COVID-19関連追加(2021年2月2日)COVID-19の後遺症について その2
JAMA,LANCETから2編.
★当院関連ファイル:・2020年7月11日(後遺症について)
【COVID-19患者における退院後4ヶ月間の呼吸器系および心理物理的後遺症】
Bellan M, et al. Respiratory and Psychophysical Sequelae Among Patients With COVID-19 Four Months After Hospital Discharge. JAMA Netw Open. 2021;4(1):e2036142. Jan 27, 2021. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2020.36142.
<Introduction>
SARS-CoV-2感染は,全く無症状の場合もあれば,COVID-19を引き起こす場合もあり,その臨床転帰は軽度の上気道症状から呼吸不全と高い致死率を伴う重症のものまである1).2020年11月現在,全世界で6,000万人以上がSARS-CoV-2に感染し,140万人以上が死亡している2).
COVID-19パンデミックが始まって以来,多くの研究者がSARS-CoV-2感染の急性期の臨床的特徴と予後に注目してきた3)4).その結果,パンデミックの初期に比べて,COVID-19患者の予後を推定し、臨床治療を最適化することができるようになった5).
対照的に,COVID-19の呼吸器系または機能的な後遺症の種類と重症度は不明である.COVID-19は全身性疾患であるが6), 肺は,びまん性の肺胞上皮の破壊,毛細血管傷害あるいは出血,硝子膜形成,肺胞中隔線維性増殖,そして肺浸潤(pulmonary consolidation)といった病理組織所見を呈する可能性があり,一般的には最も影響を受ける7).
その結果,COVID-19から回復した患者では,一般的には肺拡散能(DLco)が変化しており8),数ヶ月から数年にわたる肺機能の障害を伴うSARS や中東呼吸器症候群(MERS)9)10)に似ている.運動能力障害はしばしばDLcoの低下と平行する: SARS肺炎から回復した患者では,6分間歩行テストと36-item Short Form General Health Survey scoreが一般集団よりも持続的に低いことがわかっている9).さらに,COVID-19に関連する機能障害は,有害な心理的転帰(psychological outcomes)にも関連しているかもしれない.COVID-19に関連する機能的および心理的側面を調査する集学的アプローチ(multidisciplinary approach)は,COVID-19に関連する潜在的な後遺症を明らかにする上でより効果的であるかもしれない.この前向きコホート研究では,COVID-19からの回復4ヵ月後の機能的・心理的障害の有病率と臨床的関連を調査することを目的とした.
<Methods>
■Study Population:
COVID-19で入院していたイタリアのNovaraにあるAzienda Ospedaliero-Universitaria Maggiore della Carità大学病院から,2020年3月1日〜6月29日までに退院した18歳以上の連続患者(またはその介護者)767人に連絡を取った.患者には電話で連絡を取り,退院後3〜4ヶ月後に電話によるフォローアップを行った.合計35人(4.6%)の患者が退院後に死亡した.残りの患者のうち,494人(64.4%)が参加を辞退した(Figure).参加に同意した238人のうち,232人(97.5%)は入院中に鼻咽頭スワブの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりCOVID-19の診断が確認された; RT-PCR検査でSARS-CoV-2が陰性であった1人は気管支肺胞洗浄により診断が確認された.残りの5人の参加者は,SARS-CoV-2抗体陽性の血清学的検査と示唆的コンピュータ断層撮影を組み合わせて診断された.
匿名化後の臨床データを収集するために,Research Electronic Data Captureソフトウェア(Vanderbilt大学)を使用して電子症例報告書を作成した.データ入力はCOVID-19患者の治療に携わった臨床医が行った; 入院患者の臨床データは臨床カルテからレトロスペクティブに収集した.
患者の人口統計学的特徴と常用薬,COVID-19診断時の症状と入院中の合併症(レトロスペクティブに記録),併存疾患の種類および数(高血圧,2型糖尿病,脂質異常症,慢性閉塞性肺疾患(COPD),肥満,炎症性腸疾患,慢性肝疾患,自己免疫疾患,血液疾患,冠動脈疾患(CAD),心房細動およびその他の構造的または不整脈原性心疾患,内分泌疾患,慢性腎臓病(CKD),脳卒中または静脈血栓塞栓症の既往、不安および抑うつ、または活動的な悪性新生物など)のデータを収集した.さらに,発熱,咳,呼吸困難,味覚消失,嗅覚消失,下痢,関節痛,筋肉痛,胸痛,喉の痛み,頭痛,およびCOVID-19感染前と比較した身体活動耐容能低下の認識(perception of reduced tolerance to physical activity),といった患者の症状について,フォローアップ時のデータを収集した.
