COVID-19関連追加(20201209日)

429-2ファイル( Lu J, et al. COVID-19 Outbreak Associated with Air Conditioning in Restaurant, Guangzhou, China, 2020. Emerging Infectious Disease 2020.

https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/7/20-0764_article.

の報告に追記.

 

【換気不良空間であったレストランにおけるエアロゾル感染伝播の可能性】

Li Y, et al. Evidence for probable aerosol transmission of SARS-CoV-2 in a poorly ventilated restaurant. April 16, 2020. medRixv.

https://doi.org/10.1101/2020.04.16.20067728

Background

SARS-CoV-2感染伝播におけるエアロゾルの役割は依然として議論されている.我々は,中国広州のレストランXで発生した関連のない3家族を含むアウトブレイクを分析し,SARS-CoV-2のエアロゾル感染の可能性を評価し,関連する環境条件を明らかにする.

Methods

疫学的データを収集し,レストランからビデオ記録と客席配置を取得し,疑い指標患者からの呼気飛沫の代替として温熱トレーサーガスを使用し,その分散を測定した.微細な呼気飛沫の拡散を評価するためにコンピュータシミュレーションを行った.その後に感染した症例の室内位置と,シミュレーションされたウイルスを含んだエアロゾルトレーサーの拡散を比較した.トレーサーガスの測定と計算流体力学(CFD: computational fluid dynamics)シミュレーションを用いて,指標患者が吐く微細な飛沫の拡散とレストラン内の詳細な気流パターンを予測した.換気率はトレーサーガス減衰法を用いて測定した.

Epidemiologic analysis:

レストランXにおける3家族と残りの客の座席配置、およびCOVID-19の症状発現日(症状発現日は,発熱や咳といった症状に患者が最初に気付いた日として定義)を取得した(Figure 2A).SARS-CoV-2感染は,咽頭スワブのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応逆転写(RT-PCR)分析によって確認された.感染者の人口統計学的データ,渡航歴,曝露歴,症状を収集した(Luら,2020)ほか,レストランの空調・換気設備の間取り図や設計図,現場近くの気象台から124日の1時間ごとの気象データを入手した.また,レストランとエレベーター内のビデオカメラの記録を検討し,客によるエレベーターの利用状況,客とウェイターによる防火扉の利用状況,昼食時のテーブルと席の配置,家族Aと他の人との接触行動などを把握した.レストランX5階建てである.アウトブレイクは3階で発生した(容積431m3; 高さ3.14m,長さ17m,平均幅8.1m)(Figure 1).大テーブルは直径1.8m,小テーブルは直径1.2mで,長方形のテーブルは0.9m×0.9m1.2m×0.9mとなっている.3階にはファンコイルユニット空調機が5台設置されており,外気の供給はなく,トイレ内に設置された排気ファンで駆動され,時々開いた扉からの空気の流入と自然換気のみで換気を行っている.南側のガラス窓には4台の換気扇が設置されているが,今回のランチタイムでは使用されなかった.124日の正午時点で,レストランの3階には18のテーブルがあり,客89人が滞在していた.テーブルABCをそれぞれTATBTCと表記し,残りのテーブルをT4-T18と表記した(Figure 1).ビデオ解析によると,防火扉は約2分おきに使用されていた.

座席の位置に関する感染データを調査し,カイ二乗検定を使用して,客の座席の位置(つまりテーブル)と感染する確率の関係を探索した.この分析ではテーブルAは除外した.他のテーブルは2つの基準に従って分類された: TAからの距離(すぐ近くの人 vs 離れていた人)と空調ゾーン(ABCゾーンはTATBTCのすぐ近くでは空調ユニット1台が稼働しており,ABCゾーン以外は他の空調ユニット4台が稼働していた).

 

 

Figure 1:

Distribution of SARS-CoV-2 infection cases at tables in Restaurant X. The probable air-flow zones are in dark grey and light grey. Each table is numbered as T#. Eighty-nine patrons are shown at the 18 tables, with one table being empty (T04). Tables TA, TB, and TC are where families A, B and C sat, some of whose members became infected. Patient A1 at TA is the suspected index patient. Patients A2–A5, B1–B3, and C1–C2 are the individuals who became infected. Other tables are numbered as T4–T18. Each of the five air-conditioning units condition a particular zone. Patrons and waiters entered the restaurant floor via the elevator and stairwell, which are connected by the fire door.

Figure 1.

 

 

Figure 2: Dates of (A) symptom onset and (B) confirmation of the 10 patients from the three families.

Figure 2.

