COVID-19関連追加(2021127日)

トシリズマブについて その2

当院HP関連ファイル:

2020820-2

【重症あるいは重篤Covid-19患者における15日時点の臨床アウトカムに対するトシリズマブの効果: ランダム化比較試験】

Veiga VC, et al. Effect of tocilizumab on clinical outcomes at 15 days in patients with severe or critical coronavirus disease 2019: randomised controlled trial. BMJ 2021; 372: n84. Jan 20, 2021. https://doi.org/10.1136/bmj.n84.

Objective

トシリズマブが重症または重篤Covid-19患者の臨床アウトカムを改善するかどうかを判断する.

Methods

Design:

ランダム化オープンラベル試験.

Setting:

202038日〜717日におけるブラジルの9病院にて.

Participants:

我々は,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により確認されたSARS-CoV-2感染があり,症状が3日以上続いている18歳以上の入院患者を登録した.対象となった患者は,重症または重篤Covid-19 15)で,胸部CTまたはX線撮影で肺浸潤が確認され,SpO2> 93%を維持するために補助酸素を投与されていたか,またはこの解析前24時間以内に機械式換気を受けていた.さらに,以下の基準のうち少なくとも2つを満たす必要があった: D dimer> 2.74nmol/L> 1000ng/mL),CRP> 50mg/L> 5mg/dL),フェリチン> 300μg/LLDH> 正常上限.除外基準は,活動的な制御できない感染症,ASTあるいはALTが正常上限値の5倍を超える上昇,および推定糸球体濾過量< 30mL/min/1.72m2の腎疾患が含まれた.除外基準の詳細についてはsupplementary fileを参照のこと.

Trial procedures:

患者は、ソフトウェア R 3.6.3R Foundation)のサンプル機能を使用してコンピュータで作成されたスケジュールに従って,年齢(< 60歳,≥60歳)と性別で層別化し,2468サイズのランダムブロックで,標準治療またはトシリズマブ+標準治療のいずれかを受けるように1:1の割合でランダムに割り付けられた.割り振りの隠蔽(allocation concealment)は,CZOが開発した中央自動ウェブアクセスシステム(REDCap)によって確実に行われた.ヒドロキシクロロキン,アジスロマイシン,コルチコステロイド,抗菌薬の併用は,Covid-19患者に対する地域の施設ガイドラインに基づく標準的なケアに従って許可された。レムデシビルはブラジルでは利用できなかった.投与群では,トシリズマブを8mg/kg(最大800mg)の用量で単回点滴静注した

データは,ランダム化から29日目まで毎日,電子症例報告書に収集された.病院の研究者は,治療の割り付けの有無を問わず,患者の入院中はアウトカムデータを収集した.15日目より前に退院した患者については,割り付けられた試験群を知らない調査者が,15日目以降に患者または患者の代理人に電話をかけ,バイタルステータスと日常生活における復帰を評価した.

Outcomes:

主要アウトカムは,15日目の臨床状態を7レベルの序列尺度を使用して評価した: レベル1は入院しておらず活動に制限がない; レベル2は入院していないが活動に制限がある; レベル3は入院しているが酸素補助なし; レベル4は入院しており酸素補助あり; レベル5は入院しており非侵襲的陽圧換気または鼻カニューレを介した高流量酸素の投与を受けている; レベル6は入院しており機械式換気を受けている; レベル7は死亡と定義した.

副次アウトカムは,28日目までに分析されたデータから得られた全死因死亡; 院内死亡; 8日目と15日目の逐次臓器不全評価スコア(SOFAスコア); 6レベルの序列スケール(supplementary file参照)を用いて評価した8日目,7レベルの序列スケールを用いて評価した29日目の臨床状態; 29日目以内の無人工呼吸器日数(ventilator-free days; 29日目以内の補助酸素離脱までの時間; 入院期間; 二次感染症; 血栓塞栓性イベントの発生; および有害事象であった.他の事前指定された探索的アウトカム(prespecified exploratory outcomes)は,5日目と8日目に測定された血清炎症性マーカーとサイトカインのレベルであった(supplementary file参照).