Figure:
■Pulmonary Function Tests:
すべての患者は,X9 pneumotach (COSMED)によるQuark PFTによる標準的な肺機能検査(PFT)を受けた: FEV1,VC,FVC,DLCOおよびDLCO定数,およびTLCを測定した.DLCOとTLCは一回呼吸法で測定した.DLCOに適切な補正を適用するために,ヘモグロビン値をPFTの前に評価した.
以下の安全対策を採用した: 検査室では,本プログラムに含まれない患者の交差感染を避けるために,専用のスパイロメーターを使用した.検査技師(および必要に応じて呼吸器専門医)はfull PPE(すなわち,フェイスマスク,N95レスピレーター,ガウン,手袋)を使用した.プログラムに含まれる患者間の交差感染を避けるために,抗菌フィルター付きマウスピースを使用し,患者ごとに交換した.各日の終わりに,検査室は消毒された.
■Physical Performance Tests:
立位でのバランス評価,4mの歩行速度,椅子からの立ち上がりを5回繰り返して行うShort Physical Performance Battery (SPPB)を用いて患者の身体能力を評価した.この検査では,患者を機能的状態に応じて階層化することができ,日常生活動作における障害の程度を予測することができる.スコアが10を超えていれば,健康な人の期待値となる14)15).
しかし,SPPBは高機能患者のパフォーマンスレベルを区別できない可能性があることに留意すべきである16).機能障害の検出感度を向上させるために,SPPBスコアが10を超える患者を2分間歩行テストで検査し,残存有酸素運動能力(residual aerobic capacity)を評価した; 2分間歩行テストのスコアは,年齢および性別をマッチさせた集団の基準データと比較された17)-19).
■Psychological Symptoms Tests:
我々は,外傷後ストレス(PTS: presence of posttraumatic stress)症状の存在を,Impact of Event Scale-Revised(IES-R)20)を用いて評価した: IES-Rは,過去7日間の出来事の発生頻度に基づいた15項目の自己評価4点スケール(0は全く発生していない; 1はまれ[rarely]; 3は時々[sometimes]; 5はよく発生する[often]).IES-Rのすべての項目は,特定のストレス要因(stressor)に固定されている.IES総主観的ストレススコア(IES total subjective stress score)の他に,2つのサブスケールが同定された.1つのサブスケールは,侵入的思考(intrusive thoughts),悪夢,侵入的感情およびイメージ(intrusive feelings and imagery)などの侵入症状(intrusive symptoms)を7つの項目を用いて測定したもので,スコアは0〜35の範囲であった; もう1つのサブスケールは,反応性麻痺(numbing of responsiveness),そして感情,状況,または考えの回避などの回避症状(avoidance symptoms)を8つの項目を用いて測定したもので,0〜40の範囲であった.
<Results>
解析対象となった患者238人のうち,年齢中央値(IQR)は61歳(50-71歳)で,142人(59.7%)が男性であった.参加者の主な特徴をTable 1に示した.入院中,66人(27.7%)は補助酸素を必要としなかった; 102人(42.9%)は鼻カニューレまたはベンチュリーマスクを介して酸素吸入を行った; 49人(20.6%)は非侵襲的人工呼吸を必要とした; 21人(8.8%)は機械式人工呼吸を行った.合計28人の患者(11.8%)がICUに入院し,中央値(IQR)は8.5日(5.5-20.5日)であった.
急性期に最も多く報告された症状は発熱,咳嗽,呼吸困難であったが,その後大部分は数ヶ月で寛解した.しかし,13人(5.5%)の患者が退院後4ヶ月でも呼吸困難を訴えていた(Table 1).4ヶ月後も12人(5.0%)に味覚消失が認められ,11人(4.6%)には嗅覚消失が認められた.さらに,14人(5.9%)はフォローアップ時に関節痛が残存していると報告し,14人(5.9%)は筋痛が残存していると報告した.
Table 1:
Table 2:
■PFTs:
合計14人の患者がPFTを完了できなかった.残りの患者224人のうち,FEV1の中央値(IQR)は予測値の101%(91.5-112%),FVCの中央値(IQR)は予測値の98.5%(90-109%)であった.さらに5人の患者がDLCOの評価を完了できなかったため,219人の患者で測定した.DLCOの中央値(IQR)は予測値の79%(69-89%)であった.DLCOが予測値の80%未満であったのは113人(51.6%)であった; より重度の障害(すなわち,DLCOが予測値の60%未満)は34人(15.5%)に認められた.DLCOの障害に関連する因子の単変量解析の結果は,補足のeTable 1およびeTable 2に記載した.ロジスティック回帰分析では,フォローアップ時のDLCOが予測値の80%未満と関連するリスク因子として,女性(オッズ比[OR], 4.33[95%CI, 2.25-8.33]; P< 0.001), CKD(OR, 10.12[95%CI, 2.00-51.05]; P= 0.005), 入院中の酸素投与の方法(OR, 1.68[95%CI, 1.08-2.61]; P= 0.02)が含まれていた.フォローアップ時のDLCOが60%未満であったことと関連するリスク因子は,女性(OR, 2.70[95%CI, 1.11-6.55]; P= 0.03), COPD(OR, 5.52[95%CI, 1.32-23.08]; P= 0.02), およびICU入院(OR, 5.76[95%CI, 1.37-24.25], P= 0.02)であった(Table 2).
