COVID-19関連追加(202133日)

マスクによる呼吸器管の水和と重症度の関係の考察

当院HP関連ファイル:

202099日(参考文献(26)

20201125日(感染性エアロゾルの粒子サイズについて)

【呼吸器官の水和(hydrating: なぜマスクがCOVID-19の重症度を下げるのか

について代替的な説明】

Courtney JM, Bax A. Hydrating the respiratory tract: an alternative explanation why masks lower severity of COVID-19. Biophysical Journal. Feb 12, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.bpj.2021.02.002.

Abstract

呼吸器疾患の季節性は,呼吸器管の粘膜内層における水分の蒸発が増加する状況,特に屋外の絶対湿度が低く,屋内の相対湿度が低いことと関連している.我々は,通常の呼吸において,呼気の間に過飽和空気(supersaturated air)がマスク繊維によって吸収され,それに続く乾燥した環境空気の吸気の間に蒸発するという吸放湿サイクル(absorption-desorption cycle)が発生することを実証した熱容量の大きい二重構造の綿マスクでは,吸気空気(inspired air)の温度が室温以上に上昇し,有効な相対湿度の上昇が100%を超えることができる.最近報告されているジェネリックマスク(generic facemask)の発病抑制効果は,吸気の強い湿度上昇によって支配されていると考えられる.この湿度上昇によって,上気道感染が発生する前後において,肺からの病原体の粘液線毛クリアランス(mucociliary clearance)が促進される.効果的な粘液線毛クリアランスは,下気道感染を遅らせたり,減少させたりすることができるので,疾患重症度を軽減することができる.この作用機序は,たとえ上気道感染が発生した後にもマスクを着用することで,マスクの伝統的な機能である人から人への感染伝播を抑制することができることを示唆している.我々は,マスクが吸気空気の有効湿度を強力に上昇させ,それによって免疫システムに有益であることが知られている呼吸器上皮(respiratory epithelium)の水和を促進することを示している吸気空気の有効湿度の上昇は,マスク着用と重症度の低下との関連性の代替的な説明となる可能性がある.この可能性のある治療的使用法については,さらなる研究が必要である.

Main

Introduction

呼吸器ウイルス感染は,おそらく疾患の最も一般的なタイプである.それらは,インフルエンザ,風邪,麻疹から,最近ではCOVID-19にまで及ぶ.一般的な風邪は,ライノウイルスファミリーを含む200以上の異なるウイルス(1)だけでなく,通常,軽度から中等度の上気道疾患に関連する229ENL63OC43HKU1を含むコロナウイルスファミリーのメンバーも含有する.”一般的な風邪(common cold)”という名前が示すように,これらの疾患には季節性の特徴があり,ほとんどの疾患は外気温が低くなるにつれてより拡散する.呼吸器ウイルスの人から人への感染伝播は,感染者の呼吸,発声,咳,くしゃみから発生する呼吸器飛沫が支配的である(2).感染伝播経路を支配する飛沫タイプは,ウイルスや呼吸器管の部位によって異なる(2)

COVID-19の季節性(seasonality(3)は,2020年秋の到来と冬の接近に伴い,北半球で本疾患が急速にエスカレートしていることの重要な要因として,現在ますます認められるようになってきている(4).このパターンは,コロナウイルスファミリーのOC43および229EについてのKimらの報告(4, 5)と同じ傾向を示しており,”10月から2月までの冬の低温期に感染が急増した”と指摘されている.多くの要因がこの季節性に寄与していると考えられる: 呼吸器ウイルスを含むエアロゾルが何分も空気中に残っている室内で(6, 7, 8),過ごす時間が長くなること(3, 4, 5); 日光への曝露量が減少し,免疫系に不可欠なビタミンDレベルが低下すること(9); SARS-CoV-2などのコロナウイルスを効率的に不活化する紫外線レベルが低下すること; そして,より低い温度と湿度ではウイルスの活性化が延長されること(10, 11, 12).重要なことに,外気温は室内の相対湿度と正の相関があり,冬の寒い時期には低いレベルに達することがある.湿度が低いと呼吸器飛沫の脱水(dehydration)が速くなるため,より多くの飛沫が地上に着地する前に完全に脱水する(乾燥)(13).したがって,エアロゾルとして残る割合が増え,それによって感染伝播の可能性が高まる.呼吸器ウイルスの季節性に関して,これらの要因は何らかの役割を果たしている可能性が高く、ヒト宿主外でのウイルスのライフサイクルに影響を与える”外部要因”と考えることができる.