Results

The outbreak:

このアウトブレイクおよび関連するすべての患者についての詳細な疫学,臨床,検査およびゲノム所見は,Luら(2020)によって報告されている.124日に確認された家族Aの最初の確認症例(A1)を指標患者とする.最後の患者は26日に確認された(Figure 2B).3家族はそれぞれ異なる時間帯に飲食店に滞在していた(家族A, 12:0113:23; 家族B, 11:3712:54; 家族C, 12:0313:18).ビデオ分析によると,エレベーターやトイレでは,3家族の間に有意な接触は見られなかった.接触者追跡により,レストランで193人の客が確認されたが,そのうち68人が家族ACと同じ時間に3階にいて,その中にはレストランの従業員57人と家族Aが宿泊していたホテルの従業員11人が含まれていた.これらの人々のいずれもウイルスに感染していなかった.それゆえ,感染したのは、レストランにいた客10人,すなわち指標患者と他の9人だけであり,そのうち少なくとも5人は,今回のランチで指標患者の呼出したウイルス粒子を含む飛沫に曝露したため感染したと考えられる

Spatial distribution analysis of infection cases:

テーブルおよび客は,最初にTAからの距離によって,すぐ近くの人(TBTCT18)または離れていた人(T4-T17)に分類された.その後まもなくCOVID-19と診断された患者10人は,窓際の3つのテーブルのうちの1つに着席した.家族Bのメンバー4人のうち3人が感染し,家族Cのメンバー7人のうち2人が感染した.家族Aのメンバー5人も感染しており,その中には指標患者も含まれていた.TAに最も近い席に座っていたTCの客2人は感染しておらず,離れた隣のテーブルの客も感染していなかったが,隣のテーブルの客は離れたテーブルの客よりも感染確率が高かった(X2= 25.78, P< 0.001, 連続性補正したカイ二乗検定, Table 1ABCゾーンに着席した客はいずれも感染していなかった

 

 

Table 1: Number of cases and susceptible at non-A tables in different zones of Restaurant X. There were a total of 79 patrons on other 17 tables.

Table 1.

 

Ventilation and dispersion of exhaled droplet nuclei:

2回のトレーサーガス減衰実験の結果,16:0017:00の空気交換率は0.77 ACHair changes per hour),18:0019:30の空気交換率は0.56 ACHにとどまった(Figure S4これは,容積431m3,客89人の場合,客1人当たりの外気供給量はそれぞれ1.04L0.75Lに相当するFigure 3ABCゾーンのthe predicted contaminated cloud envelopeを示す.家族ABCゾーンでは,指標患者からの呼気は,熱プルームと空調機の空気ジェットの相互作用により,最初に下降し,その後上昇する(Figure S2).高運動量の空調ジェットが天井高にて汚染された空気を運ぶ.反対側のガラス窓に到達すると,ジェットは下向きに曲がり,低い位置で戻ってくる.同様に他の空調機もcloudを発生させているが,T09の上方の空調ジェットによる混合により,ABCゾーンのcloudほど明確ではない。各ゾーン間には物理的な障壁がないため、すべてのゾーン間で空気交換が行われている.

ABCゾーンに比較的分離され汚染されたcloudが形成されていることは,測定されたエタン濃度データによって裏付けられているTATBTC における66.67分間の平均エタン濃度(ppm)(Table S1)はそれぞれ1.000.920.96TAにおける濃度で正規化)と最も高く,T17, T18ではそれぞれ0.860.73であったが,他のテーブルでは,0.55-0.70であった.予想されたように,ABCゾーンでは安定した高濃度が維持されていたが,異なる空調ゾーン間では明らかに混合が発生していた(Figure S1).66.67分間の予測平均濃度をTable S1に示す.ロジスティック回帰モデルの結果によると,測定された濃度が高いほどCOVID-19獲得リスクが高いことが示された(濃度1%上昇に関連したオッズ比: 1.115; 95% CI: 1.008-1.233; P= 0.035)(Table S1同様に,予測濃度が高いほど,COVID-19獲得リスクが高くなる(濃度1%上昇に関連したオッズ比: 1.268; 95% CI: 1.029-1.563; P= 0.026

 

 

Figure 3: Simulated dispersion of fine droplets exhaled from index Patient A1 (magenta-blue), which are initially confined within the cloud envelope due to the zoned air-conditioning arrangement. The fine droplets eventually disperse into the other zones via air exchange and are eventually removed via the restroom exhaust fan. The ABC zone clearly has a higher concentration of fine droplets than the non-ABC zone. Other infected patients are shown in red and other non-infected in gold color. Only a single human body is used to represent all patrons.

Figure 3.

