COVID-19関連追加(20201226日)

 

【公共空間における小飛沫エアロゾルの計測】

Somsen CA, et al. Measurement of small droplet aerosol concentrations in public spaces using handheld particle counters. Physics of Fluids 32, 121707 (2020). Published, Dec 22, 2020. https://doi.org/10.1063/5.0035701.

INTRODUCTION

世界保健機関(WHO)は,最近のscientific brief1)SARS-CoV-2感染伝播におけるエアロゾルの役割1)-4)の可能性を強調し,”このような感染経路の可能性を考えると,より多くの研究が必要である”と述べている1).これは,SARS-CoV-2のエアロゾル感染伝播リスクが最も高い公共空間に特に関連している.しかし,エアロゾル濃度の直接測定は技術的に困難であることが証明されており5)-7),そのような研究を妨げている.我々は,エアロゾル濃度を測定するための新規かつ容易に適用できる方法として,携帯型粒子測定器の使用を検証する.粒子計測は以前にも行われているが(例えば文献8参照),その方法は検証されていなかった; 主な課題は,エアロゾルと背景の塵(ダスト)(background dust)を区別することと,温度や相対湿度などの外部条件により,小さな飛沫と大きな飛沫における持続性と分散性が時間の経過とともに変化するかもしれないことである9)-13).我々の新しい手法の有用性を実証するために,SARS-CoV-2のエアロゾル感染伝播が起こりうる体積,占有者数,換気率がそれぞれ異なる典型的な公共空間で測定を行った.これらのデータを用いて,エアロゾル残留時間とSARS-CoV-2感染リスクとの関係を推定した

METHODS

エアロゾル濃度は,光で明るくなった画素数が飛沫数と体積を表す指標となるレーザーシート回折法を用いて測定されることが多い4)5)

しかし,この技術は高度に専門性をもった技術者のみが操作可能であり,レーザーの安全性に問題があるため,実験室でしか使用できない.この技術を標準使用して,我々は,空気質評価に頻繁に使用され,レーザーシート回折技術の上記の欠点のほとんどを克服した携帯型粒子測定器(Fluke 985, Fluke B.V. Europe, Eindhoven, The Netherlands)を使用した新しい方法を検証する.Flukeデバイスの仕様は,0.3µm0.5µm1.0µm2.0µm5.0µm10.0µm6つのサイズのチャネルである.空気は2.83 l/minの流量でデバイス内に送り込まれ,波長775 nm-795 nm90 mWレーザービームがダストまたはエアロゾル粒子を照らす検出領域を流れ,そこからの散乱光と回折光が0.3µmチャネルで50%,その他のすべての粒子チャネルで100%の計数効率で検出される.これらの測定の精度と再現性はいずれも1%である.ここで説明するのはFlukeデバイスであるが,同様の結果は他の粒子測定器,特にLighthouseTrotecの装置でも得られた.参考として,CCDカメラと画像解析ソフトウェアを使用してエアロゾル飛沫のレーザー光散乱を直接撮影してエアロゾルを追跡する,SprayScan® Spraying Systems, Glendale Heights, IL, USA)レーザーシートを使用した.各測定について,エアロゾル濃度は,ダスト粒子からなる背景(約8分間測定)を補正することによって決定された.

VALIDATION

最初に、レーザーシート散乱法とレーザー回折法を用いて以前に得られた結果と比較することにより,粒子計算法を検証する4)典型的な検証シナリオは,換気不良である容積8m3のトイレの中で1人が1度だけ咳をした場合である.この特定の例における両方の方法による結果をFigure 1に示す.咳をすることで,粒子測定器の背景レベルよりも一桁上の量(an order of magnitude)のエアロゾル粒子が産生されることがわかる: どちらの方法でも,空気1リットル当たりのエアロゾル数は,時間経過とともに指数関数的に減少し,時定数は〜4分であることが明らかになった(Figure 1).これは,この部屋と他の3つの部屋で行われ,2つの方法の結果の相関係数は常に0.97以上であった.

