptureREDCap)ソフトウェアを使用して参加者データを登録した25).参加者は,コンピュータアルゴリズムを用いてマスク群または対照群に1:1で無作為に割り付けられ,デンマークの5つの地域によって層別化された.参加者は電子メールで割り付けの通知を受け,研究パッケージは宅配便で送付された.マスク群の参加者には,1ヶ月間は外出時にマスクを着用するように指示した参加者は,耳ループ付き3層構造の使い捨てサージカルマスク50枚(TYPE II EN 14683 [Abena], ろ過率98%, 中国製)を受け取った.両群の参加者には,受領時と1ヶ月後の抗体検査のための資料と説明書が配布された.また,1ヶ月後およびフォローアップ期間中にCOVID-19の症状を認めた場合はいつでもポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を受けられるよう口腔咽頭/鼻腔スワブサンプルを採取するための資料と説明書を受け取った.症状を認めた場合は,参加者は医療機関を受診するよう強く勧められた.参加者は,オンラインのREDCapシステムに症状と抗体検査の結果を登録した.

抗体検査,口腔咽頭・鼻腔スワブPCR検査,マスクの適切な使用法については,書面による説明書と説明ビデオが用意されており,参加者にはヘルプラインが用意されていた.当時の医療現場におけるWHOの推奨事項に従い,参加者は8時間以上外出した場合はマスクを交換するように指示された.ベースライン時および毎週のフォローアップメールでは,両群の参加者は,デンマーク当局による現在のCOVID-19の推奨事項に従うよう奨励された.

Antibody and Viral PCR Testing:

参加者は,メーカーの推奨事項に従ってポイントオブケアテスト(Lateral Flow test [Zhuhai Livzon Diagnostics]を用いて全血中のSARS-CoV-2 IgM抗体およびIgG抗体の検査を行った26).ランセット針で指先を穿刺した後,血液をキャピラリーチューブに採取し,血液1滴と生理食塩水2滴をテストプレート(IgMIgG)のそれぞれのテストチャンバーに入れた.参加者は,IgMIgGの結果を「1本の線がある」(陰性),「2本の線がある」(陽性),または「わからない,あるいは検査ができなかった」(陰性と対処した)として別々に報告した.参加者は,IgMIgG,またはその両方が陽性であった場合に血清陽性に分類された.製造元の報告によると,感度は90.2%,特異度は99.2%であった.201911月以前の献血者からの651検体とPCRSARS-CoV-2感染が確認された患者155人による内部検証では,感度は82.5%95%CI, 75.3%-88.4%),特異度は99.5%95%CI, 98.7%-99.9%)と推定された26).我々27),他の研究者ら28)は,医療従事者ではなく参加者によるSARS-CoV-2の口腔咽頭/鼻腔スワブサンプリングが臨床的に有用であることを報告している.

Data Collection:

参加者は,抗体検査の結果,特に他者と自宅以外で過ごす時間についての推奨事項の遵守,症状の発現,公立病院で行われたPCR検査に基づくCOVID-19の診断,および既知のCOVID-19曝露に関する情報を収集するために,4つのフォローアップ調査を電子メールで受け取った.

Outcomes:

主要評価項目はSARS-CoV-2感染であり,SARS-CoV-2の口腔咽頭/鼻腔スワブPCR検査陽性,試験期間中のSARS-CoV-2抗体検査陽性(IgMまたはIgG),または病院におけるSARS-CoV-2感染またはCOVID-19の診断と定義された.副次評価項目は,他の呼吸器ウイルス感染のPCR結果が含まれた.

Sample Size Calculations:

サンプル数は,intention-to-treat解析における複合主要転帰の評価に十分な検出力を有すると判断された.当局は,研究期間中のSARS-CoV-2感染の発生率を少なくとも2%と推定した.フェイスマスクを着用することで感染リスクが半減すると仮定すると,参加者4636人からなるサンプルでは,有意水準5%(両側α水準)で80%の検出力が得られると推定された.このコミュニティベースの研究では,フォローアップ調査までに20%の損失が生じることを想定し,少なくとも6000人の参加者を割り当てることを目標とした.

