COVID-19関連追加(2021218日)変異株とワクチンその2

当院HP関連ファイル:

20201216日(ファイザー・ビオンテックワクチン)

202111日(モデルナワクチン)

2021214

【変異株とmRNAワクチンの中和活性について】

(1)Liu Y, et al. Neutralizing Activity of BNT162b2-Elicited Serum — Preliminary Report. N Engl J Med. Feb 17, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2102017.

BNT162b2ワクチンは,SARS-CoV-2の全長スパイク糖タンパク質(S)を発現するヌクレオシド修飾RNAワクチンである44,000人の参加者が参加した無作為化プラセボ対照臨床試験では、予防接種(immunization)はCovid-19)に対する95%の有効性をもたらした1)

英国(B.1.1.7系統)南アフリカ(B.1.351系統)ブラジル(P.1系統)で初めて検出された,S遺伝子に変異を持つ感染性が高い新たなSARS-CoV-2変異株が世界的に広がっている.BNT162b2によって誘発される中和への影響を分析するために,我々は,B.1.351系統からのS遺伝子変異を,比較的初期のウイルス分離株(20201月)であるUSA-WA1/2020へ遺伝子組み換えした(Supplementary Appendix

Figure S1).我々は,引き続き3つの組換えウイルス(recombinant viruses)を作製した; @N末端ドメイン欠失と世界的に優位であるD614G置換(Δ242-244+D614G2)3),A受容体結合部位の3つのアミノ酸に影響を与える変異(K417NE484KN501Y)と D614G置換(B.1.351-RBD+D614G),BB.1.351系統の S遺伝子に見られるすべての変異(B.1.351-spike).すべての変異型ウイルスは、1mlあたり107個のプラーク形成単位(PFU: plaque-forming units)を超える感染力価を示した.B.1.351-spikeウイルスは,他のウイルスよりも小さいプラークを形成した(Figure S2).

ピボタル試験(pivotal trial, 主試験)1)4)における,BNT162b2 30μgを用いたブースター接種(初回接種の3週間後)の2週間後または4週間後に,参加者15人から得られた20血清サンプルを用いて,50%プラーク減少中和試験(PRNT50: 50% plaque reduction neutralization testing)を実施した(Figure S3).すべての血清サンプルは,USA-WA1/2020およびすべての変異ウイルスを1:40以上の力価で中和したUSA-WA1/2020,Δ242-244+D614GB.1.351-RBD+D614G,およびB.1.351-spikeウイルスに対する幾何平均中和力価(geometric mean neutralizing titers)は,それぞれ501485331,および184であった(Figure 1, Table S1.したがって、USA-WA1/2020の中和と比較すると,Δ242-244+D614Gウイルスの中和は同様であり,B.1.351-spikeウイルスの中和は約3分の2に弱まっていた我々のデータはまた、B.1.351-spike変異のフルセットを有するウイルスの中和が,いずれかの変異のサブセットを有するウイルスよりも脆弱であることに一致しており,受容体結合部位の変異残基(K417NE484K,およびN501Y)を有するウイルスは,スパイク蛋白質のN末端ドメインに位置するΔ242-244を有するウイルスよりも中和が脆弱であることを示唆している

本研究の限界としては,個々の変異について系統的な検討が行われていないこと,および変異が抗原性ではなくスパイク機能に影響を与えることで中和を変化させる可能性があることが挙げられる.BNT162b21回接種後の防御は,高い中和力価の発現に先行して始まっており,BNT162b2の接種はまた,CD8+T細胞応答も誘発する1)4)5)したがって,約3分の2の中和の減少が,SARS-CoV-2B.1.351系統によって引き起こされるCovid-19に対するBNT162b2による保護にどのような影響を及ぼすかは不明である

 

 

Figure 1: Serum Neutralization of Variant Strains of SARS-CoV-2 after the Second Dose of BNT162b2 Vaccine.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2102017/20210217/images/img_medium/nejmc2102017_f1.jpeg

 

 

References

1) Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020;383:2603-2615.

2) Plante JA, Liu Y, Liu J, et al. Spike mutation D614G alters SARS-CoV-2 fitness. Nature 2020 October 26 (Epub ahead of print).

