COVID-19関連追加(2021117日)

当院HP関連ファイル(空気サンプルからCPE/ウイルス培養の証明):

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【軽症COVID-19患者が運転する車内の空気からのSARS-CoV-2分離】

Lednicky JA, et al. Isolation of SARS-CoV-2 from the air in a car driven by a COVID patient with mild illness. medRxiv, Posted Jan 15, 2021.

https://doi.org/10.1101/2021.01.12.21249603.

Abstract

COVID-19患者が運転する車内でSARS-CoV-2をスクリーニングするために,Sioutas personal cascade impactor samplerPCISを使用した.SARS-CoV-2は,PCRによってすべてのPCISステージで検出可能であり,0.25-0.50μmサイズ範囲の粒子を収集したサンプラーから培養された

Main

現在のパンデミックが始まって以来,SARS-CoV-2感染伝播について多くのことがわかってきたが,さまざまな環境での曝露リスクや,さまざまな感染様式がウイルスの拡散にどのように寄与しているかについては疑問が残っている1). 特に,近距離または長距離のエアロゾルにおけるビリオンと比較して、近距離におけるより大きなウイルスを含む呼吸器粒子のウイルス拡散への相対的な寄与については,不確実性が続いている.現在では,閉鎖空間内でのSARS-CoV-2のエアロゾル拡散と一致する複数の疫学研究が行われている2)3).そして,ウイルスは,実験室で生成されたエアロゾル中に少なくとも16時間感染性を維持することが示されている4).我々のグループや他のグループのデータでは,患者の環境下において,RT-PCRによってエアロゾル中にウイルスが存在することが報告されている5)-7)しかし,活性化(viable)ビリオンのみが疾患を引き起こすため,SARS-CoV-2 RNAの分子検出は,COVID19発症リスクと必ずしも相関するわけではないその後,我々は,COVID-19入院患者の部屋の空気中から活性化SARS-CoV-2を分離したことを報告している8)

この研究は,医療施設以外の”現実の生活”環境でのSARS-CoV-2感染伝播を評価するために実施された.疫学研究ではCDCによって公共交通機関の乗り物が感染の危険因子として同定されており,シンガポールの研究では,感染者と乗り物を共有する人の感染オッズ比が3.07[95%CI, 1.55-6.08]であることが報告されている9)この設定において,我々はSARS-CoV-2感染者が運転する車内の空気から活性化ウイルスが分離される可能性があることを記録することに着目したまた,ビリオンを含む空気媒介性呼吸器分泌物のサイズ分布を測定して,飛沫やエアロゾルが感染リスクに及ぼす影響を把握することにも着目した

そのために,軽症(minimal symptomsCOVID-19患者にSioutas PCIS10を助手席の上のサンバイザーに装着して,車を短時間運転してもらった.Sioutas PCISは,空気媒介性粒子を分離し,同時にPTFEpolytetrafluoroethylene)フィルターに衝突させてサイズ分割された粒子を捕集する.PCISは,4つの衝突ステージ(impaction stages)(AD)に捕集フィルターを搭載しており,オプションのアフターフィルター(after-filter)を5つ目のステージ(E)に追加することができる.PCISは,5つのサイズ範囲のカットポイント以上の空気媒介性浮遊粒子状物質を分離・捕集する.ステージは,> 2.5μm以上(ステージA)、1.0-2.5μm(ステージB),0.50-1.0μm(ステージC),0.25-0.50μm(ステージD< 0.25μm(アフターフィルターで収集)の5つのサイズ範囲である(Figure 1.今回の研究では,PCISSKC, Inc.のカタログ番号225-370)ユニットをLeland Legacyポンプ(SKC, Inc.のカタログ番号100-3002)と共に使用し,9L/minの流量で操作した.

20代の女性患者は,COVID-19と診断されたルームメイトに曝露した後,一日前からの軽度の疲労,鼻づまり,喉の痛みを訴えて来院した発熱,咳,息切れ,その他の症状を認められず,身体所見は正常であったUF Health clinical laboratoryによって行われた検査では,発症時に採取された鼻咽頭スワブのRT-PCRが陽性であった.患者は10日間の自宅隔離を助言され,適切な接触追跡が開始された.

診断サンプルを採取した2日後,クリニックから自宅までの運転の間,PCISを車の助手席(旧型ホンダ・アコード)に装着することに患者は同意した.その時の症状は,咳はなく軽微であった(minimal).PCISは車の助手席のサンバイザーに取り付け,患者の顔から約3フィートの距離で,吸気口は車の屋根の方に向けた.15分間の運転中,患者はマスクを着用しなかった.車内のエアコンは作動していた: 運転中の車内温度は24.2-22.8℃,相対湿度は55.2-42.5; 外気温は32℃,相対湿度は99%であった.

患者が自宅に到着してから2時間後,個人用保護具(N95マスク,手袋,Tyvek laboratory coat)を着用した調査員が車を開けてエアサンプラーのポンプを止め,PCIS-pump assemblyを密閉容器に移して容器の外表面を除染した; 車内からろ過された空気量は約1.2m3であった.車から取り外した後,air sampling assemblyは,適切なバイオセーフティ予防措置をとりフロリダ大学のBSL2強化ラボに輸送した.エアサンプリング終了後30分以内に,PCISフィルターを1mlの回収液(PBS with 0.5%wv BSA fraction V and 0.2 M surcose11))に室温で30分間浸して,それから,回収液であらかじめ濡らしておいたフロックスワブで掻き取った.サンプルは遠心分離により濃縮し,-80℃で保存した.

