COVID-19関連追加(2021220日)

 

COVID-19による休校後の再開した学校・保育園における上気道感染】

Fong MW, Leung NHL, Cowling BJ, Wu P. Upper respiratory infections in schools and childcare centers reopening after COVID-19 dismissals, Hong Kong. Emerg Infect Dis. 2021 May [date cited]. https://doi.org/10.3201/eid2705.210277.

SARS-CoV-2によるCOVID-19の蔓延を抑えるための公衆衛生対策として,2020年に多くの国が学校閉鎖・休校(school closures and dismissals)を実施した.香港では,20201月下旬の旧正月休暇明けから5月下旬まで学校が閉鎖となり,7月上旬から9月下旬にかけてCOVID-19症例が急増したことを受けて再び閉鎖となった(Figure, panel A.閉鎖期間中,ほとんどの学校のキャンパスは職員に開放されたままであったが,授業はオンラインで配信された.ここでは,202010月から11月にかけて,香港の再開校した小学校(primary schools),中等教育学校(secondary schools),kindergartenschildcare centers,そしてnursery schoolsにおいて,ライノウイルス感染と思われる急性上気道感染症(URTIs: upper respiratory tract infections)の大規模アウトブレイクを報告する: これらのアウトブレイクにより,地域全体で低学年の子供たちの学級閉鎖が相次いだ.

202010月の最終週,香港健康保護センターは,kindergartenschildcare centersnursery schools,小学校でのURTIsアウトブレイクの報告を受け始めた学校でのURTIsアウトブレイクは,その後の数週間で急速に増加し続けた(Figure, panel A.学校でのURTIアウトブレイクは,4日以内に同一クラスの3人より多い生徒がそれぞれ2つより多い呼吸器感染症状を発症したことと定義された(Table).これらのURTIアウトブレイクに対応するために、さまざまな対策が実施された.当初,アウトブレイクが発生した学校では影響がでたクラスの> 3日の休校が勧告された; 1118日からは> 7日の全校休校に拡大されたSARS-CoV-2検査も,影響を受けたクラスの生徒および学校の全職員を対象に実施された.

1114日から,地域全体の学校休校勧告が発動された.幼稚園,保育園,nursery schoolsでは,この年齢層でのアウトブレイクが多かったため(1),最初に2週間の休校が実施された; 小学13年生は1123日から休校が実施された1025日から1128日までに報告されたアウトブレイク件数は482件で,そのうち小学校では308件(63.9%),kindergartenschildcare centersnursery schoolsでは149件(30.9%),中等教育学校では25件(5.2%)であった(2)20人を超える大規模アウトブレイクは81(3)あり,これはURTIsFigure, panel B,インフルエンザ様疾患およびインフルエンザFigure, panel C2017-2019年における同規模のアウトブレイク総件数に匹敵する臨床検査では,ライノウイルスまたはエンテロウイルスが病原体である可能性が高くSARS-CoV-2やインフルエンザウイルスは検出されなかった(1)風邪(common colds)のアウトブレイクに対応して学校が閉鎖・休校されることは非常に珍しいことである.このような特別な状況において,学校内感染伝播リスクが非常に低いにもかかわらず(4),学校でのアウトブレイクから多くのサンプルをSARS-CoV-2検査するために必要な公衆衛生検査のリソースを節約することが,生徒を休校させる理由の一つであった(4)

Figure: Respiratory illness outbreaks in primary and secondary schools, kindergartens, childcare centers, and nursery schools in Hong Kong.

Respiratory illness outbreaks in primary and secondary schools, kindergartens, childcare centers, and nursery schools in Hong Kong. A) Weekly number of outbreaks of upper respiratory tract infection in schools reported during October 25–November 28, 2020, overlaid on the epidemic curve of daily COVID-19 case numbers in Hong Kong, by date of reporting. B) Weekly numbers of outbreaks of upper respiratory tract infection in schools during weeks 44–48 of 2020 and school outbreaks involving >20 persons reported during 2017–2020. Lines indicate detection rates of rhinovirus/enterovirus and other viruses in respiratory specimens collected for laboratory surveillance. C) Weekly numbers of outbreaks of influenza-like illness and influenza in schools reported during 2017–2020. Dashed line indicates detection of influenza virus in respiratory specimens collected for laboratory surveillance. Durations of territorywide regular school breaks (summer holiday) during 2017–2019 and school dismissals implemented in response to COVID-19 in 2020 are shaded in blue. ILI, influenza-like-illness; URTI, upper respiratory tract infection; KG/CCC, kindergartens, child-care centers, and nursery schools; K2, kindergarten year 2 (4–5 years of age); P1–P3, primary school years 1–3 (6–9 years of age)

A) 20201025日〜1128日までに報告された学校における上気道感染症の週次アウトブレイク数を,香港におけるCOVID-19の日次症例数の流行曲線上に,報告日別に重ね合わせたもの.

B) 2020年の第4448週に報告された学校における上気道感染症のアウトブレイクと,20172020年に報告された >20人が関与する学校アウトブレイクの週次数.実線は,実験室サーベイランス(laboratory surveillance)のために収集された呼吸器サンプル中のライノウイルス/エンテロウイルスおよびその他のウイルスの検出率を示す.20173; 20183; 20196; 202081件.

C) 2017年〜2020年に報告された学校におけるインフルエンザ様疾患およびインフルエンザの週次発生数.破線は,実験室サーベイランスのために収集された呼吸器サンプル中のインフルエンザウイルスの検出率を示す.20177; 201827; 201935; 20200件.