3) Korber B, Fischer WM, Gnanakaran S, et al. Tracking changes in SARS-CoV-2 spike: evidence that D614G increases infectivity of the COVID-19 virus. Cell 2020;182(4):812-827.e19.

4) Walsh EE, Frenck RW Jr, Falsey AR, et al. Safety and immunogenicity of two RNA-based Covid-19 vaccine candidates. N Engl J Med 2020;383:2439-2450.

5) Sahin U, Muik A, Vogler I, et al. BNT162b2 induces SARS-CoV-2-neutralising antibodies and T cells in humans. December 11, 2020

(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.12.09.20245175v1. opens in new tab). preprint.

(2)Wu K, et al. Serum Neutralizing Activity Elicited by mRNA-1273 Vaccine — Preliminary Report. N Engl J Med. Feb 17, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2102179.

SARS-CoV-2に対するmRNA-1273ワクチンは,第1相試験の参加者において高い中和抗体価を示し1)2),そして症候性Covid-19と重症化予防に高い効果を示した3).最近,英国(B.1.1.7 系統)および南アフリカ(B.1.351 系統)のSARS-CoV-2変異株が出現したことにより,感染の拡大が懸念されており,自然感染やワクチン接種によって誘発される免疫を回避する可能性がある.

我々は,mRNA-1273 ワクチンの第1相試験参加者から得たサンプルを用いて,組換え水泡性口内炎ウイルス(rVSV: recombinant vesicular stomatitis virus)ベースのSARS-CoV-2(偽ウイルス[pseudovirus]ベースモデル)に対する血清中和活性を測定した.我々は,Wuhan-hu-1 分離株D614G変異株B.1.1.7変異株およびB.1.351変異株,そしてその他の変異株(20E [EU1], 20A.EU2, N439K-D614G, およびデンマークで最初に同定されたミンククラスターの5つの変異株)からのスパイク蛋白質を有する偽ウイルスを試験した.

スパイク(S)変異のフルパネルおよびB.1.1.7変異株の受容体結合ドメイン(RBD)領域に影響を及ぼす変異のサブセットの両方とも,第1相試験でmRNA-1273ワクチンを接種した参加者から得られた血清による中和には有意な影響を及ぼさなかった(Figure 1A, 1B一方,B.1.351変異株とRBDに影響を与えるその変異のサブセットに対する中和抗体力価の低下が観察された2回目のワクチン接種から1週間後に得られた血清サンプルでは,変異の部分的なパネルに対する中和抗体力価が1/2.7,変異の完全なパネルに対する中和抗体力価が1/6.4に減少したことが観察された(Figure 1C, 1Dしかしながら,第1相試験の8人の参加者から得られた血清サンプルでは,B.1.351に対する幾何平均中和力価は1:290であり,すべての血清サンプルは,相対的に低い希釈度であったが,rVSV偽ウイルスを中和した(Supplementary AppendixFigure S1rVSVおよびレンチウイルス中和アッセイの両方で,我々はマカクザルから得られた血清サンプルにおいて同様の傾向を観察した(Figure S2, S3).

我々は,第1相試験でmRNA-1273ワクチンを接種した参加者から得られた血清の,2020年の優勢株(D614G)の完全長スパイク蛋白質,および20EEU1),20A.EU2N439K-D614G,およびミンククラスター5つの変異株に対する中和活性について,rVSVベースの偽ウイルス中和アッセイを使用して評価した(Table S1).これらの変異株に対する中和レベルは,Wuhan-Hu-1D614)分離株に対する中和レベルと同様であった(Figure S4).

mRNA-1273ワクチンによるB.1.351変異株に対する防御効果はまだ不明である.これらの知見は,継続的なウイルスサーベイランスと新しいウイルス変異株に対するワクチンの有効性評価の重要性を強調するものであり,霊長類以外の動物とヒトの両方における防御の相関関係の確立を促進するのに役立つ可能性がある.

 

Figure 1: Neutralization of B.1.1.7 and B.1.351 SARS-CoV-2 Pseudoviruses in Serum Samples.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2102179/20210217/images/img_medium/nejmc2102179_f1.jpeg

 

 

 

 

 

 

References

1) Jackson LA, Anderson EJ, Rouphael NG, et al. An mRNA vaccine against SARS-CoV-2: preliminary report. N Engl J Med 2020;383:1920-1931.