 

 

Discussion

Luら(2020)は,飛沫伝播がこのアウトブレイクの最も可能性の高い主な原因であると示唆しているが,指標患者(A1)と他のテーブルの客との距離がすべて1mを超えているため,飛沫伝播だけではこのアウトブレイクは説明できないと指摘している.我々はそのような距離は4.6mほど離れていたかもしれないと推定している(Figure S1Luら(2020)はまた,”エアコンからの強い気流によって,飛沫がテーブルCからテーブルA,次にテーブルB,そしてテーブルCへ戻って伝搬した可能性がある”と示唆しているが,環境データが不足しているため,エアロゾル感染伝播の役割を特定するには至らなかった.エアロゾル感染伝播の役割は,中国におけるCOVID-19流行の初期段階で中国国家衛生委員会(NHC: Chinese National Health Council)(Li and Gao, 2020)によって提唱されていたが,NHCの勧告には具体的なエビデンスは示されていない.

我々は,利用可能なビデオ記録から客がレストランに滞在している間の個々の軌跡を調べることで,fomitesと密接な接触の役割を特定しようと試みた.しかし,この事例では,これらの経路を介して発生したSARS-Co-V2曝露を支持する証拠は確認されなかった.

我々の予測では,ABCゾーンにおいて汚染された再循環エンベロープ(envelope: 包むもの)が形成され(Figure 3),その結果、指標患者の呼出された飛沫核の濃度が高く維持されたことが示された.レストランにいた家族Aと家族Bの重複時間は53分(12:0112:54),家族Aと家族Cの重複時間は75分(12:0313:18)であり,呼気飛沫への曝露時間は十分に確保されていたと思われる.患者C11232分と遅れて到着し,家族A46分重複していた.比較的高濃度のトレーサーガスもテーブルT17で測定されたが,このテーブルの客(n= 5)は遅れて到着し(13:00,テーブルAへの曝露時間18分),そして誰も感染していなかった.

個々の循環ゾーンの形成は,5台の空調機の空間構成と設置によるものであった(Figure S2).

しかし,ABCゾーンに汚染された再循環エンベロープが形成されたことだけでは,アウトブレイクを説明することはできない.さらなる証拠は,換気率の低さにある.シミュレーションされた高濃度の汚染が観測されたのは,外気の供給がなかったためである.壁の排気ファンは,124日の昼食時にオフにされ,空間は密閉されていたことが判明した.トイレの排気ファンによって発生した陰圧のため,空気の侵入と不十分かつ短時間の防火扉の開放を別として,外気の供給はなかった.この外気は主に非ABCゾーンに分配され,ABCゾーンの換気不足を悪化させた.

ABCゾーンとABCゾーンで測定された客一人当たりの平均気流(air flows)はそれぞれ1.04 L/s0.75 L/sで,専門家協会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers Standard 62.1, 2004)等が推奨する一人当たり810 L/sよりもかなり低い.また,旧正月の大晦日に増加した顧客数に対応するために,レストランはテーブルを追加しており,混雑していた.その結果,テーブル面積を含めても客一人当たり1.55m2の占有密度(occupant density)にとどまっていた.このように、SARS-CoV-2感染伝播は,混雑した換気の悪い空間で発生し,それに続くCOVID-19アウトブレイクにつながった

エアロゾル感染伝播が一般的に考えられていないケースもあるが,十分な換気の欠如や過密状態は,呼吸器感染のアウトブレイクに関連していることが知られている.このレストランにおけるSARS-CoV-2アウトブレイクは,56人乗りの飛行機がエンジントラブルにより遅延し,待ち時間4.5時間に機械換気が行われなかったアラスカ機におけるインフルエンザのアウトブレイク(Moserら,1979)に類似している.指標患者は、インフルエンザに感染しており,飛行機に搭乗してから15分以内に発症した乗客であった.1席につき約3m3のコンパートメントスペースがあり,4.5時間の待ち時間および乗客が飛行機に出入りしている間の飛行機のドアが開いている時のみ,外気が供給された.Rudnick and Milton 2003)によると,これは結果として,乗客一人当たりの空気循環は,0.080.40 L/sしかなく(レストランXで測定された範囲よりもわずかに少なく),この飛行機の乗客54人の72%がインフルエンザに感染した.

世界保健機関(WHO)によるシステマティックレビューでも,混雑と感染症の関連性を示す証拠が示されている(WHO, 2018).2009年のH1N1パンデミックでは,過密していた学校におけるアウトブレイクでは基本再生産数が3.0-3.6と高かったのに対し,過密していない環境では1.3-1.7であった(Lesslerら,2009; Writing Committee2010).SARS-CoV-2ウイルスは,空気中で少なくとも3時間生存することができる(van Doremalenら,2020).そして空気を介して(airborne),インフルエンザウイルスゲノムおよび生存可能なインフルエンザウイルス粒子が検出されている(Lindsleyら,2012 2016; Yanら,2018; Xieら,2020).