■Physical Performance Evaluation:
身体機能については,SPPB検査の結果から53人(22.3%)に可動性の制限(limited mobility)が認められた.それ以外の患者にすべて2分間歩行検査を行い,75人(31.5%)によりわずかな障害(subtler impairment)が認められた.この方法により,ある程度の機能障害を有する患者128人(53.8%)を同定した.単変量解析の結果は,SupplementのeTable 3に,ロジスティック回帰解析の結果をTable 3に記載した.COPDは身体障害リスクの増加(OR, 12.70[95%CI, 1.41-114.85]; P= 0.02)と関連しており,より高いDLCO値は身体障害リスクの減少(OR, 0.96[95%CI, 0.94-0.98]; P< 0.001)と関連していた.
直接質問(directly questioned)では,50人の患者(21.0%)がCOVID-19後に運動耐容能が悪化したと報告した.単変量解析(SupplementのeTable 4)およびロジスティック回帰(Table 3)では,身体運動耐容能低下の認識が,入院中,より若年者およびICU入院と関連していることが明らかになった.
Table 3:
■Psychological Symptoms Tests:
最後に,PTSの症状についての検査を行った.IES-R質問票の結果は,136人(57.1%)の患者では基準範囲内であったが,軽度の症状があったのは61人(25.6%),中等度の症状があったのは27人(11.3%),重度の症状があったのは14人(5.9%)であった.中等度から重度のPTS症状の存在と独立して関連する唯一の因子は男性であった(Supplement eTable 5,; Table 4).
Table 4:
<Discussion>
COVID-19生存患者におけるSARS-CoV-2感染の持続的影響についてはほとんど知られていない.このコホート研究では,COVID-19生存患者のかなりの割合で,退院後4ヶ月後に呼吸器系または機能障害を経験しており,臨床的に関連する心理的影響を伴うことが明らかになった.実際,フォローアップ終了時には,研究集団の半数以上がDLCOは予測値の80%未満であった.予測値の60%未満というより厳しい閾値を適用した場合,重度の障害を持つ患者の割合は15%に減少した.このように,COVID-19生存患者のかなりの割合で有意に拡散障害が持続していた.pre-COVID-19測定値がないため,COVID-19とPFTの悪化との関連を正確に定量化することができない.しかしながら,他のPFTパラメーターは保たれるが,DLCOは単独で低下しており,DLCOの低下がCOVID-19患者で報告されている最も一般的な機能変化であるという報告8)を考えると,COVID-19に関連した障害と一致している.我々の結果と一致するように,Huangらの研究22)では,50%以上の患者のDLCOが退院後30日後に予測値の80%未満であったことが報告されている.しかし,Zhaoらの研究23)では,退院後3ヶ月後のDLCOが予測値の80%未満であった患者は55人中9人(16.4%)に過ぎなかったと報告されている.これらの研究で報告された集団は,我々の研究とは大きく異なり,年齢が若く(年齢中央値48歳),喫煙者の有病率が非常に低かった; したがって,これらの研究には基礎疾患として肺疾患を持つ患者は含まれていなかった.
DLCO低下に関連する因子については,女性が有意な因子であり,おそらくフィットネスレベル(fitness level)を反映していると考えられる24).興味深いことに,CKDの既往歴と入院中の酸素投与の方法がDLCO低下と関連していたが,これはおそらくより重篤な急性疾患のためであろう.逆に,重度の肺機能障害に関連する因子としてCOPDとICU入院が浮かび上がった.DLCO低下は,様々な臨床現場で,間質性肺疾患や全身性強皮症など肺線維症と関連している27)28); 拡散障害を有するCOVID-19生存患者において進行性肺線維症のリスクが増加しているかどうかは,より長いフォローアップが必要になる.実際,SARS肺炎後に線維化が進行したことが報告されている29).
我々の研究集団の53.8%では,ある程度の運動障害が観察された.この観察を説明するために,肺傷害,循環制限(circulatory limitation),筋力低下,重症ニューロパチー,ミオパチーなどのさまざまな要因が考えられる.我々のデータは肺機能障害との関連を示唆している; 実際,DLCOとCOPDの既往歴は身体機能障害と独立して関連していた.