Results

Participants:

合計17258人のデンマーク市民が募集に回答し,6024人がベースライン調査を完了し,適格基準を満たした.最初の参加者(グループ1; n= 2995)は2020412日に無作為に割り付けられ,414日〜16日から2020515日までフォローアップ調査が行われた.残りの参加者(グループ2; n= 3029)は,2020424日に無作為に割り付けられ,52日〜4日から202062日までフォローアップ調査が行われた.合計3030人がフェイスマスク着用推奨群に無作為に割り付けられ,2994人がフェイスマスク非着用群に割り付けられた(Figure; 4862人(80.7%が本試験を終了したTable 1にベースラインの特徴を示したが,両群におけるバランスは良好であった.1日の外出時間中央値4.5時間であった

 

Figure: Study flow diagram.

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Table 1: Characteristics of Participants Completing the Study.

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Adherence:

フォローアップ期間中のマスク群で報告された最も低いアドヒアランスに基づいて,参加者の46%推奨通りにマスクを着用47%がおおむね推奨通り(predominantly as recommended)に着用し7%が推奨通りに着用していなかった

Primary Outcome:

主要評価項目はマスク群42人(1.8%),対照群53人(2.1%)で発生したintention-to-treat解析では,群間の差は−0.3%ポイント(CI, 1.2%-0.4%ポイント, P= 0.38)(オッズ比[OR], 0.82 [CI, 0.54-1.23], P= 0.33)でマスク群に有利であった(Supplement Figure 1.この解析を追跡期間における喪失による欠落データに対する多重入力で繰り返したところ,同様の結果が得られた(OR, 0.81 [CI, 0.53-1.23]; P= 0.32).Table 2に,群間で類似していた主要評価項目の構成要素に関するデータを示す.

Table 2: Distribution of the Components of the Composite Primary Outcome.

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着用を遵守しなかったと報告したマスク群の参加者(7%)を除外した解析では,SARS-CoV-2感染はマスク群40人(1.8%)と対照群53人(2.1%)で発生した(群間差, 0.4%ポイント[CI, 1.2%-0.5%ポイント], P= 0.40)(OR, 0.84CI, 0.55-1.26, P= 0.40).Supplement Figure 2に,主要複合評価項目の事前に指定されたサブグループ解析の結果を示す.統計的に有意な相互作用は確認されなかった.

事前に計画した感度解析では,1ヵ月後に抗体検査が陽性であったが,ベースラインで抗体検査結果を知らせなかった18人は,”ベースライン時に陽性”と判断し,解析から除外した.この解析では,主要評価項目は,フェイスマスク群33人(1.4%)と対照群44人(1.8%)で発生した(群間差,−0.4%ポイント[CI, 1.1%-0.4%ポイント], P= 0.22)(OR, 0.77CI, 0.49-1.22, P= 0.26).

事後解析(事前に計画されたものではない)が3回行われた.最初の解析では,”指示通りに正確に”フェイスマスクを着用したと報告した参加者のみを対象とし,感染(主要評価項目)はフェイスマスク群22人(2.0%)と対照群53人(2.1%)で発生した(群間差, 0.2%ポイント[CI, 1.3%-0.9%ポイント], P= 0.82)(OR, 0.93CI, 0.56-1.54, P= 0.78).ベースライン時に抗体検査結果を知らせなかった参加者を除外して行った2回目の事後解析では,フェイスマスク群33人(1.7%)および対照群44人(2.1%)で感染が発生した(群間差, 0.4%ポイント[CI, 1.4%-0.4%ポイント], P= 0.33)(OR, 0.80CI, 0.51-1.27, P= 0.35).患者特性の集団で調査した3回目の事後解析でも,フェイスマスクの有効性が統計的に有意であるサブグループはみつからなかった(データは示していない).

マスク群52人と対照群39人の計52人が,家庭内におけるCOVID-19の発生を報告した.このうち,フェイスマスク群2人,対照群1人にSARS-CoV-2感染が確認されており,観察されたほとんどの感染源は家庭外にあることが示唆された.報告された症状は,研究期間において群間差は認めなかった.(Supplement Table 3).