2) Anderson EJ, Rouphael NG, Widge AT, et al. Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 vaccine in older adults. N Engl J Med 2020;383:2427-2438.

3) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine. N Engl J Med 2021;384:403-416.

 

 

 

 

 

 

 

【”キラー”T細胞は新しい変異株に直面し,

どのようにCOVID-19免疫を高めることができるか】

Ledford H. How ‘killer’ T cells could boost COVID immunity in face of new variants. Nature 590, 374-375 (2021). Feb 12, 2021.

https://doi.org/10.1038/d41586-021-00367-7.

Illustration of a T cell targeting SARS-CoV-2 particles, in blue on a black background..

A T cell targeting coronavirus particles (illustration).

 

抗体防御に対して部分的に抵抗性を持つコロナウイルス変異株についての懸念は,ウイルスから身を守る他の免疫応答に対する新たな関心に拍車をかけている.特に,科学者たちは,T細胞(ウイルス感染細胞を標的にして破壊することができる免疫細胞群)がCOVID-19に対して何らかの免疫力を提供してくれるのではないかと期待している.

研究者たちは現在,入手可能なデータから,T細胞が免疫を持続させるのに役立つサインを探している.

”抗体の効果が低下することがわかっているが,T細胞が我々を救うことができるかもしれない”と,ニューヨーク市にある投資銀行SVB Leerinkのバイオテクノロジーアナリスト,Daina Graybosch氏は言う.”生物学的には理にかなっている.データはないが,希望は持てる.”

コロナウイルスワクチンの開発は,主に抗体に焦点を当ててきたが,それには正当な理由があると,カリフォルニア州ラホヤ免疫学研究所の免疫学者Alessandro Sette氏は言う.抗体,特に重要なウイルス蛋白質に結合して感染を遮断する抗体は,疾患重症度を低下させるだけでなく,感染を完全に防ぐ”殺菌免疫(sterilizing immunity)”への鍵を握っている.

この防御レベルがゴールドスタンダードと考えられているが,典型的には大量の抗体を必要とするとSette氏は言う.”それが達成できればそれは素晴らしいことだが,必ずしもそうとは限らない.”,と彼は言う.

 

Killer cells:

抗体と並んで,免疫システムは,ウイルスを標的とすることができるT細胞の大群を産生する.これらの中には,キラーT細胞(またはCD8+ T細胞)として知られるものがあり,ウイルス感染細胞を探し出して破壊する.その他のものは,ヘルパーT細胞(またはCD4+ T細胞)と呼ばれ,抗体やキラーT細胞の産生を刺激するなど,様々な免疫機能に重要な役割を果たしている.

T細胞は,ウイルスが体内に侵入して初めて活動を開始するため,感染を防ぐことはできない.しかし,すでに始まっている感染を除去するために重要な役割を果たしている.COVID-19 の場合,キラー T細胞は軽症と重症(病院での治療を必要とする)の違いを意味する可能性がある,ストックホルムのカロリンスカ研究所の免疫学者であるAnnika Karlssonは言う.”上気道から広がる前に,ウイルス感染細胞を殺すことができれば,調子の悪さに影響を与えるだろう(it will influence how sick you feel)”と彼女は言う.また,感染者の中で循環しているウイルスの量を制限することで感染伝播を減らすことができる.これはコミュニティにおいて感染者が排出するウイルス粒子が少なくなることを意味する.

またT細胞は,新たに出現した変異株がもたらす脅威に対して抗体よりも抵抗性を持つ可能性があるSette氏らの研究によると,SARS-CoV-2に感染した人は,通常,コロナウイルス蛋白質の少なくとも1520の異なる断片を標的とするT細胞を生成することが示されている1).しかし,どの蛋白質の断片が標的とされるかは,人によって大きく異なっており,これは集団がウイルスを捕捉する可能性のある多種多様なT細胞を生成することを意味する.”それによって,ウイルスが細胞の認識を逃れるために変異することが非常に困難になる.”とSette氏は言う.”抗体の状況とは異なる.”

