COVID-19関連追加(2021221日)遅発性心筋炎について

当院HP関連ファイル:

202058202071日(MIS-Cについて)

2020914日(アスリートの心臓MRI所見)

2020108日(MIS-Aについて)※(3)の文献

COVID-19後の遅発性心筋炎について】

Bajaj R, et al. Delayed-onset myocarditis following COVID-19. Lancet Respiratory Medicine. Feb 19, 2021. https://doi.org/10.1016/S2213-2600(21)00085-0.

SARS-CoV-2感染後数週間で発症し、重度の急性心不全を含む多系統炎症性症候群が小児で報告されている(MIS-C1)2).我々は,成人の急性重症心不全患者において,同様の症候群(MIS-A)を同定し,その特徴,診断上の特徴、および初期の転帰について記述した.我々のデータはMIS-Aの報告3)を補完するものでもある.

劇症型心筋炎を呈した3人の患者はCOVID-19の臨床的特徴を有していたものの,RT-PCRSARS-CoV-2陰性であったことが,SARS-CoV-2に関連した心臓傷害を有する患者を対象とした研究において認識された.我々は,202031日〜930日までに,英国ロンドンの Barts Health National Health Service (NHS) TrustおよびGuy's and St Thomas' NHS Trustにおいて同様の症例があったことをデジタルレコードから特定した.参加者全員が抗体検査のために血清を保存しており,急性心不全,RT-PCR陰性,血清トロポニンの著明な上昇,炎症性マーカーの大幅な増加を示した患者9人(症例 19も含まれていた.また,急性心不全とSARS-CoV-2抗体を有するが,その他の特徴はすべて認められなかった対照群3人(症例1012についても検討した.

患者はほとんどが男性(9人中7[78%])で,黒人アフリカ系の血統であり(9人中7[78%]),平均年齢は36歳(IQR 23-53)であった.女性患者(症例6および8)はいずれも妊娠中または妊娠直後に発症し,そのうちの1人は妊娠糖尿病を有していた.男性患者1人は重大な併存疾患を有していた(症例4, 原発性アルドステロン症に続発する高血圧).

患者にみられた特徴は,発熱(全患者, 症状の平均持続期間3[range 1-7]),呼吸困難(5[56%]),消化器病変(8[89%]の患者で痛み,下痢または嘔吐がみられ,そのうち3[38%]に腸炎の画像所見が認められた),肺浸潤(pulmonary infiltrates)(8[89%])、および粘膜皮膚病変(4[44%])であった.回復したが典型的なCOVID-19症状の最近の既往が患者4人(44%) に認められ,1人はRT-PCR陽性の感染であった.患者は心臓症状で入院中に複数回RT-PCRを行ったが陰性であった(平均 4.6 検査[range 3-8]).入院後平均4.2日目(0-20日目)に採取した保存血清に対するSARS-CoV-2抗体検査は,7人(78%)の患者で陽性であったCRP38-89倍 正常上限値[ULN])上昇フェリチン濃度(0.2-16.0 ULN好中球数(1.5-6.6 ULN好中球数対リンパ球数比(4.5-42.3 ULNは,特に顕著な異常であった(Figure; appendix

 

Figure: Temporal changes in selected markers of systemic inflammation and myocardial damage.

 

患者は入院後急速に悪化し,そのうち8人(89%)は入院から平均2.9日後(range 1-6日)に3次心臓集中治療室(ICU)に転院した; 1人(症例5)は入院1日後に地方のICUに転院した.治療として薬理学的(9人中8[89%])と機械的(2[22%])循環サポートが含まれていた.免疫グロブリンの静脈内投与併用(2[33%])あるいは併用なしで,広域スペクトラムの抗菌薬(7[78%])が投与されつつ,コルチコステロイド(6[67%])が頻繁に投与された.アナキンラ(anakinra)を投与された患者は1人であった.

入院時の心エコー検査では重度の左室収縮障害が認められ,駆出率は平均24%(range 10-35%)Figure)であったトロポニン濃度のピークは6 ULN208 ULNであり,ICU入院と治療後の炎症マーカーや臨床状態とともに急速に改善した(Figure.平均ICU滞在日数は9日(2-25日)であった.