我々の結果は,SARS-CoV-2の長距離エアロゾル感染伝播(long-range aerosol transmission)がどのような屋内空間でも起こり得ることを示しているのではなく,混雑した換気不良空間で感染伝播が起こり得ることを示していることが重要であるGaoら(2016)は、呼吸器感染に対するエアロゾルの相対的寄与が換気流量(ventilation flow rate)の関数であることを示した.換気流量が十分に高いと,エアロゾルの感染伝播への寄与が非常に低くなる一方,換気流量が低いと,エアロゾルの感染伝播への寄与が相対的に高くなる

細かい飛沫(fine droplets)と大きな飛沫(large droplets)が呼吸中に呼出され,呼吸からの感染リスクは,2人が密接に接触しているときに最も高くなることが知られている.Liuら(2017)は,従来の大飛沫(large-droplet)メカニズムに加えて,短距離エアロゾル(short-range aerosol)メカニズムも重要である可能性を示した.感染者の口から始まる空間濃度(spatial concentration)プロファイルの検討では,呼気ジェットの濃度プロファイルが継続して減少することを示している(それは,ある程度の距離で弱まり,背景の室内空気に合流して区別がつかなくなる)このように,エアロゾルの平均室内濃度は,発生源の強さ(source strength)と換気率(ventilation rate)の関数である部屋の換気率が非常に低い場合,部屋の平均状態は,呼気内と同じように濃縮された状態になりうるしたがって,理論的には,感染性病原体が長距離エアロゾル(long-range aerosol)メカニズムによって典型的に(すなわち、十分な換気下で)伝播されない場合であっても,換気率が非常に低い場合には,伝播の空間的な広がりが増大する.我々は、このような伝播を拡張短距離エアロゾルメカニズム(extended short-range aerosol mechanismと呼んでいる.

 

Conclusions

我々の疫学的解析,現場での実験的トレーサーガス測定および気流シミュレーションにより,2020124日に換気不良である混雑したレストランXSARS-CoV-2拡張短距離エアロゾル拡散( extended short-range aerosol spread of the SARS-CoV-2が発生した可能性が示唆された.

 

References

1) .World Health Organization (WHO) housing and health guidelines. (2018). Geneva, Switzerland: WHO, 2018.

(https://www.who.int/sustainable-development/publications/housing-health-guidelines/en/.)

2) Lessler J, Reich NG, Cummings DA, New York City Department of Health and Mental Hygiene Swine Influenza Investigation Team. Outbreak of 2009 pandemic influenza A (H1N1) at a New York City school. N Engl J Med 2009; 361(27):2628–36.

3) Writing Committee of the WHO Consultation on Clinical Aspects of Pandemic (H1N1) 2009 Influenza: Clinical aspects of pandemic 2009 influenza A (H1N1) virus infection. N Engl J Med 2010; 362:1708–1719.

4) Centers for Disease Control and Prevention (CDC). How 2019-nCoV spreads. Washington DC, USA: U.S. Department of Health & Human Services, 2020.

(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/transmission.html.)

5) Li X, Gao F. Public Prevention Guidelines of Infection due to the Novel Coronavirus Pneumonia (In Chinese, 新型冠状病毒感染的肺炎公众防指南). Beijing, China: People’s Medical Publishing House, 2020:page 9.

6) Moser MR, Bender TR, Margolis HS, Noble GR, Kendal AP, Ritter DG. An outbreak of influenza aboard a commercial airliner. Am J Epidemiol 1979;110(1):1–6.

7) Rudnick SN, Milton DK. Risk of indoor airborne infection transmission estimated from carbon dioxide concentration. Indoor Air 2003;13(3):237–45.

8) Wong TW, Li CK, Tam W, Lau JTF, Yu TS, Lui SF, Chan PKS, Li YG, Bresee JS, Sung JY, Parashar UD. Cluster of SARS among medical students exposed to single patient, Hong Kong Emerg Infect Dis 2004;10:269–76.

9) Li Y, Huang X, Yu ITS, Wong TW, Qian H. Role of air distribution in SARS transmission during the largest nosocomial outbreak in Hong Kong. Indoor Air 2005;15:83–95.

10) Yu ITS, Li Y, Wong TW, Tam W, Chan A, Lee JHW, Leung DYC, Ho T. Evidence of airborne transmission of the severe acute respiratory syndrome virus. N Engl J Med 2004;350:1731–9.

11) Lu J, Gu J, Li K, et al. COVID-19 outbreak associated with air conditioning in restaurant, Guangzhou, China. Emerg Infect Dis 2020;26(7).