Statistical analysis:

我々は,患者150人の初期サンプルサイズから,15日目により高い7レベルの序列尺度を持つオッズ比0.44を検出する力が80%,両側有意水準は5%であると推定した.一次解析では,有害事象を除いてはintention-to-treatの原則に従ったが,有害事象は,割り付けられた群に関係なく,投与された薬剤に応じて患者を含む安全性集団で解析された.主要アウトカムは当初,層別化変数(年齢と性別)を調整した比例オッズ比を仮定した序列ロジスティック回帰(ordinal logistic regression)で評価する予定であった.オッズ比例の仮定(the odds proportionality assumption)が満たされなかったため(Brant test P= 0.04),我々は7レベルの序列尺度を2値アウトカム(binary outcome)(レベル15(生存していて機械式換気を受けていない)vs レベル6および7(機械式換気を受けているか,死亡している))に畳み込み,統計解析計画で指定されたようにロジスティック回帰を用いて評価した.主要アウトカムに対する効果は,15日目に機械式換気を受けるか死亡するか(レベル67)のオッズ比と,15日目に臨床レベルを改善した場合のオッズ比を表している.

主要アウトカムに対する治療効果の感度解析は,プロトコールごとの母集団を用いて,割り当てられた通りに治療を受けた患者のみを考慮して実施した.さらに,治療群間でこの変数のベースライン分布が不均衡であったため,7レベルの序列尺度におけるベースラインの臨床状態,および年齢と性別を調整して,主要アウトカムに対する治療効果のpost hoc感度解析を行った.事前指定されたサブグループの解析は交互作用項(interaction terms)を用いて実施された(supplementary file参照).

副次アウトカムは,適切な分布を用いた一般化線形回帰(generalised linear regression)によって評価した.競合した死亡リスクを考慮するために,生存して退院した患者のみを含む入院期間に対する治療効果を評価するポストホック解析を行った.すべてのモデルは,連続変数としての年齢と性別で調整された.結果は対応する95%信頼区間で示されている.75人の患者が15日間の追跡調査を終了した時点で,1回の中間解析が計画された.独立したデータモニタリング委員会が中間解析を実施した.

解析はRソフトウェア(R Core Team)を用いて実施された16)P値は副次アウトカムおよび探索的アウトカムについては報告されていない.副次アウトカムおよび探索的アウトカムの信頼区間の幅は多重比較のために調整されていないため,この区間は決定的な治療効果を推測するために使用すべきではない.

Results

202058日〜717日までの間に,合計129人の患者が募集された.トシリズマブ群では15日目の死亡者数が過多であったため,データモニタリング委員会の勧告に従い,初回中間解析後の2020717日に試験は早期に中断された(supplementary file).急速に登録が進んだため,最初の75人の患者の15日間の追跡調査に関する完全データが入手でき,初回中間解析が実施された時点で,129人の患者が本試験に登録されていた(最初の患者は202058日に登録された).最後の患者の追跡は2020811日に完了した.supplementary fileTable 1は,場所別に登録された患者数を示したものである.トシリズマブ+標準治療に割り付けられた患者は65人であり,全員が予定通り治療を受けた(Figure 1).標準治療のみに割り付けられた患者は64人であった; しかし,患者2人は,医師の判断でトシリズマブが投与された.15日間の追跡調査は全例で完了した.

 

 

Table 1: Baseline characteristics of patients with severe or critical coronavirus disease 2019 and assigned to tocilizumab plus standard care or standard care alone. Values are numbers (percentages) unless stated otherwise.

 

Figure1: Allocation, follow-up, and analysis of trial participants.

 

Table 1およびsupplementary table S2は,対象となった患者のベースライン特性を示している.患者の平均年齢は57歳(SD14)で,68%が男性であった(Table 1).高血圧,糖尿病,肥満が最も一般的な併存疾患であった.患者の7%が登録時にコルチコステロイドを投与されていた他の薬剤(抗菌薬,抗ウイルス剤,副腎皮質ステロイド)の使用は、最初の15日間では両群間で差がなかった(supplementary table S3トシリズマブ群では登録時に補助酸素を使用している患者が多かった(60% vs 44%)が,対照群では非侵襲的人工呼吸または鼻カニューレを介した高流量酸素の使用が多かった(23% vs 41%

Primary outcome:

Table 2supplementary figure S1は主要アウトカム(15日目の7レベルの序列尺度)の分布を示した.そしてFigure 2は群別の経時的な患者状態を示したものである.Supplementary table S4は,7レベルの序列尺度におけるカテゴリーの累積割合を示し,オッズ比例の仮定が保てなかったことを示している.トシリズマブの使用は,機械式換気の改善や15日目の死亡とは関連していなかった(トシリズマブ群65人中18人(28%),標準治療群64人中13人(20%: オッズ比1.54, 95%CI 0.66-3.66, P= 0.32主要アウトカムである15日目の死亡は,トシリズマブ+標準治療群では11人(17%)で発生し,標準治療群では2人(3%)であった(オッズ比6.42, 1.59-43.2プロトコールごとに事前設定された感度解析と,7レベルの序列尺度でベースラインの臨床状態を調整したpost hoc感度解析でも,治療の有益性を示唆するものではなかった(supplementary file主要アウトカムに対する効果は,事前指定されたサブグループ間で全体的に類似していた(supplementary table S6

Table 2: Primary and secondary outcomes. Values are numbers (percentages) unless stated otherwise.