季節性と疾患に関連する他の要因は,宿主がウイルス感染にどのように反応するかということである.Iwasakiらはマウスを用いて,インフルエンザAウイルスの呼吸チャレンジ後に低湿度が疾患重症度を増加させることを実証した(14).この効果は,カスパーゼ1/11欠損Mx1マウスでは減衰し,ウイルス感染に反応してインターフェロン刺激遺伝子(interferon-stimulated gene )の発現が低下し,それゆえ自然抗ウイルス防御(自然免疫)が障害されることと関連していた.絶対湿度の低い空気の吸入における気道の脱水(dehydration of the airways)の結果として,呼吸器の水分が失われて(respiratory water loss),表層のオスモル濃度(※溶媒のキログラムあたりの溶質粒子[オスモル]の総数で表される溶液の濃度)が上昇する.このオスモル濃度の上昇は,上皮細胞からの水分の抽出を引き起こし,その容積を減少させ,気道を収縮させ,運動誘発性喘息で悪化する影響をもたらす(15).気道の脱水は,肺からの病原体に対する粘液線毛クリアランスの低下をもたらすことも知られている(16,17)

呼吸によって生成される小さな飛沫(small droplets)(直径0.3-2μm)もまた,自己播種(self-inoculation)によって下気道を介してウイルスを拡散させるための手段としての役割を果たすことが提案されてきた(18).このような飛沫は,そのサイズが小さいにもかかわらず,SARS-CoV-2ウイルスよりも13桁大きい容積を有しており,したがって,1つ以上のビリオン(virions)を容易に被包化することができる.さらに,最近の研究では,非ヒト霊長類の肺にSARS-CoV-2を感染させると,飛沫数が大幅に増加することが示されており(19),入院患者の呼気中の高レベルのウイルス排出も報告されている(20)

下気道における呼吸による飛沫形成は,呼気時に発生する小気道の一過性の閉塞によって開始できる(21, 22).それに続く吸気によって,閉塞した気道がバーストして開放する前に,閉塞した気道内に薄い膜が形成され,この膜液の表面張力,粘度,および水和に依存した飛沫生成プロセスが行われる.ウイルスを含むことができるこの流体は,繊毛を含む粘性の低い血清層の上に浮かんでいる〜1μm厚の粘膜空気表面層(mucosal air-surface layer)に由来する.したがって,呼吸の飛沫生成,およびそれによるウイルスのエアロゾル化は,上皮表面の水和状態(hydration state)によって影響を受ける(21,22)

興味深いことに,抗喘息薬であるブデソニドは,全身性コルチステロイドではなく吸入薬として使用されているが(23)が,臨床試験(STOIC (24))で驚くほど良好な暫定結果を示している.抗COVID-19作用のメカニズムはまだ調査中であるが,その自然な作用機序は,small airwaysを開いたままにしておくことで,呼吸による飛沫の発生を抑えることに関係している.

COVID-19の感染伝播性と重症度における季節に関連する様々な要因の相対的な重要性については多くの議論が残っているが,疾患重症度の増加と吸入された空気の低湿度との間には強い相関関係があるようだ.同様に驚くべきことに,最近の報告では,一般的なフェイスマスク着用者におけるマスクの使用と疾患重症度の低下との関連性が報告されている(25,26).しかし,ウイルス用量(dose)が減少したことが重症度の低下につながっているという著者の提案するメカニズムについては,まだ論争が続いている(27)