Secondary Outcomes:

マスク群では,9人(0.5%)がSARS-CoV-2以外の11種類の呼吸器ウイルスのうち1種類以上に陽性であったのに対し,対照群では11人(0.6%)であった(群間差, 0.1%ポイント[CI, 0.6%-0.4%ポイント], P= 0.87)(OR, 0.84CI, 0.35-2.04, P= 0.71).SARS-CoV-2を含む任意のウイルス陽性は,マスク群9人(0.5%),対照群16人(0.8%)で発生した(群間差, 0.3%ポイント[CI, 0.9%-0.2%ポイント], P= 0.26)(OR, 0.58CI, 0.25-1.31, P= 0.19).

Discussion

マスク着用が普及しておらず,COVID-19に関連する推奨公衆衛生対策にそれが含まれていない環境で実施されたこのコミュニティベースの無作為化比較試験において,特に家庭外でのサージカルマスク着用群では,マスク非着用群と比べて,有意にSARS-CoV-2感染を減少させなかった

このコミュニティベースの研究では,感染率の2%から1%への低下を検出するようデザインされたSARS-CoV-2の発生率には統計的に有意差は認められなかったが,95%CIは,マスク着用者の感染率が46%減少し,23%増加する可能性を示唆している.これらの所見は,他の人がマスクを着用しておらず,ソーシャルディスタンスなど他の公衆衛生上の対策がとられている環境下で,マスク着用がどの程度の防御を寄与できるかについてのエビデンスを提供する.しかし,この試験ではSARS-CoV-2感染発生源の管理におけるマスクの役割を検証していないため,この結果をもって,コミュニティ内でのマスク着用を全員に推奨してもSARS-CoV-2感染の減少には効果がないと結論付けるべきではない.試験期間中,当局は病院以外でのフェイスマスクの使用を推奨しておらず,コミュニティでのマスク着用はまれであった22)すなわち,参加者は,圧倒的に多いマスクを着用していない人から曝露されたことを意味している

観察された感染率は,研究期間中にデンマークで行われた他の大規模研究で報告されたものと同様であった26)30).注目すべきは,観察されたSARS-CoV-2感染の発生率は,感染の50%の減少を検出するために80%以上の検出力を確保するサンプルサイズを計画したときの推定値よりも高かったことである.介入はわずか1ヵ月間であり,デンマーク当局がSARS-CoV-2感染に対する一般的な感染対策として,感染者の隔離,フィジカルディスタンス,手指衛生を推奨している時期に実施された23).カフェやレストランは518日まで閉鎖されていたが,グループ2のフォローアップ調査は 62日まで続けられた.

グループ1は,デンマーク社会がロックダウンされている間にフォローアップ調査が行われた.グループ2のフォローアップ調査中に解除されたが(2020518日),感染率は群間で同程度であったため,評価項目には反映されなかった(Supplement Figure 2).マスク着用者とマスク非着用者の感染率は,感染対策手段の変化やウイルス病原性の変化の影響を受ける可能性が高いが,両群における感染率の差は,市中感染者数が多いか少ないかだけでは影響を受けないと考えられる.

他の呼吸器ウイルスの存在に統計的に有意差は見られなかったが,他のウイルス感染に対するマスクの防御効果について明確な結論を出すには,この研究の検出力は十分ではなかった.同様に,この研究では,サブグループ解析のいずれにも検出力の限界があった.