 

 

 

 

 

Figure 2: Relative distribution of patient status over time stratified by treatment group. Six level ordinal scale—1: not admitted to hospital; 2: admitted to hospital, not receiving supplemental oxygen; 3: admitted to hospital, receiving supplemental oxygen; 4: admitted to hospital, receiving non-invasive ventilation or high flow oxygen through a nasal cannula; 5: receiving mechanical ventilation; 6: death.

 

Secondary outcomes:

トシリズマブは,28日までの死亡率(オッズ比2.70, 95%CI 0.97-8.35)あるいは院内死亡率(2.70, 0.97-8.35)のいずれにおいても検出可能な有意差とは関連していなかった(Table 2トシリズマブは、28日までの死亡率(オッズ比2.7095%信頼区間0.978.35)または院内死亡率(2.700.978.35)のいずれにおいても検出可能な有意差とは関連していなかった(Table 2Supplementary tables S7S8に死因を示す.8日目と29日目の臨床状態は治療群間で有意差はなかったトシリズマブに割り付けられた患者の方が入院期間は短かった(平均11.3SD 8.0vs 14.78.2)日; 率比0.70, 95%CI 0.55-0.87).生存して退院した患者のみを含むpost hoc解析でも,トシリズマブに割り付けられた患者の方が入院期間は低いままであった(平均11.98.4vs 14.88.6)日; 率比0.75, 0.58-0.9429日以内の無人工呼吸器日数,29日以内の補助酸素離脱までの時間,二次感染症,血栓塞栓イベントを含むその他の副次アウトカムでは有意差は認められなかった

Safety:

トシリズマブ群29人(43%)と標準治療群21人(34%)で有害事象が発生した(P= 0.26)(Table 3).重篤な有害事象はトシリズマブ群で11人(16%),標準治療群で7人(11%)に認められた.トシリズマブを投与された患者と投与されなかった患者の間では,特定の有害事象の発生率に検出可能な差は認められなかった

 

 

Table 3: Adverse events (safety population). Values are numbers (percentages).

 

 

Inflammatory markers and cytokines:

インターロイキン6IL-6)のレベルは,トシリズマブ+標準治療に割り付けられた患者では,標準治療のみに割り付けられた患者と比較して,5日目と8日目に高かった(supplementary figure S2, table S9).γインターフェロンのレベルは,トシリズマブ群では5日目により高かったが,8日目には高くなかった.トシリズマブに割り付けられた患者では,IL-105日目には有意差はなかったが,8日目にはより高かった.CRPは,5日目,8日目ともにトシリズマブ群が対照群に比べてより低かった.他のサイトカインの血清濃度には治療群間で有意差は認められなかった.

Discussion

比較的若い(平均年齢57歳)重症または重篤Covid-19入院患者を含むこのオープンラベル多施設共同ランダム化比較試験において,IL-6阻害剤トシリズマブの使用は,15日目の7レベルの順列尺度評価でも,臨床アウトカムの改善にはつながらなかった15日目の死亡率はトシリズマブ投与群で増加した15日目の死亡率は本試験では事前指定されたアウトカムではなく,むしろ主要アウトカムの構成要素であったが,このエンドポイントへの有害な影響は安全性を懸念させ,データモニタリング委員会は試験の早期終了を推奨した.逆に,両群とも死亡はCovid-19関連の急性呼吸不全または多臓器不全に起因するものであった.さらに,29日目には死亡率に対するトシリズマブの影響は統計的に有意ではなくなっていた.

関節リウマチとCAR-Tにおけるトシリズマブの強力な抗炎症活性を考えると,我々の結果は予想外のものであった.Covid-19患者では,サイトカインの急激な増加は通常,炎症性マーカーの増加と臨床的悪化を伴い,それはCAR-Tを想起させる6)17)-19)

したがって,Covid-19患者のIL-6をブロックすることによって,炎症反応が軽減され,この疾患のより悲惨な結果を回避できる可能性があると考えられていた.しかし,臨床観察や生物学的な妥当性(biological plausibility)はランダム化臨床試験では多くの場合(often)確認されていない20)-23)