我々は,COVID-19の重症度に対するフェイスマスクの減少効果(25, 26)は,マスクが一時的な水の貯蔵場所として機能することによって,吸入された空気の有効湿度が大幅に上昇することによって支配されていると提案する.マスクは,口から出るときに冷却されて過飽和状態になる呼出された息の水分の多くを吸収し,それに続く乾燥した空気を吸入する時にはこの水分が蒸発し,それゆえこの水分を含んだマスクを通過する時に加湿される.この効果の大きさを,8-37℃の温度範囲で,マスク素材を変えて測定した.実験したすべてのマスクでかなりの加湿効果が得られたが,この効果は高密度の綿マスクで最も高く,そのようなマスクの高い熱容量は,吸入空気を加熱して加湿するのに役立ち,結果として環境湿度を上回る100%を超えることもある.したがって,このようなマスクは,寒冷誘発性喘息を緩和するために数十年前に導入されたより効果的な熱交換器マスクの基本的な等価として機能する(28,29)

Methods

測定は,総容量95.3L38.74×38.74×63.50cm(幅,高さ,奥行き)の密閉されたスチール製の箱の中に息を吹き込むことによって行われた(Figure S1).チャンバーの側壁は,工場でパウダーコーティングが施された.後壁は,元はむき出しのスチールであったが,水分の付着を最小限に抑えるためにオイルベースの塗装を施した.ボックスの高い熱伝導率と熱容量によって,チャンバーに暖かい息を呼気した時の温度上昇を0.6℃未満に低減した.アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンのフロントパネル+には,周囲を顔の皮膚と密着させるための高密度気泡ゴムで裏打ちされた,ボランティアの顎,口,および鼻を収容するためのシール可能な開口部を含んでいる.また,前面パネルには,測定の合間にこの開口部の前に大容量(300L/min)のファンを取り付け,呼吸口(breathing opening)を排気口とすることで,箱内を環境空気で新鮮にするための,直径10cmの密閉可能な第2の穴がある.温度,湿度,CO2レベルを記録するセンサーは,箱の中心付近に設置した.箱の底部に配置され,角度45°で上向きに向けられた10cmのファン(流量100L/min)は,箱内を均一に保ち,3種類のセンサー上の気流を最大化するのに役立った.湿度が段階的に変化した場合の反応は,温度に依存することがわかった(Figure S2)(8℃,22℃,37℃における指数時定数(exponential time constants)はそれぞれ15s5s2.8sで定義されている).ボックスの後端上部には,呼吸時の周囲圧力による総気体量の変化に対応するために,膨張可能なポリエチレン袋を取り付けた.この袋はまた,吐出された空気の量を制御するための目視ゲージとしても機能した.平均呼吸量(average breath volume)は,代表的な測定の間にポリエチレン袋に沿ってNew Diagnostic Design EasyOne Air spirometer Andover, MA)を置くことによって測定された.

ここで報告されたすべてのデータは,1分間に10回の呼吸数および1回の呼吸あたり0.99±0.05 Lの容積の通常呼吸(tidal breathing)をシミュレートすることを目的とした条件で記録された.この容積は,しばしばtidal breathingに使用されるよりも10-50%高いが,それはボランティアにとって最適な快適さになるよう調整され,呼吸操作中にチャンバー内のCO2レベルが>6000 ppmに上昇したときに低下したO2の取り込みを説明する.呼吸は可聴タイマーで同期され,相対湿度と温度データは,ビデオで監視し,手動で分析のためのコンピュータに入力された.各条件下における各測定は,Table S1に報告されている値で,3回繰り返した.

測定は,実験室の寒冷室(7.7±0.1℃,相対湿度13±0.5%)で,乾燥空気(相対湿度13±0.5%)を用いて,測定前に箱の換気を行い,室内では室温(22.1±0.1℃,相対湿度26.6±0.3%)で,細胞培養室では37.4±0.5℃,相対湿度14.3±0.3%で行った.4種類のマスクを評価した.N95 (3M, model 9205; St. Paul, MN),標準的な使い捨ての3plyサージカルマスク (National Institutes of Health (NIH) stockroom, Bethesda, MD)2ply綿・ポリエステル混紡ブレンドマスク (NIH stockroom),およびオンラインで購入した綿マスク(all-cotton mask)(Figure S3)である.結果は,マスクなしで同じ呼吸法を行った場合に得られた箱の内部の加湿と比較された.