12) an Doremalen N, Morris DH, Holbrook MG, et al. Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1. N Engl J Med 2020 doi:10.1056/NEJMc2004973.

13) Yan J, Grantham M, Pantelic J, et al. Infectious virus in exhaled breath of symptomatic seasonal influenza cases from a college community. P Natl Acad Sci USA 2018;115:1081–6.

14) Lindsley WG, Blachere FM, Beezhold DH, et al. Viable influenza A virus in airborne particles expelled during coughs versus exhalations. Influenza Other Resp 2016;10:404–13.

15) Lindsley WG, Pearce TA, Hudnall JB, et al. Quantity and size distribution of cough-generated aerosol particles produced by influenza patients during and after illness. J Occup Environ Hyg 2012;9(7):443–9.

16) Xie C, Lau EH, Yoshida T, et al. Detection of influenza and other respiratory viruses in air sampled from a university campus: a longitudinal study. Clin Infect Dis 2020;70(5):850–8.

17) American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers (ASHRAE) Ventilation for acceptable indoor air quality. Atlanta, USA: ASHRAE Standard 62.1, 2004.

18) Bivolarova M, Ondráček J, Melikov A & Ždímal V. A comparison between tracer gas and aerosol particles distribution indoors: The impact of ventilation rate, interaction of airflows, and presence of objects. Indoor Air 2017; 27(6):1201–1212.

Supplementary Appendix

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2020129日)に1215日追記しました

 

【韓国レストランにおける気流が関与したSARS-CoV-2長距離飛沫感染伝播の証拠】

Kwon KS, et al. Evidence of Long-Distance Droplet Transmission of SARS-CoV-2 by Direct Air Flow in a Restaurant in Korea. J Korean Med Sci. 2020 Nov 30; 35(46): e415.

https://doi.org/10.3346/jkms.2020.35.e415.

https://jkms.org/ArticleImage/0063JKMS/jkms-35-e415-abf001.jpg

Introduction

2020120日に中国・武漢からの旅行者が韓国で最初のCOVID-19症例として確認された後,220日までのCOVID-19症例報告は30人にとどまり,訪韓者との接触を基にしたものであった.大邱市都市部で宗教団体と関連したアウトブレイクが発生した後,2月下旬〜3月下旬にかけて1日あたりの新規患者数が最大813人に急増した.韓国政府は223日に公衆衛生緊急事態対応レベルをレベル3(レベル0からレベル3へ)に引き上げ,55日まで厳格なソーシャルディスタンス措置を実施した2)

さらに,COVID-19の迅速かつ正確な検査,情報通信技術(ICT: information and communication technology)を活用した流行状況の調査,重症度に応じた隔離・ケアプログラムなど,検疫モデル「3T政策(Test-Trace-Treat)」システムを適用した3)

617日,韓国・全州市で新たにCOVID-19症例(指標症例,症例A)が確認され,感染者から6.5m離れた場所における飛沫(droplets),そしてエアコンが稼働していたレストランにおける5分間の曝露により感染伝播したと考えられている.SARS-CoV-2が様々な状況において人と人との間でどのように伝播しているかを知ることは重要である.今回の調査結果は,このパンデミック感染症の予防・追跡・防疫に関するガイドラインを更新するための参考として共有する.

Methods

Environmental factor investigation:

EISSThe Epidemic Investigation Support System)分析の結果,612日に症例Aが訪問したレストラン1店舗(レストランA)が曝露現場と特定された.CCTVclosed-circuit television)評価に基づいて,619日から初回の次現地調査を開始し,症例Aをはじめとする店内の人の移動経路,テーブルの位置,タイムライン,移動経路を確認した.また,内部構造,客同士の距離,天井式エアコンの正確な位置を調査した.624日と72日に携帯型風速計(Kestrel 2500; Nielsen-Kellerman Co. Boothwyn, PA, USA)を用いて,複数の指定位置における風速と方向を精密に測定した.風量を測定するために,612日と同じファンの回転数と方向にエアコンをセットした.また,同じ状況をシミュレーションするために,各症例および客が座った椅子に被験者に座ってもらった.623日に環境中のSARS-CoV-2検査のために,エアコンの流入口と流出口,症例Aのテーブル席,近くのテーブルと椅子における空気の流れる方向を考慮した合計39個の環境サンプルを採取し,rRT-PCR検査で分析した.