トシリズマブ投与後のCRPレベルの低下は,抗炎症作用を示唆している.逆に,我々の研究で観察された血清IL-6レベルの上昇は,トシリズマブ使用後の関節リウマチやキャッスルマン病で報告されている19).トシリズマブはIL-6受容体に結合するヒト化抗体(humanised antibody)であり,IL-6のシグナル伝達を阻害する.関節リウマチでは,IL-6レベルの上昇にもかかわらず,炎症マーカーや臨床症状は改善する.したがって,血清IL-6の増加は,IL-6受容体を介したクリアランスの阻害と疾患活動の継続を表している可能性がある24).トシリズマブを投与した患者において,血清IL-2IL-4TNF-αレベルに統計的に有意な変化が認められなかったことは,この治療介入がSARS-CoV-2感染症の中心的なイベントを阻害するものではなく,むしろIL-6の下流の影響(downstream effects)の調節に限定している可能性がある6)24)

これらの結果は,Covid-19における免疫調節の役割をもつ可能性があるコルチコステロイドを超えたCovid-19の治療における抗炎症的アプローチに疑問を投げかけるものである.デキサメタゾンは,補助酸素または機械式換気を必要とするCovid-19患者の28日死亡率の減少と関連していることが明らかにされた25)単一の抗サイトカインのアプローチは,Covid-19の炎症反応の幅(the breadth of the inflammatory response)を阻害しないかもしれないそして単一の薬剤としての役割は限定的である可能性がある

Comparison with other studies:

非ランダム化試験では,トシリズマブがCovid-19に伴うサイトカイン放出症候群を抑制する役割を果たす可能性が示唆されている26)-34).すべてではないが,ほとんどの観察研究でトシリズマブの臨床アウトカムに対する有用性が示唆されている.しかし,観察研究の結果は交絡因子のリスクが高いため,限られたものとなっている.逆に,ランダム化比較試験では,それぞれの主要アウトカムに対するトシリズマブの有益な効果は示されていない.重症COVID-19肺炎患者に対するトシリズマブの安全性および有効性評価試験(COVACTA)では,452人の低酸素血症患者が登録されたが,トシリズマブは7段階の序列尺度で評価され,28日目の臨床アウトカムに影響を及ぼさなかった20).しかし、集中治療室期間と入院期間はトシリズマブ投与群の方が低かった。CORIMUNO試験では,131人の低酸素血症患者が含まれており,28日目の臨床アウトカムに対するトシリズマブの効果は示されなかった21)The Boston Area COVID-19 Consortium (BACC) Bay Tocilizumab試験では,242人の低酸素血症患者がランダム化され,28日間における挿管までの時間や死亡に差はなかったと報告された22)126人の低酸素血症患者を登録した別の研究では,14日目の病勢進行に対する有効性は報告されていない23)

トシリズマブの効果が得られる可能性の高い集団を特定することは,これまでのところ不可能であった.我々は,少なくとも2つの臨床検査マーカーの増加と低酸素血症によって定義される顕著な炎症性表現型(inflammatory phenotype),肺障害を併発している患者では,トシリズマブの有効性を見いだせなかった.観察的研究では,トシリズマブの有益な効果は,疾患経過の早い時期の治療開始が関係していることが示唆されている.

例えば,STOP-covid試験35)では,症状発現からICU入院までの期間が3日以内の患者においてのみ,トシリズマブによる死亡率の減少が認められた.逆に,我々の試験を含むトシリズマブを評価したすべてのランダム化試験では,ベースラインにおける症状の平均持続期間は8-12日であった20)-23).それにもかかわらず,post hocサブグループ解析では,トシリズマブの開始時期が早い(≤ 10日)vs 遅い(> 10日)では,臨床アウトカムに対するトシリズマブの治療効果が変化するという証拠は見出されなかった(supplementary table S10).

Limitation of this study:

我々のベースラインデータは,呼吸サポートとアジスロマイシンの使用を除いてバランスが取れていた.重要な予後マーカーである呼吸サポートのレベルは,トシリズマブに割り付けられた患者ではより低かった.ベースラインの呼吸サポートレベルを調整したpost hoc解析の結果は本解析の結果と一致し,主要アウトカムに対する有意な影響は認められなかった.トシリズマブに割り付けられた患者では,ベースラインでのアジスロマイシンの使用は少なかったが,この薬はCovid-19入院患者には効果がないことが証明されている39)-41)