興味深いことに,COVID-19は身体的パフォーマンスに有害な影響を与えると多くの人が認識しており,この認識と関連しているICUへの入院がdeconditioningと関連しているかもしれない.驚くべきことに,年齢はDLCO低下や運動機能障害とは関連していなかった.COVID-19では,症例致死率(CFR: case fatality rate)は年齢とともに増加する30); したがって,高齢患者では残存障害の負担が大きくなると予想するのが妥当であろう.我々のデータはこの仮説とは対照的である.我々は,高齢者ではベースラインでの併存疾患の負担が大きく,それが急性期の生存確率に悪影響を及ぼしていると推測するが,生存者では,若年者よりも残存した障害は悪化していなかった.本質的に,この知見によって,COVID-19から生存した高齢者は,若年者に比べて,morbidityの付加を伴わずに以前の健康状態に戻る能力が低いわけではないことが確認される.年齢の上昇が,しばしばCOVID-19患者をICUに入院させるための主要な制限の一つになることが多いことを考えると,この観察は重要な意味を持つ31).
精神的健康に関しては,臨床的に関連するPTS症状が患者の17%で認められたが,COVID-19生存患者の約20%が心的外傷後ストレス障害を発症したと報告したChang and Park32)などの他の研究と一致している.我々のデータでは,PTS症状と関連する唯一の独立因子は男性であった.
さらに,我々のデータはCOVID-19患者の急性期治療専用病院からの退院後最初の数ヶ月間(in the first months)における死亡率が残存していることを示唆している; 実際,COVID-19治療後に退院した患者の約5%が退院後数週間(a few weeks)以内に死亡している.これらの患者の死因についての情報はないが,この割合は無視できないものであり,私たちの知る限り,新たな懸念である.
最後に,疾患の残存症状の存在を調査した: COVID-19の急性期に呼吸困難を経験したと報告した患者の約10%で呼吸困難が持続した.Carfiら33)はCOVID-19生存患者の約40%に呼吸困難が残存していることを報告している.しかし,我々の研究では,より長い追跡期間(4ヶ月 vs 2ヶ月)であった.一方で、化学感覚機能障害を経験した患者の割合は相対的に高かった.Hajikhaniら34)のメタ解析によると,現症における味覚障害の推定割合は49.0%,嗅覚障害の推定割合は61.0%であった.これらの症状からの短期的な回復については,データが異なっている.Iannuzziら35)の研究では1ヶ月以内に完全に回復したと報告されているが,Locatelloら36)の研究では患者の約30-40%では部分的または完全な化学感覚喪失が持続すると報告されている.我々の研究では,COVID-19の急性期に変化があった患者の約17%では,味覚および嗅覚の変化が4ヶ月後も残存していた.この喪失がどのくらいの期間持続するかは不明である.興味深いことに,急性期に関節痛と筋痛を報告した患者の3分の1は,4ヶ月後でもこれらの症状を経験していた.我々の知見は2つのコホート研究と一致している33)37). しかし,我々の研究では,有症状患者の割合は,Carfiら33)やCarvalho-Schneidferら37)の研究で報告されたものよりも低く,時間の経過とともに改善していることを示唆している.全体として、これらの所見は,多くの患者にとってCOVID-19急性期後の回復が遅いことを示唆している.
Limitation: 我々の研究における主たる限界は患者の選択である: さらに,退院した患者の多くは研究の参加を辞退した(理由として,一部の患者では完全に回復していると認識したかもしれないし,あるいは追加の通院に参加できなかったかもしれない).すべての患者が参加していた場合,機能的または心理的な後遺症が残っている患者の実際の割合は低くなっていたかもしれないことを考えると,選択バイアスが生じた可能性がある.我々の心理的評価はPTS症状に限定されており,COVID-19の心理的影響(睡眠障害,不安,抑うつなど他の多くの側面を含む可能性がある)について決定的な結論を出すことはできない.さらに,退院後の最初の数ヶ月間に予想外に高い死亡率の残存が報告された.この懸念に関しては,更なる検討が必要である.
<Conclusions>
このコホート研究では,COVID-19入院患者のかなりの割合で,退院後4ヶ月までCOVID-19に関連した症状が依然として高い割合で報告されており,運動耐容能の低下が最も一般的であった.その他,呼吸器系や身体機能障害のようなCOVID-19の中期的な後遺症は精神的な健康(psychological health)に影響を与える可能性がある.肺傷害の残存は,COVID-19生存患者におけるQOLの低下と関連している可能性がある.年齢はCOVID-19関連の死亡率と関連する主要な因子であるが,退院後4ヶ月後には,本研究では高齢者ほど高い残存症状負担(residual symptomatic burden)は認められなかった.
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https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32656-8.