ICU入院後平均11日目(range 3-24に全患者に実施できた急性心臓MRICMR1では,左室駆出率57%42-70%)を示した後期ガドリニウム増強(9人中6[67%]T1信号増強(7人中7[100%]T2信号増強(9人中6[67%]が,ほとんどの患者に認められた(FigureCMR1から103日後(48-155日後)に患者6人に行ったConvalescent MRICMR2)では,収縮期機能が再び悪化した症例4を除き,すべての患者の左室駆出率は正常範囲内であった.ペアデータを比較すると,左室駆出率は入院からCMR1までの間に顕著に回復したが(22% vs 53%; p< 0.0001),CMR1CMR2までの間では同程度であった(53% vs 58%; p= 0.42).異常な後期ガドリニウム増強(6人中4[67%] vs 6人中1[17%]),T1増強(6人中6[100%] vs 6人中4[67%]),T2増強(5人中4[80%] vs 5人中1[20%])は,CMR1よりもCMR2において頻度が低かった(平均ペアデータ: T1 1210ms to 1044ms; p= 0.004; T2 58ms to 50ms; p= 0.007症例4ではT1T2シグナルは増強したままであった

このシリーズはCOVID-19後のMIS-Aによる心原性ショックを示唆している.MIS-C患者との類似点としては,頻繁な消化管病変,肺浸潤,粘膜皮膚病変,炎症性マーカーの有意な増加などが挙げられる1)2)検出可能な抗体およびRNAの欠失は,20203月以前のロンドンでのSARS-CoV-2感染後の最近の回復と一致している.すべての患者が検出可能なSARS-CoV-2抗体を有していたわけではないが,これもMIS-Cに共通する特徴であり,臨床的に重要な意味を持つものである.英国では男性少数民族の患者が優位であったこともMIS-Cとの類似性を示している.MIS-C患者と同様に,急速な心機能の改善は,支持療法,抗菌薬治療,免疫調節療法の開始に密接に続いていた

3人の対照群は,MIS-A患者における心原性ショックの主要な特徴を明らかにし,急性の心不全を呈するヘテロな原因から生じる診断上の課題を説明するのに役立った.SARS-CoV-2感染後数週間以内に発症した症例では,炎症性マーカー,消化器症状,粘膜皮膚症状の極端な増加を認めた症例はなかった.対照群では1人(症例12)のみ心筋トロポニン濃度が大幅に上昇し,生検でパルボウイルスを伴うリンパ球性心筋炎(lymphocytic myocarditis)を認めた.集団の血清陽性率の上昇に伴い,対照例の所見もまた,抗SARS-CoV-2 IgGMIS-Aの診断にほとんど寄与しないことが強調される

本研究の限界には選択バイアスが含まれる.特に,MIS-Aの致死例と軽症例は含まれていなかった.すべての治療介入はコントロールされておらず,因果関係は推測されなかった.患者2人がSARS-CoV-2抗体陰性であり,これはMIS-C患者の血清陽性率と一致する1)2).この所見は,検査感度,セロコンバージョンの失敗または遅延,または抗体濃度の早期低下を反映している可能性がある.あるいは,SARS-CoV-2以外のイベントの開始が原因かもしれない.

成人における多系統炎症性症候群の同定や患者の診断が遅れている要因としては,以下の可能性が考えられる.(1)重度の心臓病変はまれである可能性が高いこと(2)心臓病変の発現時にRT-PCR検査が陰性であること(3)抗体検査の診断的役割が限定的であること(パンデミックの初期には利用できず,その後は特異度が低い)(4)収縮障害が既往の心臓病変に起因していること(5) COVID-19に関連した急性心筋傷害の頻度が高く,その原因が多様であること(入院患者の最大40%でトロポニン濃度が上昇している4))(6) パンデミック中のICU患者に複雑で侵襲的な診断をすることの困難さ,などである.最後に,MIS-Cは,重症度が変化し,複数のシステムが関与しているなど,幅広いスペクトラムをもつ疾患であるため2),医師は,MIS-A は異質性(heterogenous)であり,心臓病変を含まない可能性もあることにも注意する必要がある.

 

References

1) Riphagen S Gomez X Gonzalez-Martinez C Wilkinson N Theocharis P

Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic.

Lancet. 2020; 395: 1607-1608

2) Valverde I Singh Y Sanchez-de-Toledo J et al.

Acute cardiovascular manifestations in 286 children with multisystem inflammatory syndrome associated with COVID-19 infection in Europe.

Circulation. 2020; (published online Nov 9.)

https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.050065.

3) Morris SB Schwartz NG Patel P et al.

case series of multisystem inflammatory syndrome in adults associated with SARS-CoV-2 infection—United Kingdom and United States, March–August 2020.

MMWR Morb Mort Wkly Report. 2020; 69: 1450-1456

4) Guzik TJ Mohiddin SA Dimarco A et al.

COVID-19 and the cardiovascular system: implications for risk assessment, diagnosis, and treatment options.

Cardiovasc Res. 2020; 116: 1666-1687