我々の試験には他にもlimitationsがある.第一に,これはオープンラベル試験である.主要アウトカムである15日目における7レベルの序列尺度の評価は客観的であるが,気管内挿管を行うかどうかの判断とそのタイミングは術者に依存する.第二に,サンプルサイズが比較的小さかったことである.そのため,主要アウトカムに対する効果の95%信頼区間は広く,オッズ比は0.66(トシリズマブの有益性)と3.66(トシリズマブの有害性)の範囲であった.第三に,15日目における7レベルの序列尺度の分布は,アウトカムを二値変数として再分類する必要があった比例オッズの仮定に適合していなかった.この所見は,主要アウトカムに対する治療効果を検出するための統計的な力をさらに低下させることにつながった.第四に,適格性を評価した患者数を記録していない。第五に,ランダム化後に我々は幅広いクラスに分けて併用治療に関する情報を収集した: 抗ウイルス薬,コルチコステロイド,抗菌薬.これらの共同介入は,両治療群に割り付けられた患者に対して,15日目までは同様に投与された.しかし,特定の作用(specific agents)によるこれらの薬剤の使用状況を報告することはできない.いずれにしても,コルチコステロイドと,おそらくレムデシビル(ブラジルでは利用できない)を除いて,抗ウイルス薬や抗生物質は,covid-19で入院した患者の臨床経過を変えることは示されていない39)-41)

Conclusions

重症または重篤covid-19入院患者を含む本試験では,トシリズマブと標準治療を併用しても,15日後の患者の臨床状態の改善において標準治療単独よりも優れておらず,死亡率が増加した可能性がある

 

 

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COVID-19関連追加(2021127日)トシリズマブについてその2

24日追記しました

EMPACTA phase 3 trialについて】

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BACKGROUND

COVID-19肺炎は,しばしば高炎症(hyperinflammation)と関連している.Covid-19の発生率は,医療サービスが行き届いていない集団や人種・少数民族において不均衡であるにもかかわらず,Covid-199肺炎で入院しているこれらの集団の患者における抗インターロイキン-6受容体抗体トシリズマブの安全性と有効性は明らかになっていない.

METHODS

TRIAL DESIGN AND OVERSIGHT:

我々は,機械式換気を受けていないCovid-19肺炎入院患者を対象に,トシリズマブの安全性と有効性を評価するために,無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験を実施した.これらの患者におけるトシリズマブの臨床プロファイルの理解を深め,臨床試験では一般的ではない,十分なサービスを受けていないマイノリティ集団の患者へのアクセスを可能にするために,ハイリスク集団やマイノリティ集団が登録されているグローバル試験実施施設が含まれている.

18歳以上(年齢上限なし)で,ポリメラーゼ連鎖反応検査陽性および放射線画像検査で確認されたCovid-19肺炎で入院した患者を登録対象とした患者は,室内気の血中酸素飽和度が94%未満であったが,CPAPBiPAP,機械式人工呼吸を受けている場合は除外された.患者は,抗ウイルス治療,全身性グルココルチコイドの限定使用(推奨用量,メチルプレドニゾロンまたは同等薬を1mg/kg以下),および支持療法を含む標準治療を受けた.24時間以内に疾患進行が切迫し,死亡が避けられないと主治医が判断した場合,または活動性結核または活動性の細菌,真菌,ウイルス感染(SARS-CoV-2感染または十分に管理されたHIV感染を除く)が疑われる場合は除外された.併存疾患を有する患者は,治験責任医師が試験への安全な参加を妨げると判断した場合を除き,除外されなかった.

permuted-block randomizationそしてan interactive voice- or Web-response systemを用いて、標準治療とトシリズマブ静脈内投与(8mg/kg1回の投与量は最大800mgまたはプラセボのいずれかの投与を受ける患者を2:1の割合で無作為に割り付けた.無作為化は国(米国,メキシコ,ケニア,南アフリカ,ペルー,ブラジル)と年齢(≤ 60歳または> 60歳)によって層別化された.患者の臨床徴候や症状が悪化したり,改善しなかったりした場合(すなわち,持続的な発熱や悪化した状態を7カテゴリーの順序尺度を用いて評価した)には,1回目の点滴から824時間後に追加点滴を行うことができた.

有効性は28日目までに評価され,患者は合計60日間追跡された.28日目までに退院した患者は試験を完了したとみなされ,28日目まで毎週追跡調査が行われ,60日目までに安全性の追跡調査が行われた.

OUTCOME MEASURES:

主要有効性アウトカムは,28日目までの機械式換気(侵襲的機械式換気またはECMO)または死亡とした.主要有効性アウトカムの評価に加えて,年齢,人種または民族,地域,グルココルチコイド使用,抗ウイルス薬使用,そしてトシリズマブまたはプラセボの投与回数に応じて主要有効性解析は評価された.

