COVID-19関連追加(2021228日)臨床表現型(フェノタイプ)について

 

COVID-19入院患者における予後を考慮した臨床表現型の同定と検証:

多施設コホート研究】

Gutiérrez-Gutiérrez B, et al. Identification and validation of clinical phenotypes with prognostic implications in patients admitted to hospital with COVID-19: a multicentre cohort study. Lancet Infectious Disease. Feb 23, 2021.

https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00019-0.

Summary

Background

入院患者におけるCOVID-19の臨床症状には異質性(heterogenous)がある.我々の目的は,COVID-19患者の臨床フェノタイプが臨床データから得られるかどうか,これらのフェノタイプの再現性と予後との相関性を評価すること,そしてフェノタイプ分類のための簡略化された確率モデルの導出/検証であった.フェノタイプの同定は,死亡率の予測ツールとして主に意図されたものではない.

Methods

本研究では,我々は2つのコホートを使用した: 202022日〜317日までスペインの127の病院にCOVID-19で入院した連続成人患者4035人を含む後ろ向きコホートであるCOVID-19@Spain cohortと,2020225日〜419日までマドリードの教育病院に入院した連続成人患者2226人を含むCOVID-19@HULP cohortである.COVID-19@Spain cohortは,無作為に選択された2667人の患者からなる解析コホートと,残りの1368人の患者からなる内的検証コホートに分けられた.COVID-19@HULP cohortを外的検証コホートとして使用した.多項ロジスティック回帰を用いて解析コホートにおいて,フェノタイプ割り付けのための確率モデルを導出し,内的検証コホートで検証した.このモデルは外的検証コホートにも適用された.30日死亡率およびその他の予後変数は,導出されたフェノタイプと確率モデルによって割り当てられたフェノタイプで評価された.

Findings

解析コホート(derivation cohort)(n= 2667)では,フェノタイプA516[19%]),フェノタイプB1955[73%]),フェノタイプC196[7%])の3つの異なるフェノタイプが得られ,内的検証コホート(internal validation cohort)(n= 1368)では,フェノタイプA233[17%]),フェノタイプB1019[74%]),フェノタイプC116[8%])の3つのフェノタイプが再現された.フェノタイプAはより若年で,男性の頻度が低く軽度のウイルス症状を呈し,炎症性パラメータは正常の患者であったフェノタイプBは,肥満リンパ球減少炎症性パラメータが中程度の上昇を認める患者が多かったフェノタイプCは,より高齢で,多くの併存疾患を有し,フェノタイプBより高いレベルの炎症性パラメータを認める患者を含んでいた解析コホートでは,30日死亡率フェノタイプAの患者で2.5%95%CI 1.4-4.3フェノタイプBの患者で30.5%28.5-32.6フェノタイプCの患者で60.7%53.7-67.2であった(log-rank test p< 0.0001内的検証コホートおよび外的検証コホートで予測されたフェノタイプは,割り当てられたフェノタイプと同様の死亡率を示した(内的検証コホート: フェノタイプA5.3%[95%CI 3.4-8.1], フェノタイプB31.3%[28.5-34.2]フェノタイプC59.5%[48.8-69.3],外的検証コホート: フェノタイプA3.7%[2.0-6.4], フェノタイプB23.7%[21.8-25.7], フェノタイプC51.4%[41.9-60.7]

Interpretation

COVID-19入院患者は,死亡率と相関する3つのフェノタイプに分類することができる.我々は,患者をフェノタイプに確率性をもって分類するための簡易ツールを開発し,その有効性を検証した.これらの結果は,臨床管理のために患者をより良く分類するのに役立つかもしれない.しかし,フェノタイプの病態生理メカニズムを調査する必要がある.

 

 

Methods

Phenotype derivation:

臨床フェノタイプを導出するために69の変数を検討した(Table 1).我々の目的はフェノタイプの存在を探ることであったので,いかなる変数も事前に選択していない.

Table 1: Bivariate analysis of variables associated with phenotypes in the derivation cohort.

 

 

Results

この研究に使用されたコホートの患者の特徴は,以前に詳細に報告されている4)5)入院時に収集された変数のtwo-stepクラスター分析により,解析コホートにおける3つの臨床フェノタイプ: フェノタイプA(患者2667人のうち516[19%]),フェノタイプB2667人のうち1955[73%]),およびフェノタイプC2667人のうち196[7%])が同定されたシルエットスコアは0.6であり,クラスタリングの質が良いことを示された.欠損データの割合が高い変数を除外しても,明らかな変化は生じなかった(データは示されていない).