Figure 1: 換気不良である容積8 m3の空間(トイレ)で,携帯型粒子測定器(紫色のシンボル)とレーザーシート回折法4)を使用して測定した,時間の関数としての直径5.0µm-10.0µmの空気中浮遊粒子(airborne particles)の濃度.粒子測定器の他チャネルでも同等の結果が得られた.矢印は咳をした瞬間を示し,急激な増加と指数関数的な減衰を伴い,半減期は約4分である.黄色の線は目印である.緑のデータポイントは,以前に発表されたレーザーシート法からの参考データである4)

Figure

 

Figure 2は,2つの技術で得られた粒子分布を示している.携帯型粒子測定器は,文献5で使用したレーザー回折法(Malvern Spraytech®)のように粒子径の範囲を分離するためのチャネルが少ないため,ここでの比較はより難しい.結果として得られる滴サイズ分布(drop size distribution)は,文献5および14で説明されているように,複合ガンマ分布(compound Gamma distribution)である.

Flukeデバイスで得られた分布は,チャネルの数が少ないため,はるかに粗くなっている.しかし,FlukeSpraytechの結果として,それぞれ4.9±1.7および3.6±0.4という同等の平均値(comparable mean values)であり,結果は同等である; 重要なことは,粒子測定器が咳によって生成されるエアロゾルサイズの全範囲をカバーしていることも示している.また,携帯型粒子測定器を使用して得られた結果は,再現性が10%以内であることがわかった.結論として,粒子測定器の技術は,時間の関数としてエアロゾル濃度を測定する信頼性の高い方法であり,飛沫サイズ分布の大まかな目安を知ることができる

Figure 2: レーザー回折によって測定された粒子数分布(黄色のバー)と粒子測定器から推定された分布(青のバー)の比較.粒子測定器のチャネル数は限られているため,粗い分布となっているが,両者は互換性がある.

Figure

 

 

APPLICATION TO PUBLIC SPACES

典型的な例として選択した現実世界の公共空間を特徴づけるためにこの技術を使用した(Table 1).これらの公共空間において,占有者(測定時の人数は1-25人)による呼吸,会話,咳,くしゃみから生じるすべてのエアロゾルを測定した.背景ダスト測定の結果,人が動き回ることで発生するダストは,呼吸,会話,咳,くしゃみによって発生するエアロゾルの特徴的な直径の範囲外で,粒子測定器の最初の2チャネル(直径0.3μm-0.5μm)にほとんど(98%以上)含まれていることがわかった4).そのため,エアロゾル濃度を評価する際には考慮していない.また,エアロゾルを発生させる複数人の測定とは別に,咳による呼吸飛沫と同じ大きさのエアロゾル(1μm-10μm,最大4μm)を生成することが知られている文献4のような専用のスプレーノズルを用いて,既知の量の人工エアロゾルを発生させ,エアロゾル濃度の経時的な低下を調べた.リスク評価は,文献5で詳細に説明されており,エアロゾルの残留時間に基づいている: 分析は同じ粒度分布でも残留時間が異なる場合に行われる.Table 1では,占有者数,使用した換気システムの1時間あたりの空気変化率(ACH: air change rate per hour),および測定した飛沫濃度半減時間(droplet concentration half-times)を示した結果を要約している.すべての測定は,気流の違いおよび壁の近接性の違いが平均化されるように,測定場所において少なくとも5箇所で行われた.それぞれの箇所の結果は5%以内で同一であることが判明した.我々が調査した公共空間では,校正測定に使用した換気不良空間であるトイレと比較して換気されている全ての公共空間でエアロゾル濃度が〜20-100倍以上低くなっているまた,公共のエレベーター換気されていないリビングルームでは,エアロゾル濃度が高くなっているエアロゾル濃度が50%減少する特徴的な時間は,換気の良い空間では1分のオーダーであるのに対し,換気の悪いトイレ,エレベーター,リビングルームでは4-5分である.これは,空気の入れ替え(ACHによる)と空間全体の分散による更なる希釈の両方によるものであり,したがって,ACHその空間の絶対的な大きさの両方に依存する(Table 1).Table 1に記載したACHはすべて設置会社による.