2017年〜2019年のテリトリー全体の定期的な学校の休み(夏休み)の期間と,2020年にCOVID-19に対応して実施された学校休校の期間は青の斜線で示した.

ILI, influenza-like-illness; URTI, upper respiratory tract infection; KG/CCC, kindergartens, child-care centers, and nursery schools; K2, kindergarten year 2 (4–5 years of age); P1–P3, primary school years 1–3 (6–9 years of age)

 

 

Table:

 

20202月と3月に実施した横断調査から,学齢児童の75%が休校時に世帯外の人と接触していないことを報告した(5).インフルエンザ様疾患の受診率や呼吸器サンプルからのインフルエンザウイルス検出率といった呼吸器ウイルス活動の指標は,2020年を通じて極めて低い状態が続いていた(6)しかしながら,COVID-19パンデミックに対応して学校の休校を含むソーシャルディスタンス強化対策が実施された際には,ライノウイルスやインフルエンザウイルスを含む他の呼吸器ウイルスに対する集団の感受性(感染しやすさ)が時間の経過とともに高まっていたかもしれない.これによって,学校が再開されたときに感染伝播の可能性が高まったと考えられる.20209月のイギリスでは,長期化した学校休校後の全面再開から≈2週間後に,大人においてライノウイルスの検出が大幅に増加したことが記録されている(7)これはおそらく子供における感染伝播によって牽引されたものと考えられる

幅広い感染対策が実施されていたにもかかわらず,香港の学校において,風邪の原因となる呼吸器ウイルス(インフルエンザウイルス以外のウイルス)によるURTIsアウトブレイクが発生した.職員と生徒は常にフェイスマスクを着用していた; 昼食時間はキャンセルされ,机は間隔をあけて配置され,集団行動は制限されていた(4).一般的に,様々な呼吸器ウイルスの感染伝播様式は似ているかもしれないが,それぞれの様式が特定のウイルスの感染伝播様式にどの程度寄与しているかは明らかになっていない; したがって,特定のNPIsの有効性はウイルスによって異なる可能性がある(8)

幅広い感染対策が実施されていたにもかかわらず,香港の学校において,風邪の原因となる呼吸器ウイルス(インフルエンザウイルス以外のウイルス)によるURTIsアウトブレイクが発生した.職員と生徒は常にフェイスマスクを着用していた; 昼食時間はキャンセルされ,机は間隔をあけて配置され,集団行動は制限されていた(4).一般的に,異なる呼吸器ウイルスの感染様式は似ているかもしれないが,それぞれの感染様式が特定のウイルスの感染にどの程度寄与しているかは明らかになっていない.

したがって,特定のNPIsの有効性はウイルスによって異なる可能性がある(8)例えば,フェイスマスクは,呼気中のコロナウイルスおよびインフルエンザウイルスの放出を遮断するのに効果的であることが示されているが,ライノウイルスはそうではない(9)さらに,エンベロープを有するウイルス(コロナウイルスやインフルエンザウイルスなど)は,エンベロープを有さないウイルス(ライノウイルスなど)よりも親油性の消毒薬に対する耐性が低いことが示されている(10).香港では,個人や学校で頻繁に清掃や消毒が行われていたにもかかわらず,インフルエンザではなく,ライノウイルスに関連したURTIアウトブレイクが発生したことにおいては,この違いが役割を果たしていたかもしれない.我々の調査結果は,COVID-19パンデミックの期間中に学校が長期間閉鎖または休校になった場所では,風邪ウイルス(common cold viruses)によるリスクが増大したことを浮き彫りにした

 

 

References

1) Government of the Hong Kong Special Administrative Region. Media session (2020 November 12) [cited 2020 Dec 23]. https://isd.wecast.hk/vod/?id=11384.

2) Government of the Hong Kong Special Administrative Region. Media session (2020 November 20) [cited 2020 Dec 23]. https://isd.wecast.hk/vod/?id=11436.

3) Centre for Health Protection. Press releases [cited 2020 Dec 23]. https://www.chp.gov.hk/en/media/116/index.html.

4) Fong  MW, Cowling  BJ, Leung  GM, Wu  P. Letter to the editor: COVID-19 cases among school-aged children and school-based measures in Hong Kong, July 2020. Euro Surveill. 2020;25:2001671.

5) Cowling  BJ, Ali  ST, Ng  TWY, Tsang  TK, Li  JCM, Fong  MW, et al. Impact assessment of non-pharmaceutical interventions against coronavirus disease 2019 and influenza in Hong Kong: an observational study. Lancet Public Health. 2020;5:e279–88.

6) Centre for Health Protection. Flu express. 2020 Dec 20–26 [cited 2021 Jan 19]. https://www.chp.gov.hk/files/pdf/fluexpress_week52_31_12_2020_eng.pdf.

7) Poole  S, Brendish  NJ, Tanner  AR, Clark  TW. Physical distancing in schools for SARS-CoV-2 and the resurgence of rhinovirus. Lancet Respir Med. 2020;8:e92–3.

8) Leung  NHL. Transmissibility, transmission and its control of respiratory viruses. Nat Rev Microbiol. 2021. In press.

9) Leung  NHL, Chu  DKW, Shiu  EYC, Chan  KH, McDevitt  JJ, Hau  BJP, et al. Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nat Med. 2020;26:676–80.

10) Lin  Q, Lim  JYC, Xue  K, Yew  PYM, Owh  C, Chee  PL, et al. Sanitizing agents for virus inactivation and disinfection. VIEW. 2020;1:e16.