解析コホートおよび内的検証コホートのベースライン特性はappendixに記載されている(pp7-12).全体的に,フェノタイプAの患者は若く(平均年齢55.2[SD 18.4] vs フェノタイプB, Cではそれぞれ68.7[15.9]および77.2[10.9]),男性の頻度が低く(55% vs 63%および69%),頭痛(19% vs 9%および7%),筋肉痛(29% vs 26%および13%),胸痛(15% vs 11%および11%)を呈する頻度が高かったそして,リンパ球数(平均1439 cells/μL[SD 1761] vs 1094 cells/μL [1424]および1096 cells/μL [1170] )が多く,CRPIL-6,フェリチン,LDHのような炎症性パラメータのレベルが低かった(appendix pp7-9フェノタイプBの患者は,発熱(83% vs フェノタイプA, Cではそれぞれ80%および69%)と咳(74% vs 68%および63%)をより頻繁に認め,胸部放射線画像検査で肺浸潤が少なく(20% vs 46%および25%),間質性変化が多く(45% vs 25%および41%),フェリチン(平均809.5 ng/mL [SD 588.4] vs 616.4 ng/mL [219.7]および752.8 ng/mL [320.4]),クレアチンフォスホキナーゼ(平均164.3 U/L [SD 464.0] vs 150.8 U/L [368.2]および141.4 U/L [199.0])のレベルが高かった(appendix pp7-9フェノタイプCの患者は,慢性心疾患(56% vs フェノタイプA, Bではそれぞれ13%および23%),高血圧(86% vs 31%および53%),慢性肺疾患(31% vs 8%および19%),ステージ4の慢性腎臓病(34% vs 3%および3%),肥満(BMI >30 kg/m2; 23% vs 8%および14%),糖尿病(48% vs 10%および22%),急性の精神状態の変化(18% vs 5%および12%)の頻度が高かったそして好中球(平均8539 cells/μL[SD 6656] vs 4112 cells/μL[2511] および4892 cells/μL[2844]),D-dimer (平均1343.1 μg/L[SD 2419.7] vs 715.8 μg/L[986.5]および986.3 μg/L[3290·5]),プロカルシトニン(平均0.70 ng/mL[SD 0.96] vs 0.17 ng/mL[0·26]および0.27 ng/mL[0·51]),CRP(平均127.1 mg/L[SD 119.8] vs 47.4 mg/L[68.3]および88.8 mg/L[84.2]),クレアチニン(平均2.76 mg/dL[SD 2.11] vs 0.96 mg/dL[0.56]および0.99 mg/dL[0.36]),そしてカリウム(平均4.5 mEq/L[SD 0.7] vs 4.0 mEq/L[0.5] および4.0 mEq/L[0.5])レベルがより高かったまた酸素化パラメータはより低かった(appendix pp7-9, Figure 1, Figure 2

 

 

Figure 1: Chord diagram of the distribution of groups of variables in the phenotypes in the derivation cohort.

変数はカテゴリにグループ化されている.フェノタイプは異なる色で示されている: フェノタイプAは緑,フェノタイプBは青,フェノタイプCは赤.各フェノタイプについて,変数の平均(連続変数の場合)または割合(カテゴリ変数の場合)が,完全な解析コホートの平均または割合と有意に異なっていたならば,リボンがフェノタイプと変数群を結ぶ.リボンの幅は,そのフェノタイプについての解析コホートの変数の数と有意に異なる変数の数と相関する.

 

 

Figure 2: Heatmap of the distribution of continuous variables in the phenotypes in the derivation cohort.

色のグラデーションは,完全解析コホートに関連した平均値の差を示すために使用され,高い値の場合は赤に,低い値の場合は青に向かっている,色のグラデーションは、関心のあるサブコホート平均値が,完全コホート平均値を下回っているか,上回っているSDsの数を示す.

 

 

我々は,内的検証コホートにおいてtwo-stepクラスター分析を繰り返した.この解析でも,解析コホートと患者の分布が非常に似ている3つのクラスターを選択した: フェノタイプA(患者1368人のうち233[17%]),フェノタイプB1368人のうち1019[74%]),フェノタイプC1368人のうち116[8%]).シルエットスコアも0.6であり,肝硬変と活動性固形悪性腫瘍(解析コホートでは有意差はなかったが,内的検証コホートではフェノタイプAまたはBよりもフェノタイプCの方が頻度は高かった),造血器悪性腫瘍(解析コホートでは有意差はないが,内的検証コホートではフェノタイプBおよびCよりもフェノタイプAの方が頻度は低かった),フェリチンおよびクレアチンフォスホキナーゼ(解析コホートでフェノタイプAおよびCよりフェノタイプBの方が高レベルで,内的検証コホートではフェノタイプAおよびBよりもフェノタイプCの方が高レベルであった)(appendix pp10-12)の割合を除いて,フェノタイプの変数分布は解析コホートと同様であった.