28日間の主な副次有効性アウトカムは,退院あるいは退院準備までの時間であり,7 カテゴリーの序列尺度(17 の範囲に分類され,高い方が病状悪化していることを示す)を用いて評価した; 臨床状態が7カテゴリーの順序尺度でベースラインと比較して少なくとも2カテゴリー改善するまでの時間(ベースライン時にカテゴリー2の患者では,カテゴリー1になれば閾値を満たしていると考えられる); 臨床不全(clinical failure)に至るまでの時間(死亡,機械式換気,ICU入院[または,試験登録時に既にICUにいた患者では,7カテゴリーの順序尺度でベースラインと比較して2カテゴリー悪化],あるいは中止までの時間[いずれか先に発生したもの]; および死亡

有害事象の発生率および重症度を評価した.これらのイベントは,National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events, version 5.0に従って決定された.

STATISTICAL ANALYSIS:

修正intention-to-treat集団は,無作為化され,トシリズマブまたはプラセボのいずれかを投与された全患者から構成された.患者379人を無作為化し2:1で割り付けた場合,累積イベント率(死亡または機械式人工呼吸)をトシリズマブ群で25%,プラセボ群で40%と仮定した場合,log-rank検定を用いて主要アウトカムにおける群間差を15%ポイント検出する力が少なくとも80%になると推定した.有効性の解析は,修正intention-to-treat集団で行われ,患者は治療割付に従って群別化された.解析は年齢群(≤ 60歳または> 60歳)で層別化した.

主要アウトカムはKaplan-Meier法で推定し,累積発生曲線(cumulative incidence curves)を層別対数順位検定で2群間において比較した.ハザード比(プラセボと比較したトシリズマブにとって)および95%信頼区間の推定には,層別Cox比例ハザードモデルを用いた,この解析では,生存していて28日目以前に機械式換気を受けなかった患者のデータは,最終追跡日または28日目のいずれか早い方で打ち切られた.

主要アウトカムおよび主要副次アウトカムは,5%の有意水準で試験全体の第一種の過誤(the overall trial-wide type I error rate)をコントロールするために,階層的に評価した.主要アウトカムが両側5%有意水準で有意になった場合,主要副次アウトカムは,退院または退院準備までの時間,臨床状態の改善までの時間,臨床不全までの時間,死亡といった事前定義済みの順番でテストされた.

Time-to-event副次アウトカムは,Kaplan-Meier法を用いて2群間で比較した.退院または退院準備までの時間,および臨床状態の改善までの時間の解析では,死亡は28日目に打ち切られた.退院前または退院準備前,または臨床状態が改善する前に試験を中止した患者に関するデータは,最後の順序尺度評価の日付で打ち切られた.臨床不全に至るまでの時間の解析では,28日目までに臨床不全に至らなかった患者のデータは,最後の接触日または28日目のいずれか早い方で打ち切られた.28日目までの死亡率の群間差を評価するために,年齢を調整したCochran-Mantel-Haenszel検定を用いた.報告された95%信頼区間は,多重性(multiplicity)については調整されておらず,効果を評価するためには使用できない.死亡を競合リスクとして扱い,退院までの時間と臨床状態が改善するまでの時間の感度分析を行った.

安全性はトシリズマブまたはプラセボのいずれかを投与されたすべての患者で評価された; 患者は実際に投与された薬剤によって群別化された.中間安全性レビューは,内部モニタリング委員会により実施された.

RESULTS

PATIENTS:

全体では,6ヶ国からの患者389人が無作為化された; 1人が誤って無作為化された.そして377人がトシリズマブまたはプラセボを投与された(Figure 1, Table S2).修正intention-to-treat集団では,患者249人がトシリズマブ+標準治療,患者128人がプラセボ+標準治療に割り付けられた; プラセボを受けるように割り付けられた患者1人がトシリズマブを投与され,患者11人がトシリズマブまたはプラセボを投与されなかったため,安全性集団にはそれぞれ患者250人と127人が含まれた.全体では,トシリズマブ群で225人(90.4%),プラセボ群で115人(89.8%)の患者が試験を終了した; 死亡した患者を除くと,トシリズマブ群では0人,プラセボ群では2人(1.6%)が28日目前に試験を中止した.追跡期間の中央値は両群とも60日であった.

疾患特性は,両群では概ね均衡がとれていた(Table 1, Table S4.トシリズマブ群とプラセボ群では,それぞれ患者の60.2%57.0%が男性であり,平均(±SD)年齢はそれぞれ56.0±14.3歳,55.6±14.9歳であった.トシリズマブ群とプラセボ群では,それぞれ患者143人(57.4%)と68人(53.1%)がヒスパニック系またはラテン系,35人(14.1%)と21人(16.4%)が黒人,33人(13.3%)と15人(11.7%)がアメリカインディアンまたはアラスカネイティブであった.試験前または試験期間中の7日間に,トシリズマブ群200人(80.3%),プラセボ群112人(87.5%)が全身性グルココルチコイド投与を受け抗ウイルス薬投与を受けたのはそれぞれ196人(78.7%),101人(78.9%であった(Table S5; デキサメタゾン投与を受けたのはトシリズマブ群55.4%,プラセボ群67.2%,そしてレムデシビル投与を受けたのはトシリズマブ群52.6%58.6%であった(Table S6

 

 

Figure 1: Enrollment, Randomization, and Follow-up.