相対湿度は,Honeywell HIH-5030 湿度センサー(Charlotte, NC)を使用して,5Vの電源を供給して測定した.測定された電圧は,センサーのデータシートに記載されている式を使用して相対湿度に変換した.

 

Figure S1:

Figure S2:

 

 

Figure S3:

Results

マスクによる吸気の湿度に及ぼす影響を測定することは,レーザー光散乱観察を用いて、発話や呼吸粒子を遮断するための様々なタイプのフェイスカバーを試験していた時の観察によって動機付けされた(7,32,33).これらの測定では,呼気量(volume of exhaled air)はチャンバー内のRH上昇から単純に求めた(これはマスクがない場合には便利な方法である).しかし,同じRH上昇を達成するためには,マスクを装着した場合の方が,マスクを装着していない場合よりも,かなり多くの呼気/吸気呼吸サイクル(expiration/inspiration breathing cycles)が必要であることが明らかになった.この観察から,定常状態では,マスクは呼出された息から水分を吸収し,吸気時にその吸収された水分が放出されなければならず,それによって吸入された空気の湿度が効果的に上昇することが示唆された.COVID-19を含む呼吸器疾患の蔓延と重症化に湿度が影響することがますます認識されてきていることを考慮して,我々は,フェイスマスクを使用した場合の吸入空気における湿度の効果的な上昇を定量的に測定した.

測定は、作業環境や生活環境の観点から最も関連性の高い範囲をカバーする8℃から37℃までの3つの異なる温度で行われた.様々な種類の合成繊維や天然繊維の吸水能力は温度に強く依存する(34, 35, 36).ウール,綿,絹などの天然繊維は特に吸水性に優れているが,ポリエステルやナイロンなどの合成繊維の吸水性はそれほど高くない(36).我々のパイロット研究では,N95マスク通常のサージカルマスク綿とポリエステル混紡の2層からなるNIH提供のマスク総質量22gの比較的厚手の裏地付き綿マスク4種類の一般的なマスクを試験した(Figure S3).いずれの場合も,呼吸に使用されるフロントパネルの開口部を取り囲む高密度気泡ゴムに対してボランティアの顔がしっかりとフィットすることで,マスクの端の周りの漏れは解消された(Figure S1).

試験では,測定開始前に少なくとも10分間はボランティアにマスクを装着し,顔上のマスクの温度と湿度を平衡化した.呼吸の速度と量を制御/最適化した数サイクルの後,測定値は非常に再現性が高く,一致していることが証明された.特に,室温での測定(室温は,環境の温度および湿度を非常に狭い範囲に保つことが可能)では,各測定を3回繰り返した値は,RHにおける0.3%の変化に対応する湿度センサーのデジタル読み出しの範囲内であることが多かった(Figure 1).

Figure 1:

https://marlin-prod.literatumonline.com/cms/attachment/2e7b4399-c1a4-4374-a467-ea913e88a140/gr1_lrg.jpg