主要評価項目は,主にSARS-CoV-2抗体によって定義された.感染者のウイルス量が再現性をもって検出されない可能性があること31)32)SARS-CoV-2感染者の約半数が無症状であること33)26)がこれを定義にした理由である.マスクはウイルス播種量を減らし34),マスク着用者を無症状にする可能性が言われてきたが,この仮説には疑問が呈されている35).これらの理由から,我々は口腔咽頭/鼻腔スワブサンプルにおけるSARS-CoV-2 PCR検査にのみ頼らなかった.Methodsで述べたように,内部検証研究では,ポイントオブケアテストの感度は82.5%,特異度は99.5%と推定されている26)

観察されたSARS-CoV-2感染の発生率は,試験デザイン時に推定されたものと同様であった.これらの感染率は,PCRに組み合わせた抗体検査を使った全参加者の徹底したスクリーニングに基づいていた.一方観察された公式の感染率は,その期間中のPCR検査に基づく推定値のみに依存していた.さらに,当局が検査を行ったのは,主に症状のある国民全体のごく一部のみであり,その結果,発生率は低くなっている.このような理由から,ここで報告する感染率は,デンマークの人口における公式のSARS-CoV-2感染率と比較することはできない.自宅以外の場所で少なくとも3時間以上他の人と接触していることが条件となっていることが,この差をさらに大きくしていると考えられる.202046日〜59日においてLivzonのポイントオブケアテストによって評価されたデンマークの献血者におけるSARS-CoV-2血清抗体による有病率は1.9%CI, 0.8%-2.3%)と同様の結果が得られた36).しかし,フォローアップ終了時の検査では,研究期間の最後の部分に感染した感染を捕捉できなかった可能性があるものの,これはマスク群と対照群の両群で言えることであり,全体的に影響を与えるとは考えられなかった.

参加者に提供されたフェイスマスクは,ろ過率98%の高品質のサージカルマスクであった37).報告されたメタアナリシスでは,医療従事者のインフルエンザ予防において,レスピレーター(N95[米国基準]またはFFP2[欧州基準])とサージカルマスクの間に統計的に有意な差はないことが明らかになった38).マスク使用が一般的な環境では,本研究で観察された状況よりもマスク使用へのアドヒアランスが高い可能性がある.マスク群の参加者の中には,他の市民からの有害事象(adverse reactions)を報告した者もいた(14%).アドヒアランスはマスクの防御効果に影響を与える可能性があるが,感度解析では,報告されたアドヒアランス全体で同様の結果が得られた.

SARS-CoV-2 が呼吸器飛沫,エアロゾル,または(それよりも少ない程度だが)fomitesを介してどのように伝播するかは,まだ明確に確立されていない.飛沫は大きく,急速に地上に落下するのに対し,エアロゾルは小さく(5μm以下),蒸発して数時間空気中に留まることがある39)SARS-CoV-2の感染伝播は,複数の経路で起こる可能性がある.SARS-CoV-2拡散の第一の経路,すなわち飛沫を介した拡散には,フェイスマスクが有効であると考えられているが,マスクはエアロゾルを介した拡散に対しては有効ではないと考えられている37)39).したがって,エアロゾルを介したSARS-CoV-2の拡散は,少なくとも部分的には今回の所見を説明することができるだろう.また,目の保護具がなかったことも重要であると考えられ,結膜からの感染経路を阻止するために(フェイスマスクのみではなく)目を覆うフェイスシールドの使用が提唱されている40)41).眼鏡着用者と非着用者の間には統計的に有意な相互作用は認められなかった(Supplement Figure 2).最近の報告では,fomitesを介したSARS-CoV-2の感染伝播は通常ではないことが示されているが42),マスクは行動を変化させ,fomitesを介した感染伝播に影響を与える可能性がある.

今回の知見は,インフルエンザウイルスに対する予防(PPEとしての)のためのフェイスマスクの有効性に関する無作為化比較試験の結果と一致している18).非医療環境におけるマスクの予防効果を示唆する最近のメタアナリシスは、SARS-CoV-2ではなくSARS-CoV-1の感染伝播に焦点を当てた3つの観察研究に基づいており、合計725人の参加者が含まれていた12)725人中138人(19%)が感染しており,SARS-CoV-2よりも感染率が高いようである.さらに,これらの研究は、一般的に周囲の人からの感染を防ぐというよりも,感染者から健康なマスク着用者への感染を防ぐことに焦点を当てている.さらに,マスクを着用していない対照群の参加者は,他の防御手段を見逃していた可能性がある.地域社会でのマスク着用義務化によるSARS-CoV-2感染に対する防御に関する最近の観察研究は,研究デザインや他の公衆衛生の介入によって制限されている14)43)

