COVID-19関連追加(202119-2

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2020427日(重症COVID-19患者の「呼吸困難感の欠如」について)

COVID-19患者におけるHappy Hypoxiaそして悲しくも無視された

”急性血管窮迫症候群: Acute Vascular Distress Syndrome”について】

Jounieaux V, et al. On Happy Hypoxia and on Sadly Ignored “Acute Vascular Distress Syndrome” in Patients with COVID-19. Am J Respir Crit Care Med. Published Aug 19, 2020.https://doi.org/http://dx.doi.org/10.1164/rccm.202006-2521LE.

happy hypoxiaとしても知られるsilent hypoemiaの問題に関するTobinらの論文(1)は呼吸困難の生理学的機序についての素晴らしいレビューである.著者らは,血液ガス,肺障害,年齢,疾患との関連で,呼吸困難の定義とメカニズムについて言及している.また、低酸素の定義および効果,経皮的酸素飽和度の不正確さ,酸素解離曲線の特性,COVID-19患者における低酸素血症のメカニズムについても論じている.我々は,Tobinらによって想起されたすべての生理学的概念が,単独あるいは複合的に,低レベルのPaO2に対する呼吸反応の鈍化およびそれに付随する正常の感覚(feeling of normality)や呼吸困難の欠如(absence of dyspnea)という主観的な感覚に寄与している可能性があることに同意する.これらの様々な要因の中でも,我々は,低酸素飽和度下における酸素飽和度と動脈血酸素分圧の相関性が低いことがhappy hypoxiaを説明できるとは考えていない.なぜなら、論文のビネットに示されているように,患者はパルスオキシメトリ(SpO2)によって測定される低酸素飽和度だけでなく、非常に低いPaO2レベル(TobinらのFigure 1によれば,20 L/minをはるかに超える換気レベルにつながっているはずである)を有しているにもかかわらず,呼吸困難を一貫して認めていなかったからである.同様に,年齢と糖尿病は低酸素に対する換気反応に鈍化効果があることが知られているが,happy hypoxia患者の多くは50代または60代であり,ここでは年齢の影響は大きくないと予想され,糖尿病ではない.同様に、呼吸困難が主観的なものである場合,20 L/min以上のV'e(分時換気量)レベルは,明らかな補助筋の使用を必要とし,呼吸回数が増加するが,これらはhappy hypoxia患者にはみられない.

happy hypoxia現象の主な理由は,hypocapnia(低炭酸ガス血症)の存在であると提示したいと思う.我々は数年前に,低炭酸ガス血症が呼吸中枢に強力な制動効果をもたらすことを示したが,これは健常者の非常に低いSpO2レベルへの反復曝露に対する反応を完全に無効にすることができる(2)Tobinらが主張しているようにhappy hypoxiaを低炭酸ガス血症のない患者に限定すべき理由は見当たらない.ところで,低炭酸ガス血症とそれに伴うアルカローシスは,酸素解離曲線を左にシフトさせる傾向があり,発熱による右へのシフトを相殺する.

呼吸困難を伴わない低炭酸ガス血症の理由として,Tobinらが言及しないが,我々が最も適切な説明をしていると考えているものが以下である: すなわち,右から左への肺内シャントの存在である(3)SARS-CoV-2は,肺の血管増殖(vascular proliferation)を誘発することが知られており,解剖学的研究と放射線学的研究の両方で実証されている(4,5).我々は、放射線学的な肺病変を伴わないCOVID-19患者1人において,造影剤を用いた心エコー検査により、遅発性の右から左への肺内シャント(late right-to-left intrapulmonary shunt)を実証した(未発表の観察).この右左シャントは低酸素血症を誘発し,正常な換気の増加につながるが,確実にPaCO2を減少させるそしてCO2O2よりも拡散性が高いしたがって,低炭酸ガス血症が進行し,それ以上の換気の増加がなくなり,呼吸努力の増強がなく,したがって呼吸困難が生じないことを説明することができる.これがSARS-CoV-2の初期障害であり,acute vascular distress syndromeの頭文字をとって「AVDS」と呼ばれるようになったのである(6)肺病変が顕著になり,GGOあるいはconsolidationを示すようになると,低酸素血症は悪化するが,低炭酸ガス血症は少なくなり,その結果,PaCO2の正常化と呼吸困難感が出現する.

結論として,COVID-19患者の多くで低酸素症の存在と呼吸困難の欠如の両方を説明する重要な因子として,肺内シャントを検討する時期に来ていると我々は考えている

Figure 1: The ventilatory response to progressive isocapnic hypoxia in a healthy subject.

(文献(1)より)

References

1) Tobin MJ, Laghi F, Jubran A. Why COVID-19 silent hypoxemia is baffling to physicians. Am J Respir Crit Care Med 2020;202:356–360.

2) Jounieaux V, Parreira VF, Aubert G, Dury M, Delguste P, Rodenstein DO. Effects of hypocapnic hyperventilation on the response to hypoxia in normal subjects receiving intermittent positive-pressure ventilation. Chest 2002;121:1141–1148.

3) Ackermann M, Verleden SE, Kuehnel M, Haverich A, Welte T, Laenger F, et al. Pulmonary vascular endothelialitis, thrombosis, and angiogenesis in Covid-19. N Engl J Med 2020;383:120–128.

4) Lang M, Som A, Mendoza DP, Flores EJ, Reid N, Carey D, et al. Hypoxaemia related to COVID-19: vascular and perfusion abnormalities on dual-energy CT. Lancet Infect Dis [online ahead of print] 30 Apr 2020; DOI: 10.1016/S1473-3099(20)30367-4.

5) Rodenstein D, Jounieaux V, Mwenge B, Mahjoub Y. Happy hypoxia does not defy basic biology. 2020 [accessed 2020 Oct 2]. Available from:

https://science.sciencemag.org/content/368/6490/455/tab-e-letters.

6) Mahjoub Y, Rodenstein DO, Jounieaux V. Severe Covid-19 disease: rather AVDS than ARDS? Crit Care 2020;24:327.