 

 

Table 1: 占有者数,容積,換気率によって特徴づけられる異なる公共空間におけるエアロゾル濃度と残留時間人為的にエアロゾルを発生させたクラブのシナリオを除いて,エアロゾルの発生源は人々の会話くしゃみである.実験が許可されたサンプルされたこれらの空間は近代建築の主に換気が良好である空間であった.各空間は通常,5つの異なる場所でサンプリングされた.計算に基づいてウイルス量が推定された.

 

DISCUSSION

この研究では,粒子測定器による技術がエアロゾル濃度とその経時変化を調査するための信頼性の高い方法であることを示した.この簡単に適用できる方法を使えば,あらゆる公共空間でエアロゾル濃度を測定することができ,これはSARS-CoV-2のエアロゾル感染リスクを決定し,リスク低減対策(換気の改善)の影響を評価するために重要である.

計測した空間におけるエアロゾル残留時間は,十分な換気が行われているため比較的短い.空間の機械的換気によるACHの現在の基準は,空間の占有率に依存するが,大まかには2/h15/hで変化する10/hの空気変化率とは,6分ごとに与えられた空間に,その空間と同じ体積の新鮮な空気が入れ替わることを意味する.エアロゾルの持続性を測定した結果,エアロゾル濃度の半減期は1-2分で,エアロゾル濃度は最小となり,10/hを超えるACHで達成されることが示唆された我々が測定した半減期を用いると,この6分後のエアロゾル粒子数の減少は、換気方法や公共空間の大きさによって50%-100%で変化すると計算している.また,Flukeデバイスは独自のポンプを持っているため,デバイスを通る気流はポンプによって支配されているため,その結果は空間の気流(air flow)に大きく依存しないことにも注意する.

我々の知見をエアロゾルによるSARS-CoV-2感染の実際的なリスク評価に変換すると,空気中のエアロゾルを介した感染伝播リスクは,トイレ,エレベーター,換気されていないリビングルームを除くすべてのシナリオで低いと結論づけた.この理由は2つある.第一に,良好な換気は短時間でエアロゾルの密度を有意に減少させる(Table 1).第二に,非常に小さなエアロゾル滴(aerosol drops)に含まれるウイルス粒子数は少ない.COVID-19患者の喀痰飛沫(sputum dropletsは,通常、104109 RNA copies/mlを有している15)これは,エアロゾル滴1,000個あたり0.001100 RNA copiesThis implies between 0.001 and 100 RNA copies per thousand aerosol drops)を意味する15)16)SARS-CoV-2の最小感染量は報告されていないが,COVID-19重症度は初期接種量に比例すると考えられており,エアロゾルによる感染伝播は比較的軽度の症状をもたらす可能性があることが示唆されている5)16)我々のリスク分析では,103個未満の微小飛沫(microdroplets)(100未満RNA copiesに相当)に対する曝露はリスクが低く103105個の微小飛沫(10010,000 RNA copiesに相当)はリスクが中間で,105個以上の微小飛沫(10,000を超えるRNA copiesに相当)は感染のリスクが高いと仮定している5)15)

この仮定を検証し,これらのリスク値を修正するためには,ウイルスの伝播性に関するさらなる研究が必要である.しかしながら,我々の測定結果は、参考文献5および15のリスク分析と合わせて,良好な換気の重要性を強調し,保健当局が公共空間でのSARS-CoV-2感染伝播の可能性を最小化するための最小限の換気率を推奨できることを示唆している.

CONCLUSIONS

この研究では,異なる環境下で容易に実施できる新規エアロゾル測定法を実証した.ウイルス量および感染性についての合理的な仮定を用いると,これにより文献5および16に続く,SARS-CoV-2のエアロゾル感染伝播確率を大まかに見積もることができる.このような感染の広がりを抑えるために,医療機関,特に病院や歯科のようなエアロゾル化が一般的な空間では,公共空間の換気を評価するために,この方法を検討すべきである.

 

 

REFERENCES

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