コミュニティにおけるマスクの着用には,いくつかの課題が存在する.これには,着用方法の誤り,アドヒアランスの低下,マスクの種類や職業に関連したマスクの耐久性の低下,天候などの実用的な側面が含まれる.このような状況下では,1日において複数のマスクを使用する必要があるかもしれません.この研究では,参加者は平均1.7/日,週末は平均1.3/日のマスクを使用していた(Supplement Table 4).フェイスマスクの着用は身体的に不快であるかもしれず,心理的障壁などの有害事象が報告されている44).市民間での ”フェイスマスク取り締まり(Face mask policing) ”はマスク着用を強化するかもしれないが,困難かもしれない.また,WHOが指摘しているように,フェイスマスク着用者は誤った安心感から慎重さを欠く行動に変わる可能性があり17),たしかに我々のフェイスマスク群では不安が少ないように見えた(Supplement Table 4).コストや入手も含めたこれらの課題によって,SARS-CoV-2感染を予防するためのフェイスマスクの有効性を低下させる可能性がある.

コミュニティ全体におけるマスク着用の推奨による可能性のある有益性としては,有症状・無症状者の予防と感染源の管理を複合的に行うこと,危機意識の向上,他人への感染を防ぐためにマスクを着用している人のスティグマ化の可能性を減らすことなどが挙げられる17)SARS-CoV-2に感染した参加者ではマスクも感染源対策の役割を果たしていたかもしれないが,この研究は感染源対策の有効性を判断するためにデザインされたものではなかった.

最も重要なlimitationは,感染の46%減少〜23%増加にClsが一致しており,所見が決定的ではないことである.その他のlimitationとしては,以下のようなものがある.参加者は一般集団よりも慎重で衛生面を重視していた可能性があるが,観察された感染率はデンマークの他の研究の所見と同様であった26)30).フォローアップ期間の損失率は19%であったが,欠落データを考慮した多重入力の結果は主要な結果と同様であった.さらに,我々は参加者が在宅でおこなった抗体検査報告所見に頼っており,介入に対する盲検化は不可能であった.最後に,ランダム化比較試験は効果に関する高レベルのエビデンスを提供するが,外部妥当性が低下しやすい.

Conclusions

ソーシャルディスタンスやその他の公衆衛生対策にマスクの推奨が含まれておらず,コミュニティにおけるマスク着用が一般的ではない状況において,マスク着用者におけるSARS-CoV-2感染症の発生率は有意に減少しなかったことを示した

しかし,このような環境下でのマスク着用者の感染が23%増加した一方で,46%減少したことに関して決定性をもって除外することはできず,結論は出ていない.この試験では,ソーシャルディスタンスや他の公衆衛生対策が効果を発揮していない状況における感染源管理や防御に関するマスクの効果を対象としていないことに注意しなければならない.

観察研究で指摘されているように,マスクの使用が一般的または義務化されているコミュニティでは、感染者から環境へのウイルスの放出を減らすことが感染を緩和するメカニズムである可能性がある.したがって,これらの知見は,SARS-CoV-2感染を減少させるために,コミュニティでのマスク着用の普及が有効であるかどうかについてのデータを提供するものではないしかし,他の人がマスクを着用しておらず、ソーシャルディスタンスといった公衆衛生上の対策が講じられている環境下で,マスク着用者がどの程度の防御を期待できるかについてのエビデンスが提供されたこの知見は,マスク着用にかかわらず,他のCOVID-19の感染対策を放棄すべきではないことも示唆している.我々はマスクの推奨を伝えるための追加データを待っているが,コミュニティは,COVID-19の深刻さ,発生源の制御と防御効果の程度に関する不確実性,マスクの重大な有害事象を示唆するデータの欠如とのバランスを取らなければならない45)

 

 

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以下は同誌に寄せられたEditional 2編.

(1)Frieden TR, Cash-Goldwasser S. Of Masks and Methods. Annals of Internal Medicine. Nov 18, 2020. https://doi.org/10.7326/M20-7499.