<Introduction>
COVID-19の長期的な影響についてはほとんど明らかにされていない.退院した患者の持続的な症状,肺機能,身体的,心理的問題に関する長期追跡調査が緊急に必要とされている3).サンプル数が限られた研究しか発表されておらず,退院後3ヶ月の追跡調査期間が最も長くなっている4)5)6)7)8).退院後の患者では,疲労や呼吸困難4)8),肺機能障害5)7),胸部画像異常6)などの持続的な症状が報告されているが,退院後の特徴の全容はまだ明らかになっていない.さらに急性期の傷害後に持続あるいは退院後に新たに発症する肺外臓器症状については報告されていない.目的は退院後の患者におけるCOVID-19の長期的な影響とこれらの影響に関連する疾患重症度を含む潜在的な危険因子を特定することである.
<Methods>
2020年1月7日〜2020年5月29日までにJin Yin-tan Hospital (Wuhan, China)から退院したCOVID-19が確認された患者を対象に、ambidirectional cohort studyを行った.フォローアップ前に死亡した患者,精神疾患,認知症あるいは再入院などでフォローアップが困難な患者,変形性関節症を併発しているため自由に動けない患者,脳卒中や肺塞栓症などの疾患により退院前・後において動けない患者,参加を拒否した患者,連絡が取れない患者,武漢以外の地域や介護・福祉施設に居住している患者はすべて除外した.すべての患者は,症状と健康関連のQOLを評価するための一連の質問票によるインタビュー,身体検査(physical examinations)と6分間歩行試験,血液検査を受けた.うち390人は肺機能検査,胸部HRCT,超音波検査を受けた.入院中の最も高い7項目の重症度尺度を,3,4,5-6とした層化サンプリング法を用いた.中国におけるSARS-CoV-2抑制のためのロピナビル試験に参加した患者には,SARS-CoV-2抗体検査を実施した.多変量調整線形またはロジスティック回帰モデルを用いて,疾患重症度と長期的な健康影響との関連を評価した.
※入院中の最も高い7項目の尺度(重症度尺度)(the highest seven-category scale during the hospital stay (termed the severity scale))10):
@通常の活動を再開できる状態で入院していない,A入院していないが通常の活動を再開できない,B入院しているが補助酸素を必要としない,C入院していて補助酸素を必要とする,D高流量鼻カニューレ(HFNC),非侵襲的機械換気(非IMV)(NIV),またはその両方を必要とする入院,E侵襲的機械換気(IMV),またはその両方を必要とする入院,F死亡.
<Results>
2020年1月7日〜2020年5月29日までにJin Yin-tan HospitalからCOVID-19患者2469人が退院し,2020年6月16日〜2020年9月3日までフォローアップ調査が行われた.患者736人は,いくつかの理由でフォローアップの予約に参加しなかったために除外された(Figure 1).特筆すべきは,患者2469人のうち33人(1.3%)が退院後に主として,基礎疾患である肺,心臓,腎臓疾患の悪化により死亡したことであり,詳細な特徴はappendixに示されている(pp7-9).25人の患者は,電話でフォローアップの連絡をした時は,基礎疾患の合併症で再入院したが、そのうちの1人は基礎疾患である肺線維症による呼吸不全で入院していた.3人の患者が虚血性脳卒中を発症し,1人の患者が退院後に下肢の深部静脈血栓症による急性肺塞栓症を発症した.最終的に,成人参加者1733人を登録し,問診,身体検査,臨床検査,6分間歩行テストを行った.1733人のうち94人が血液抗体検査を受けた.対象となった患者516人のうち390人が肺機能検査,胸部HRCT,下肢静脈および腹部超音波検査を受けた(Figure 1)。フォローアップの予約に参加しなかった736人に含まれた,この残りの患者126人は,これらの検査を受けなかった.
Figure 1: Flow chart of patients with COVID-19 discharged from Jin Yin-tan Hospital between Jan 7, and May 29, 2020.
参加者の人口統計学的および臨床的特徴をTable 1に示す.登録参加者の年齢中央値は57.0歳(47.0-65.0歳)で,男性897人(52%),女性836人(48%)である.併存疾患は高血圧(505人, 29%)が最も多く,次いで糖尿病(207人, 12%),心血管疾患(128人, 7%)となっている.参加者1733人のうち1172人(68%)が入院中に酸素療法を必要とし、122人(7%)がHFNC,非IMV,またはIMVを必要とした.参加者76人(4%)が集中治療室(ICU)に入院した.入院期間の中央値は14.0日(10.0-19.0),ICU入室時間(time exclusively in the ICU)は14.0日(6.5-25.5)であった.重症度尺度が高い参加者では男性の割合が高くなっている: 重症度尺度3では49%(439人のうち214人),重症度尺度4では52%(1172人のうち605人),重症度尺度5-6では64%(122人のうち78人)であった.症状発症からフォローアップ受診までの期間中央値は186.0(175.0-199.0)日,退院からフォローアップ受診までの期間中央値は153.0(146.0-160.0)日であった(Table 1).