患者をフェノタイプに割り当てる簡単な方法を開発するために,我々はフェノタイプに属するための解析確率モデルを開発して検証した.まず,解析コホートにおいてフェノタイプA vs フェノタイプCおよびフェノタイプB vs フェノタイプCに対するさまざまな変数の関連性を二変量解析(bivariate analysis)した.我々は,多くの変数について,フェノタイプと有意な粗相関(crude association)を検出した(Table 1).変数選択プロセスの後,年齢,性別,慢性肺疾患,肥満,拡張期血圧,酸素飽和度(室内気),白血球数,好中球数,ヘマトクリット,凝固INRcoagulation international normalised ratio),CRP,グルコース,クレアチニン,ナトリウム,カリウム,胸部放射線画像の肺浸潤の種類を含む16の変数を含む最終的な多項ロジスティック回帰モデルを開発した(Table 2).そこで,我々は患者をフェノタイプへ割り付けるために簡略化された確率モデルを導出した.解析コホートの観察データのためのモデルのAUROCは,3つのフェノタイプについて非常に良好な予測能力を示した(フェノタイプA: 0.86, 95%CI 0.85-0.88; フェノタイプB: 0.88, 0.86-0.89; フェノタイプC: 0.99, 0.99-0.99).予測能力は,より小さく,無作為に選択されたサブコホートにおいても同様であった(appendix p13).

 

 

Table 2: Multinomial logistic regression model for the prediction of phenotypes in the derivation cohort.

 

患者を正しくフェノタイプに割り当てるモデルの能力(capacity)は,内的検証コホートにおいて,そのコホートから直接得られたフェノタイプについて検証された.内的検証コホートで観察されたフェノタイプを予測するモデルの能力も高かった(フェノタイプA: AUROC 0.86, 95%CI 0.84-0.89; フェノタイプB: 0.86, 0.84-0.88; フェノタイプC: 0.95, 0.93-0.98; appendix p22).

次に,確率モデルを内的および外的確証コホートに適用し,特定のフェノタイプが割り当てられる個々の確率を求めた.最高の確率に従ってフェノタイプABCに割り当てられた内的確証コホートの患者数は,それぞれ263人(19%),1021人(75%),84人(6%)であった(appendix pp14-15).外的検証コホートの対応する数値は,それぞれ323人(15%),1757人(80%),105人(5%)(appendix p16)であった.内的確証コホートでは,3つの予測されたフェノタイプにおけるすべての変数の分布は,解析コホートと同様であった(appendix pp14-15).外的検証コホートについては,解析コホートで収集したすべての変数が利用できなかった.したがって,モデルに含まれる変数の分布を確認したところ,解析コホートのものと同様であった(appendix p16).

解析コホートでは,30日死亡率は,フェノタイプAの患者では2.5%95%CI 1.4-4.3),フェノタイプBの患者では30.5%28.5-32.6),フェノタイプCの患者では60.7%53.7-67.2)であった(Figure 3; appendix p17内的検証コホートでは,再現されたフェノタイプの死亡率は,フェノタイプAでは2.6%95%CI 1.0-5.6),フェノタイプBでは31.0%28.2-33.9),フェノタイプCでは53.4%(44.4-62.2)であった(appendix p17確率モデルに基づいて割り当てられたフェノタイプについて,内的検証コホートでの死亡率は,フェノタイプAでは5.3%95%CI 3.4-8.1),フェノタイプBでは31.3%28.5-34.2),フェノタイプCでは59.5%48.8-69.3)であった(Figure 3)(appendix p17外的検証コホートでは,フェノタイプA3.7%2.0-6.4),フェノタイプB23.7%21.8-25.7),フェノタイプC51.4%41.9-60.7)であった(外的検証コホートは院内死亡率のみであり,30日死亡率のデータは含まれていない; Figure 3; appendix p17.すべての死亡率データは付録にまとめられている(p17).

 

 

Figure 3: Probability of death up to day 30 according to phenotypes in the derivation cohort (A), internal validation cohort (B) and external validation cohort (C).

解析コホートにおいて,ICU入院,輸血を必要とする貧血,胸水,急性腎不全,心不全,細菌性肺炎,ARDS,または心肺停止を呈した患者の割合は,フェノタイプAおよびBと比較して,フェノタイプCでは有意に増加し,フェノタイプBおよびCと比較して,フェノタイプAでは有意に減少した; 脳卒中,虚血性心疾患イベント,肝不全,DICについては有意差がなかった(appendix pp7-9結果はフェノタイプBでは肝不全の頻度が高かったことを除いて(appendix p15),内的検証コホートでも同様であった

年齢や酸素飽和度のようなフェノタイプを越えた強い死亡予測因子の異なる分布を考慮した後も,フェノタイプと死亡率との関連性が維持されているかどうかを確認するために,我々は解析コホートにおいて,これらの変数の層別分析を行った.すべての層で,フェノタイプは死亡率と有意に関連していた(appendix p18).