4種類のマスクはすべて,呼吸に伴うチャンバー内の湿度の蓄積を強力に低下させることがわかったが,その程度は異なっていた.室温では,チャンバー内の平均RHを超える見かけ上の(apparent)吸気のRHの最小の上昇は〜38%であり,サージカルマスクで観察された.同じ条件では,N95マスクと綿・ポリエステルマスクの両方で,吸気空気の湿度が55-60%上昇した(Figure 2).驚くべきことに,厚手の綿マスクを用いた測定では,チャンバーの加湿がさらに強く減少し,呼出された水分のかなりの割合が布マスクに一時的に蓄えられたことを意味している.96秒間の測定では,チャンバー内の平均RH(30%)を超える見かけ上のRH上昇は〜90%であった.一見すると,この100%を超える吸気空気の湿度の見かけ上の上昇は,直感を無視しているかもしれない.しかし,この説明は単純な物理学に基づいている.息の呼出は,マスク(とその中に蓄えられた水分)を環境温度をはるかに超えて温める.実際,空気の温度が 8℃の場合,通常呼吸中の呼出の後にマスクを素早く外し,熱電対センサー(thermocouple sensor)をその中心部付近で挟みマスクを二重に折りたたんでから,その折りたたんだマスクを巻き上げると,一貫して温度は30±1℃と測定された.吸気後の同じ測定では27±1℃であった.おそらく,この30±1℃の温度は,吸気開始時のマスクの顔側の実際の温度の下限を示しており,8℃の吸気空気の湿度が100%をはるかに超える値に達することができる.仮にマスク表面の20%だけが実際の空気の通過に関与していたとしても,マスクのこの割合は〜4gの綿に相当し,熱容量は合計20J/Kであり,吸気空気1Lにおける熱容量〜1.2J/Kよりもかなり高い.したがって,マスクの大きな熱容量により,マスクは基本的な熱・湿度交換器のように機能し,吸気空気を,室内空気よりも下気道に近い値まで温めたり,加湿したりすることができる.

Figure 2:

https://marlin-prod.literatumonline.com/cms/attachment/6eff14a4-aca2-4283-b5c7-b9d8388a12dd/gr2_lrg.jpg

軽いマスクほど湿度上昇はより低いことが観察され,これは一般的な概念と一致している(フィルター素材自体も重要な役割を果たしているようだが).例えば,質量が〜27mg/cm2と小さいにもかかわらず,N95マスクは約2倍の重さの綿・ポリエステルマスクと比較しても,吸気空気の湿度を上昇させる.実際のフィルタリングの大部分を担うN95マスクにおける大きな面積の極細繊維(37)が,その静電気特性と相まって,呼出された水蒸気のかなりの部分を吸収する能力に関係していると思われる.

低温(8℃)では,すべてのマスクの加湿効果が強く増加する.しかし,8℃(150-300%)での非常に大きなRHの上昇は,12-24mg/Lの絶対湿度の劇的な上昇ではないことに注意することが重要である.一旦呼吸器管内で加熱されると,これは36℃での29-58%の相対湿度の変化に対応している.対照的に,37℃での測定では,吸気空気のRHの変化がはるかに小さいにもかかわらず,この増加は、肺に吸入された空気の相対湿度の変化に直接変換される結果として,呼吸器管脱水(dehydration)の観点からは,各マスクタイプの効果は,8-37℃の範囲全体を通してかなり一定である(fairly constantすべての温度において,厚手の綿マスクの加湿効果はサージカルマスクの約2であり,N95と綿・ポリエステル布マスクはその中間に位置している

Discussion

この1年間で,COVID-19パンデミックの拡大を食い止めるためにフェイスマスクが有効なツールであることが明らかになってきた.マスクの使用によって,疾患伝播という点での保護効果だけでなく,疾患を引き起こすウイルス量(dose)の低下に寄与する疾患重症度を顕著に低下させる(25).マスクは非常に効果があったため,著者らは,”variolation”の可能性,すなわち,感染していない人に微量の活性化ウイルスを接種することを提起したが,これは約3世紀前に天然痘(variola)と戦うために西洋に導入された方法で,ワクチンが利用可能になる前に行われた(26).複数の有効なCOVID-19ワクチン開発が成功した後,variolationの考え方はもはや関連性がなく,専門家によって強く批判されたが(27),我々はまた,それがそもそも空気媒介性ウイルス性呼吸器疾患に適用されるべきではないと注意している.Haas(38)が示したように,SARS感染の用量反応曲線は指数関数モデル(Single-Hit-ModelSHM(39),またはIndependent Action HypothesisIAH(40)としても知られている)に従っており,感染リスクが最初は曝露に比例して増加することを意味している.このモデルはまた,麻疹のアウトブレイクの古典的な分析においても適切であることが証明されている(8).吸入された単一のウイルスが感受性のある宿主細胞に侵入して子孫ウイルス(progeny)を作ることはほとんどないが,そのような感染が起こる確率はゼロではなく,吸入されたウイルスの数に比例して増加する.これは,宝くじのチケットを購入するのに似ている; 1枚のチケットが当たる確率は小さいが,チケットの枚数に比例して増加する.高含水率(95%以上)の微小な飛沫(microscopic droplets)の形式で,感染者の口から出る口腔液または粘膜液にはビリオン(virions)がランダムに分散しているが,これらの飛沫の大部分は非常に小さいため,統計的には1つ以上の感染性ウイルスが含まれている可能性は低いと考えられている(7).ウイルスが皮膚の小さな引っ掻き傷に塗布された天然痘感染とは対照的に,吸入された空気媒介性SARS-CoV-2ビリオンは呼吸器管の上皮表面にランダムに分布している.これにより、自然免疫システムの過負荷が必要とされることは,局所的に適用される概念であるが,非常に考えにくい.

