COVID-19関連追加(2021119日)

 

SARS-CoV-2の空気媒介性感染伝播: 我々が知ること】

Samet JM, Prather K, …, Marr L. Airborne Transmission of SARS-CoV-2: What We Know. Clinical Infectious Diseases. Jan 18, 2021.

https://doi.org/10.1093/cid/ciab039.

COVID-19のパンデミックが始まって以来,SARS-CoV-2の感染伝播様式は,感染制御との関連性を考慮し,直接接触伝播,fomitesを含む間接接触伝播,大型飛沫噴霧(large droplet spray)伝播,そしてエアロゾル吸入が議論され,調査されてきた。感染者は呼吸,発声,歌唱,咳,くしゃみによってウイルスを大気中に放出する.感染を導入するのに十分な量の感染性ワクチンが感受性のある人の気道(場合によっては目)に到達して,空気媒介性感染伝播を獲得する.今回のperspectiveでは,ウイルスを含む飛沫およびエアロゾルの生成から始まり,感受性のある人の気道にウイルスが沈着することで終わるという,感染源-量(source-to-dose)の枠組みを用いて,SARS-CoV-2の空気媒介性感染伝播の可能性を検討する.中間的なステップは,空気を介した飛沫やエアロゾルの輸送,および経時的なウイルス感染性の喪失の可能性を含む.人のふるまいは,フィジカルディスタンスとマスク着用を含んだ,ウイルス量にも影響する.この一連の流れには,建築環境,職業曝露,人種,民族,所得などの背景要因が重なる.この枠組みは,4つの重要な質問につながる(Table 1).この観点から,これらの質問に取り組んだ全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM: National Academies of Science, Engineering, and Medicine[1]2日間のワークショップを参考にする.

 

我々は,呼吸器病原体の伝播に関する議論の調和のために新たに提案された用語を採用する[2] .感染症の伝播という背景では,”飛沫”とは,気道から放出される空気動力学径が100μmを超える粒子であり,典型的には,発生源から6フィート(2m)以内の地上に数秒以内に落下するものである."エアロゾル "もまた粒子であり,100μmより小さく,数秒〜数時間の間,空気中に懸濁したままでいることができる.定義は,感染症の伝播におけるこれらの単語の一般的な意味を保持する: 飛沫(droplets)は粘膜に噴霧される(接触伝播の一形態); 一方,エアロゾル(aerosols)は気道に吸入される(物理的なふるまいと曝露経路は同調する).

 

呼吸器ウイルス感染伝播の概念は,1930年代のWellsの研究に長く根ざしている[3].彼は咳やくしゃみによって様々な大きさの呼吸器飛沫(respiratory droplets)が発生すると説明しているが,中にはすぐに地面に落ちるほどの大きさのものもあれば、空気中で懸濁し,脱水(dehydrating)していわゆる飛沫核あるいはエアロゾルを形成する(これらは長時間にわたり空気媒介性のままである(remain airborne)には十分小さい).Wellsの感染伝播モデルは,少なくとも6フィートの距離を置くことで飛沫感染を防ぐことができるという主張の基礎になっている.Wellsはまた,100μmよりも小さい粒子は,地面に向かって沈降する間により速く蒸発して,サイズが小さくなるため,空気中に留まることができて,”このような感染を長距離にわたって伝播する”ことができることも認識していた.彼の時代のツールを反映してか,Wellsや当時の人々は,呼気活動中に発生する膨大な数のエアロゾルに気付いていなかった.

 

最初の質問については,証拠は明らかである: 人は幅広いサイズの飛沫やエアロゾルを産生する[4] .飛沫は6フィートを超えて移動することができ,気道から,数百万個のエアロゾル(その発生源では高濃度である)が発生し,一般的に飛沫伝播を防ぐために提案されている6フィートをはるかに超える距離を移動できることが視覚的に証明されている.実験によると,エアロゾル数は,発声中は1001,咳をしているときには201を超えて飛沫数を上回る; 飛沫とエアロゾルの発生量は発声の大きさや長さに応じて増加する.また,より小さなエアロゾル粒子は何時間も懸濁したままで,時間経過とともに蓄積され,屋内空間の気流によって長距離にわたって運ばれることもわかっている.しかし,異なる活動によって産生されるウイルスを含む飛沫やエアロゾルの大きさについては,より多くの研究が必要である.

 

2番目の質問に取り組むために,複数の研究では,SARS-CoV-2が小さなエアロゾル中に存在し,感染性があることが示されてきた.RNAの存在だけでは感染性ウイルスが存在しているとは言えないが,直径5μm未満の空気媒介性粒子サンプルにはウイルスRNAが含まれている.ウイルス活性(viability)を維持するサンプリング技術を用いて,患者から6フィートを超えていた場所で空気媒介性感染性ウイルスが検出された.実験では,エアロゾル中のSARS-CoV-2は最大16時間まで活性を維持し,ある研究では活性化した状態の半減期(a half-life for viability)は0.5-3.3時間であることが示唆されている[5]

 

感染源-量の枠組みでは,曝露は,ウイルスを含む飛沫が人の粘膜に接触するか,またはウイルスを含むエアロゾルが気道に吸入されることで構成される.環境要因と挙動要因のどちらも人々の曝露に影響を与える.空気媒介性感染伝播では,感染者の呼吸器プルームへの近接,およびウイルスを含むエアロゾルで汚染された空間(通常は屋内)の占有によって曝露が起こる.エアロゾルの長距離伝播は,特に換気の悪い閉鎖空間が混みあっている場合,ワシントン州スカジット郡の聖歌隊の練習中に観察されたような超拡散現象(super-spreading events)が発生する可能性が高いと考えられている.密集したグループでは,飛沫による伝播もそれらしい(plausible).飛沫やエアロゾルは表面に付着した後に再懸濁する(resuspended)かもしれないので,床やその他の表面を清掃する必要がある.