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Table 1: Characteristics of the Patients at Baseline in the Modified Intention-to-Treat Population.

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PRIMARY EFFICACY OUTCOME:

機械式人工呼吸を受けた患者または28日目までに死亡した患者の累積割合は,トシリズマブ群(12.0%; 95%信頼区間[CI], 8.5-16.9がプラセボ群(19.3%; 95%CI, 13.3-27.4)に比べて有意に低かった(ハザード比, 0.56; 95%CI, 0.33-0.97; 対数順位検定によるP= 0.04.結果をTable 2およびFigure 2に示す.

Table 2: Primary and Key Secondary Efficacy Outcomes by Day 28 in the Modified Intention-to-Treat Population.

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Figure 2: Time to Mechanical Ventilation or Death by Day 28 in the Modified Intention-to-Treat Population.

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SECONDARY OUTCOMES:

28日間における退院または退院準備までの時間の中央値は,トシリズマブ群で6.0日(95%CI, 6.0-7.0),プラセボ群で7.5日(95%CI, 7.0-9.0)であった(ハザード比, 1.16; 95%CI, 0.91-1.48)(Table 2, Figure S1).死亡を競合リスクとして扱った場合も同様の結果が得られた(ハザード比, 1.14; 95%CI, 0.92-1.42)(Table S7, Figure S2).28日間の臨床状態の改善の時間について7カテゴリーの順序尺度で評価した中央値は,トシリズマブ群で6.0日(95%CI, 6.0-7.0),プラセボ群で7.0日(95%CI, 6.0-9.0)であった(ハザード比, 1.15; 95%CI, 0.90-1.48)(Table 2, Figure S3).死亡を競合リスクとして扱った場合も同様の結果が得られた(ハザード比, 1.14; 95%CI, 0.92-1.41)(Table S8, Figure S4).28日目までの臨床不全までの時間の中央値は,どちらの群でも推定できなかった(ハザード比, 0.55; 95%CI, 0.33-0.93)(Table 2, Figure S5).28日目までの死亡率は,トシリズマブ群で10.4%95%CI, 7.2-14.9),プラセボ群で8.6%95%CI, 4.9-14.7)であった(加重差[weighted difference], 2.0ポイント, 95%CI, 5.2-7.8)(Table 2).

EXPLORATORY OUTCOMES:

人種または民族別の主要有効性解析の結果は,修正intention-to-treat集団における結果と一致した.追加のサブグループ解析の結果をFigure S6に示す.

 

 

SAFETY:

データカットオフ日は2020930日とした.全体では,60日目までの有害事象はトシリズマブ群250人の50.8%,プラセボ群127人の52.8%であり,重篤な有害事象はそれぞれ15.2%19.7%で報告された(Table 3, Table S9).死亡はトシリズマブ群で29人(11.6%),プラセボ群で15人(11.8%)に発生した(Table 3, Table S10; 機械式人工呼吸前後の死亡に系統的なパターンは認められなかった(Figure S7).60日目までに,トシリズマブ群では13人(5.2%)で16件の重篤な感染症が,プラセボ群では9人(7.1%)で11件の重篤な感染症が認められた.28日目までにトシリズマブ群250人のうち8人(3.2%),プラセボ群127人のうち6人(4.7%)に7カテゴリーの順序尺度でカテゴリー6までの病状進行が認められた.

Table 3: Adverse Events through Day 60 in the Safety Population.

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DISCUSSION

機械式換気を受けていないCovid-19肺炎入院患者を対象としたトシリズマブの第3相試験では,ハイリスク患者や人種および民族的マイノリティ集団の患者の登録に重点が置かれた.これらの患者はCovid-19の影響を不均衡に受けており,臨床試験では過小評価されていることが多い11)-20)全体では,患者の25%以上が65歳以上の高齢者であり,75%以上が少なくとも1つの併存疾患を有し,80%以上がマイノリティの人種または民族であった

この試験では,トシリズマブ+標準治療を受けた患者では,プラセボ+標準治療を受けた患者に比べて,28日目までに機械式換気への進行または死亡する可能性が有意に低かったことが示されたあらゆる原因による死亡のみを副次アウトカムとして評価した場合,死亡率に関する有益性は認められなかった1つの仮説は,トシリズマブ投与後に機械式換気に移行した患者は,より重症度の高い患者のサブグループを構成しており,そのため死亡リスクが高いのではないかというものである; この仮説は,トシリズマブ群よりもプラセボ群の方が機械式換気を受けずに死亡した患者の割合が多かったという事実によって裏付けられている.この問題にさらに取り組むための研究が進行中である.28日目までの退院までの期間の中央値は,トシリズマブ群の方がプラセボ群よりも1.5日短かったが,範囲は重複していた.