Main

DANMASK-19Danish Study to Assess Face Masks for the Protection Against COVID-19 Infection)無作為化比較試験5)は,デンマーク保健局によってコミュニティでのマスクの使用が推奨されていないが,SARS-CoV-2感染伝播対策として他の公衆衛生および社会的措置がとられていた2020年春にデンマークで実施された.介入群の参加者には,サージカルマスク50枚が提供され,1カ月間自宅外でマスクを着用するように指示された.主要評価項目はSARS-CoV-2感染であり,それは,@1ヵ月後に抗SARS-CoV-2 IgM抗体またはIgG抗体が陽性,A1ヵ月後にSARS-CoV-2PCR検査が陽性,そしてCOVID-19に適合する症状,B)医療従事者によるCOVID-19の診断,と定義された.ベースラインの抗体検査が陽性だった参加者は解析から除外された.

プロトコールに従った主要評価項目は,マスク群では参加者の1.8%2392人中42人),対照群では2.1%2470人中53人)に発生したintention-to-treat解析では,マスク群では対照群に比べてSARS-CoV-2感染が0.3%ポイント(95%CI, 0.4%-1.2%ポイント)少なかったすべての解析(intention-to-treat,プロトコールごと,および損失データに対する多重入力)において,オッズ比は約0.8であり,これはマスクが推奨されている場合にはSARS-CoV-2感染の発生が20%減少することと一致したしかし20%の減少の統計的有意性を判断するには,サンプルサイズが不十分であった

この研究の特殊性から,統計的なパワーだけでなく,結果の一般化の可能性も制限されている.この研究は比較的感染率の低い環境で行われた.5月の第1週にデンマークで新たに確認されたCOVID-19症例の1日の発生率は,英国の約3分の1,米国の約4分の1であった6).さらに、この研究では,職業,外出時間(Supplement Figure 2 [5]に示されているように,外出時間が長いほど防御傾向が強かったが),およびその他の要因によるサブグループ解析では統計的パワーが不足していた.このように,特定の環境や状況下におけるマスク着用の潜在的な有益性は評価されなかった

おそらくこの研究の最も重要な限界は,COVID-19の診断に抗体検査を使用したことであろう.この研究におけるCOVID-19の診断のうち、84%95人中80人)が抗体検査によるものであった.抗SARS-CoV-2抗体検査の精度には大きなばらつきがある7)DANMASK-19で使用されたアッセイの内部検証研究では,特異度は99.5%と推定されていたが,製造元は97.5%CI, 91.3%-99.3%)と報告している

www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/presentations/maf/maf3285-a001.pdf).検査特異度が98.5%であり,偽陽性の可能性が1.5%1-特異度)であったとすると,ベイズの法則は、マスク群と対照群の抗体陽性結果のすべてが偽陽性であったかもしれない可能性を示唆している.抗体検査の交差反応性による偽陽性はベースラインで除外されることになるので,1ヵ月後の参加者における実際の偽陽性率は低いかもしれない.それにもかかわらず,感染の有病率が非常に低いこと(せいぜい2%)を考えると,フォローアップにおける偽陽性の多くはマスク群と対照群の間に無作為に分布している可能性がある.これは,研究の結果をnull値に偏らせることになるだろう.

さらに,マスクの推奨や使用の自己申告は正しいマスク着用とは一致しない; 高リスク曝露時のマスク着用者においては,感染のリスクが有意に低下する可能性がある3)DANMASK-19では,介入に関して推奨どおりマスク着用を報告したのはマスク群のわずか46%のみである.女性は男性よりも公衆衛生上の推奨事項を遵守する可能性が高いかもしれない8).女性参加者では,対照群と比較してマスク群のSARS-CoV-2感染のオッズが減少したことが統計的に有意に近づいた(オッズ比, 0.65CI, 0.38-1.12]); この傾向は,両群の偽陽性数が同程度であったことからもnull値に偏っていた可能性がある.