 

 

曝露は環境要因や挙動要因の影響を受けるため,これらの因子を修正することで、SARS-CoV-2の空気媒介性感染伝播を低減させることができる.感染リスクは,建物の換気を高め,屋内の空気を外気と交換し,適切な環境でろ過や紫外線を利用した空気清浄を行うことで低減することができる(Table 1).空間における人数を制限することで,感染者が存在する可能性を減らし,距離を置くことで呼吸器プルームへの曝露を減らすことができる.エアロゾルは感染伝播に大きく寄与するので,リスクを低減するためのマスクの役割は何だろうか?マスク着用によるリスクの低減は,機械論的な実験研究によって評価されてきたが,集団研究から得られる証拠はより限られている[6]. それでも,マスクは他人を曝露する放出を減少させ,着用者の空気媒介性ウイルスへの曝露も減少させると結論づけるのに十分な証拠がある(Table 1).

 

一般的なウイルス感染では,吸入されたウイルス数と感染リスクにおける用量反応関係(dose-response relationship),および気道内沈着部位と臨床表現型と疾患重症度における関係については,ほとんど知られていない.現在では有用な動物モデルが存在し,いくつかの種でエアロゾルによって感染が広がることが実証されているが,SARS-CoV-2については,第4の重要な問題に関連する証拠が不足している.宿主の性別,年齢,および遺伝的特徴の寄与は,人に感染させるウイルス量(human infectious dose)を定義するための研究を複雑にしており,ウイルスを含むエアロゾルまたは飛沫の発生源および濃度に病原性を関連付けるために,将来の研究に含めるべきである.

 

4つの重要な質問への取り組みにおける空白部分(gap)は,組織的な組織化された他分野にわたる研究課題の必要性を浮き彫りにした.パンデミックによって,このような研究は迅速に開始され,その結果として,NASEMワークショップで発表された新しい知見があったものの,まだ不完全であった.これらの知見は,SARS-CoV-2感染伝播においてエアロゾルが重要な役割を果たしていることを示している.異なる環境下での感染伝播様式の相対的な寄与についての理解を深めるためには,さらなる研究が必要である.特にパンデミックの急速な進行に伴い,この感染伝播様式の重要性が実証されたことに基づいて,強力かつ迅速な予防措置がとられるべきである.十分な換気を確保し,適切な環境で空気清浄とおそらくは紫外線を追加する戦略を発展させる必要がある.

 

4つの質問に対する証拠の現状に基づいた結論は,直ちに政策的な意味合いを持つ.政策手段と感染伝播を減らす行動の適切な組み合わせが必要である.屋内空間の十分な換気を確保することは必須であり,適切な環境下での紫外線を含む空気清浄が役立つかもしれない.しかし,最も重要なことは,空気媒介性感染伝播の重要性と,我々がどのようにして自分たちの身を守ることができるのかについて,一般の人々が理解する必要があるということだ.SARSCoV-2の拡散を抑えるために層別介入が重要であることは,科学的根拠から明白である: すなわち,フェイスカバーを着用すること,距離を保つこと,そして超拡散現象となる可能性のある大規模な集会を避けることである.

 

主要な権威機関である疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)と世界保健機関(WHO)は,エアロゾルの重要な役割をより完全に認識し,この優位である感染伝播様式を制御するための強力な勧告を提供すべきである.

 

Table 1: Four critical questions on airborne transmission and what we know.

 

 

References

1) The National Academies of Sciences E, and Medicine,. Airborne Transmission of SARSCoV-2: A Virtual Workshop Available at:

https://www.nationalacademies.org/event/08-26-2020/airborne-transmission-of-sars-cov-2-a-virtual-workshop. Accessed October 9.

2) Prather KA, Marr LC, Schooley RT, McDiarmid MA, Wilson ME, Milton DK. Airborne transmission of SARS-CoV-2. Science (New York, NY) 2020: eabf0521.

3) Wells WF. ON AIR-BORNE INFECTION*: STUDY II. DROPLETS AND DROPLET NUCLEI. American Journal of Epidemiology 1934; 20(3): 611-8.

4) Morawska L, Johnson GR, Ristovski ZD, et al. Size distribution and sites of origin of droplets expelled from the human respiratory tract during expiratory activities. Journal of Aerosol Science 2009; 40(3): 256-69.

5) Van Doremalen N, Bushmaker T, Morris DH, et al. Aerosol and surface stability of SARSCoV-2 as compared with SARS-CoV-1. New England Journal of Medicine 2020; 382(16): 1564-7.

6) Jefferson T, Foxlee R, Mar CD, et al. Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses: systematic review. BMJ (Clinical research ed) 2008; 336(7635): 77.