マスク着用者のCOVID-19疾患重症度の低下は,曝露量の減少に起因するという提案には,第二の問題がある.数ミクロンよりも小さい粒子だけがsmall airwayに入り,肺の感染を引き起こすことはよく知られており,上気道の感染症と比較して重症度が高くなることが一般的である(2,41,42).しかし,布マスクは,これらの微小粒子のろ過能力が相対的に劣っている.そのため,たとえ布マスクが感染症の発生率を低下させると期待されていたとしても,着用者に対する保護効果は,観察とは逆に,より重篤な疾患と関連する最小サイズの粒子に対しては小さくなるだろう.したがって,マスクが疾患重症度を下げる効果については,別の説明が必要とされる.

ここで我々は,マスク着用者の疾患重症度が低いのは,マスクを介して吸入した空気の湿度の上昇が原因であると提案する(25,26).ウイルスが他の人の呼吸器管に侵入するのを防ぐというマスクの主な機能(43,44)とは対照的に,この付加的な利点は,ウイルスを含む粒子が呼吸器管の表面に着地した後にも適用される; 脱水の減少(reduced dehydration)は自然免疫システム障害を制限し(14),同時に粘液線毛クリアランスを改善し(16,17),これら両方の要因が感染の確率を低下させる.感染が発生した場合,加湿によって,肺の他の部位での自己播種(self-inoculation)につながる可能性のあるウイルスを含む呼吸飛沫(virus-containing breath droplets)の発生が減少して,肺を介したさらなる感染拡大を制限する可能性がある(18,19).同時に,効果的な粘液線毛クリアランスと十分に加湿され障害されていない呼吸器管の自然免疫システムは,獲得免疫システムを動員するための時間をより多く確保できるように,ウイルス拡散を制限するかもしれない.呼吸器ウイルス疾患に対する湿度の影響は,最近のインフルエンザAに対する公衆衛生的介入における”高い湿度を保つ”ことに示されるように(45),ますます認識されるようになってきている.

マスクを着用することに関連する吸気空気の湿度の上昇は,おそらく一般の人々によく認識されており,特に湿度の高い天候の時の,”蒸し暑さ(mugginess)”の一般的な感覚に寄与している.我々の測定では,吸気空気の湿度の上昇が実際にかなり大きいことが確認されている.

ここで重要なのは,マスクの端周囲に空気が漏れていない状態で測定を行ったことである.非N95マスクの場合,このような空気漏れはしばしば認められ,病原体をろ過する能力と,吸気空気の効果的な湿度上昇のいずれも均等に低下させてしまうだろう.そのため,実際には綿マスクの加湿効率は,ぴったりとフィットするN95マスクに匹敵する値にまで低下するだろう.サージカルマスクや綿・ポリエステル混紡マスクは,漏れの影響を受けるため,N95や全綿マスク(all-cotton masks)よりも若干性能が落ちると予想される.これらの考慮事項は,日常的な使用では,ぴったりしたN95(またはKN95)マスクが好ましいのに対し,感染後に隔離されている間は,感染リスクのある人が感染した人(infectee)と同じ空間を共有していなければ,綿マスクの方が着用者にとってより有益であるかもしれないことを意味する.

 

References

1) Wein H.

Understanding a common cold virus.