Results

Personal factors associated with the outbreak:

指標症例(症例A)の症状は616日から始まっており,SARS-CoV-2の潜伏期間を考えると62日〜15日に曝露した可能性が高い.症例Aは海外や過去2週間に症例が確認されていない全州市外への渡航歴はなく,KDCAEISSを利用して62日〜615日までのデータを収集した.その結果,国内で確認された538人のうち,追跡地図(tracking map)が症例Aと重なっていたのは1人(症例B)のみであった.重複していた場所はレストラン(レストランA)であり,612日,CCTV映像を基に症例Aと症例B5分間同時に占有していたことが判明した.症例Bは全州市から車で1時間以内の大田広域市に住んでおり,612日にのみ全州市を訪問していた.そのため,我々は症例Bを一次症例(感染させた者: infector),症例Aを二次症例(感染した者: infectee)と暫定的に考えた.症例Bがレストランにいたとき,マスクを適切に着用していない来客11人と従業員2と濃厚接触していた.疫学調査チームは,これらの接触者に対して,619日または20日にSARS-CoV-2rRT-PCR検査を受け,626日まで最低14日間の隔離を行うよう指示した.隔離期間中の接触者13人のうち,さらに1人(症例C,来客)が620日にCOVID-19が確認された最後に,症例Bはこのレストランで2人にCOVID-19を拡散させ,発病率(attack rate)は15.4%2/13であった.曝露日は612日,症例Bの発症は613日であり,潜伏期間の中央値は5日,世代間隔は4日であり,以前の報告と一致していた10)11)12).このレストランでは別の症例(症例D)があった.症例Dは症例Bの同伴者であり,612日に症例Bとともにこのレストランを訪れた症例D611日に大田広域市内の別の流行患者に曝露しており,616日にSARS-CoV-2陽性を示し,その前日に症状を発症していた.症例Dはその時点ではCOVID-19を他の人に広げることができなかったため,今回のアウトブレイク調査から除外された(Figure 1, 2).

Figure 1: The asymptomatic period and symptom onset of all three coronavirus disease 2019 cases.

https://jkms.org/ArticleImage/0063JKMS/jkms-35-e415-g001-l.jpg

 

Figure 2: Timeline of coronavirus disease 2019 infector and infectees in the restaurant. Case A (index case) overlaps about 5 minutes (17:1517:20) with case B (infector), who overlaps case C for about 21 minutes (17:2217:43).

https://jkms.org/ArticleImage/0063JKMS/jkms-35-e415-g002-l.jpg

 

Environmental factors and mode of transmission:

レストランAは,6階建て延べ96.6m29.2×10.5m)の建物の1階にあり,窓も換気システムもない.店内には,正面(ドア1)と背面(ドア2)の2つの扉があった.また,Figure 3に示すように,床から3.2mの位置には,天井式エアコンが斜めに2台設置されており,これらはワイヤーで固定されており,各症例がレストランAにいた時には稼働していた.症例Bと同伴者は,症例A6.5m離れたドア2の近くのテーブルに座っていた; 症例Aはテーブルから離れたり,他の人とテーブルを共有したりしていなかった.症例Aと症例Bはマスクをしないでそれぞれの同伴者と会話をしていた1720分,症例Aは,1番ドアからレストランAの外に出た.その後の2分間に,症例Cと同伴者(V6, V7)は,ドア1からレストランAに入り,症例Bから4.8離れた別のテーブルに着席し,症例B1743分にドア1からテーブルを離れるまでの21分間,その場に留まった症例Aと症例Bの距離は6.5mであり,両症例の位置における空気の流れの方向は、風速計で測定した最大流速1.0m/sec3.6km/hr)を示した.また,症例Bと症例Cの間の空気の流れは,距離4.8mを超えて最大流速1.2m/sec4.3km/hr)を示した.客のテーブル,感染させた者(infector),感染した者(infectee)などの全位置,天井のエアコン,風速,風向の情報をFigure 3に示す.

Figure 3: 天井式エアコンを設置したアウトブレイクが発生したレストランの模式図.矢印の付いた実線は,店内の空気の流れの方向を表している.曲線の空気の流れ線は,天井式エアコンからの空気の流れが壁やバリアから反射して床に向かって下降していくことを表している.

https://jkms.org/ArticleImage/0063JKMS/jkms-35-e415-g003-l.jpg

 

 

SARS-CoV-2の環境サンプル39個は,rRT-PCR検査ではすべて陰性であった.症例3人のゲノムシークエンシングの結果は,3人ともGH型であり,同一であったため発表した(データは示していない)

Summary of epidemiological findings and implications:

@室内気流(最大流速1.0m/sec)は,症例Binfector)から曝露5分以内距離6.5m以内の症例Ainfectee)に,そして曝露21分以内距離4.8m以内の症例Cinfectee)に飛沫を伝播させた(transmitted droplets)可能性があった.