氷上で一回解凍した後,QIAamp Viral RNA Mini Kitを用いてPCISフィルターから押し出された140μlのマテリアルからRNAを抽出した.SARS-CoV-2 RNAを検出するためのrRT-PCRは,プライマーシステムLed-N-FLed-N-R,およびLed-N-probe11)を用いて行った.各サンプルに存在するウイルスゲノム相当数は,測定された定量サイクル(Cq)値から推定した.そして,過去に報告されたように,SARSCoV-2 N遺伝子の挿入を含む較正プラスミドの10倍希釈を使用して達成した8)SARS-CoV-2 RNAがフィルターA-Dで検出されたことから,PCISによって,SARS-CoV-2ビリオンを含む粒子サイズ範囲,またはSARS-CoV-2 RNAを含む他のマテリアル(おそらく細胞の破片)が収集されたことを示唆している(Table 1SARS-CoV-2 RNAを含むマテリアルは,フィルターA-CEを合わせたものよりもフィルターDで多く収集された

次に,過去の報告にあるようにフィルターマテリアルをVero E6細胞に播種した8)PCISフィルターDに採取されたマテリアルを播種した細胞では,SARS-CoV-2によって生じたものと一致する初期の細胞変性効果(CPE: cytopathic effects3日目までに観察された; 5日目までに、フィルターDからのマテリアルを播種した細胞では感染病巣(foci of infectionが明らかになった((Supplemental Figure 1CおよびD)が,PCISフィルターBCおよびEで採取したマテリアルを播種した細胞ではウイルス感染の兆候は認めなかったmock感染細胞単層は完全なままであり(intact)(Supplemental Figure 1A),真菌の過増殖は,PCISフィルターAからのマテリアルを播種した細胞で明らかであった(Supplemental Figure 1B).そしてrRT-PCR検査は,実際にSARS-CoV-2が分離されていたことを示した.さらなる確認のために,フィルターDからのマテリアルを播種した5日後に採取したaliquot20μl)をVero E6細胞に継代(passageしたところ,細胞の播種3日後にrRT-PCR Cq 12.46が得られた

PCIDフィルターDに対応する細胞増殖培地から抽出したRNAに対してSangerシーケンスを行った; 二次確認としてIllumina MiSeqプラットフォームを用いてNGSnext-generation sequencing)を行った8)分離されたウイルスは,SARS-CoV-2humanUSAUF292020GenBank no.MW229264.1と命名されたSARS-CoV-2 UF-29は、参照株であるWuhan-Hu-1GenBank no. NC_045512.2)と比較して,以下のマーカーバリアント(marker variants)を有する: C241TC3037TA23403GG25563TSpike protein D614G,およびORF3a protein Q57H.これらのマーカーは,Global Initiative on Sharing All Influenza Data (GISAID)clade命名法に従い,clade GHのメンバーとして同定されている.

我々が呼吸する空気には,細菌(細胞や胞子),真菌(菌糸や胞子),ビリオンなど病原体由来の空気媒介性粒子が含まれているのが一般的である.エアロゾル化(aerosolization)および空気輸送(air transport)後も生存可能/活性(viable)のある呼吸器病原体は,呼吸器疾患の潜在的な原因であり,それらはしばしば他の物質と結びついて”複雑な粒子(complex particles)”を形成している11)-12)SARS-CoV-2を含むヒト検体の走査型電子顕微鏡では,しばしば,ひも様にビーズの如く付着したビリオン/ビリオンの塊が描写されることに留意すべきである

https://www.flickr.com/photos/54591706@N02/49557785797.

したがって,ヒトは,異なるサイズの空気媒介性呼吸器分泌物中でどのようにビリオンが分割されるかに影響を与える”ウイルスの異なる形態(塊状,単一粒子など)”を放出することはもっともらしい.衝突ステージA-DにおいてvRNAが検出されたことは,異なるサイズの呼吸器分泌物中にウイルスが存在するという仮説と一致している.驚くべきことに,生きたウイルスが検出されたのはステージDのみであり,これは0.250.5μmのサイズ範囲の空気媒介性粒子の採取に対応するものであった

PCISはカスケードインパクター(cascade impactor)であり,ウイルス粒子の収集方法(フィルターへの衝突)と,一定気流の存在(ウイルスを乾燥させる)は,どちらかと言えば,ウイルス活性率(virus viability)を低下させる.インパクター内の気流は,ステージAからEを通過する際に速度が増加し,ステージDで捕集されたビリオンは,それ以前のステージで捕集されたウイルスよりも大きな範囲で危険にさらされる.しかし,これらの潜在的な不利な条件にもかかわらず,我々はインパクターのステージDから活性化(viable)ウイルスを分離した.これらのデータは,車内の閉鎖空間(窓を閉めてエアコンをかけた状態)で症状の少ない人がSARS-CoV-2を感染させるリスクの可能性を強調し,そのリスクのかなりの部分がエアロゾル化されたウイルスを介していることを示唆している.

 

 

Figure 1: Sioutas Personal Cascade Impactor Sampler (PCIS). (a) Schematic representation of the five stages of a PCIS. (b) Photograph of an SKC Leland Legacy air sampler pump and a PCIS unit. A pen is shown below the pump and PCIS unit to provide size perspective. (c) Attachment clip in PCIS and SKC Leland Legacy air sampler pump assembly.

 

 

 

Table: rRT-PCR Detection of SARS-CoV-2 RNA on filters.

 

 

References

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