Table 1: Characteristics of enrolled patients.
76%の患者(1655人のうち1265人)がフォローアップ時に少なくとも1つの症状を報告し(Table 2),女性ではより高い割合が観察された(appendix pp10-11).尺度5-6の参加者における少なくとも1つの症状を呈するリスクは,尺度3の参加者よりも高かった(OR 2.42, 95%CI 1.15-5.08).退院後の症状で最も多かったのは,疲労または筋力低下(1655人のうち1038人[63%])と睡眠障害(1655人のうち437人[26%]; Table 2)であった.mMRCスコアが1を超えるリスクは,尺度5-6の参加者は,尺度3の参加者よりも有意に高かった(OR 2.15, 95%CI 1.28-3.59; Table 2).EQ-5D-5L質問票の詳細はappendixに記載されている(pp 12-13).尺度5-6の参加者は,尺度3の参加者に比べて,可動性,痛みまたは不快感,不安または抑うつの問題が多かった(いずれもp <0.05; Table 2).参加者の23%(1617人のうち367人)がフォローアップ時に不安または抑うつを報告しており,これは女性に多くみられた(appendix pp 10-11).尺度5-6の参加者は,尺度3の参加者に比べて,6分間の歩行距離がメートル単位で短く(479.0, IQR 434.0-515.5 vs 495.0, 446.0-542.0),正常範囲下限値(LLN: lower limit of the normal range)未満の割合が高かった;しかしながら,尺度4の参加者では有意差は認められなかった.6分歩行距離の中央値がLLN未満の患者の割合は,尺度3で24%(423人のうち103人),尺度4で22%(1153人のうち255人),尺度5-6で29%(116人のうち34人)であった(Table 2).
Table 2: Symptoms, exercise capacity, and health-related quality of life at follow-up according to severity scale.
対象となった516人のうち390人が肺機能検査,胸部HRCT,下肢静脈および腹部超音波検査を受けた.肺機能検査を受けたのは349人で,41人はコンプライアンス不良によって完遂できなかった.肺拡散障害のある参加者の割合は,尺度3が22%(83人のうち18人),尺度4が29%(165人のうち48人),尺度5-6が56%(86人のうち48人)であった(Table 3).尺度3と尺度5-6では有意差が認められたが,尺度3と尺度4では有意差は認められなかった.性別によるサブグループ解析では,尺度5-6の男女および尺度4の男性は,尺度3の男性よりも肺拡散能低下のリスクが高かった(いずれもp< 0.05)(appendix p14).全肺気量(TLC: total lung capacity)の低下(予測値の80%未満)は,尺度4または尺度5-6の参加者では,尺度3の参加者と比較して有意差を示さなかった(Table 3).
Table 3: Lung function and chest CT at follow-up according to severity scale.
合計353人の参加者がフォローアップ時に胸部HRCTを完遂した.CTスコアの中央値は,尺度3の参加者で3.0(IQR 2.0-5.0),尺度4の参加者で4.0(3.0-5.0),尺度5-6の参加者で5.0(4.0-6.0)であり,尺度3と尺度5-6の間には有意差があり(p= 0.0005; Table 3),これは性別のサブグループ解析でも観察された(appendix pp16-17).さらに,尺度4の男性は,尺度3の男性よりもCTスコアが有意に高かった(p= 0.028).GGOは,フォローアップ時に最も一般的なHRCTパターンであり,次に不規則な線状影(irregular lines)が挙げられる(Table 3).急性期のconsolidationは,フォローアップ時にはほぼ完全に改善している(appendix P18).入院中とフォローアップ時の胸部CT画像の詳細な比較をappendix(P18)に示す.入院中に非IMVで管理されたSARS-CoV-2感染症の41歳男性の胸部画像の動的変化をappendix(p20-21).退院前の両側性consolidation,胸膜下線状影(subpleural line),GGOは退院後約5ヶ月でほぼ完全に吸収された.
多変量調整すると,尺度5-6の参加者では,尺度3の参加者と比較して,拡散障害のOR 4.60(95%CI 1.85-11.48),不安または抑うつのOR 1.77(1.05-2.97),疲労または筋力低下のOR 2.69(1.46-4.96)が示された(Figure 2).尺度4の参加者の拡散障害と不安または抑うつのリスクは有意ではなかったが,疲労または筋力低下のリスクは尺度3の参加者よりも低かった.急性期からフォローアップまでのCTスコアの変化割合は,尺度4と尺度5-6の参加者の方が尺度3の参加者よりも高かった.女性では,男性と比較して,拡散障害のOR 2.22(95%CI 1.24-3.98),不安または抑うつのOR 1.80(1.39-2.34),疲労または筋力低下のOR 1.33(1.05-1.67)であった.年齢は拡散障害,疲労そして筋力低下と正の相関があり,CTスコアの変化割合と負の相関があり,年齢が10歳上昇するごとに,拡散障害のリスクが27%高く(OR 1.27, 95%CI 1.02-1.60),疲労あるいは筋力低下のリスクが17%高く(OR 1.17, 1.07-1.27),CTスコアの変化割合が4%低く(1.37-6.64)なっていた(Figure 2).年齢と不安あるいは抑うつとの有意な関連は認められなかった.