南アフリカで同定された501Y.V2変異体(B.1.351とも呼ばれる)が以前のコロナウイルス変異株に対して惹起された抗体に対して部分的に耐性があることが実験で示され,研究者たちは,T細胞がその変異に対してより脆弱である可能性があるかどうかを疑問に思っていた.

初期の結果は,この可能性があることを示唆している.29日に発表されたプレプリントでは,研究者たちは,コロナウイルスのワクチン接種あるいは過去の感染に対するほとんどのT細胞応答が,501Y.V2を含む最近発見された2つの変異株において変異した領域を標的にしていないことを発見した2)Sette氏は,彼のグループも,T細胞応答の大部分が変異の影響を受ける可能性は低いという暫定的な証拠を持っていると言う

T細胞が501Y.V2変異株に対して活性が保たれていれば,重症疾患から防御することができるかもしれないと,フィラデルフィアのペンシルバニア大学の免疫学者John Wherry氏は言う.しかし,それはこれまでのところ利用可能なデータから知ることは困難である,彼は注意喚起している.”我々は,実際には何の情報もないデータから,多くの科学的・機能的情報を推測しようとしている.”,”我々は,ある種のものをまとめて、これらの大きな溝を埋める橋渡しをしている.”

 

Updating vaccines:

研究者たちは,501Y.V2変異株に直面してその有効性が薄れるかどうかの手がかりを探すために,いくつかのコロナウイルスワクチンの臨床試験データを分析してきた.これまでのところ,少なくとも3種類のワクチン(メリーランド州ガイザースバーグのNovavax社製の蛋白質ワクチン,ニュージャージー州ニューブランズウィックのJohnson & Johnson社製のシングルショットワクチン,英国ケンブリッジのAstraZeneca社と英国オックスフォード大学によるワクチン)は,501Y.V2変異株が支配的な南アフリカでは,軽症COVID-19に対する防御効果が,501Y.V2変異株があまり一般的でない国に比べて低かった

アストラゼネカのワクチンの場合,結果は特に顕著であり,南アフリカの2,000人のサンプルでは,軽症COVID-19に対する有効性はわずか22%であったしかし,この試験は規模が小さすぎた上に参加者が若すぎたため,研究者が重症性疾患についての結論を出すには不十分だったと,ラホヤ免疫研究所の免疫学者であるShane Crotty氏は言う

T細胞をより効果的に刺激する次世代ワクチンを開発する方法をすでに検討しているコロナウイルスワクチン開発者もいる.抗体は細胞外の蛋白質のみを検出し,多くのコロナウイルスワクチンはウイルス表面に発現しているスパイクと呼ばれる蛋白質を標的としている.しかし,スパイク蛋白質は”非常に変化に富んでいる”ために変異が起こりやすく,新たな変異株は抗体の検出から逃れるリスクがあると,Karlsson氏は述べている.

対照的にT細胞は,感染細胞内で発現しているウイルス蛋白質を標的とすることができ,それらの蛋白質の中には非常に安定しているものもあると,彼女は言う.このことから,スパイクよりも変異頻度の低い蛋白質に対するワクチンを設計し,複数の蛋白質からの標的を1つのワクチンに組み込む可能性が出てきている.

カリフォルニア州エメリービルにあるバイオテクノロジー企業のGritstone Oncology社は,T細胞応答を誘発することで知られているコロナウイルス蛋白質の断片の遺伝子コードを組み込んだ実験的ワクチンを設計しており,抗体応答が確実に得られるようにスパイク蛋白質全体の遺伝子コードも組み込んでいる.臨床試験は今年の第一四半期に開始される予定である.

しかし,GritstoneAndrew Allen社長は,現在のワクチンが新しい変異株に対して有効であり,同社のワクチンが必要とされることはないだろうと期待している.”我々は,最悪のシナリオに備えるためにこれをとにかく開発したのだ”と,彼は話す.”我々がやったことはすべて時間の浪費だったと半分はそう期待しているのだ.しかし,準備ができていることは良いことだ.”

 

References

1) Tarke, A. et al. Cell Rep. Med. https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2021.100204.(2021)

2) Skelly, D. T. et al. Preprint at https://www.researchsquare.com/article/rs-226857/v1.

 (2021)