コミュニティでのマスク使用は,特に十分な人数がマスクを着用しマスク着用が他の効果的な公衆衛生および社会的対策と組み合わされている場合にはSARS-CoV-2感染のリスクを大幅に減少させることができる.複数の観察研究では、マスクの義務化とCOVID-19の発生率の低下との関連が報告されている9).無作為化比較試験はしばしばもっとも信頼性の高いデータを提供すると考えられているが,観察研究の方がより正確な場合もあり,他のデータソースの限界を克服できる場合もある10)

単一の戦略でパンデミックをコントロールすることはできないが,包括的なアプローチの一環として,地域社会で広くマスクをすることで感染拡大を緩和することができる.マスクは他者を防御することが示されている.そして,この研究で報告された結果にかかわらず,おそらく着用者を防御することにもなるだろう.マスク着用の最大の有益性は,発生源の制御と着用者の防御の組み合わせから得られる可能性が高い1).他人の近くにいるときに誰もがマスクを着用すれば,誰もがより安全になる.

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(2)Laine C, et al. The Role of Masks in Mitigating the SARS-CoV-2 Pandemic: Another Piece of the Puzzle. Annals of Internal Medicine. Nov 18, 2020.

https://doi.org/10.7326/M20-7448.

Main

コミュニティのほとんどの人がマスクを着用していれば,SARS-CoV-2感染伝播は減少するのだろうか?ほとんどの人がマスクを着用していなくても,一部の人がマスクを着用している場合,マスク着用者は防御されているのだろうか?これらは現時点で最も重要な公衆衛生上の疑問の一つであるが,全く異なる疑問である.今回Annals誌は,SARS-CoV-2感染を緩和するためのマスク推奨に関する初の無作為化比較試験であるDANMASK-19Danish Study to Assess Face Masks for the Protection Against COVID-19 Infection)を掲載した1)我々はまず強調しなければならないのは,この試験は,ほとんどの人がマスクを着用しているコミュニティにおける感染伝播についての最初の疑問には答えておらず,広くマスクを着用することの有効性は否定していないということである.我々は,この試験がコミュニティにおけるマスクとSARS-CoV-2感染リスクについて我々が知っていることにどのように知見を付加しているかを説明する.

マスクは,感染者から他の人への感染拡大を防ぐこと(感染源制御),着用者を保護すること(防御効果),またはその両方によって,SARS-CoV-2感染伝播を軽減することができる.感染伝播は発症前に起こる可能性があり,多くの感染は無症状であるため,感染源制御はSARS-CoV-2の感染を減少させるための主要なメカニズムであると考えられている.DANMASK-19試験は,マスクの防御効果のみを検討するようにデザインされており,感染源制御は検討されていない.研究者たちは,2020年春のデンマークでの特殊な状況を利用したソーシャルディスタンスが実施されていたが,マスクは推奨されておらず,病院外での着用はほとんどなく,当時の感染率は低かった主要評価項目は,接触者への感染やコミュニティ全体の感染率ではなく,マスク着用者への感染であった.マスクの無作為化試験は実現不可能であるという意見もあるが2),この試験は現実世界の環境で慎重に実施された.1日に少なくとも3時間以上自宅外で過ごし,マスクを必要としない職業に就き,SARS-CoV-2感染既往のない成人6024人が登録された.参加者は,自宅外で他の人と一緒にいるときにソーシャルディタンスに従い,マスク着用群(サージカルマスクが支給された),非着用群に無作為に割り付けられた.毎週の調査に加えて,1ヶ月後行ったPCR検査あるいは抗体検査が陽性,そしてCOVID-19の症状を認めた場合も調査は完了となった.抗体検査で偽陽性は起こるが、試験のエンドポイントは,ベースラインでの検査結果が陰性であった後の陽性化(seroconversion)であった.このデザインでは,偽陽性である交差反応性の可能性がある参加者は解析から除外されたため,seroconversionが真陽性である可能性が高くなる.ベースライン時に抗体検査結果が陽性であった68人,検査キットの配布に問題があった134人,試験を完了しなかった960人を除外した.1ヵ月後のフォローアップ調査では,マスク群の1.8%2392人中42人)と対照群の2.1%(2470人中53人)に感染を認めた(リスク差, 0.3%ポイント[95%CI, 1.2%-0.4%ポイント][P= 0.38, オッズ比, 0.82CI, 0.54-1.23][P= 0.33])これらの結果から,マスクの推奨では,この試験の目的である対象の50%の感染率を低下させないことが示されたが,その推定値は不正確であり,統計的に46%減少から23%感染増加までの効果の幅が認められた言い換えれば,エビデンスは個人にとって大きな防御効果が除外され,防御の程度が低いことを弱く支持するものの,統計的に効果を除外することはできないということである