Figure 2: Risk factors associated with diffusion impairment and CT score (A), and anxiety or depression and fatigue or muscle weakness (B).
LOTUS China trial10)に参加した94人の患者の血漿サンプルを採取した.急性期に比べて,中和抗体の血清陽性率(96.2% vs 58.5%)と力価中央値(19.0 vs 10.0)は有意に低かった(Figure 3).フォローアップ時のN-IgM,RBD-IgM,S-IgM,N-IgA,RBD-IgA,S-IgA,RBD-IgGの血清陽性率は,急性期に比べて有意に低下した(Figure 3A).しかし,N-IgG抗体とS-IgG抗体の血清陽性率には有意な変化は認めなかった.90%以上の参加者において,フォローアップ時に3つのIgG抗体すべてが陽性であった.抗体濃度の経時的変化をさらに評価したところ,N-IgM,RBD-IgM,S-IgM,N-IgA,RBD-IgA,S-IgA,N-IgG,RBD-IgG,S-IgG濃度,そして中和抗体価は経時的に低下していた(Figure 3B-E).しかし,N,RBD,およびSタンパク質に対するIgGには不均一な反応が観察された.急性期の抗体濃度と比較すると,N-IgGでは7人(7%),RBD-IgGでは10人(11%),S-IgGでは20人(21%)の参加者において20%以上の抗体濃度上昇が認められた.N-IgGでは76人(81%),RBD-IgGでは64人(68%),S-IgGでは28人(30%)で抗体濃度が20%を超えて低下した(appendix p22).
Figure 3: Temporal changes of seropositivity and antibody titres against SARS-CoV-2.
症状発症からフォローアップまでの白血球数,リンパ球数,およびヘモグロビン濃度の動的変化を,重症度尺度で分類して付録に示した(pp23-24).488人の患者が急性期にリンパ球減少(リンパ球数< 0.8×109/L)を認めた.フォローアップ時にリンパ球数が確認できた患者のうち,97%がリンパ球数0.8×109/L以上であった.自己申告のない58人の患者が,フォローアップ時に新たに糖尿病と診断された.入院中にHbA1c検査を受けたこれらの患者の13人のうち,1人の患者は急性期にはHbA1c濃度が正常であったが,フォローアップ時には異常値を示した.超音波検査を受けた390人の参加者のうち,下肢の深部静脈血栓症は認められなかった.これらの患者の腹部超音波検査の結果も正常であった(appendix P19).
急性期およびフォローアップ時の腎機能の分布はappendixに示した(p25).フォローアップ時にeGFRが確認できた参加者のうち,35%(1393人のうち487人)がeGFRの低下(1.73m2あたり90mL/min未満; Table 2)を認めた.1706人のうち101人(6%)が急性期に急性腎障害を認めた.急性期とフォローアップ時においてeGFRが確認できた参加者のうち,1378人のうち479人(35%)がフォローアップ時にeGFRが低下していた.急性期に急性腎障害を認めず,かつ正常なeGFR値を示した1016人のうち,フォローアップ時にeGFRが確認できたのは822人で,そのうち107人(13%)にeGFR低下が認められた(appendix p25).
<Discussion>
我々の知る限りでは,これはCOVID-19から回復した退院成人患者の健康影響を評価した最長のフォローアップ期間を持つ最大規模のコホート研究である.症状発現から6ヶ月後には,ほとんどの患者が少なくとも1つの症状,特に疲労あるいは筋力低下,睡眠障害,不安あるいは抑うつを認めていることがわかった.重症患者では,肺拡散障害,疲労あるいは筋力低下,不安あるいは抑うつのリスクが増加していた.中和抗体の血清陽性率および力価は急性期に比べて有意に低かった.
症状発症から6ヶ月後でも,疲労あるいは筋力低下,睡眠障害,不安あるいは抑うつが一般的であることがわかった.これは,以前のSARSの長期フォローアップ研究でで得られたデータと一致している.カナダの研究者は,ほとんどのSARS生存者は疾患からの身体的回復が良好であったが,33%が1年後の精神的健康状態の著しい低下を報告していることを明らかにした23).SARS生存者を対象としたフォローアップ研究では,患者の40%がSARS後も平均41.3ヶ月間,慢性疲労の問題を抱えていたことが示された24).我々の研究で,女性と疾患重症度が,持続的な精神症状のリスク因子であることが明らかになった.女性のSARS生存者では,ストレスレベル,そして抑うつと不安のレベルが高かった25).COVID-19患者538人を対象とした3ヶ月間のフォローアップ調査において,Xiongら8)は,身体の衰え(physical decline)あるいは疲労,活動後のあえぎ/頻呼吸(polypnoea),脱毛症(alopecia)が男性よりも女性に多く見られることを明らかにした.COVID-19の精神的影響の根本的なメカニズムは多因子性である可能性が高く,ウイルス感染の直接的な影響,免疫応答,コルチコステロイド療法,ICU入院,社会的孤立,汚名/スティグマ(stigma)などが含まれるかもしれない26).