試験に参加した患者の84%はヒスパニック系またはラテン系,黒人,アメリカインディアンまたはアラスカネイティブであった.分析は探索的であったが,人種や民族に応じて評価された主要有効性アウトカムは,患者全体のアウトカムと一致していた

COVID-19患者におけるトシリズマブの有効性は,他の無作為化試験で検討されている.無作為化プラセボ対照のCOVACTA試験31)およびBoston Area COVID-19 ConsortiumBACCBay Tocilizumab試験34)では,ベースライン時の重症度がEMPACTA試験とは異なる患者が含まれていた.COVACTA試験では,ベースラインで中等度の低酸素血症から侵襲的機械式換気までの状態を有する患者が登録されていたのに対し,EMPACTA試験ではベースラインで機械式換気を受けておらず,より早期の疾患ステージにある患者が登録された31)BACC Bay Tocilizumab試験にもベースラインで機械式換気を受けていない患者が含まれていた; しかし,患者の96%7つのカテゴリーの順序尺度でベースラインのカテゴリーが2または3であったが,一方EMPACTA試験では患者の26.5%がこの尺度でベースラインのカテゴリーが4であった34)

COVACTA試験,BACC Bay Tocilizumab試験,RCT-TCZ-COVID-19試験、CORIMUNO-TOCI-1試験の患者と比較して31)-34)EMPACTA試験では,患者の50%以上がグルココルチコイドまたは抗ウイルス薬を併用していた; これらの治療薬は標準治療の主力となってきている39).これらの治療法は一様に使用されたわけではなく,患者は完全な治療過程を受けたわけではないかもしれないが,我々の結果は,特に米国でレムデシビルが承認されたことを考慮すると,最新の標準治療を反映している.グルココルチコイドと抗ウイルス薬の使用は両群で概ね均衡が取れており,本試験ではトシリズマブが機械式換気への移行率を低下させるという点で臨床的に有益であることが示されたCOVACTA試験では,退院までの時間の中央値はトシリズマブ群で20日,プラセボ群で28日であったのに対し,EMPACTA試験ではそれぞれ6.0日,7.5日であった31)COVACTA試験ではEMPACTA試験と比較して,ベースライン時の重症度が高かったこと,併用療法を受けている患者の割合が異なっていたこと,COVACTA試験以降に治療水準が向上していたことなどが挙げられる.

CORIMUNO-TOCI-1試験では,2つの有効性アウトカムのうち1つ(14日目までの侵襲的または非侵襲的機械式換気なしの生存率)を満たしていたが,28日目の死亡率はトシリズマブ群とプラセボ群で差はなかった33)COVACTA試験,BACC Bay Tocilizumab試験,RCT-TCZ-COVID-19試験はそれらの有効性アウトカムの基準を満たしておらず,COVACTA試験とBACC Bay Tocilizumab試験のいずれにおいても,トシリズマブは28日目の死亡率の有益性とは関連していなかった31)32)34)我々の試験でも,死亡率に有意な群間差は認められなかった

本試験の結果から,トシリズマブの恩恵を受ける可能性が最も高い患者は中等症または重症患者(すなわち,低酸素血症であるが機械式換気を受けていない患者)であり,トシリズマブは抗ウイルス治療とグルココルチコイドの潜在的な恩恵に加わる可能性があることが示唆された本試験では,トシリズマブ群では55.4%,プラセボ群では67.2%にデキサメタゾンが投与されていたそして主要アウトカムではトシリズマブの方がプラセボよりも大きな効果が認められた.現在進行中の試験では,特定の免疫調節療法(immunomodulatory therapies)の恩恵を受ける可能性の高い患者サブグループを明らかにするための研究が進められている.

CONCLUSIONS

本試験では,機械式換気を受けていないCovid-19肺炎入院患者において,トシリズマブと標準治療を併用した方が,プラセボと標準治療を併用した場合と比較して,機械式換気への進行または死亡の複合アウトカムを減少させる効果が高いことが示された; しかし,あらゆる原因による死亡の発生率には差は認められなかったこのようなリスクの低下が,臨床研究では十分に説明されていないことが多い集団を含む患者群で観察された.人種または民族集団に応じた主要分析の結果は,修正intention-to-treat集団での結果と一致した

 

 

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