COVID-19関連追加(2021210日)季節性ヒトコロナウイルスとの関連その2

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2020916-2(季節性コロナウイルスの免疫防御は短期間しか持続しない)

【季節性ヒトコロナウイルス抗体はSARS-CoV-2感染時に増強されるが,

防御とは関連しない】

Anderson EM, et al. Seasonal human coronavirus antibodies are boosted upon SARS-CoV-2 infection but not associated with protection.

Cell. Accepted Feb 1, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.02.010.

Abstract

SARS-CoV-2がヒト集団内で急速に拡散している.SARS-CoV-2 は新しいコロナウイルスであるが,ほとんどの人は,COVID-19パンデミック以前に抗原的に異なる他の季節性ヒトコロナウイルス(hCoV)に曝露されていた.ここでは,COVID-19パンデミック前のヒト 204人から採取した血清サンプル中のSARS-CoV-2反応性抗体およびhCoV反応性抗体レベルを定量した.次に,PCRSARS-CoV-2感染が確認された252人の別のコホートのパンデミック前の血清抗体レベルを定量した.最後に,COVID-19入院患者の血清hCoV抗体およびSARS-CoV-2抗体を縦断的に測定した.我々の研究は,COVID-19パンデミックの前にほとんどの人がhCoV反応性抗体を持っていたことを示しているこれらの患者の約23%SARS-CoV-2スパイクおよびヌクレオカプシドタンパク質と交差反応する非中和性抗体を保有していたことが判明したこれらの抗体はSARS-CoV-2感染や入院に対する防御とは無関係であったが,逆説的なことに,これらのhCoV交差反応性抗体はSARS-CoV-2感染時に増加した

Discussion

我々の研究によって,COVID-19パンデミック前に約20%の人がSARS-CoV-2交差反応性血清抗体を持っていたことが示された2017年に採取されたサンプルを用いることによって,パンデミック前のSARS-CoV-2 Nタンパク質に対する交差反応性抗体は,SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する抗体と比較して,より多く発現していることが明らかになった血清陽性16.2% vs 4.2%; Figure 1ほとんどの人がパンデミック前に,229ENL63,およびOC43 Sタンパク質に反応する血清抗体を保有していたFigure S1; しかし,SARS-CoV-2抗体が検出可能なレベルのパンデミック前サンプルでは,OC43 Sタンパク質に対する抗体のレベルが高かったFigure 1H我々のデータは,季節性ヒトベータコロナウイルス(OC43など)への過去の感染が,SARS-CoV-2タンパク質と交差反応する抗体を誘発する可能性が高いことを示唆しているが,なぜパンデミック前にSARS-CoV-2に反応する抗体を持っていたのがOC43血清陽性サブセットだけであったのかは明らかではない.季節性ヒトベータコロナウイルス感染とSARS-CoV-2交差反応性抗体の発現との時間的関係を明らかにするためには,さらなる研究が必要である.パンデミック前のHKU1など他のベータコロナウイルスに対する抗体とパンデミック前のSARS-CoV-2交差反応性抗体との関係を調べるためのさらなる研究も必要である.

 

 

Figure S1: There are no obvious age-related differences in pre-pandemic SARS-CoV-2 and hCoV reactive antibodies, related to Figure 1.

 

 

Figure 1: Identification of pre-existing cross-reactive SARS-CoV-2 antibodies in human serum prior to the pandemic.

 

我々の研究は,パンデミック前血清においてSARS-CoV-2中和活性の欠如を示す最近の文献と一致している(Poston et al., 2020対照的に,別の研究では,幼児のパンデミック前血清にSARS-CoV-2中和抗体が認められることが報告されている(Ng et al., 2020.これらの違いが,各研究で使用された特異的なアッセイに起因するのか,あるいはサンプリングにおける地理的な違いなどの他の要因に起因するのかは不明である.例えば,Ngらの研究(Ng et al., 2020)では,SARS-CoV-2の細胞受容体であるACE2欠損細胞を用いて,疑似型中和アッセイが行われている.我々の研究は,パンデミック前の抗体がSARS-CoV-2感染および入院からの防御と関連しているかどうかを直接評価することができたという点で唯一なものである.SARS-CoV-2感染者と非感染者におけるSARS-CoV-2およびOC43に対するパンデミック前の抗体レベルに差は認めずFigure 2),様々な重症度のSARS-CoV-2感染者においてもTable S1-S2,同様の抗体レベルに差は認めなかった.しかし,パンデミック前の抗体レベルが重症COVID-19に関するいくつかの側面の軽減に関連しているかどうかを判断するためには,臨床的に定義された様々な重症度の患者を含むより大規模なコホートが必要である.SARS-CoV-2感染によって誘発された中和抗体が,その後のSARS-CoV-2再感染から防御するかどうかを決定するためには,さらなる研究が必要である.