Aレストランにおける発病率は15.4%2/13; 95%CI, 8.3%-22.5%であり,それは濃厚接触者全体の二次発病率(0.6%; 0.3%-1.0%),および家庭内接触者のみの二次発病率(7.6%; 3.7%-14.3%)よりも高かったが,コールセンターのアウトブレイクと同様であった(15.1%; 10.8%-20.6%13)

BCOVID-19感染者からの飛沫(droplets)による感染伝播は,気流と組み合わさると,短時間の曝露で距離2m以上に発生する可能性があるCOVID-19 の管理・予防のためには,これらの要因を反映した検疫・疫学調査ガイドラインの更新が必要である.

CCOVID-19患者を追跡するためのEISSは非常に有用であり,感染源の特定に要する時間を短縮することができた.このシステムにより,ウイルスの地域的な流行規模を抑制し,検査・分離・治療の負担を軽減することができた.

Discussion

SARS-CoV-2ウイルスは,主に感染者の咳,くしゃみ,会話,通常の呼吸によって放出される呼吸器飛沫を介して,そこに密接な接触が加わり,感染伝播する15).これらの飛沫(droplets)は通常,直径5μmを基準に大きいものと小さいもの(エアロゾルとも呼ばれる)に分かれている.大きな粒子(飛沫dropletsとも呼ばれる)は,重力の影響で発生源から12m以内に沈降する傾向があり,沈降速度は粒子径に比例する16).したがって,ソーシャルディスタンスをとるには,ウイルスを含む呼吸器飛沫との接触を避けるために最低でも1-2mの距離が必要となる.有効な治療薬やワクチンがない状況下では,このCOVID-19のパンデミックを予防・制御するための最も重要な個人的な対策は,ソーシャルディスタンス,マスク使用(社会的距離が維持できない場合),手洗いである.

最近では,COVID-19は飛沫や接触だけでなく,空気感染(airborne transmission)によっても拡散することが示唆されている.実験的研究では,エアロゾル粒子中のCOVID-19ウイルスは3時間〜16時間,生存可能な状態を維持していることが示された17)MorawskaMiltonは,共著者である科学者239人とともに,いくつかのプレプリントの見解に基づいてCOVID-19の空気感染の可能性を強く示唆したが,この研究のピアレビューは行われていない18)202079日に報告されたWHOの科学的概要の最終更新版では,エアロゾルによる空気感染伝播は稀であり,SARS-CoV-2は飛沫または密接な接触を介して人と人との間で主として伝播すると報告されている.しかし,混雑した屋内空間でのエアロゾルによる感染伝播は,飛沫感染伝播とのコンビネーションの可能性が示唆されている19)

このアウトブレイクでは,infectorinfecteeまでの距離は4.8m6.5mであり,いずれも一般的に認められている2mの飛沫感染範囲よりも長距離であった.これは空気感染伝播の最初の証拠である.現地調査では,気流による長距離の飛沫移動(long-distance droplet movement)の可能性を想定した.DboukDrikakisは計算流体力学の結果を報告しており,空気の流れがない場合,ほとんどの飛沫は1-2m以内に沈降することを報告した.しかし,風速が4km/hrまたは15km/hrの場合,飛沫はそれぞれ5秒後または1.6秒後に6mの距離を移動することができた20)

今回のケースでは,infectorからinfecteeへの空気の流れは1.0-1.2 m/sec3.6-4.3km/hr)の速度を示しており,infectorから指標症例への飛沫の伝播には6.5秒の接触が必要であることを示唆している.症例Bの気流路に座っていた来客(症例AおよびC)のみがCOVID-19に感染したが,他の来客(V2, V3)は,より長い時間infectorに接触していたが,直接気流がない状態では感染しなかった.また,症例Aと症例Cのテーブルに座っていた来客(V1, V6, V7)は,infectorから顔を背けていたため,COVID-19に感染しなかった.これらの結果から,このアウトブレイクは2mを超える飛沫感染伝播によって発生したことが強く示唆された.この感染パターンは,中国広州で発生した空調設備のあるレストランでのアウトブレイクと類似している21).この論文では,飛沫感染が最も可能性が高いと結論づけ,空気の流れの方向も重視している.