注意すべき点は2つある.第一に,この研究では,マスク着用を推奨する効果を調査したのであって,実際にマスクを着用した場合の効果を調査したのではないということである.この研究がそうであったように,公衆衛生上の推奨事項の遵守は常に不完全であり,そのような推奨事項に対する反応が異なるコミュニティでは劇的に異なることがある.第二に,マスク推奨の効果は,ウイルス感染症の有病率,ソーシャルディスタンス,集会の頻度や特徴など,他の多くの要因にも依存するマスクの着用は,ウイルス感染を減らすためのいくつかの相互作用を及ぼす戦略の一つにすぎず,それぞれが他の戦略を強化している

DANMASK-19試験が,感染源対策としてのマスク着用の普及に関する公衆衛生上の重要な疑問に答えるようにデザインされておらず,マスクの個人的な防御効果の正確な推定値を提供していないのであれば,なぜAnnals誌はこの試験を発表したのだろうか?

ほとんどの重要な公衆衛生上の問題と同様に,SARS-CoV-2感染の緩和におけるマスクの役割に関する疑問は,単一の研究では答えられない.

この試験は,公衆衛生上の論争の的になっている問題を解明する上で,無作為化された重要なエビデンスの一部を提供している: すなわち公衆衛生におけるソーシャルディスタンスを保つための対策が講じられているにもかかわらず,他の人々がマスクを着用していない場合に,マスク着用者が期待できる個人的な防御の程度についてである.米国疾病対策予防管理センターは最近,すべての人がマスクを着用する場合,感染源の管理および個人の防御を介して感染伝播を減少させる可能性を認め,そのガイダンスを更新した3)

DANMASK-19試験の結果は,ソーシャルディスタンスと衛生対策の重要性を強調しており,コミュニティ感染率を低下させるためには,すべての人ではないにせよ,ほとんどの人がマスクを着用する必要があることを示唆しており,それによって個人を防御することができる.広範囲でマスクを着用しているコミュニティではSARS-CoV-2感染率が低いことを示す観察研究4)-7)や,マスク着用による重大な健康被害がないことを示す観察研究8)などを考えると,本試験の結果は,このパンデミックにおいては,より明確なエビデンスが出るまで,コミュニティを守り,我々は自身を守るためにマスクを広く着用する動機付けとなるはずである.

一部の地域では,指導者や一般市民によるマスク推奨に対する激しい抵抗がある中で,マスク推奨に反対する人々によって容易に悪用される可能性のあるこれらの結果をAnnals誌が公表することは無責任ではないだろうか?

我々はそうは思わない.もっと無責任なのは,慎重に計画された調査の結果が,一部の人が期待したほど好ましいものでも決定的なものでもなかったからといって,公表しないことだろう.我々は,SARS-CoV-2パンデミックを制御する方法のパズルを解決するために多くのエビデンスの断片を収集する必要がある.そのためには,今回の知見を公表し,臨床試験においてこたえられる,あるいは答えられないことを丁寧に浮き彫りにすることが重要であると考える.

COVID-19パンデミックにおいて,これらの知見が示すものを慎重に検討し,広範囲にマスクを着用しても効果がないというエビデンスとみなすべきではないSARS-CoV-2感染源制御としてのマスクの有効性についてのエビデンスが出てくるまで,我々はマスクを着用することによってすべての人を守るために自分の役割を果たし,我々の周りの人たちも同じようにすることを願っている.

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