2009

https://www.nih.gov/news-events/nih-research-matters/understanding-common-cold-virus

2) Musher D.M.

How contagious are common respiratory tract infections?.

N. Engl. J. Med. 2003; 348: 1256-1266

3) Merow C.Urban M.C.

Seasonality and uncertainty in global COVID-19 growth rates.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2020; 117: 27456-27464

4) Audi A.AlIbrahim M.Zaraket H.et al.

Seasonality of respiratory viral infections: will COVID-19 follow suit?.

Front. Public Health. 2020; 8: 567184

5) Kim J.M.Jeon J.S.Kim J.K.

Climate and Human coronaviruses 229E and Human coronavirusesOC43 infections: respiratory viral infections prevalence in hospitalized children in Cheonan, Korea.

J. Microbiol. Biotechnol. 2020; 30: 1495-1499

6) Fennelly K.P.

Particle sizes of infectious aerosols: implications for infection control.

Lancet Respir. Med. 2020; 8: 914-924

7) Stadnytskyi V.

Bax C.E.Anfinrud P.et al.

The airborne lifetime of small speech droplets and their potential importance in SARS-CoV-2 transmission.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2020; 117: 11875-11877

8) Riley E.C.Murphy G.Riley R.L.

Airborne spread of measles in a suburban elementary school.

Am. J. Epidemiol. 1978; 107: 421-432

9) Grant W.B.Lahore H.Bhattoa H.P.et al.

Evidence that vitamin D supplementation could reduce risk of influenza and COVID-19 infections and deaths.

Nutrients. 2020; 12: 988

10) Chin A.W.H.Chu J.T.S.Poon L.L.M.et al.

Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditions.

Lancet Microbe. 2020; 1: e10

11) Dabisch P.Schuit M.Ratnesar-Shumate S.et al.

The influence of temperature, humidity, and simulated sunlight on the infectivity of SARS-CoV-2 in aerosols.

Aerosol Sci. Technol. 2021; 55: 142-153

12) Matson M.J.Yinda C.K.Munster V.J.et al.

Effect of environmental conditions on SARS-CoV-2 stability in human nasal mucus and sputum.

Emerg. Infect. Dis. 2020; 26: 2276-2278

13) Netz R.R.Eaton W.A.Physics of virus transmission by speaking droplets.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2020; 117: 25209-25211

14) Kudo E.Song E.Iwasaki A.et al.

Low ambient humidity impairs barrier function and innate resistance against influenza infection.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2019; 116: 10905-10910

15) Anderson S.D.Daviskas E.The mechanism of exercise-induced asthma is.

J. Allergy Clin. Immunol. 2000; 106: 453-459

16) Williams R.Rankin N.Seakins P.et al.

Relationship between the humidity and temperature of inspired gas and the function of the airway mucosa.

Crit. Care Med. 1996; 24: 1920-1929

17) Wolkoff P.The mystery of dry indoor air - an overview.

Environ. Int. 2018; 121: 1058-1065

18) Edwards D.A.Man J.C.Scheuch G.et al.

Inhaling to mitigate exhaled bioaerosols.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2004; 101: 17383-17388

19) Edwards D.A.Ausiello D.Roy C.J.et al.

Exhaled aerosol increases with COVID-19 infection, and risk factors of disease symptom severity.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2020; 118 (e2021830118)

20) Ma J.Qi X.Yao M.et al.

COVID-19 patients in earlier stages exhaled millions of SARS-CoV-2 per hour.

Clin. Infect. Dis. 2020; (Published online August 28, 2020)

https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1283

21) Johnson G.R.Morawska L.The mechanism of breath aerosol formation.

J. Aerosol Med. Pulm. Drug Deliv. 2009; 22: 229-237

22) Bake B.Larsson P.Olin A.C.et al.

Exhaled particles and small airways.

Respir. Res. 2019; 20: 8

23) Nicolau D.V.Bafadhel M.

Inhaled corticosteroids in virus pandemics: a treatment for COVID-19?.

Lancet Respir. Med. 2020; 8: 846-847

24) Bafadhel M.Nicolau D.V.STerOids in COVID-19 Study (STOIC).