K-quarantineモデル(test-trace-treat)とEISSがなければ,COVID-19の潜伏期間が1日〜14日と幅広く,6.5mの距離で5分間の曝露が1回しか発生しなかったため,アウトブレイクの感染連鎖を確立することは非常に困難であったかもしれない.このシステムに基づいて,指標症例を確認してから2日以内に感染者を同定した.この短期間での同定は,濃厚接触者の同定を簡素化し,すべての濃厚接触者を隔離することでアウトブレイクの規模を縮小する可能性がある.ほとんどのCOVID-19アウトブレイクの状況では,感染連鎖の同定は困難か,ほとんど不可能である.感染源が特定できないアウトブレイクは,短期間の曝露を考慮しなかったことや,確認された人の動きを明確に確認できなかったことが原因であると考えられる.また空気感染伝播が疑われる報告の中には,飛沫の長距離伝播メカニズムを知らないために誤った解釈をしているものもあることが示唆されている(it suggests that some suspected airborne transmission reports may be misinterpreted based on lack of awareness of the long transmission mechanism of droplets).

室内環境における空気の流れによる長距離(2mを超える)の飛沫感染の管理のガイドラインは空気感染と同様であり,十分な換気とソーシャルディスタンス(過密を避け,人と人との距離を保つ)で構成されている22)

しかし,エアロゾルあるいは飛沫による長距離感染の可能性が高い場合には,医療現場だけでなく,あらゆる屋内環境でN95レスピレーターまたはそれに相当するマスクが必要である.韓国では,食品医薬品安全部がKF99KF94KF80などの医療用マスクの認可に関わっており,COVID-19用にKF-ADanti-droplet)と呼ばれるタイプのマスクを開発した.このようなマスクは,KFやサージカルを含め,飛沫から保護することができるものであれば,飛沫伝播を防止するためには十分であるはずである.

このケースによると,COVID-19の予防および制御のために,考慮事項を追加する必要がある.第一に,屋内における感染伝播は,短時間(5分)の曝露でも2m以上の距離で伝播しうること,追跡調査における濃厚接触者の選択を変更すべきであることである.屋内環境の疫学的現地調査が必要な場合には,風向きや風速を考慮して,座席の配置やファン(天井ファンを含む)やエアコンの稼働・設置場所を評価する必要がある.また,室内空気の管理のためにこまめに換気を行ったり,自然換気ができない場合は換気装置や強制換気方式を適用したりする必要がある.さらに,屋内レストランやカフェテリアでは,テーブル間の距離を1-2m以上にするか,風量を考慮してパーテーション設置を検討する必要がある.また,レストランなどの屋内では,マスクは食事中のみ外して食前・食後に着用し,食事中の会話や大声は避けるべきである.長期的には,空気感染症や飛沫感染症の感染伝播を防ぐために,屋内での別室や衝立の設置を検討すべきである.

Limitation: 第一に,我々は計算流体力学を用いて空気の流れを評価していない.また,扉の開放や各症例や来客の動きを再現していないため,気流計測はすべての同じ状況を反映することができなかった.しかし,infectorinfecteeにおいて,できるだけ類似した環境で風速計を用いて空気の流れの方向と速度を特定した.第二に,調査員の訪問から11日後に環境サンプルを採取した.これらの結果はいずれも陰性であったが,これは空気感染伝播を否定するものではない.

 

私見:

この論文では「空気感染伝播」ではなく,「飛沫」が「長距離」移動することによって伝播するという立場である.そして,やはり「5μm」が閾値としているようである.

 

 

References

13) Ki M. Task Force for 2019-nCoV. Epidemiologic characteristics of early cases with 2019 novel coronavirus (2019-nCoV) disease in Korea. Epidemiol Health 2020;42:e2020007.

15) Park SY, Kim YM, Yi S, Lee S, Na BJ, Kim CB, et al. Coronavirus disease outbreak in call center, South Korea. Emerg Infect Dis 2020;26(8):16661670.

16) World Health Organization. Scientific brief. Modes of transmission of virus causing COVID-19: implications for IPC precaution recommendations. [Updated 2020].

17) Wei J, Li Y. Airborne spread of infectious agents in the indoor environment. Am J Infect Control 2016;44(9 Suppl):S1028.

18) van Doremalen N, Bushmaker T, Morris DH, Holbrook MG, Gamble A, Williamson BN, et al. Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1. N Engl J Med 2020;382(16):15641567.

19) Morawska L, Milton DK. It is time to address airborne transmission of COVID-19. Clin Infect Dis. [doi: 10.1093/cid/ciaa939]

20) Dbouk T, Drikakis D. On coughing and airborne droplet transmission to humans. Phys Fluids (1994) 2020;32(5):053310.

21) Lu J, Gu J, Li K, Xu C, Su W, Lai Z, et al. COVID-19 outbreak associated with air conditioning in restaurant, Guangzhou, China, 2020. Emerg Infect Dis 2020;26(7):16281631.

22) European Center for Disease Prevention and Control. Heating, ventilation and air-conditioning systems in the context of COVID-19 (22 June 2020). [Updated 2020]. [Accessed November 5, 2020].