本研究での肺機能評価の結果,症状発現から6ヶ月後に肺拡散障害が認められた参加者の割合は大きかった(様々な重症度尺度を通して22-56%).最も一般的な異常CTパターンは,SARS 27)またはインフルエンザ28)の長期的な肺症状と同様の肺間質変化(GGOと不規則な線状影)であったという知見と,これは一致していた. 呼吸器ウイルス感染は,回復期において線維芽細胞の活性化を特異的に誘導する可能性があるかもしれない29).急性期の重症度は多変量解析によると,肺拡散障害とCTスコアの変化割合と関連していることが明らかになった.COVID-19患者に対するコルチコステロイド治療の有用性を示すエビデンスはあるが30)31),我々の結果は,コルチコステロイドが肺機能評価や胸部画像における肺傷害の回復を促すことを示唆しなかった.残存している画像異常所見や肺拡散障害が完全に消失するかどうかは,さらなるフォローアップ研究で調べる必要がある.
本研究では,中和抗体の血清陽性率および中央値が急性期に比べて有意に低いことが明らかになった.軽症〜中等症COVID-19患者30,082人を対象とした報告では,抗体価は3ヶ月間安定していたが,5ヶ月間の時点では緩やかな低下が観察された32).無症状患者では,81%が回復期の初期段階で中和抗体濃度が低下していた33).今回の研究や他の研究で観察された中和抗体の低下は,SARS-CoV-2再感染を懸念させるものである.COVID-19に適合する症状を呈する患者の再感染リスクを監視すべきである.
我々の研究では,長期的な肺外臓器症状とフォローアップ期間中の死亡についても調査した.例えば,持続的な腎機能障害が観察され,参加者の中には新たに糖尿病と診断された者もおり,静脈血栓塞栓性疾患(心血管および脳血管イベントを含む)が発生した.ACE2(腎近位尿細管に豊富に発現している34)35))は,上皮細胞へSARS-CoV-2の侵入を媒介し,それを蓄積して,細胞毒性と炎症性細胞浸潤を引き起こしうる.以前の研究では,急性腎障害のエピソード後に腎機能の持続的な障害が起こり,透析を要する末期腎疾患に進行する可能性があることが報告されている36).急性腎障害の診断としての血清クレアチニンは限界が指摘されており,急性期の急性腎障害患者を過小評価しているかもしれない37).我々は初めて,急性期に急性腎障害がなく,eGFRが正常であった患者の13%が,フォローアップ時にeGFRが低下していたことを示した.COVID-19退院患者の継続的なフォローアップは,肺外疾患とSARS-CoV-2感染との関連性を理解するだけでなく,効率的な予防により併発症(morbidity)や死亡率を低減する方法を見出すためにも必要不可欠である.
Limitation: @肺機能と6分歩行試験のベースラインデータが得られていない.しかし,このコホートにおける慢性肺疾患および心臓疾患を有する患者の割合は,結果として患者による自己申告という推測であるため,過小評価されている可能性がある.観察された肺機能および運動能力の低下は,COVID-19に直接起因するものではない.ACOVID-19後に新たに発症した症状については,COVID-19に症状が持続していたか,COVID-19回復後に悪化したか,退院後に発症したかを判断するための層別化は行われていない.BFangcang shelter病院38)に滞在していた軽症COVID-19症状の患者は登録されていない.入院患者と外来患者の長期転帰を比較するためにはさらなる努力が必要である.C急性期およびフォローアップ時にSARS-CoV-2抗体検査の結果が得られた参加者の数は限られていた.今後,SARS-CoV-2に対する抗体の動的変化を明らかにするためには,より大規模なサンプルが必要である.
<Conclusions>
症状発現から6ヶ月後の時点で,COVID-19から回復した患者の主な症状は,疲労または筋力低下と睡眠障害であった.重要な心理的合併症としての不安あるいは抑うつのリスクや肺拡散能障害は,重症度の高い患者ほど高かった.これらの結果は,重症患者には退院後のケアが必要であることを支持するものである.COVID-19による健康影響の全容を理解するためには,より大規模な集団を対象としたより長期のフォローアップ調査が必要である.
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