2020

https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/record/NCT04416399

25) Gandhi M.Beyrer C.Goosby E.

Masks do more than protect others during COVID-19: reducing the inoculum of SARS-CoV-2 to protect the wearer.

J. Gen. Intern. Med. 2020; 35: 3063-3066

26) Gandhi M.Rutherford G.W.Facial masking for covid-19 - potential for “variolation” as we await a vaccine.

N. Engl. J. Med. 2020; 383: e101

27) Brosseau L.M.Roy C.J.Osterholm M.T.

Facial masking for covid-19.

N. Engl. J. Med. 2020; 383: 2092-2093

28) Nisar M.Spence D.P.S.Pearson M.G.et al.

A mask to modify inspired air temperature and humidity and its effect on exercise induced asthma.

Thorax. 1992; 47: 446-450

29) Beuther D.A.Martin R.J.

Efficacy of a heat exchanger mask in cold exercise-induced asthma.

Chest. 2006; 129: 1188-1193

30) World Meteorological Organization

Guide to meteorological instruments and methods of observation.

2008

http://www.posmet.ufv.br/wp-content/uploads/2016/09/MET-474-WMO-Guide.pdf

31) Morawska L.Johnson G.R.Katoshevski D.et al.

Size distribution and sites of origin of droplets expelled from the human respiratory tract during expiratory activities.

J. Aerosol Sci. 2009; 40: 256-269

32) Anfinrud P.Stadnytskyi V.Bax A.et al.

Visualizing speech-generated oral fluid droplets with laser light scattering.

N. Engl. J. Med. 2020; 382: 2061-2063

33) Fischer E.P.Fischer M.C.Westman E.et al.

Low-cost measurement of face mask efficacy for filtering expelled droplets during speech.

Sci. Adv. 2020; 6: eabd3083

34) Ashpole D.K.

The moisture relations of textile fibres at high humidities.

Proc.-R. Soc. Lond. Math. Phys. Sci. 1952; 212: 112-123

35) Toner R.K.Bowen C.F.Whitwell J.C.

Equilibrium moisture relations for textile fibers.

Text. Res. J. 1947; 17: 7-18

36) ASTM International

ASTM D1909–13(2020)e1 Standard tables of commercial moisture regains and commercial allowances for textile fibers.

2018

https://www.astm.org/Standards/D1909.htm

37) Lee H.R.Liao L.Cui Y.et al.

Three-dimensional analysis of particle distribution on filter layers inside N95 respirators by deep learning.

Nano Lett. 2021; 21: 651-657

38) Watanabe T.Bartrand T.A.Haas C.N.et al.

Development of a dose-response model for SARS coronavirus.

Risk Anal. 2010; 30: 1129-1138

39) Meynell G.G.Stocker B.A.D.

Some hypotheses on the aetiology of fatal infections in partially resistant hosts and their application to mice challenged with Salmonella paratyphi-B or Salmonella typhimurium by intraperitoneal injection.

J. Gen. Microbiol. 1957; 16: 38-58

40) Zwart M.P.Daròs J.A.Elena S.F.

One is enough: in vivo effective population size is dose-dependent for a plant RNA virus.

PLoS Pathog. 2011; 7: e1002122

41) Raymond T.

Review of aerosol transmission of influenza A virus.

Emerg. Infect. Dis. J. 2006; 12: 1657-1662

42) Gralton J.Tovey E.Rawlinson W.D.et al.

The role of particle size in aerosolised pathogen transmission: a review.

J. Infect. 2011; 62: 1-13

43) Howard J.Huang A.L.Rimoin A.W.

An evidence review of face masks against COVID-19.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2021; 118 (e2014564118)

44) Edelstein P.Ramakrishnan L.

Report on face masks for the general public.

2020

https://rs-delve.github.io/addenda/2020/07/07/masks-update.html

45) Reiman J.M.Das B.Pierret C.et al.

Humidity as a non-pharmaceutical intervention for influenza A.

PLoS One. 2018; 13: e0204337