Table S1:

Table S2:

Figure 2: Pre-pandemic SARS-CoV-2 and OC43-reactive antibodies are not associated with protection from SARS-CoV-2 infection.

 

 

また,免疫歴(immune hitory)がSARS-CoV-2感染後のde novo免疫応答にどのように影響するかを決定するために,さらなる研究を完了する必要がある.我々は,SARS-CoV-2に感染した人がSARS-CoV-2 Sタンパク質とOC43 Sタンパク質の両方に反応する抗体を産生することを発見した(Figure 3.インフルエンザウイルスの場合,抗原的に異なる株への連続感染は,株間の保存されたエピトープ(conserved epitopes)に対する抗体を誘発することがあり,これらの交差反応性抗体がde novo免疫応答を阻害するか,あるいは疾患重症度に影響するかは明らかではない(Cobey and Hensley, 2017).我々の研究は,SARS-CoV-2感染がOC43 Sタンパク質のS2ドメインに反応する抗体を増強することを示唆している.これらの抗体のフットプリントを正確にマッピングするためのさらなる研究が必要であり,これらの抗体が感染の改善に有用であるかどうか,あるいはCOVID-19患者における疾患増強に影響するかどうかを決定するためには,さらなる研究が必要である.

Figure 3: SARS-CoV-2 infections boost antibodies that react to OC43 S protein.

 

 

我々のデータは,パンデミック前にhCoVによって誘発された非中和抗体はSARS-CoV-2防御に役に立たないことを示唆しているこれを考えると,hCoV感染に対してプライミングされたT細胞応答SARS-CoV-2感染に対して部分的な防御を提供するかどうかを評価することが必要である最近の研究では,COVID-19パンデミックの前に,一部の人がSARS-CoV-2特異的CD4+およびCD8+ T細胞を保有していたことが明確に示されている(Braun et al.,  2020, Grifoni et al., 2020, Le Bert et al., 2020, Mateus et al., 2020, Sette and Crotty, 2020,  Schulien et al., 2020そしてパンデミックウイルスが,過去に循環していたウイルス株と非中和性抗体エピトープを共有するのみという背景において,既存の細胞性免疫が重要な防御的役割を果たす可能性がある

ここに示されたデータは,SARS-CoV-2と交差反応するパンデミック前の血清抗体が,SARS-CoV-2感染に対する防御およびCOVID-19重症度と相関しないことを示しているPCR陽性でSARS-CoV-2感染が確認された人から収集したパンデミック前のサンプルを用いてデータを作成した.そして,これらのサンプルの抗体レベルを,SARS-CoV-2に感染しなかった人から採取したパンデミック前のサンプルの抗体レベルと比較した.これらの研究では,20138月〜20203月までに収集されたサンプルを対象とした(Figure 2A).hCoVに対する免疫は短期間であり(Huang  et al., 2020),時間の経過とともに変動する(Edridge et al., 2020)ため,パンデミックから1年以内に収集されたサンプルの抗体価を直接比較した(Figure 2B).両方のデータセットを用いたところ,パンデミック前の抗体レベルとSARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症度との間に相関関係は認めなかった.それにもかかわらず,今後の研究では,一過性の抗体による防御が可能かどうかを判断するために,季節性コロナウイルス感染とSARS-CoV-2交差反応性抗体の誘導との間の時間的関係を継続的に調べる必要がある. 今後の研究では,パンデミック前の交差反応性粘膜抗体(mucosal antibodies)による防御の可能性も評価すべきである.最後に,既存の細胞性免疫がCOVID-19重症度を制限するかどうかを調べる必要がある.我々の研究では血清抗体のみを調べたが,メモリーB細胞/T細胞の迅速な関与および長く存在する(long-lived)血漿細胞が,これらの免疫歴を持つ人においてSARS-CoV-2曝露後の防御を提供する可能性がある.